LiSA 28巻10号 (2021年10月)

症例カンファレンス

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間質性肺炎の麻酔管理で特に懸念されるのは,やはり術後急性増悪であろう。

ひとたび急性増悪となると致死率が高いため,周術期管理で可能な限り発症リスクを軽減させることが最も重要である。

しかしながら,質の高いエビデンスが少ないがゆえに,経験的に管理を行っている施設が多いのではないか。

術前のリスク評価はどうしたらよいか,術中,術後管理は何に気をつけたらよいか,経験豊富な3施設のPLANを踏まえて検討していく。

自分だったらどう管理するか考えながら読んでいただきたい。

予告編
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次号の症例カンファレンスの提示症例を,一足先に紹介する。自施設にこのような症例が来たら,どのような麻酔計画を立てるか,事前に考えておいてほしい。次回,各施設のPLANをお楽しみに!

徹底分析シリーズ 手術室の壁外へ:アウェイを戦う麻酔科調査兵団

巻頭言 豊田 浩作
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人を捕食する巨人の脅威から逃れるために巨大な「壁」を築き,その中で暮らす人類。その人類と巨人との戦いを描いた作品『進撃の巨人』を読んだことのある諸兄姉もきっと多いことでしょう。壁の中の街では安全に暮らすことができますが,一歩壁の外に出れば,いつ襲いかかってくるかわからない巨人の脅威に常にさらされます。そして,人類の精鋭部隊である「調査兵団」は,巨人の謎を解き,壁から人類を開放するべく,果敢に壁外の荒野を進軍します。

 われわれ麻酔科医の業務の多くは手術室内で行われます。高性能モニターや最新の医療機器に囲まれ,人的リソースも注ぎ込まれたこの環境は,いわば麻酔科医のホームであり,厳重に守られた「壁の中」にいるとも言えます。しかし一方で,麻酔科医を取り囲む職務環境は,以前よりもはるかに早く変化し,領域も拡大しています。かつては想像することさえもなかった,手術室外での新たなミッションに直面することもあるでしょう。今までの通常の院内急変対応に加え,内視鏡やカテーテル治療での鎮静管理,産科的出血や妊産婦の心肺蘇生。さらには院外に飛び出して,ドクターカーやドクターヘリでの初療,DMATとしての被災地医療支援,そしてさらには,テロや戦地における手術麻酔管理。ホームである手術室の「壁」を破り,新たな領域で戦うべく踏み出す時が,もう目の前に来ているかもしれません。

“かつてのアウェイを新たなホームに”

“来たるべき近い将来,私たちが対面するであろう新たな世界へ”

 一足先に壁の外に踏み出し活躍している「麻酔科調査兵団」が見ている世界を覗いてみましょう。

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聖路加国際病院(以下,当院)は,病院としては日本で3番目,2012年7月にJCIの初回認定を取得し,2015年7月,2018年7月に認定を更新しており,今年2021年に,4回目の認定審査を受ける予定です。JCI認定では,院内の鎮静処置に対する安全性が厳しく求められ,麻酔科が中心となって院内ガイドラインを整備しました。また,手術室の壁外への第一歩として,消化器内視鏡検査室での鎮静にも踏み出しました。

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インターベンショナルラジオロジーinterventional radiology(IVR)の発展普及に伴って,手術室外で治療的手技が行われる頻度は年々増加している。しかし,その術中管理にわれわれ麻酔科医が関与する機会は決して多くないと考えられる。その理由は,局所麻酔下に行い得る低侵襲性こそがIVR最大の利点とされているためである。

 しかし,意識レベルの低下などの理由で治療中に協力を得られない患者では,術中の安静を保つために全身麻酔が必要とされる。また,科学技術の進歩はMRIなどのより高精細な診断画像の撮影を可能にしているが,診断価値のある画像を得るためには,やはり患者の協力が不可欠である。小児のIVRあるいはMRI撮影では,年齢にもよるが,患児の協力が得られず安静が保てないために,麻酔科医の関与を求められる機会が生じる。さらに近年では,患者の安全を確保するという観点から,合併症をもつ患者のIVRやMRI撮影時に麻酔科医の術中管理を求められることも増加している。

 本稿では,心臓カテーテル検査およびMRI撮影時の麻酔について,その特殊性と注意点,対応策などについて述べる。

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妊産婦ヘの急変対応は「時間と闘い」ながら「母体と胎児を救う」という特殊性がある。そして急変の多くは分娩室,産科病棟,他院からの搬送例など,手術室外で発生する。その場にいるのは産科医のみという状況が多く,産科医は原因究明や対応に追われ,全身管理は後手になりがちである。

 本稿では,アウェイ環境下で麻酔科医が妊産婦と胎児救命に貢献することを願い,実際に遭遇しそうなシーンをいくつか考えてみた。

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麻酔科医は手術室内で行う緊急処置に精通しており,このスキルは病院内では問題なく通用するだろう。重症患者が搬入される救命救急センターにおいても,(最も得意な)緊急気道確保や循環維持のための(迅速な)中心静脈路確保,鎮静・鎮痛薬を駆使して外科的処置をサポートするなど,手術室でなくとも専門性を生かして活躍することも難しくないはずだ。

 麻酔科医は発生している事象(病態)への対応が得意である一方,救急患者に対する診断アプローチには慣れていない。救急医は,なぜその事象に至っているのかを推論・鑑別しながら,同時に治療も行っていくことを生業としており,若干麻酔科医とは異なる視点がある。ドクターカー・ドクターヘリでの緊急処置は,病院外で限られたモニタリングの中で行うため,常に臨機応変な対応が求められる。また,外傷患者の診療では,麻酔科医が手術室内では行うことがない直接的な止血や観血的処置も行うこともある。

 普段の麻酔とはまったく異なる環境でも麻酔科医の知識とスキルは十分に通用するものの,向かうフィールドの特性を理解し,プラスアルファの技(わざ)を身につければ,慣れない病院前診療でも落ち着いて力が発揮できるだろう。

 本稿では,典型的な三つの病態を提示し,ドクターカー・ドクターヘリでの現場診療に沿って,必要な緊急処置について概説する。

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麻酔科医の皆さんが手術室でエコーを用いる場面は,中心静脈カテーテル留置や神経ブロックを施行する際の超音波ガイド下穿刺や,あるいは心臓血管麻酔時の経食道心エコー検査などが頻度として多いでしょう。一方,われわれ救急医の診療においても,救急外来や病棟など場所を問わずエコーはもはやなくてはならない存在となっています。特に,ドクターヘリやドクターカーを用いた病院前救急診療では,診療スペースや使用できる医療資機材が限定されるため,近年小型化が進んでいる携帯型エコー装置が真価を発揮します。

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今や災害は人ごとではありません。医師として災害対応にかかわる方法の一つに災害派遣チームに参加することがあります。そのようなチームとして,DPAT(災害派遣精神医療チームDisaster Psychiatric Assistance Team),JMAT(日本医師会災害医療チームJapan Medical Association Team),日本赤十字社の救護班などのほか,医師や看護師を含むさまざまな災害対応のチームがあります。そのうちの一つがDMAT(災害派遣医療チームDisaster Medical Assistance Team)です。筆者(日下)は,卒後2年間の麻酔科研修を終えたのちに救急科研修をしました。救急科医師として1年半,救急医療・集中治療のほか,ドクターヘリやドクターカーによる病院前医療に携わりましたが,その中で経験した多数傷病者事案をきっかけに災害医療に興味をもったことから,DMAT隊員を志望しました。

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戦傷医療においても麻酔科医に求められることは蘇生(気道・循環管理,集中治療)を含む周術期管理と疼痛管理であり,変わるところはない。ただし,周囲の状況や医療の考え方が市中の一般医療と異なるため,その特殊性を理解することが必要である。戦傷医療と平時医療の最も異なる点は,爆発物・銃火器という成傷器の違いもさることながら,周囲の脅威の残存,医療資源の不足という特異的な環境にある。麻酔科医はこの特異的な環境に応じて治療方針が変化する点を理解し,自身のもつ蘇生・疼痛管理スキルを発揮することが求められる。

連載 研修医・初心者のための〜Dr.DのおもしろTEE講座 第13回

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みなさん,こんにちは。TEEしてますか。今回は,心内空気のお話です。開心術では,心臓を切開して病変を修復するため,心臓に空気が入ることがあります。修復後は,心臓の中に入った空気を取り除かなければなりません。人工心肺離脱時に,(心臓外科医)「麻酔科の先生,心臓の中にエアーいる? どの辺?」(麻酔科医)「左室心尖部に結構いますね〜」などとやりとりをして,空気抜きをしますよね。これをおろそかにして,心内に遺残した空気が全身に飛んでしまうと,心筋障害や中枢神経系障害など,さまざまな合併症を引き起こしてしまうので,空気抜きは侮れません。今回は,心内空気の種類やTEEでの見え方,空気が貯留しやすい部位について一緒に見直していきましょう。

連載

THE Editorials
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Anesthesiology

Editorial:

Colquhoun DA, Hallstrom BR, Kheterpal S. Tranexamic acid in high-risk arthroplasty patients:How will we adapt to evolving evidence? Anesthesiology 2021;135:12-4.

Article:

Poeran J, Chan JJ, Zubizarreta N, et al. Safety of tranexamic acid in hip and knee arthroplasty in high-risk patients. Anesthesiology 2021;135:57-68.

■日本人が開発したトラネキサム酸

心臓再手術など出血量の多い手術において,プロテアーゼ阻害薬であるアプロチニンが出血量を減少させることが示され,1980年代後半から広く使用されるようになった。しかし,2006年になるとアプロチニン使用による腎障害の発生や,心筋梗塞,脳卒中の発生率上昇,死亡率上昇などの副作用が報告され,アプロチニンは使用されなくなった。それに代わって注目されたのが,トラネキサム酸である。

 トラネキサム酸は,岡本彰祐・歌子夫妻によって開発された抗線溶薬であり,1965年に市販され始めた。トラネキサム酸は,外傷による出血例(CRASH-2研究)のほか,産科出血(「産科危機的出血への対応指針2017」),心臓手術や整形外科手術などでも広く使われるようになった。しかし,「トランサミン注5%,注10%」の添付文書にあるように,血栓を安定化する恐れがあるため,脳血栓,心筋梗塞,血栓性静脈炎など,血栓のある患者では慎重に投与することとなっている。しかし,実際にはトラネキサム酸の使用は広く行われるようになってきた。

こどものことをもっと知ろう 第30回

気管支喘息 中村 俊紀
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麻酔科医:先日の小児の手術は,喘息発作の既往がわかって延期になりました。

小児科医:そうなんですね。発作があると手術は難しいですよね。

麻酔科医:喘息の気道リスクについては知っているのですが,気管支喘息はどうやって診断するのでしょうか。小さい子だと難しそうです。

小児科医:そうなんです。小児の気管支喘息について説明しましょう。

my styleシミュレーション

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筆者は2013年頃から院内で超緊急帝王切開のシミュレーションコースを行ってきており,また2016年からは産科麻酔のシナリオシミュレーションコースを開始してきました。その経験を積み上げていく中で,筆者自身が自問自答してきた多くの問いについて,3回に分けて回答を試みます。中には,超緊急帝王切開のシミュレーションを例に回答しているものもありますが,ほかのシナリオシミュレーションでも共通するものです。

 シミュレーションプログラムの成否は,ファシリテーションとデブリーフィングが握っています。だからこそ,皆が試行錯誤している部分でもあります。そこでまずはファシリテーションについて,個人的な意見が大半ではありますが,筆者の経験をもとに回答します。

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敗血症患者は世界で年間およそ2700万人に上り,敗血症性ショックを起こすと死亡率は30%を超える重篤な疾患である。

かつて敗血症は,感染による全身性炎症反応症候群systemic inflammatory response syndrome(SIRS)と定義されていたが,動物モデルによる基礎研究の結果,敗血症ではSIRSに続いて代償性抗炎症反応症候群compensatory anti-inflammatory response syndrome(CARS)と呼ばれる免疫抑制状態も生じていること,すなわち炎症と抗炎症(免疫抑制)が混在していることが判明し,2016年にその定義を,感染症に対する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害,と変更された。

これは,敗血症はすべての免疫応答機構が広範に破綻していることを意味し,取りも直さず,この病態には炎症や免疫にかかわる多くの遺伝子応答がさまざまに関与していることを意味する。

diary

群馬県高崎市 大原 一成
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東京から新幹線で50分,高崎駅到着前に左に見えてくる白衣大観音と,日本一の生産量を誇る縁起だるまが当地のシンボルです(写真1は,観音山頂駐車場に残る観音様の足跡です)。高崎市の特徴を列挙すると,①関東平野の最北端に位置し,信越との交通の要衝である,②市街地は災害が少なく,冬はからっ風,夏は雷が風物詩(近年減少気味だが),③市民オーケストラから発展した群馬交響楽団の本拠地であり,文化活動も活発,④高崎アリーナが完成し,世界的レベルの大会が行われる(内村航平選手の鉄棒の演技には感動しました),などなど。そして名物は有名になりつつあるラスク(?),全県的には小麦粉産地代表の焼きまんじゅう,お切込み(煮込みうどん)などが挙がりますが,高崎独自といえる際立つものがありませんでした。ここで登場するのが,パスタ店が多い街・高崎の「キングオブパスタ」です。これは小麦粉食文化の継承と繁栄を目的に毎年11月に開催されるお祭りで,コロナ禍前は広場に多くの人々が集結し料理の腕を競っていました。残念ながら今年も参加各店を回り投票するスタンプラリー方式での開催ですが,高崎の名物はパスタで決定ですね。次に高崎の観光名所としては,上毛三山の一つ榛名山(湖)があり,地元の小中学生には林間学校などでなじみ深く,年間を通じて楽しめます(写真2)。これからは紅葉の季節,カーナビの目的地を榛名山(湖)に,経由地を川魚・田舎料理専門の『魚籠屋』(高崎市榛名山町360)にセットし,ここで昼食をどうぞ。テレビで何度も紹介されているようですが,魚籠屋の先の榛名神社とともに体験の価値があります。榛名山(湖)までは高崎インターチェンジから一般道30km余りの道程で,湖畔ではプチリゾート気分を味わえるおすすめコースです。結びに,筆者は麻酔科医として約20年を過ごしていましたが,先代の急逝に伴い止むなく当院を引き継ぐことになりました。外来病棟においてリハビリテーション科と連携し,治療後の患者の笑顔を目標と糧に痛みの治療を担当しています。内科では,心臓や脳血管障害後,癌などの重症患者の療養管理を行っています。当院は療養型病院であり重症患者は看取ることになりますが,延命ではなく援命を主眼に,今後も治療は積極的に継続していく所存です。そのほか水曜日午後は前任地で,木曜日は地元の基幹病院である高崎総合医療センターで麻酔科医に戻ります。高崎総合医療センターの常勤麻酔科医は,近隣医療圏の手術麻酔を一手に引き受けられているので激務続きです。筆者は少しでも助力になるように心がけていますが,若い世代とも触れ合えて麻酔科の風を感じられる貴重な機会です。できれば麻酔科業務で着地を決めたかったと思いつつ,コロナ禍収束を強く願いながら悪戦苦闘の毎日です。

時短・簡単・驚嘆レシピ 夕ご飯 何にする?

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オーブンレンジはあるけど,電子レンジ機能しか使っていないということはありませんか。オーブンはじっくり熱を加えてお肉や野菜をおいしくしてくれる便利な調理器具です。

電子レンジでさっと下ごしらえしてからオーブンを使っておいしさを引き出しましょう。今回の料理はどれもオーブンでまとめて焼くと手間いらずです。

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基本情報

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LiSA
28巻10号 (2021年10月)
電子版ISSN:1883-5511 印刷版ISSN:1340-8836 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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