看護管理 20巻13号 (2010年12月)

特集 医療安全管理者として働くということ

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 本特集では,ベテランの医療安全管理者の方々を中心に,これまでの体験,経験を振り返ってもらい,それらを知識としてどのように蓄積し,次に活かしていったのか,をそれぞれの思いとともに語ってもらう。

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医療安全管理者の10年

――これからの課題とは

寺井 私が医療安全管理者の仕事に就いて10年目になります。2001(平成13)年に病院幹部から任命されたときは,まだ医療安全管理者を配置している病院は少なくて,今の「医療安全管理者」という名称もなく,病院によって独自の名称・呼称を決めていました。私は「リスクマネジャー」という役割名称でした。

 医療安全管理者が名称も業務内容も定まっていない頃から10年が経ち,医療安全管理者という存在が医療界ではすっかり認知されるようになりました。

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はじめに

●医療安全管理の理想と現実

 病院の最優先課題は,医療事故の未然防止であり,それは専任リスクマネジャー(以下,GRM)の使命である。今や医療界では社会的責任としての,「医療の安全確保」が求められ,「患者の安全を護る」取り組みの重要性も認められ始めた。

 一方で2007(平成19)年,厚生労働省 医療安全対策検討会議による業務指針が示されたものの,GRMの役割や位置づけは組織で異なり,GRMは,それぞれ常に「これでいいのだろうか」と能力や適性に悩みながら業務を行なっているのが現実ではないだろうか。そのような実情にも関わらず,GRMに対し,「何も起こらなくて当然,しかし,(事故が起こった途端)何をやっていたの!」とささやかれることもある。

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はじめに

 医療機関における医療安全管理体制の強化として,2002(平成14)年10月,改正医療法施行規則が施行された。これによりすべての病院と有床診療所に,①医療安全管理指針,②医療安全管理委員会,③職員研修,④事故報告等改善方策からなる安全管理体制が義務づけられた。

 東京慈恵会医科大学附属青戸病院(以下,当院)においては,2000(平成12)年にリスクマネジメント委員会が設立され,教職員への教育研修および啓蒙活動を開始し,翌年に各部署に医療安全を担当するリスクマネジャーを配置し,リスクマネジメント組織体制を立ち上げ,医療安全活動への意識改革をめざした。

 しかし,2004(平成16)年に起きた医療事故によって,組織の医療安全管理体制が根底から覆るほどの危機に陥った。組織を挙げて事故の解明に全力で取り組むなか,現場では手術関連システム・体制の一つひとつを見直し検討し改善を進めた。慈恵医大全体が一丸となって医療安全管理体制の強化・再構築を図ることを最優先として組織改革に取り組んだ。当院では,翌年に医療安全管理室を設立し,初代の室長・医療安全管理者が奮戦し安全管理体制の基盤を築いてきた。

 私は,2007(平成19)年4月に医療安全管理者として任命を受け,今年で4年目となった。今回「医療安全管理者として働くということ」という特集での執筆依頼をいただき,医療安全管理者である自分の役割をどのように果たすのか試行錯誤するなかで,これまでに実践してきた活動や他職種との協働活動で成果につながった取り組みなどを振り返り,組織のなかで役割を担っていくことでのやりがいと課題を述べてみたい。

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安全管理者に任命された!

 東京医科大学病院(以下,当院)の安全管理室は2003(平成15)年4月1日に病院長直轄の独立した組織として設置されました。初代安全管理室室長は副院長でもある外科の教授が就任しました。

 当時私は,約17年間勤務した救命救急センターから外科病棟に異動し丸2年を経たところで,患者や家族との触れ合いがとても楽しく,3年目に向け看護ケアについてあれこれ理想や思いを巡らすなど,看護管理者として有意義かつ充実した日々を過ごしていました。

『道程』に医療安全を重ねて 杉山 良子
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「僕の前に道はない……」

 最近,小学生の頃に国語の教科書で習った高村光太郎の詩『道程』に触れる機会があった。「僕の前に道はない。僕のうしろに道はできる……」で有名な詩である。光太郎のような人生論を説くつもりは毛頭ないが,この詩のフレーズを医療安全と重ねてみている自分に気づいた。「道程」そのものの意味は,「ある所に行きつくまでの道のり」のことである。この道のりは,どこまでも続いている長い道のりであり,見えていない困難な道であるが,進まなければならない道であり,へこたれてはいけないと力強く示唆している。この道のりを大胆にも医療安全の道のりに読み替えてしまったのである。

 僕(私)のうしろに道はできている。今ここに立って,これまでの道を振り返ることで見えないものが見えてくる。すなわち,ここに立って振り返る思考でもある。不遜な言い方と思われるかもしれないが,この表現はまさしく事例分析そのものの思考である。

人との出会いが心の支え 渡邊 両治
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出会いとエピソード

 2001(平成13)年,医療界全体の安全に対する意識は,1999(平成11)年に起こった2つの大きな医療事故報道をきっかけに大きく変わりはじめた。

 厚生労働省は,医政局のなかに医療安全推進室を設置し,多くの医療機関が暗中模索のなかで委員会を立ち上げ,情報収集やマニュアル整備に追われ,以降わずか10年で劇的な進化を遂げていくことになる。

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1966(昭和41)年に天理教の教えに基づいて,心と体の両面から,病だけでなく,病む人そのものに向き合う全人医療をめざして設立された財団法人天理よろづ相談所病院。病む人が心身ともに安らかに憩える場であるように,と「憩の家」と呼ばれている。

奈良県全体が医療過疎の状況にあって,臨床研修病院として全国的に有名で,優秀な医師が集まる一方,看護師確保が困難を極めている。それでも,奉仕の精神をもった医療人を追求する姿勢は変わることはない。

いま,既存の天理看護学院と天理医療技術学校を統合し,新しく天理医療大学を2012(平成24)年開校すべく準備が着々と進められている。

連載 看護のアイデア・4

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点滴対応パジャマが欲しい!

 私の2人目の子どもが3歳のとき,肺炎で急遽入院となりました。パジャマは持ち込みとなっているため,普段のパジャマを着せたのですが,3歳児のパジャマの袖に点滴バッグが通るはずもありません。看護師は着替えのたびに輸液ポンプを止め,点滴チューブの接続部を外しますが,それは,接続部の汚染,空気混入,輸液ポンプの再起動忘れにつながりますし,一度緩めてしまった接続部は外れやすく,医療事故のリスク要因なのです。

 また,肺炎の入院となると発汗のために着替えの回数が多くなりますが,そのたびに看護師を待たねばなりません。付き添う母親にはこの時間がほんとうに長く感じられ,怒りをおぼえることもあるのです。

連載 サービス・イノベーションの経営学・12【最終回】

死と向きあうサービス 松下 博宣
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医療の世界はまさに異分野の知見が影響を与えあって融合している進化の坩堝です。また医療・看護界を取り巻く諸問題も,単一のアプローチではなかなか解決ができません。看護管理に関与する方々にとっても,看護の世界に閉じこもるのではなく,あえて異分野に越境して問題にアプローチする「視野と行動の幅」の広さが求められます。この連載では,サービス・イノベーションという切り口から,「視野と行動の幅」を拡げる機会を読者の方々と共有したいと思います。

ブログ『マネジメント徒然草』を更新中。ご質問などはTwitterをお使いの方はhttp://twitter.com/HiroMatsushitaまで。e-mailの方は,hiromat@cc.tuat.ac.jpまで。

連載 スタッフの倫理的感受性を高める ナースマネジャーがともに考える臨床倫理――臨床看護師が直面する倫理的ジレンマを紐解く・12【最終回】

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鎮静とは

 日本緩和医療学会の「苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン」によると,鎮静(セデーション)とは,苦痛緩和を目的として患者の意識を低下させる薬物を投与すること,あるいは,苦痛緩和のために投与した薬物によって生じた意識の低下を意図的に維持すること,と定義されている1)。そして,鎮静の様式には持続的鎮静と間欠的鎮静があり,鎮静の水準には意識の低下の程度によって,深い鎮静と浅い鎮静に分類される。特に,深い持続的鎮静を実施することで,意識の低下によりコミュニケーションができなくなること,生命予後を短縮する可能性があることから,倫理的問題として議論されることが多い。

連載 ヒトを育てる秘訣・8

「覚悟を強さに変える」 渋谷 美香
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新人看護職員臨床研修がスタートし,秋以降から全国の研修責任者・教育担当者・実地指導者対象研修も活気があふれてきました。

研修責任者や教育担当者など,自分とは別世界の役割だと思っていたのに急に役割を与えられた方の不安は大きいと肌で感じます。

無理に背伸びせずに,等身大の自分でやる!と覚悟を決めて,現実的になにができそうか?だれとやるか?を洗い出してみましょう!

連載 王様の耳はパンの耳――この国の看護のゆくえ・19【最終回】

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 高い専門性が求められ,医療界の中でもその役割に一層の期待が高まる看護ですが,めざすべきところは「安心・安全の医療」をいかに確実に提供していくかです。理想に向かって,看護はどのように独自性を発揮していくのでしょうか。さらには,よりよい看護を提供していくために,いかなる戦略を描くべきでしょうか。

連載 スクラブナース6年生・67

完全看護 鈴木 美穂
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ニューヨークの病院では患者に付き添って病室に泊まる家族が驚くほど多い。一応面会時間は設けてあるが,面会時間外だから帰ってくれと言うことはない。なかには病院に“住んでいる”家族もいる。

 病院から仕事に通うこともあれば,病院でシャワーを浴びて,ゲストトレイという家族用の病院食で食事をとることもある。病院はcot(簡易折りたたみベッド)やリクライニングチェアを無料で貸し出す。個室では横になれるソファが備え付けられている部屋もある。個室といっても差額部屋の意味での個室ではなく,治療上必要な隔離のためのものであり(病院としてはもともと高額の医療費が請求できるのだろう),泊まる家族はマスクやガウンを着用したまま寝ることになる。ニューヨークの急性期病院には個室か2人部屋しかない。2人部屋で配偶者や患者と性別の異なる家族が泊まる場合には同室者に了承をとることになっているが,お互い様だからとまず問題になることはない。

連載 看護と医療政策を考えるヒント・20

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先日,米国シリコンバレーの躍進企業を訪問しました。受付にあったポスターには,「ドイツの品質」「中国の価格」「日本のサービス」の文字が。グローバルな事業展開をめざすこの企業が,意外にも日本の強みは品質ではなくサービスだと言っているのです。考えてみれば日本の品質というのは,故障が少なく,アフターサービスやメンテナンスのよさに裏打ちされたものです。

 サービスとは,幅広く奥深く,相手の立場に立ち,心を込めて実践することです。ところが,今や病院を含め日本の組織全体がそうしたサービスの在り方を忘れつつあります。米国流のマニュアルの横行やITによる表面的なシステム化や合理化がそうさせたのでしょう。

連載 やじうま宮子の看護管理な日々・57

人の暮らしの面白さ 宮子 あずさ
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妄想王国の王様

 訪問看護室では,気になる利用者さんの状況が,日々報告されます。ある時,ベテランの訪問看護師から,中年男性の調子が高く,実に珍妙な姿で迎えてくれた,という報告がありました。

 訪問すると,彼は,ランニングシャツと,トランクスだけの姿で,機嫌よく迎えてくれたとのこと。さらにそのランニングシャツは前後が逆で,サイズが小さく,首元が苦しそうなくらい詰まり,トランクスの中にしっかりイン。

特別記事

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「項目の定義」「判断基準」に含まれない項目をどうするか

 2010(平成22)年度の診療報酬改定において,急性期看護補助体制加算を算定する場合,7対1入院基本料においては,一般病棟の看護必要度基準患者が15%以上必要となった。

 神戸大学医学部附属病院(以下,当院)では,7対1入院基本料算定を行なっており,看護必要度集計を2008(平成20)年7月から開始した。特定機能病院である当院においては2008年の診療報酬改定に伴う看護必要度基準患者割合が10%以上という基準はないが,1年間(前年7~6月)の看護必要度測定結果を報告する必要があった。

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はじめに

 医療・看護の基盤である倫理が,改めて取り上げられるようになったのは,臓器移植や遺伝子治療などにより,生命の価値が問われるようになったことに加えて,医療者主導から患者の自立を重視するヘルスケアの変化によるところが大きい。臨床現場においては,病院機能評価の受審に伴い,患者の権利や倫理に関する方針が,理念や基本方針で明文化されるようになった。このような状況を踏まえて,どの病院も患者の権利を尊重し,患者満足度を高めることを目標に掲げ,努力していることは言うまでもない。

 特に,患者の「権利擁護者」であることが求められている看護職にとっては,倫理的問題への感受性を高め,身に付け,実際に活かす事が肝要であろう。なぜなら,そのことが,看護の本質,看護の原点を見失うことなく,看護の質を高め,スタッフの成長に寄与する基盤となるからである。

 本稿では,倫理的視点を身に付け,その活用を促す一つの手段として,複数の病院で立ち上げた「臨床倫理事例研究会」について紹介する。

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 前号に引き続き,日米の感染制御の専門家による座談会の後編。

 医療・看護行為におけるプロセス-アウトカム評価が当然となっている米国に比べ,日本はまだストラクチャー(構造)の評価に留まっている感がある。米国の保険制度では,標準的でない医療には報酬が支払われないP4Pが導入され,各病院は利益率を悪化させないためにもケアプロセスを重視している。

 大きな経済的インパクトが期待できないわが国の医療施設が,ケアプロセスの向上に取り組むモチベーションとは何か。

 また,米国では専門家の層の厚さとネットワークに加え,情報共有や臨床研究,スタッフ教育に活用できるウェブによるプラットフォームが整備されている。

 米国という先達の取り組みから,わが国の感染対策をさらにブラッシュアップするための方策を,ご議論いただいた。

特別記事 [3号連続掲載]『看護管理』創刊20周年に振り返る・2

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1991-2000 変化する社会と看護の重要性の高まり

社会変化に応じて高まった看護の重要性

●『ナースステーション』から『看護管理』へ

 本誌『看護管理』が創刊されたのは,1991年。前号の結びでも述べたとおり,社会が大きく変わり,それに応じた変化を医療界も余儀なくされた(第1次医療法改正:1985年,第2次医療法改正:1992年)時代である。医療施設の類別化が行なわれ,施設医療から在宅医療へと重点移行し始めたその時代に,それまでの『ナースステーション』が休刊となり,『看護管理』が創刊されたことは,看護管理の活動が医療施設内から地域住民の生活へと拡がることと,軌を一にしたものとなったといえよう。

基本情報

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看護管理
20巻13号 (2010年12月)
電子版ISSN:1345-8590 印刷版ISSN:0917-1355 医学書院

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