LiSA 19巻7号 (2012年7月)

徹底分析シリーズ これからの末梢神経ブロック

巻頭言 柴田 康之
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自分の手技をその場で客観的に評価できる超音波ガイド下末梢神経ブロックは,あらゆる世代の麻酔科医を魅了した。「定年までの数年間,麻酔が楽しくなったよ」とプローブを握るベテラン麻酔科医,DSやプレイステーションと同じ感覚で,手元を見ることなく,巧みにプローブと針を操作する若手麻酔科医。この新時代を画する鎮痛手段は,今や導入期から普及期に移行し,われわれを取り巻く環境も,大きく変化している。導入期には興味のある者だけが行っていればよかった手技が,普及期に入り,麻酔科医ならば身につけるべき技術の一つになり,その教育方法が問題となっている。

 手技的な面が注目されがちであるが,基本となる知識が求められるのは言うまでもない。神経内注入は,長らく,神経障害を引き起こすとされてきたが,意図的な神経内注入の安全性が報告され,再考が迫られている。術後神経障害が発生したときには,その原因を同定するために,神経診断学の知識も身につけておかなければならない。製薬会社も新しい長時間作用型局所麻酔薬を市場に投入しており,従来の長時間作用型局所麻酔薬との使い分けも重要になっている。医療機器メーカーも,新しいデバイスを次々と導入してきており,日々,手技の簡便性が向上しているが,それらの特徴を理解しておかなければ,宝の持ち腐れである。

 本徹底分析では,このような普及期にある超音波ガイド下末梢神経ブロックの環境のなかで押さえるべきテーマを取り上げた。これから超音波ガイド下末梢神経ブロックに取り組みたい麻酔科医の一助になれば幸いである。

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末梢神経ブロック後の神経障害はまれであるが,永久的な後遺症を残すこともある。末梢神経ブロック後の神経障害の頻度1)は,腕神経叢ブロック鎖骨上アプローチで0.03%,大腿神経ブロックで0.3%,腕神経叢ブロック斜角筋間アプローチで3%であるが,これらの大部分は一過性で,数週から数か月で回復する。末梢神経ブロック後の神経障害の原因は,はっきりしないことが多く,局所麻酔薬の神経内への注入(神経内注入)も要因として考えなければならない。

 末梢神経ブロックの技術は,過去20年で放散痛法から神経刺激法に,さらには超音波ガイド下法へと飛躍的に発展した。超音波画像は,神経と針先の位置関係や局所麻酔薬の広がりをリアルタイムに,かつ正確に教えてくれるようになったが,放散痛や神経刺激は間接的指標であり,以前は針と神経の位置関係を正確に知ることはできなかった。神経刺激法では,電流閾値0.2mA以下で筋収縮がなく,0.2~0.5mAで筋収縮があれば,神経内注入にはならずに安全とされてきた。ところが近年,この安全とされる範囲内であっても神経刺激法では,神経内注入が当たり前のように起きていたことが明らかになった2~6)。そして,偶発的神経内注入が臨床的に神経障害を残さなかった4~7)という報告や,ブロックの作用発現が速く,成功率が高いといった意図的な神経内注入の利点が報告4,5)されるようになった。

 このように,神経内注入の危険性への認識が薄れようとしている今だからこそ,意図的な神経内注入の是非について再考する必要がある。本稿では,神経の組織学的構造をもとに,局所麻酔薬の神経内注入を分類し,その臨床的な意義を解説する。

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ロピバカイン(アナペイン)やレボブピバカイン(ポプスカイン)の伝達麻酔への保険適応が認められ,末梢神経ブロックに使用されるケースが増えている。本稿では,この2種類の局所麻酔薬に焦点を当て,実際の臨床使用における特徴を考える。

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近年,普及が著しい超音波ガイド下神経ブロック(USPNB)だが,ブロックに伴って起こり得る合併症について,患者にきちんと説明しているだろうか。説明しているなら,どのようなことを説明しているだろうか。出血,局所麻酔薬中毒,気胸,感染,神経障害…。

 説明する以上,患者は何かしらの合併症が起こったら,当然ちゃんと必要な対応がされることを期待している。では,神経ブロック後に神経障害が起こったとしたら,どのように対応するのか。また,患者への説明はどのようにするべきだろうか。さらに言えば,神経障害はどうすれば予防できるのだろうか。

 本稿は,人工膝関節置換術を受ける患者に,術後鎮痛目的で坐骨神経ブロック膝窩アプローチを実施した後に,総腓骨神経の麻痺症状が出現した場合を想定し,神経障害の原因の鑑別診断,必要な検査,治療や患者対応について考察する。

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ただのブームで終わることなく,今や新しい一つの分野として確立した超音波ガイド下末梢神経ブロック。その強みは,やはり神経やブロック針が見えることである。しかし,依然として熟練者と初心者の技術の隔たりは小さくない。これを縮めるべく,新しい機器が開発されている。

 本稿では,成功率向上や施行時間短縮に有効と思われる四つの機器を紹介する。

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米国では,末梢神経ブロックによる麻酔管理および術後疼痛管理が積極的に行われている。日本では全身麻酔の適応となりそうな手術でも,米国では末梢神経ブロックを主とした麻酔管理が行われる場合がある。筆者は,2011年10月末から2か月間,神経ブロック分野における世界的権威であるDr. Admir Hadzicのもとで研修を受ける機会を得た。この体験をもとに,St. Luke's Roosevelt Hospital(SLR)における末梢神経ブロック教育の現状を紹介する。

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超音波ガイド下末梢神経ブロックは,超音波で得られた画像をリアルタイムに観察しながら穿刺し,注入した局所麻酔薬の広がりを確認できるため,ブロック成功率の上昇と合併症の減少が期待できる。ただし,そのメリットは超音波画像上にブロック針と対象となる構造物を正確に描出できることが前提で,そのスキルをいかに習得するかが課題となる。

 本稿では,筆者が参加した名古屋大学超音波ガイド神経ブロック教育プログラム(以下,名大教育プログラム)を紹介する。

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旭川医科大学麻酔科では,約6年前から“超音波ガイド下末梢神経ブロックチーム〔Asahikawa Medical University Regional Anesthesia Team(ART)〕”を発足させ,積極的に末梢神経ブロックを行っている。今に至るまでには紆余曲折があったが,NYSORA Symposium参加や名古屋大学の教育プログラム受講の甲斐もあって,現在では優れた鎮痛効果と外科医からの認知を得られている。

 本稿では,当院で末梢神経ブロックを行う際に中心的役割を果たしている,ARTの活動を紹介する。

症例検討 超音波ガイド下末梢神経ブロック(初級編)

巻頭言 森本 康裕
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超音波ガイド下末梢神経ブロックは,ここ数年で注目を集め,多くの施設で行われるようになった。ハンズオンセミナーが開催され,日本語の教科書が揃ったことが,その普及を助けている。しかし,セミナーを受講し,教科書で勉強しても,実際の臨床で使いこなすにはどうしてもギャップが存在する。また,進歩の著しい分野だけに,教科書に記載されている方法はすでに時代遅れということもあり得る。

 本症例検討は,臨床で超音波ガイド下末梢神経ブロックを実践していくうえでの最新のノウハウを提供することを目標にした。今月は初級編として,初心者でも比較的に容易に実践できるブロックについて取り上げた。

 長年のブロック経験にもとづくコツや注意点を紹介した後に,上肢のブロックとして腕神経叢ブロックの鎖骨上・腋窩アプローチ,下肢のブロックとして大腿神経ブロック,さらに体幹のブロックとして腹横筋膜面(TAP)ブロックを取り上げている。特に上肢のブロックでは,同じ症例を用いて鎖骨上と腋窩からのアプローチについて比較した。それぞれの長所・短所について理解を深めていただきたい。

 本症例検討のもう一つの特徴は,世界最大のソーシャルネットワークであるFacebook(FB)上での議論がもとになった点である。取り上げた論点は,FB内の「超音波ガイド下末梢神経ブロックの小部屋」で議論されたものである。FBでは,グループ機能を使ってメンバーのみアクセスできるコミュニティーを作ることができる。各執筆者には必要に応じてこのメンバーに意見を求めたり,アンケートを行ったりすることで,できるかぎり最新かつ一般的な知見をまとめてもらった。その意味で,本症例検討はグループのメンバーの共同作業である。連日,白熱した議論が繰り広げられているので,参加に興味のある先生は,FBに登録後,筆者に友達申請をして入会の意思を伝えていただきたい。

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末梢神経ブロック(伝達麻酔)は,麻酔と名がついているにもかかわらず,多くの麻酔科医にとって「センスがないとできない」「患者が放散痛を訴えるのが…」「あまり効かない」「オタクな医師の特別な手技」など,あまり親しみのある麻酔法ではなかったようである。事実,筆者の周りでも,麻酔科医が末梢神経ブロックを実施しているのはペインクリニック外来が主で,手術室では閉鎖神経ブロックのみ,むしろ整形外科医が手の外科で実施している姿を見るばかりであった。

 ところが2005年以降,超音波装置により,神経,血管,穿刺針,局所麻酔薬を確認したうえで実施する超音波ガイド下末梢神経ブロックultrasonically-guided peripheral nerve block(USPNB)が登場し,それまでの麻酔科医の伝達麻酔嫌いは何だったのかと思うほどの注目を集めた。「安全・安心・確実」のキーワードとともに,この手技は飛躍的に普及し,麻酔科医の手技として市民権を得たように思われる。

 現在では,手術麻酔のための伝達麻酔としてのみならず,術後鎮痛にも従来の硬膜外鎮痛法の代替手段として広く用いられている。

 国内外で,ほぼ同時に普及したUSPNBだが,超音波装置を用いるだけでは必ずしも「安全・安心・確実」とは言えず,より安全なUSPNBを普及させるために,欧米ではすでに技術習得のためのガイドライン1)が発表されている。日本でも2011年から日本超音波区域麻酔研究会のメンバーが中心となって,USPNBのminimum requirementを作成中である。

 本稿では,USPNBを習得・実践するうえでのコツとピットフォールについて解説する。

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症例

76歳の女性。身長158cm,体重52kg。靴を履こうとして自宅の玄関で転倒し,右橈骨遠位端骨折と診断され,観血的整復術が予定された。2年前に脳梗塞を患った後遺症で,認知症と右半身の不全麻痺があり,アスピリンを内服している。また,50年来の喫煙歴があり,1秒率65%と閉塞性呼吸障害を認め,胸部X線検査で気腫性変化を認めた。そのほかの血液検査所見,心電図などに異常所見は認めなかった。麻酔は全身麻酔に末梢神経ブロックを併用する予定である。

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症例

76歳の女性。身長158cm,体重52kg。靴を履こうとして自宅の玄関で転倒し,右橈骨遠位端骨折と診断され,観血的整復術が予定された。2年前に脳梗塞を患った後遺症で,認知症と右半身の不全麻痺があり,アスピリンを内服している。また,50年来の喫煙歴があり,1秒率65%と閉塞性呼吸障害を認め,胸部X線で気腫性変化を認めた。そのほかの血液検査所見,心電図などに異常所見は認めなかった。麻酔は全身麻酔に末梢神経ブロックを併用する予定である。

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症例

62歳の男性。身長160cm,体重50kg。幽門前庭小彎に発見された胃腫瘍に対して腹腔鏡下幽門側胃切除術が予定された。脳梗塞の既往があるが,現在は内服なし。術後に,フォンダパリヌクスの使用予定があるので,硬膜外麻酔ではなく,腹横筋膜面transversus abdominis plane(TAP)ブロックを選択した。

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症例

7歳の男児。身長142cm,体重25kg。発熱と下腹部痛を訴え,小児科外来を受診した。急性虫垂炎の診断で,小開腹による虫垂切除術が予定された。

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症例

87歳の男性。身長161cm,体重48kg。介護施設にて転倒。右大腿骨転子部骨折の診断でガンマネイル手術が予定された。合併症として,慢性閉塞性肺疾患に対し,在宅酸素療法中。高血圧に対してバルサルタン20mgを内服しているが,コントロール不良で収縮期血圧が160~180mmHgであった。また,入院時,心エコー図検査にて中等度の大動脈弁狭窄症(弁口面積0.8cm2)を認めた。胸部症状は認められない。

連載

Editorial拝見
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Anesthesiology

Editorial:

Larson MD, Sessler DI. Pupillometry to guide postoperative analgesia. Anesthesiology 2012;116:980-2.

Article:

Aissou M, Snauwaert A, Dupuis C, et al. Objective assessment of the immediate postoperative analgesia using pupillary reflex measurement: a prospective and observational study. Anesthesiology 2012;116:1006-12.

患者の目の状態は,麻酔科医にとって重要な情報である。エーテル麻酔時代のGuedelの麻酔深度の分類,麻薬投与による縮瞳,星状神経節ブロック後のHorner症候群など,眼球や瞳孔に関する情報を麻酔科医は長年使用してきた。今回,術後の痛みやモルヒネによる鎮痛効果の判定に用いられたのは,痛みに対する瞳孔反射pupillary dilatation reflex(PDR)である。この,侵害刺激により瞳孔が拡張するという交感神経反射は,Budgeにより1852年に発表されている。今回Aissouらは,外科手術患者100名において,術後痛の程度と,それに対するモルヒネ静注による鎮痛を行った場合に,PDRが鎮痛のよい指標となることを報告した。

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気道確保手技の訓練に,優れたシミュレータは不可欠である。これまでにも,さまざまなシミュレータがあったが,京都科学が新しいDAMシミュレータ〔以下,本モデル(図1)〕を開発中との噂を聞きつけた。その新製品を借りる機会に恵まれたので,使用感を報告する。

 もちろん,すべて筆者の個人的見解であり,最終的な価値判断は,読者が各自で行っていただきたい。

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「内頸静脈穿刺のランドマーク法はいろいろある」と聞いてびっくりしない人は少ないと思います。しかし実は,内頸静脈穿刺のランドマーク法のセントラルアプローチにも,それこそたくさんの手技が報告されています。

「そんなことはない。どの教科書にも頸部の三角形の頂点から同側乳頭方向に刺すと書いてあるじゃないですか!」

その通りです。そこで,この方法がなぜ一般的になったのかをご紹介します。

連載 LiSA Aesthetic Salon

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連載 臨床留学に憧れて:第2回

My dream career in the USA

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本連載は,日本生まれ,日本育ちの平凡な日本人である私が,アイオワ大学医学部麻酔科のClinical Assistant Professor というアカデミックポジションを得るまでの紆余曲折を紹介するものです。

 前回は,故・森田茂穂教授が率いていた帝京大学医学部附属市原病院麻酔科での2年間の麻酔科研修の後,オーストラリアでの1年間の臨床留学を終了するまでをお伝えしました。今回は,オーストラリアから帰国した後,いよいよ米国での臨床留学を開始するに至るまでの経緯についてです。

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連載 妊娠・出産talk CAFE:第2回

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今回は,妊娠に伴って身体に起こる変化を麻酔科医の視点から書いてみます。

これを読んでもらえば,妊娠未経験者も妊婦をスマートにサポートできるのではないかとちょっぴり期待します。

連載 知識をいかに体系化するか

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私の世代同士で話をすると,「最近の若者は,何か必要なときに,自分で工夫しようとしないで,既製品を探そうとする」と苦情の言い合いになります。苦情というか,嘆きの表現です。たしかにその通りなのですが,ほかのいろいろな「今の若い者は」が,実は単純に「昔も今も年寄りから見ての若者は同じ」なのに対して,上記の言葉には事実にもとづいたやや深い意味があって,面白い文明批評になっていると感じます。

連載 ヒューストン留学記(その後):71

短い帯と長いたすき 石黒 達昌
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from LISA
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■撮ってきた写真を見ていたとき,立原道造の“廃墟の美”を思い出しました。古の建物は朽ちて美しさを増す,とあったような…。角川版の全集を引っ張り出してきて『方法論』をめくりました。建築は廃墟になることを想定していなければならない。以前それを読んで,現代建築と呼ばれるものが,後世にその姿を廃墟としてどれだけ美しくとどめることができるのだろうか,と考えたものです。

 海に向かって「ばかやろ~」と叫ぶつもりはないのですが,三陸地方の津波の被害をこの目で見ておかなければと,東北自動車道を北へ。まず松島へ行き,そこから南三陸町の海岸縁を経て,気仙沼,陸前高田と走り抜けました。物見遊山と言われればそれまでですが,YouTubeの「陸前高田市長より全国の皆様へメッセージ」を見て,そう,自分の目で見なければ,と思い立ったのです。

 松島の福浦島に渡り,その松島湾の景色を眺め,戻る際に,島に渡る橋のたもとにある通行チケットを販売するレストハウスの係員に,津波の話を聞いたところ,ここまで水が来たのですよ,と壁の赤いテープを指し示してくれました。ちょうど私の腰より少し下。松島湾の島々が津波の力を弱めたとのことでしたが,ここは津波の力を侮りました。

 確かにその景色には驚きました。写真で見るのと実際で見るのとは大違い。その日は曇り。ともかく,海岸を走ろうと,松島を後に少し進むと,やけに広い浜に出ました。海岸寄りには松の並木,反対側には人家がまばらに点在し,やけに見晴らしがよい海岸線,それだけを見ればちょっとした海水浴場の風景。最初は気づかず,これまでの海水浴場のイメージをそこに当てはめていたのです。その景色が,連れ合いの「ここは街があったところよ」の声で一変しました。よく見ると家の土台がある。流された跡。津波の傷跡を残す人家もあります。さらに,南三陸町のリアス式海岸へ。入り江の奥に広がる浜,さらに奥のスペース,そこにも街があったはず。で,ちょっとした高台には以前のままの立派な家。でも,すぐ下は流されている。道路と平行した山側には,そこを通っていた気仙沼線の跡が,ぶつりぶつりと残されています。駅の跡。

 陸前高田に入ると,その何もなさが広範囲に広がり,見渡すと,所々に,鉄筋コンクリートの建物が,どうすればこのような形になるのだろうというような,じつに無残な姿をとどめておりました。これは紛れもなく廃墟。しかし,自然のうちに歴史的時間のなかで還元されず,突然に取り残され,そこには美しさはありません。

 瓦礫は整然と整理され,大型のトラックが砂埃をあげ走り回ります。ここに至るまでも,ヘルメットをかぶった男たちがせわしなく働いていました。1年数か月が過ぎたとはいえ,それにも驚きます。震災直後のがんばりは,昨年の5月号のブックレビュー『災害ユートピア』や今年の3月号の特集にあります。医師をはじめとするさまざまな人々の精力的活動には頭が下がります。でも,ボディーブローのように,じわじわ痛みが伝わってくるのはこれから,今からが本当の勝負なのだろうなと…。「東北は負けない」,「頑張れ!東北」。普段なら気にもとめないスローガン,今は心よりそう思います。

基本情報

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LiSA
19巻7号 (2012年7月)
電子版ISSN:1883-5511 印刷版ISSN:1340-8836 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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