看護管理 22巻13号 (2012年12月)

特集 助産師出向システム 地域・施設間偏在の是正とキャリア形成

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 日本の看護師,特に助産師においては就業場所の偏在が問題となっている。日本看護協会では2012年8月,出向システムのニーズを調べる全数調査を行なった。地域連携,病院間連携が重要となるなか,助産師だけではなく,看護師も一定期間は,地域で働くような仕組みが必要になってくるのではないだろうか。助産において取り組みが始まっている出向システムの実態を示し,今後への可能性を考える機会としたい。

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限られた人的資源を有効活用するために

 社会保障・税一体改革大綱医療・介護等1)では,地域の実情に応じた医療・介護サービスの提供体制の効率化・重点化と機能強化について,「高齢化が一段と進む2025年に,どこに住んでいても,その人にとって適切な医療・介護サービスが受けられる社会を実現する」「予防接種・検診等の疾病予防や介護予防を進め,病気になった場合にしっかり『治す医療』と,その人らしく尊厳をもって生きられるよう『支える医療・介護』の双方を実現する」と,明示されており,医療サービス提供体制の制度改革の今後の見直しの方向性として,①病院・病床機能の分化・強化,②在宅医療の推進,③医師確保対策,④チーム医療の推進を,挙げている。

 そのうち,人的資源管理の面から熟考が要される,①に着目すると,「病院・病床機能の分化・強化」では,「急性期病床の位置づけを明確化し,医療資源の集中投入による機能強化を図るなど,病院・病床の機能分化・強化を推進する」「病診連携,医療・介護連携等により必要なサービスを確保しつつ,一般病棟における長期入院の適正化を推進する」とされている。

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 日本看護協会では,就業先の偏在を是正し地域貢献を図るとともに,助産実践能力の強化にもつながりうるシステムとして,助産師出向システムを提案している。助産師の量と質をめぐる課題は,助産師以外の看護師においても大いに共通することである。本稿で紹介する,マンパワーの充実と専門性の発揮を図る助産師出向システムについて,多くの管理者が取り組みへの興味をもつことを期待する。

大学病院からの提案ではじまった市立病院への出向

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 旭川医科大学病院は,地域貢献とスタッフのキャリアアップを図るため,市立稚内病院に助産師の出向を提案した。正常分娩件数が少ない施設の助産師が,モチベーションを維持し実践能力を向上させるためには,正常分娩の多い施設での経験が必要である。出向にあたって管理者として考えるべき項目を提示する。

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 大学病院で助産師を続け,学生や後輩の育成に携わるためには,自らの助産診断や助産技術などの,実践能力を向上させなければならない。助産師として進む方向性に悩んでいることを,面談のときに看護師長に相談すると,市立稚内病院への出向を勧められた。助産診断や分娩介助技術を学ぶだけではなく,人間的に成長する機会となった出向の実際を紹介するとともに,継続に向けた課題を指摘する。

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 出向システムによる助産師の受け入れは,心強い即戦力となっただけでなく,学習会などを慣習として行なっていたことの改善のきっかけともなり,新しい風を受けて,現場のスタッフの気づきや意識改革にもつながりました。本稿では,待遇やどのような業務を担ってもらっているのかなど,受け入れ体制の実際を紹介します。

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 母子医療における連携として,助産師が不足している施設へ助産師を出向させることがわずかずつながら進められてきている。本稿では,その逆バージョンとなるハイリスク母子医療をもつ病院が,産科医療が中断された病院から,研修として助産師の出向を受けるという連携を紹介する。

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 助産師の就業場所の偏在化や施設内における助産師の潜在化などの問題から,安全・安心な出産環境の確保が困難な状況にあるといえる。このような状況の打開策として助産師の出向システムがある。

 杏林大学医学部付属病院(以下,当院)では,2004(平成16)年度より近隣の施設との間に助産師出向制度を導入している。当院が取り組んできた出向の実際や,評価について紹介する。

研修として定期的に行なわれている出向

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 自治医科大学附属病院では,へき地など地域病院に看護職の出向(以下,派遣)を行なっている。「質の高い看護実践を通して地域医療に貢献する」という大学の理念に沿ったこの活動は,派遣当初は,派遣先のスタッフの欠員の補強が目的であったが,現在は研修という位置づけになっている。派遣の意義とともに,派遣者を制度的・精神的にサポートするための取り組みを紹介する。

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 西吾妻福祉病院は,開設当初から助産師確保が難しく,自治医科大学附属病院との間で協定を結び,助産師出向システムを導入し運用してきた。混合病棟であるため,他科の看護業務も担当するなど課題も残るが,大学病院ではあまり経験できない,正常分娩介助を行なえ,助産師としてのアセスメント能力向上が図れるなど,双方にとってメリットがある。人材確保と地域の産科医療に貢献する取り組みの実際を紹介する。

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去る10月2~3日,国立京都国際会館(京都市)にて,日本看護協会による第43回日本看護学会―看護管理―学術集会が開催された。時代の変化を受け,看護管理に求められるものも変化している今,まさに看護管理にはイノベーションが期待されていることを示す学術集会となった。

巻頭インタビュー

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日本人の2人に1人はがんにかかる昨今,がん患者を支える取り組みが推進されている。

2005(平成17)年9月に大腸がんが発覚し,がん患者団体支援機構前理事長も務めたニュースの職人,鳥越俊太郎氏に,入院中やその後の生活,他の患者と接するなかで感じたこと,気づいたことを述べていただくことで,今一度,患者と医療者のギャップを認識し,看護の力をどのように示していくべきなのか考える機会とする。

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 『看護管理』Vol.22 No.11では,量的データの集め方と初歩的な分析のしかたのなかで平均値の差を統計的に検定する方法を紹介しました。「基礎から学ぶ量的データの扱い方」の最終回として,本稿では,2つの変数の関係をみる分析について解説します。

連載 先を読むナースマネジャーのための発想法・12

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 今年1月号から「発想法」を綴ってきました。皆さんはどのようにお感じになったでしょうか。看護管理は楽しい仕事です。でも,楽しく看護管理者として働くには,ちょっとしたコツがあるということです。

 それは「時代や環境に合わせて,柔軟に発想を変え続けること」です。この連載では,「ニーズを知る」「地固め」「新しいことを積極的に行なっていく」「多様性を重視していく」という4つのキーワードを詳しく説明する過程で,それぞれのキーワードに対する発想法があることをご紹介しました。もうすでに皆さんが実践していることがあったかもしれません。それでも,皆さんにとって1つでも新しい発見があり,現場で実践してみようと思ってくださったとしたら,大変ありがたいと思います。

連載 職員の安心を支える病院デカ・12

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 お礼参りとは,神社仏閣に願をかけ,その願いが成就したときに,お礼として礼拝や布施を行なうことです。転じて,逆恨みをして報復・仕返しをすることの言葉として使われます。例えば,警察に逮捕された者が釈放されたあと,被害者のところに「よくも被害届を警察に出してくれたな」と脅迫に来ることなどです。

 その類のお礼参りは,厳罰に処せられるため,割の合わない犯罪であり,「航空機事故より確率が低い」といわれています。

連載 政治と看護の話をしよう!・10

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 日本の二つの大政党の党首も決まり,散々揉めた末に決定した税と社会保障に関する一体改革の具体的議論がようやく進みそうである。設置が遅れていた社会保障制度改革国民会議のメンバーも,もうすぐ決まる。財政は厳しいとはいえ,厳しさだけ強調されるのではなく,どうやれば生活を豊かに支えられるのか,しっかり議論してほしい。

 医療や介護については「2025年の姿」をすでに示しているが,機能分化が中心で,特に一般急性期については平均在院日数9日など,高いハードルを感じる。実態もそれに向けて変化し始めている。診療報酬や介護報酬の改定がそれを後押ししている。ただ現場では,早期に退院を余儀なくされた高齢の患者が,自宅に戻ることが叶わず,療養病床などで症状が重い状態のまま退院のめどがないまま増えている。それが,今の全国の病院の姿だ。高齢化が進む地方ほど,その傾向が強い感じがする。日本はこれから大都市圏で急速な高齢化を迎える。先を考えると寒気がする。

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胸膜中皮腫の患者の多くは,診断された時点で治療困難な状態にある。そのため,人生の整理もできないまま終末期を迎えることになってしまう。終末期にある患者は病状が不安定になり,いつ急変するのかわからない。それでも患者は希望をもち,できることならば,その希望を実現したいという思いを強く抱き,最後まで生き抜こうとする。そして,看護師は患者の生きたい気持ちに寄り添い,何とか希望を叶えたいと切望するのである。身体的負担が予測される患者の希望を実現していくためには,患者の病態を把握し,起こりうるリスクを見定め,リスクに対処できるように患者・家族の準備性を高める関わりが必要になる。

連載 師長の臨床・4

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 連載の第3回目からは,師長の実践を,当事者である師長に具体的に記述していただき,その記述から「師長の臨床実践」を読み解く試みをしようと考えている1,2)

 第3回目は,札幌市にあるKKR札幌医療センターの中野りかさん(師長)の事例を紹介し,卓越した看護師である師長のもつ「知の身体性」について解説した。それは転倒を懸念し使用していた離床センサーが,Aさんにとっては生命を脅かすほどのストレスになっていたことに気づいた中野さんが,看護師とともに状況をとらえ直し,家族とともにAさんの最期のときを創造した看護実践であった。この場面では「身体的な安全」とは次元の異なる「Aさんらしい時間の過ごし方─つまりAさんの心理的・社会的・霊的な生きる時間」を取り戻す看護実践を見出した。

連載 しなやかに家族を看護するスタッフに育てよう・6

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臨床場面

Aさんは19歳。妊娠後,未受診のまま過ごすも,パートナーと婚姻し妊婦健診を受けようとした矢先に,破水により当院受診。32週で分娩に至った。児は問題なく,1週間でNICUからGCUに転床した。母乳分泌は順調なものの,子どもの扱いに気分のむらのあることが助産師N子には気がかりだった。夫も同年齢,たまに面会に来ても夜の仕事のため昼夜逆転し,子どもに近づこうという意欲がなかった。両親はAさんが子どものころに離婚し,支援できる人がみえてこない。育児技術はもちろん,子ども中心の生活習慣の獲得が課題と考え,GCU転床時に了解を得て,保健センターに連絡し連携を始めた。

 Aさんは先に退院し夫と同居を始め,GCUに通いつつ育児用品の準備から始めた。生後4週,子どもも退院,保健センターから適宜家庭訪問をし,乳房外来で週1回,N子がフォローした。2か月健診を過ぎたころ,「子どもへの安定した対応には課題があるものの,生活リズムはそれなりにできてきた。今後は保育園の活用も視野に入れる」とセンターから報告があり,Aさんは乳房外来にも訪れなくなった。

 NICU/GCUでの家族への関わりは,最後まで見届けることができない。しかし,Aさんと初めて会ったときのことを考えると,少しは役に立ったのではないかと感じた。

連載 やじうま宮子の看護管理な日々・81

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「老前整理」進行中

 いよいよ今年も年末が近づいてきました。今年は皆さんにとってどんな1年でしたか?

 私にとっては,激動に次ぐ激動の1年。自宅の建て替えのどたばたのなかで,実母を見送り,佳境の4月5月は記憶も一部途切れ途切れ。きっと忘れでもしないと,脳みそのメモリが足りないほど,考えることが多かったんでしょう。

連載 患者の目線 医療“関係者”が患者・家族になって・20

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精神科看護,認知症ケアで社会への発信も続けている,阿保順子さん。実は看護経験よりは,家族の介護経験のほうが長いそうです。父と姑の胃ろう問題で対照的なシーンを経験し,“表現のしようがない感情を抱えた”という阿保さんにとって,胃ろうは是か非かという単純な話ではすみません。

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 去る8月4-5日,タワーホール船堀(東京都江戸川区)にて,日本医療情報学会看護部会による第13回日本医療情報学会看護学術大会が開催された。すべてのワークショップを,「看護師を含む多職種での発表に限る」として行なうなど,看護以外の視点(医師,医師事務作業補助者,薬剤師,ケアマネジャー,工学博士など)を積極的に取り入れ,議論が内向きにならないよう工夫した点など,多職種協働というテーマを反映する学術大会となった。

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次号予告・編集後記 早田 西窪

看護管理 第22巻 総目次

基本情報

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看護管理
22巻13号 (2012年12月)
電子版ISSN:1345-8590 印刷版ISSN:0917-1355 医学書院

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