特集 医療安全管理者として働くということ
『道程』に医療安全を重ねて
杉山 良子
1
1武蔵野赤十字病院 医療安全推進室
pp.1150-1152
発行日 2010年12月10日
Published Date 2010/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101903
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「僕の前に道はない……」
最近,小学生の頃に国語の教科書で習った高村光太郎の詩『道程』に触れる機会があった。「僕の前に道はない。僕のうしろに道はできる……」で有名な詩である。光太郎のような人生論を説くつもりは毛頭ないが,この詩のフレーズを医療安全と重ねてみている自分に気づいた。「道程」そのものの意味は,「ある所に行きつくまでの道のり」のことである。この道のりは,どこまでも続いている長い道のりであり,見えていない困難な道であるが,進まなければならない道であり,へこたれてはいけないと力強く示唆している。この道のりを大胆にも医療安全の道のりに読み替えてしまったのである。
僕(私)のうしろに道はできている。今ここに立って,これまでの道を振り返ることで見えないものが見えてくる。すなわち,ここに立って振り返る思考でもある。不遜な言い方と思われるかもしれないが,この表現はまさしく事例分析そのものの思考である。
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