兵どもが夢の跡
—かくすればかくなるものと知りながらやむにやまれぬ動物モデル 後編—敗血症モデルの終焉
溝部 俊樹
1
Toshiki MIZOBE
1
1京都府立医科大学 麻酔科学教室
pp.1026-1031
発行日 2021年10月1日
Published Date 2021/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202101
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敗血症患者は世界で年間およそ2700万人に上り,敗血症性ショックを起こすと死亡率は30%を超える重篤な疾患である。
かつて敗血症は,感染による全身性炎症反応症候群systemic inflammatory response syndrome(SIRS)と定義されていたが,動物モデルによる基礎研究の結果,敗血症ではSIRSに続いて代償性抗炎症反応症候群compensatory anti-inflammatory response syndrome(CARS)と呼ばれる免疫抑制状態も生じていること,すなわち炎症と抗炎症(免疫抑制)が混在していることが判明し,2016年にその定義を,感染症に対する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害,と変更された。
これは,敗血症はすべての免疫応答機構が広範に破綻していることを意味し,取りも直さず,この病態には炎症や免疫にかかわる多くの遺伝子応答がさまざまに関与していることを意味する。
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