看護管理 23巻1号 (2013年1月)

特集1 病院の倫理リーダー養成講座

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医療の現場には,倫理的問題が日常的に存在している。しかし,それらへの対処の仕方はトレーニングを積み重ねなければ身につけることはできない。

本特集では,患者の尊厳を守る組織をつくるため,臨床のケアの場で倫理問題に取り組むリーダーをいかに育成するかを考える。倫理リーダーは,日々の事象から倫理的課題に気づき,組織内に発信し,解決に向けて活動していく人材である。

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 私たちセコム医療システム株式会社(以下,当社)は,「日本一信頼される医療グループ」をめざそうというスローガンで,メディカル医療,訪問看護,訪問介護事業に取り組んでいます。それは決して売り上げや規模で日本一をめざそうというのではなく,医療・ケアのサービスの質においての「日本一」であり,「あの医療グループの病院や施設,在宅サービスは素晴らしい」といわれることをめざしています。

 信頼されるメディカルサービス医療・ケアを提供するためには,患者(ご利用者)様の尊厳を支える人・組織・文化を育むことが必要です。そのためには,まず日常生活に潜む倫理問題に「気づき」,次にその問題を皆で共有し,議論できる組織づくりが大切だと考えております。

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倫理リーダーとは

 本講座(セコム提携病院で開催)は,「座学」として,「医療倫理,特に臨床倫理の範囲や考え方」「臨床倫理問題の解決のための4分割法」,医療事故を含めた「医療者の義務と事故」「グループワークやロールプレイ」などを中心とした,「患者と家族の関係,医療者間の関係も含めて,人間関係を調整する」トレーニングや,「事例検討会」で構成されており,知識だけでなく,現場で解決する能力や,対話の調整ができる病院の倫理リーダーを養成することを通して,より「質の高い医療」をめざします。

 倫理の問題で難しいのは,座学,つまり知識だけでは,現場の問題を解決することは難しいということです。本講座で学んだ原理・原則とともに,現場で関係者が集まって事例の検討会をするときに必要な能力の定着までが本講座の目的です。倫理的な配慮ができるだけでなく,医学的なこと,法についても考える力をつけ,同時に対話力を有する人を,ここでは,「倫理リーダー」とよんでいます。

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 私は本来臨床医で,ずっと新生児の集中治療ばかりやってきました。周産期医療,特に新生児の集中治療は,以前より医師のなり手が少ない領域です。

 私は小児科の医師2~4人ぐらいで,24時間365日新生児集中治療室で働いてきました。しかし,集中治療は非常に体力勝負のところがあって,50歳を超えてから,体力的にそれができなくなってしまい,今は医療安全などの仕事がメインになりました。

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倫理的問題への遭遇

 私は基礎看護教育を終えて,東海大学医学部付属病院に看護師として就職をしたばかりのころに,隣の病棟で東海大学安楽死事件が起きました。玄関に報道陣がたくさん来ていたことを今でも思い出します。また,その病棟で働いていた職員にもいろいろなことがあり,忙しくてスタッフが疲弊しているような状況だったと記憶しています。

 私が新人だった20年前ごろは,身体抑制といった問題では,どの施設でも患者さんの安全を守るためにベッドの柵に抑制帯で手足を固定することが当たり前のように行なわれていた時代でした。そのような対応を受けた患者さんは「看護師さん,看護師さん,助けてください。ごめんなさい。許してください」と,私に訴えかけてきました。そのときに私は,言いようもない罪悪感を感じ,居たたまれない思いを抱きながら仕事をしていた記憶があります。

特集2 看護師“特定能力”の養成と研修

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医療の役割分担から,特定看護師(仮称),看護師特定能力認証制度と進んできた議論も,いくつかの重要な論点が整理されてきた感がある。

本特集では,すでに本制度ができることを見込んで学んできた看護師たちの現場から生の声をご紹介する。

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 医師の包括指示のもとで医行為を一定程度担う,看護師特定能力認証制度(案)における看護師(以下,認証看護師)。認証看護師を育成する教育機関や臨床研修を行なう各病院では,教育,雇用,現場での配属などについて試行錯誤が始まっている。

 藤田保健衛生大学大学院は,2012年度よりクリティカル領域の認証看護師の養成を始めた。1年後に認証看護師の卒後臨床研修を控える藤田保健衛生大学病院の病院長,副院長(兼・看護部長)と,大学院での養成を担う医師に,認証看護師に期待することを聞いた。

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 2009(平成21)年4月,東京ベイ・浦安市川医療センターは,運営法人を公益社団法人地域医療振興協会に移管して,それまで市民病院だった体制を一新した。2012(平成24)年度には,認証看護師の卒後研修となる看護師特定行為・業務試行事業を実施している。地域医療を担う同院で,クリティカル領域の認証看護師がどのような研修を受けているのか。認証看護師2人と研修を指導する医師に,その実態を伺った。

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CNSは何をする人か

井部 「専門看護師の臨床推論」をテーマに研究会を始めて,早一年が経ちました。今回は,これまで皆さんが記述してきた,事例を通した臨床推論から,あらためて専門看護師(以下,CNS)の実践をどのように考えるか,そして,看護の臨床推論をどのように体系化していったらいいかということを話し合っていこうと思います。

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はじめに

 2007(平成19)年12月に「ワークライフバランス(以下,WLB)憲章」と「仕事と生活の調和推進のための行動指針」1)が「仕事と生活の調和推進官民トップ会議」において合意された。

 看護職は生活者としてよりも専門職として仕事を優先させることを画一的に求められてきた懸念がある。それができない場合,満足する形での就業継続が困難であることも否めない。

 日本看護協会でも2007年度より,看護職のWLB実現に向け労働時間管理や人材育成,組織風土の改善に対して課題と対策を提言している。看護職のWLBが実現することで満足度や職務コミットメントが高まり,生産性・継続性での貢献が可能となり,ひいては看護ケアの向上をめざしたいという期待がかかる。

 この背景があり,京都府看護協会は2011(平成23)年度「看護職のWLB推進ワークショップ」を企画した。

 医仁会武田総合病院(以下,当院)看護部では,WLBに関する取り組みにより,「働きやすく,働き続けられる職場環境づくり」を構築してきた過程がある。この取り組みや体制の整備が広く看護職員に周知されているかを知り,潜在・顕在する職場の問題を明確化し,既存のシステムの見直しと,さらに働き続けられる労働条件・労働環境の改善に向けて取り組む機会とすることを目的にこのワークショップへの参加を希望した。

 このワークショップ・アクションプランの一つに,夜勤回数の偏り是正や残業への取り組みが挙がった。WLBでは個人の働きやすい勤務形態を考慮することが重要あるが,その形態を続けることでの体調への影響や,部署全体としての業務調査と残業実態との整合性も,労務管理や衛生管理上の課題である。

 自部署の取り組みとして夜勤体制の見直しと再構築に挑み,個々のWLB考慮,残業時間,経済的効果の指標から部署とスタッフ個々に適した夜勤体制を検討し,改善策を考案した。結果,変則2交代夜勤体制100%・14時間夜勤の導入が成功できたため,その実際について報告する。

連載 自分をリーダーに育てる・1【新連載】

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 「ナースマネジャーの仕事を,いかに創造的な発想でこなしていくか」。これが昨年の連載のテーマだった。これから超高齢多死の時代に向かって医療環境は変化し続ける。当然,看護職の職場環境でも,多くの難問が生じるだろう。そこで今年は「目の前にどんな難問を突きつけられようと,それに対応できるようになるには何が必要か」を探っていきたい。これこそが,今,看護管理者に求められていると思うからだ。

 人は,一般的には,管理職に任じられるところから,本格的にマネジメントを始める。最初は看護師長やナースマネジャーなどの役職が与えられ,その任務をこなしていく。それと同時に,組織内では,概ね1年間でやるべきことが決められていて,毎日のルーティンワークに追われ,慌ただしく動いていく。初めは忙しいばかりだったマネジャーでも,時間が経つとスタッフの要望や報告が耳に入るようになり,組織内の問題も見えてくるだろう。

連載 患者の目線―その先へ―医療関係者が患者や家族になって・1【新連載】

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 患者や家族になってみて「患者の目線で見えてきたこと」を,昨年までのシリーズから一歩その先へ進めて,医療関係者の目線で,さてどうするか?こんなふうになったらいいな!を探りたいと思います。トップバッターは,退院調整看護師の三輪恭子さん。初めての患者体験と入院生活での発見は?

連載 職員の安心を支える病院デカ・13

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 2011(平成23)年12月,私大病院医療安全推進連絡会議は「都内私立大学病院本院における患者・患者家族などから受ける院内暴力の実態調査」を行なった。対象は都内私立大学附属病院本院11施設の全職員2万9065名。うち2万2738名(女性69.2%,男性28.3%。看護師44.1%)から回答を得た。そのなかで院内暴力を受けた経験者の割合は,暴言41.5%,暴力14.8%,セクシャルハラスメント14.1%であり,過去1年以内に何らかの暴力を受けた人は44.3%,院内暴力に対する不安を中程度以上感じている職員が66.7%であった1)

 この結果を聞いて,私は驚いた。私たち警察OBのもとに報告・相談される数とあまりにも違いがあるからだ。なぜ被害を受けたそのときに,報告されていないのか。現場で我慢する職員の数が,アンケートから見えてきた。

連載 政治と看護の話をしよう!・11

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 「第17回日本看護サミット青森’12」が開かれた。その名の通り,看護界のトップイベント。紅葉が始まらんとする青森に,全国から看護のリーダーたちが集結した。

 今年のテーマは,診療報酬・介護報酬における看護の評価,働き続けられる環境づくり,新人研修とキャリアシステムの構築,在宅医療の推進。それぞれ重要なテーマである。こういったことを議論するシンポジウムや鼎談では,看護職国会議員が毎回壇上に立つ。

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 私が「看護師の臨床の知」に関する研究を始めて25年の年月が経過した。私は多くの看護師に臨床,つまり「看護師とクライアント(患者および重要他者)が偶然出会う場」での経験を記述していただき,さらにはその詳細についてインタビューや事例検討などの方法で語っていただきながら,研究を進めてきた。

 師長や看護師の臨床は,地域性や病院の規模や理念,ともに働く医療チームなどの影響を強く受け,その置かれている状況もまた固有の世界である。このため,師長や看護師の臨床を読み解くためには,置かれている状況の差異を念頭に置きながらの作業となる。ここで重要なのは一般論としての経験ではなく,むしろその人個人の経験であろう。

連載 やじうま宮子の看護管理な日々・82

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どこに置く? 新居のゴミ箱

 10月26日から新居での生活が始まり,しばらくは片付けに追われました。一段落した今,予想以上の暮らしやすさに,ほっと一息ついています。

 前号では,建て替えに際して収納,片付けの本をいろいろ読んだと書きましたが,それ以外にもネットや雑誌から多くの情報をとりました。間取りやインテリアを考えるには,雑誌もたくさん読んで参考にし,事前学習はばっちり。その甲斐あって間取りは大成功。それでも,最後の詰めには,意外に手こずったのです。

連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・81

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 私は地方に出かけるのが好きだ。最近は,地方も都市化が進んでいて,その町ならではの個性が失われているところが多いが,私の好きな地方とは,中山間地域といわれるような都市化の波に乗っていないところだ。そういうところから,読書や絵本,あるいは人生や医療の問題などをテーマにした講演を依頼されると,日程さえ都合がつけば,喜んで引き受けてしまう。

 地方に出かける理由のひとつは,講演を企画した人たちのひたむきな気持ちが伝わってくるからだが,もうひとつは,その地域ならではの野山の風景や稲,そば,野菜,果物などの豊かな育ちぐあいなどを眺めて目を癒やすことができるからだ。

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 日本NP協議会(代表:草間朋子)の初めての研究会が11月10日,東京医療保健大学国立病院機構キャンパスを会場に開催された。「これからの特定看護師─実践現場で活躍する特定看護師たち」をテーマに,同協議会NP課程修了生6名と所属する6施設の代表者が登壇し,実践報告を行なった。草間代表は冒頭に協議会を法人化する方針を報告した。

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 去る10月22日,聖路加看護大学アリス・C・セントジョンメモリアルホールにて,聖路加市民アカデミー「自分らしく生きるための心の準備」が開催された。

 開会の挨拶において福井次矢氏(聖路加看護学園理事長)は,聖路加国際病院では3年前から「私のリビングウィル」という,終末期治療について自らの意向を示すための用紙を数千人に配布しているが,実際に電子カルテに記載しているのは44人しかいないという現状を述べた。医療者だけががんばっても,よりよい医療を提供していくことはできない。市民講座などを通して,医療を受ける側の意識変化を促すことも病院の果たすべき重要な役割といえる。

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 去る10月18~19日,青森市内にて第17回日本看護サミット青森 '12が開催された。今回のサミットの分科会は4つ。「看護職が働き続けられる環境づくり─“看護師等の『雇用の質』向上”と“WLB推進”への取組」「診療報酬・介護報酬における看護の評価」「教育と臨床をつなぐ─新人研修とキャリアシステム構築」「地域でつなぐ看護─在宅医療の推進を担う看護職の役割」。いずれも大きな,しかし看護管理者としては避けては通れないテーマである。各参加者が抱える課題を共有し,今後進むべき方向性を考えるヒントとなる有意義なサミットであった。

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次号予告・編集後記 早田 西窪

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看護管理
23巻1号 (2013年1月)
電子版ISSN:1345-8590 印刷版ISSN:0917-1355 医学書院

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