徹底分析シリーズ 手術室の壁外へ:アウェイを戦う麻酔科調査兵団
ドクターカー・ドクターヘリでの緊急処置—準備すること,現場でやるべきこと
久城 正紀
1
,
太田黒 崇伸
1
,
齋藤 伸行
1
Masanori KUJO
1
,
Takanobu OTAGURO
1
,
Nobuyuki SAITO
1
1日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター
pp.1002-1007
発行日 2021年10月1日
Published Date 2021/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202096
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麻酔科医は手術室内で行う緊急処置に精通しており,このスキルは病院内では問題なく通用するだろう。重症患者が搬入される救命救急センターにおいても,(最も得意な)緊急気道確保や循環維持のための(迅速な)中心静脈路確保,鎮静・鎮痛薬を駆使して外科的処置をサポートするなど,手術室でなくとも専門性を生かして活躍することも難しくないはずだ。
麻酔科医は発生している事象(病態)への対応が得意である一方,救急患者に対する診断アプローチには慣れていない。救急医は,なぜその事象に至っているのかを推論・鑑別しながら,同時に治療も行っていくことを生業としており,若干麻酔科医とは異なる視点がある。ドクターカー・ドクターヘリでの緊急処置は,病院外で限られたモニタリングの中で行うため,常に臨機応変な対応が求められる。また,外傷患者の診療では,麻酔科医が手術室内では行うことがない直接的な止血や観血的処置も行うこともある。
普段の麻酔とはまったく異なる環境でも麻酔科医の知識とスキルは十分に通用するものの,向かうフィールドの特性を理解し,プラスアルファの技(わざ)を身につければ,慣れない病院前診療でも落ち着いて力が発揮できるだろう。
本稿では,典型的な三つの病態を提示し,ドクターカー・ドクターヘリでの現場診療に沿って,必要な緊急処置について概説する。
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