LiSA 28巻1号 (2021年1月)

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定例の手術もかなりはけて,少しまったりした雰囲気になっていた夕方の麻酔科控え室。そこに,緊急手術申し込みの連絡が入った。SARS-CoV-2肺炎による呼吸不全により人工呼吸管理を行っていたが,1日前に抜管した。本日,不穏状態になり,ベッド柵を乗り越え,落下し上腕骨を骨折した。開放創があるため緊急手術をしたいという内容であった。2日前のPCR検査ではいまだ陽性が持続しているとのことである。

 日本麻酔科学会の指針では,区域麻酔で施行できる症例は極力,全身麻酔を避けるとあるが,最近,腕神経叢ブロックのみで外科手術を施行した経験もないし,斜角筋間アプローチによる横隔神経麻痺は困る。当院には陰圧手術室が存在しないし,個人防護具(PPE)の着脱を完璧にこなせる自信もない。どうしよう? あれこれ考えるが答えが出ない。

 手術部位や施設,手術室の環境により,麻酔管理のアプローチは複数あると思われるが,おのおのが置かれた状況下で最善の麻酔管理方法について誌上で議論してみたい。

予告編
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次号の症例カンファレンスの提示症例を,一足先に紹介する。自施設にこのような症例が来たら,どのような麻酔計画を立てるか,事前に考えておいてほしい。次回,各施設のPLANをお楽しみに!

徹底分析シリーズ 末梢ルートトラブル—点滴漏れと薬剤性静脈炎

巻頭言 一柳 彰吾
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今回は,血管外漏出などの末梢ルートトラブルをテーマにした。麻酔科医であれば,誰しも一度や二度は血管外漏出に遭遇したことがあるだろう。しかし,血管外漏出の発生原因や対応について“慣熟”している人は多くない。血管外漏出について調べようと思っても,抗がん剤に関連する文献や参考書は多いが,われわれ麻酔科医が知りたい周術期血管外漏出について詳しく記されたものはほとんど見当たらない。

 そこで,注意すべき薬剤,予防方法,早期発見,初期対応と治療などを項目立てて,各分野のエキスパートにわかりやすく解説していただいた。また,周術期というわけではないが,これまでの知見が最も集まっている化学療法室での対策についても皮膚科医の立場から執筆いただいた。

 点滴漏れやそれによる静脈炎などの末梢ルートトラブルを過去に経験したことのある方はもちろん,まだトラブルに遭遇したことのない方も,今回の徹底分析シリーズでその備えをしていただきたい。「明日はわが身」である。

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あらゆる医療行為には合併症の危険が伴う。われわれ麻酔科医が日々使用している末梢静脈路も例外ではない。しかし,末梢ルートトラブルにより起こり得る合併症について事前に学び,自らの診療を見つめ直すことで,患者にとっての不利益を減らすことができるかもしれない。

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何とか静脈路を確保したものの,ルートに接続する際に逆流が乏しく点滴の落ちがいまひとつよくない。取りあえず導入はしようか。しかし,点滴漏れが起こったらどうなるんだ? 皮膚障害とか,静脈炎とか…。

 こんな不安が頭をよぎったときに,ここでのお話を思い出すとよろしいかと思います。現在頻用される麻酔薬(フェンタニル,レミフェンタニル,プロポフォール,ロクロニウム,チオペンタール,ジアゼパム,ミダゾラム)を中心にお話します。特に注意すべきは,チオペンタール,ジアゼパムですが,これらを使う麻酔科医はそれほど多くないかもしれません。ほかの薬物は,重篤な合併症は比較的まれといえるかもしれません。が,詳しくみていくと,プロポフォール,ロクロニウム,新しく導入されたレミマゾラムにも特殊な注意点があります。

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末梢静脈路からの循環作動薬投与と血管外漏出について,一般的には以下のように考えられているのではないだろうか?

①エフェドリンやフェニレフリン(単回または持続投与)は基本的に末梢静脈路から投与し,おそらく少量の漏れは問題ない

②ドパミンやドブタミンはプレフィルドシリンジと同程度の希釈であれば末梢から投与しても問題ない

③ノルアドレナリン(単回投与,持続投与)は血管外に漏れたら組織障害が起こりそうなので末梢静脈路からの投与は避けたいが,必要時にはある程度希釈したうえで,信頼できる末梢静脈路からの投与であれば問題ない

④アドレナリンが必要な場合は蘇生時やそれに近い状況であり,末梢静脈路からの投与はやむを得ない

 筆者らも以上のように考えていたが,改めて“点滴が漏れた”という観点から末梢静脈路からの循環作動薬投与について考えてみる。

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「すべての結果には原因がある」は有名な格言である。点滴漏れにも原因があり,それを起こさないために多くの工夫がなされている。しかし,依然として,少なからず点滴漏れに遭遇していると感じているのは筆者だけであろうか。これには,点滴漏れの原因が多岐にわたっていることが大きな要因と考えている。

 本稿では,点滴漏れの原因を整理し,原因に沿った予防策を紹介していく。

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末梢静脈ルートは周術期管理に必須であり,挿入手技に精通するのは麻酔科医としては当然である。通常は視認や触知で静脈を確認して穿刺するが,時に難渋して複数回の穿刺が必要となったり,超音波装置などのデバイスを使用せざるを得ないこともある。挿入時に明らかに失敗すれば,出血のために穿刺部位が腫脹し,誰の目にもわかりやすい。しかし,カテーテルを挿入できても,術中や術後の経過中に血管外に逸脱する場合もある。カテーテルが血管外に逸脱していれば,必要な薬物が投与されないという不都合だけではなく,刺入部付近の潰瘍,壊死などが起こる可能性もある1)。麻酔科医はこの末梢静脈カテーテルの開通性を意識し,常に疑いの目をもってかからなければならない。

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「同僚の人格は信頼しても,同僚の行為は信用するな」

山梨県立中央病院(以下,当院)(の一部)で囁かれている格言の一つである。自分の眼前で挿入されていないルートはその代表である。

 本稿では“あるある体験談”として,病棟や救急(ER)で確保されたルートを確認せずに使用してトラブルになった事例をいくつか紹介する。古いエピソードも含まれるために記憶が定かでない部分があることを先にお断りしておく。

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小児において血管外漏出はしばしば発生する。全身麻酔中は訴えができないことから重篤化しやすいうえに,小児では輸液を自然滴下ではなく輸液ポンプやシリンジポンプを用いて投与することが多いこと,体格が小さく刺入部の観察が難しいことなど,成人と比べて血管外漏出に「気づきにくい」環境が存在する。

 本稿では,兵庫県立こども病院(以下,当院)での体験をもとに,小児における血管外漏出について文献的考察と当院での取り組みについて述べる。

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治療中の点滴漏れ(すなわち血管外漏出)で生じた皮膚障害は,患者にとっては新たな問題となる。すみやかに適切な初期対応を行うのはもちろんのこと,患者の訴えをしっかり傾聴し,誠意をもって対応する必要がある。治療,処置,付随する症状,予後についても十分な説明をすることで,少しでも患者の負担を減らせるよう心がけたい。

 本稿では,血管外漏出が起きたときの初期対応と,また知っておいてほしい皮膚障害の治療や経過について述べる。

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注射薬の血管外漏出はさまざまな要因で生じ,皮膚障害を起こす頻度は0.5〜6%とされる。薬剤によっては,潰瘍・壊死を生じるなど重症化することもある。血管外漏出は熟練した医療従事者が静脈路確保を行っても(コメント1)一定確率で生じる合併症であり,抗がん剤投与前のインフォームドコンセントでは,主要な副作用とともに事前に説明しておくことが必要である。

 漏出時の皮膚障害リスクは薬剤により異なるため,リスクの高い薬剤の投与のための血管確保は,より慎重な対応が必要である。また,漏出時の対応も薬剤により異なる。

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はじめに

大学院生のとき,薬理学教室でNa,K-ATPase*1に対するプロポフォールの作用を研究したのがきっかけで,大学院修了後も麻酔薬の作用機構の研究を続けている。薬理学教室では,全身麻酔薬の作用の場は生体膜であり,脂質への作用の結果,各種タンパク質の機能が変化するという仮説のもとに,Na,K-ATPaseに対する全身麻酔薬の作用を研究していた。本稿では,Na,K-ATPase以外にも幅を広げ,臨床の傍ら細く長く続けてきた研究の内容を紹介する。

温故知鍼灸〜目に見えない世界を覗く〜

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さて前回は火を消す方法として「実則瀉其子」(実すればすなわちその子を瀉す)という法則をお伝えしました。

 今回は,異なる方法を使って同じように燃え上がる火を消してみたいと思います。

連載 研修医・初心者のための〜Dr.DのおもしろTEE講座 第4回

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みなさん,こんにちは。TEEしてますか。今回は,超音波の原理についてのお話です。

 JB-POT認定試験のアウトライン(出題範囲)の20項目1)のうち,超音波の原理にかかわる項目は,1.超音波の原理,2.探触子,3.装置,感染対策,安全管理,4.画像,5.ドプラ法の原理,6.定量評価(Mモード,断層法),7.定量評価(ドプラ法),8.ドプラ弁通過血流波形,17.画像アーチファクトとピットフォールと,なんと9項目を占めています。原理に関する項目は,アウトラインに占める割合が高く,うわべの知識で試験に臨むのは危険です。また,実臨床でも超音波の原理を知っていれば,画質を改善することができるし,正しく計測することができる,アーチファクトを鑑別したり,軽減させることもできます。

連載

THE Editorials
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British Journal of Anaesthesia

Correspondence:

Mizobe T. The halothane hepatitis that was not. Br J Anaesth 2020;124:e2-3. doi:10.1016/j.bja.2019.09.018.

■ハロタン肝炎とは?

ハロゲン化麻酔薬による臓器障害というと,メトキシフルランやセボフルラン,エンフルランの代謝で産生される無機フッ素による腎障害,セボフルランとソーダライムの反応でできるコンパウンドAによる腎障害,そしてハロタンによるハロタン肝炎が頭に浮かぶのではないだろうか。セボフルランの腎障害作用は現在,臨床的には問題にならないとされている。さらに,腎障害を引き起こすのは血漿フッ素濃度の高さではなく,腎内で産生されるフッ素イオンではないかと考えられている。

 ハロタンは1955年に臨床的に使用されるようになった。その後,ハロタン投与後に,肝壊死を起こし死亡に至るハロタン肝炎の症例が報告された。それを受けて大規模な多施設臨床研究であるNational Halothane Studyが米国で実施された。1959〜1962年に全身麻酔が実施された85万6千例を対象に,麻酔後6週間以内に発症した致死的肝壊死について調査した。致死的な原因不明の肝壊死が起きたのは82例であった。同研究の主要評価項目である各麻酔薬間の比較では,ハロタンによる麻酔とエーテルやシクロプロパン,亜酸化窒素による麻酔との間で肝壊死の発生率には差がなかった。肝壊死は,心臓手術や開頭手術,開腹手術での発生率が高いことや,ハロタンを2か月以内に複数回投与された場合に発生率が高いことが示された。

 ハロタン肝炎については,その後も多くの研究が行われたが,その発生率は成人では5千〜3万5千例に1例,小児では8万〜20万例に1例と報告されている。その機序として,ハロタン代謝産物であるtrifluoroacetyl chlorideと肝臓のタンパク質との過敏反応や,抗体産生による免疫反応などが示唆されている。しかし,ハロタン肝炎の機序が免疫反応によるというエビデンスは存在しない。劇症型肝壊死はハロタンだけでなく,イソフルラン,エンフルラン,デスフルランでも,頻度は低いものの発生することが報告されている。

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●Summary

非がん性慢性疼痛に対する医療用オピオイドの積極的な処方から始まったオピオイドクライシスopioid crisisは,数千にも及ぶ訴訟が起こされ,多くは原告の訴えが認められた(前編)。Purdue Pharma社(以下,パデュー社)を中心とした製薬会社を相手にした裁判の過程や報道機関の調査で,パデュー社と他の製薬会社がそのターゲットを患者のみならず,政治家,行政,司法,医師,病院,報道機関,学会などに執拗に広げ,潤沢な資金を惜しげもなく投入して懐柔し,自らの繁栄と保身に執着した実態が明らかになった。

こどものことをもっと知ろう 第21回

不登校 山口 有紗
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母:そういえば最近,麻子ちゃんと遊んでないね。

娘:あ,麻子ちゃんこのごろ学校来てないの。先生が,しばらくお休みしますって言ってたよ。

母:え,そうなの! 元気で勉強もよくできてたのに,どうしたのかな。

娘:さあー。お母さん,こういうの“不登校”って言うんでしょ? どうしたらよくなるの?

バランスト・スコアカー道 マネジメントをめぐる冒険【最終回】

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前回までのあらすじ

病院のマネジメントに,バランスト・スコアカード(BSC)は有効なのか,その答えを求めて国内外の病院を巡り歩いた「バランスト・スコアカー道」。これまでの道程での学びを,今後どう生かせばよいだろうか。

時短・簡単・驚嘆レシピ 夕ご飯 何にする?

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お正月の料理といえば,おせちが頭に浮かびます。

日本人の食の原点とも言われるおせちは,古くて新しい多様性のある自由な家庭料理です。

女医ジョイクッキングでは,各家庭の,各地方の味を持ち寄って楽しんでいました(今はコロナ禍で,休会ですが…)。

そこで出会ったレシピをいくつかご紹介します。

diary

岩手県盛岡市 西嶋 茂樹
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盛岡市は旧南部藩時代から発展した岩手県の県庁所在地で,人口29万人,市内を北上川が流れ,南部富士とも呼ばれる巖手山が眺望できます(写真1)。降雪量は北東北地方の都市としてはそれほど多くはありませんが,冬はよく冷えて本州の県庁所在地で一番寒いらしいです。また岩手県は津波など自然災害が多い印象がありますが内陸に位置する盛岡市は,比較的自然災害を受けにくいとされています。

 盛岡というと食べ物は,じゃじゃ麺,冷麺,お土産は,南部鉄器が有名です。じゃじゃ麺,冷麺はどちらも個性的な味で,ある人は「最初に食したときは地獄,二回目は天国,その後はやみつき」と言っています。もちろん最初から口に合う人も多いのでぜひ試してください。個人的にはじゃじゃ麺は『白龍』〔盛岡市内丸5-15,TEL. 019-624-2247(本店)〕,冷麺は『ぴょんぴょん舎』〔盛岡市稲荷町12-5,TEL. 019-646-0541(本店)〕です。南部鉄器は,昔ながらの黒を基調とした落ち着いた雰囲気を味わえる鉄瓶が代表的ですが,最近はモダンなデザインと色調を兼ね備えた華やかなものもあります。筆者は三連の風鈴の心地よい音色がお気に入りで,お世話になった方々に贈ったりしました。お勧めは『鈴木盛久工房』『岩鋳』で,これらはホームページなどからお取り寄せも可能です。

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基本情報

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LiSA
28巻1号 (2021年1月)
電子版ISSN:1883-5511 印刷版ISSN:1340-8836 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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