作業療法ジャーナル 50巻5号 (2016年5月)

特集 めざそう,就職!障害者雇用支援の今

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特集にあたって

 近年の障害者雇用支援の現状は,就職者数の増加傾向という喜ばしい状況の反面,高い離職率への対応も迫られている.企業サイドからみると,2018年から精神障害者の雇用義務化に加えて,改正労働安全衛生法による従業員へのメンタルヘルスチェック,労働災害補償や傷病による休職の増加とその後の復職対応等,企業が安定的に雇用を維持するための課題も山積している.また,労働者人口の減少,地域産業の衰退化等,それぞれの地域が固有に抱える課題も交錯して,企業や公共職業安定所のみに任せた雇用支援だけでは,障害者等,求職困難者の安定的な新規雇用や雇用継続をしていくことに,今もなお困難な状況が続いていることに変わりはない.

 今回の特集では,特例子会社,医療機関とまちの産業を興し続けるNPO,公共職業安定所での専門援助といった,それぞれ異なる立場から雇用支援のあり方や具体的な取り組みについて座談会を実施した.雇用支援に関して,先駆的実践と実績から語られる言葉の中に,「労働観と労働者観」,「企業姿勢」,「障害者雇用支援」,「障害の有無の以前に同じ企業の社員同士」,「ともに働くことでまちをつくる」,「雇用支援におけるOTへの期待」等,いくつもの重要なキーワードが感じとれる,充実した意見交換をぜひご覧いただきたい.

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Key Questions

Q1:障害者の職業リハビリテーションと国際労働機関とは?

Q2:公共職業安定所専門援助部門における精神障害者雇用トータルサポーターの役割とは?

Q3:公共職業安定所専門援助部門で行う雇用支援とは?

はじめに

 筆者は,特定非営利活動法人いねいぶるにて,障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業所(就労移行支援・就労継続支援・共同生活援助・地域活動支援・相談支援等)に従事しつつ,2007年(平成19年)より,兵庫労働局龍野公共職業安定所専門援助部門の精神障害者雇用トータルサポーターとして,企業と求職者をつなぐ一端を担っている.

 筆者が日ごろの業務から感じるのは,本来の障害者の雇用支援には,医療デイケアや就労系障害福祉サービス事業所等を段階的に利用し行われる,いわゆる職業訓練といわれるようなものだけではなく,求職者の職業選択や(希望する職場や目標を決めたり,それに必要な技能を検討・開発すること),求人事業所の開拓(業務の切り出し,キャリア形成のための職場体験も含む),継続した雇用管理支援(労務管理や,働く障害者および雇用事業所へのサポート)等を一体的に行う雇用支援体制が必要だということである.そのためには,従来からの,競争的な一般雇用と障害者雇用という形態だけでなく,より多様な雇用形態や方法を,創造し挑み続けなければならないだろう.

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Key Questions

Q1:障害者はどんな仕事をしているか?

Q2:特例子会社とはどんな会社か?

Q3:特例子会社では社員をどう育成しているか?

はじめに

 わが国では,「障害者の雇用の促進等に関する法律」により,従業員50人以上の民間企業は2%以上の障害者を雇用することが義務づけられている(法定雇用率).しかし,2015年(平成27年)6月1日現在,達成している企業は47.2%に過ぎない(厚生労働省「平成27年障害者雇用状況の集計結果」より).この法定雇用率は5年ごとに見直され,2018年には精神障害者も法定雇用率の算定基礎に加えられることが決定しており,法定雇用率は2.0%からさらに高くなる見込みである.今後就職する障害者はさらに増加することが予想される.

 一方,障害者の雇用の促進と安定を図るため,事業主が障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し,一定の要件を満たす場合には,特例としてその子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなして,実雇用率を算定できる特例子会社制度も制定されており,2015年6月1日現在,422社が認定されている.また,特例子会社をもつ親会社については,関係する子会社も含め,企業グループによる実雇用率算定を可能としており,187グループが適用を受けている.

 そのうちの株式会社ダイキンサンライズ摂津の事例について報告する.

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Key Questions

Q1:産業低迷,過疎高齢化地域でも雇用支援をあきらめないためには?

Q2:NPO法人を(障害者も含め)地域住民の雇用創出にどう活用するか?

Q3:専門職として,地域の雇用情勢を見直すには?

はじめに

 愛媛県の南端にある小さな田舎町愛南町は,日本の多くの地方と同様に,過疎高齢化が急速に進んでいます.人口はこの20年で1万人減少し,現在2.2万人です.「みるみる人がいなくなっていく」と実感します.昭和の終わりごろは,農業・漁業も栄え,次々と企業誘致もなされていましたが,企業は次々と撤退し,ごく一部を除き,第一次産業も低迷しています.地域の人は口々に「仕事がないから……」と何かにつけて話されており,明るい話題になかなか出会えません.先日の地域自立支援協議会就労専門部会でも,ある就労継続支援B型事業所の方が「仕事がないのでどうにも……」とあきらめに近い発言をされています.

 そのような中で,私たちなりの方法で就労・雇用支援に向けて実践を重ねてきました.地域住民の中で,あたかも事実のように語られ続ける「仕事がない!」を解決することが第一歩と考え,さまざまな切り口で起業し,「地域住民の雇用創出」に試行錯誤を繰り返しています.実際,起業による就労・雇用支援も実現してきましたが,地域の雇用情勢は,見ると聞くとは大違いで,ただ「仕事がない!」と嘆くだけの状況ではまったくなく,現在は,人口が減り,事業所が次々に閉鎖されていく今だからこそできることも多いと考えています.

 私たちのここまでの実践,未来に向けての取り組み,その中でのOTの奮闘を報告させていただきます.また,医療や福祉の立場だけから地域の雇用をみるのではなく,実際に,観光・飲食・商・農・水産業経営を行っていることで気づけたことも考察に加えます.

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宮崎 近年,OTが障害者の就労支援にかかわる機会が増えてきました.『作業療法ジャーナル』でも何回か特集を組んでいますが,いわゆる職業訓練や福祉就労についての内容が多く,今回のように「雇用」を中心に据えることは初めてではないでしょうか.

 本日は,障害者雇用において高い実績のあるダイキンサンライズ摂津の應武さん,独自の取り組みを展開されている御荘病院の長野さんをお招きして,座談会を企画させていただきました.まず簡単に自己紹介をお願い致します.

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Key Questions

Q1:医療機関と民間企業における雇用支援とは?

Q2:医療機関において行える雇用に向けた支援とは?

Q3:医療機関で雇用に向けた支援を行うときに心がけたいこととは?

はじめに

 “医療機関における雇用支援”と聞くと,「医療機関で雇用支援が行えるのか」と難しさや抵抗感を感じるかもしれない.確かに雇用支援の内容は,対象者の評価,訓練,職業前実習,求職活動,業務の切り出し,職場定着,雇用管理等,多岐にわたり,数カ月〜数年かけて実施することが多い.このためリハの時間・頻度・期間が限られる医療機関において雇用支援を行うことは容易ではなく1),その結果,医療機関スタッフが支援スキルやノウハウを獲得することが難しい状況である.しかし,医療機関においても,より当事者に近い立場からの「雇用に向けた支援」は行えると考えている.

 本稿では,医療法人社団KNI(以下,当法人)における高次脳機能障害者および難病患者に対する雇用に向けた支援について説明し,3事例の支援を紹介する.ただし,当法人では,医療機関だけではなく,有限会社におけるサービスを活用して雇用に向けた支援を行っており,一般化されにくい体制であると考えられる.しかしながら,本体制は医療機関単体で雇用に向けた支援を行う際の課題を補う方法として導入しているため,支援手段の一つとしてとらえていただきたい.

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Key Questions

Q1:就職をめざす障害のある方にOTはどうかかわれるか?

Q2:障害のある方の雇用支援でOTの果たす役割は?

Q3:障害のある方の雇用支援で大切なことは何か?

はじめに

 精神障害者への雇用支援について,昨年まで勤務していた特定非営利活動法人 大阪精神障害者就労支援ネットワーク(以下,JSN)の協力を得てまとめた.JSNは診療所の医師が中心になって立ち上げた施設で,現在4カ所の就労移行支援事業所と1カ所の就労継続支援A型事業所があり,8年間で就職者は250名を超え,その約7割が継続就労している.

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Key Questions

Q1:障害者の雇用状況はどうなっているか?

Q2:職業安定行政としての課題は何か?

Q3:障害者の雇用対策はどのように進められるか?

はじめに

 当ハローワークたつのは,兵庫県の南西部,岡山県との県境に接し,たつの市,宍粟市,相生市,赤穂市,上郡町,佐用町,姫路市安富町を相生・赤穂の2出張所と共に管轄します.その面積は1,604.96km2で全県の19%,人口は24万1,493人で全県の4.4%〔ともに2014年(平成26年)6月末日現在〕となっています.

 このうちのたつの(本)所では正規職員15名と非常勤職員16名で2課1部門を構成し,障害者の雇用支援等については,主に就職促進指導官と就職支援ナビゲーターの2名で対応しています.前述の通り全国の多くのハローワークにみられる一般的な規模の体制と認識していますが,そんな中で障害者の就職件数は2014年度が71件,2015年度(平成27年度)については1月末段階で86件と,おかげさまで順調にその数を毎年伸ばせている現状にあります.

 以上のような組織・沿革等を冒頭で極々簡単にご説明させていただきましたが,このたび,本号の企画・編集に携わられている宮崎宏興氏とのご縁から寄稿のお誘いを受け,最初は,当所のような,兵庫県内に14所ある公共職業安定所(ハローワーク)の中でも郡部に位置し,いわゆる小規模所に当たる立場からではふさわしくないのではと正直腰が引けたりもしました.しかしながらよくよく考え直してみますと,全国の多くのハローワークが同様の立地,規模の中で,それぞれの地域において「雇用におけるセーフティネット」としての役割を担い頑張らせていただいています.その立場からの情報として,全国の状況,厚生労働省・都道府県労働局の方針や取り組みのご紹介を以下の通りさせていただくことで,「地域」にある私どもハローワークの様子をいくらかでもお伝えでき,障害者雇用にかかわる支援の輪が広がることを期待しつつ,筆を執らせていただくことにしました.

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 臨床にどっぷりと浸かっていたのは,はるか17年も前になる.主に伊豆韮山温泉病院で高次脳機能障害の患者さんの臨床に携わっていたころ,患者さんの生活の改善のために「こんな道具があったらよいのに」とか「こんな訓練器具をつくりたい」とか,アイデアばかりが湧いて出ていた.たとえば,Balint症候群の患者さんの視野スペースを実際より狭く見せるメガネや,半側空間無視のright neck rotationを阻止する左側の頸部筋を刺激する道具等々.しかし,いかんせんメカ音痴の私は,ものづくりには不向きで,せいぜい自助具やスプリントをつくるくらいだった.そんな中,鋳物業の会社を経営している左片麻痺の患者さんが,退院後に「右手で右の爪を切りたかったから,自分でつくりました」と,見事な片手用爪切りの試作を送ってきてくださった.当時のOTはラワン材の木を削って,片手用自助具をつくっていた.私も例に漏れず,おそらくこの方にも作製したように記憶している.私の粗削りな自助具より,はるかにスタイリッシュな特製爪切り自助具を手にして,ものがつくれる専門家に憧れを抱くこととなる.

 患者さんの作業療法中に芽生えたアイデアは,アイデアだけにとどまり,形になることなく,臨床時代を終え,教育の道に進んだ.京都大学を経て現在の神戸大学に異動したが,幸運なことに,学内をはじめ,ものづくりのエキスパートの方々に出会うこととなる.従来の脳血管障害や頭部外傷後の高次脳機能障害に関する研究に加え,認知症の研究も,時代の要請に押されるように始まった.着任早々,工学部とのブレインストーミング合宿,神戸市からの委託研究である認知症予防に関するICTツール研究,神戸芸術工科大学の相良二朗先生やスウェーデンにあるカロリンスカ研究所のOTの先生方とのeveryday technology(ET)およびassistive technology(AT)の共同研究と,いきなり同時に,苦手とするICTに関する研究が始まったのである.工学系の先生方の使用言語がわからず,よくネットで検索した.工学部の先生方は,「ものづくりはできるが,それが本当に現場で役立つかどうかまでの検証は難しい」とよくおっしゃる.医療保健分野に所属する私(たち)は,アイデアと臨床の場はあるが,ものづくりの知識は,あらかた専門外である.この2つが一緒になれば,たちまち現場に役立つものができそうだ,と“Healthology”(造語)という概念が神戸大学で生まれた.健康に,自分らしく,意味をもって終の棲家で暮らすためにはどうすればよいかということを考える学問で,工学部の先生方と名前をつけた.

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患者の“主体性”をキーワードとして

澤 長谷川先生のお兄さん(長谷川 宏氏)は,哲学者ですか.最近,書籍も出されましたね.

長谷川 はい.上下2巻の『日本精神史』(講談社,2015)を出しました.

あなたにとって作業療法とは何ですか?・第17回

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待つこと:ある精神科医の貴重な一言

 私の臨床家としてのスタートは,精神障害分野の作業療法でした.当時は病院内で職業前訓練として「内職作業」を取り入れており,看護師や作業指導員の方々が,患者さんに一方的に指示を出し,指導していました.

 ある日,当時の勤務先の副院長が何かの雑談の最中に,「作業療法士はゆっくりと待ってあげられる唯一の職種だよ」と言われたのを,今でも覚えています.恥ずかしい話ですが,このころの私には,「やさしく,積極的に接することが大切だ」くらいの理解しかなかったので,その言葉は衝撃的で,人とのかかわりについて再考させられました.

50巻記念企画

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 2016年3月,国際アルツハイマー病協会(Alzheimer's Disease International:ADI)は,the Lancet Neurology Commission(Lancet誌の編集者が,アルツハイマー病・関連する認知症について情報提供の目的で設立)が『Lancet Neurology』誌15巻4号で,“Defeating Alzheimer's disease and other dementias: a priority for European science and society(アルツハイマー病とその他認知症を克服する:欧州の科学と社会のための優先策)”1)をテーマとした特集を発刊することを歓迎している.以下が報告書の概略である.

1.すべての国で認知症のケアと下支えする組織を強化する国家戦略的政策を構築する政治的な意志の強化を行う.

2.認知症患者らを支える社会の発展を含め,あらゆるレベルで認知症に対処する有効な協力関係の構築を行う.

3.国連障害者権利条約を通じたこれら権利の擁護を含め,あらゆるレベルで認知症の個人の権利と声に関心を集める.

連載 手のリハビリテーション・第5回

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はじめに

 前回まで3回にわたり,PIP関節の動かせる環境(関節)を整え,機能障害(関節拘縮)の予防について基本的な考え方と徒手的治療法を紹介してきた.今回からは,PIP関節と同様に中手指節関節(metacarpophalangeal joint:MCP関節)の動かせる環境の獲得・維持を目的とした,機能解剖に基づいた段階的な徒手的治療法を中心に紹介する.そして皆さん自身がこの技術を活用し,患者が自然に手を使えるように“みて”いただければと考える.

 多くの患者は図1のように,安静時に準じた状態(手の肢位:MCP関節伸展位・PIP関節屈曲位)を保っていることが多い.これは筋の生理的粘弾性からみても,精神的なストレスを考えても自然な状態(肢位)といえる.しかしMCP関節の機能の維持という観点からは,関節構成体(組織:筋・靱帯)の伸長のバランスを崩し,関節障害を引き起こす一歩ともなり得る.

 前置きはこのくらいにして,臨床場面に入っていきたい.

連載 障害と人権:誰もが暮らしやすい地域社会に向けた障害をもつ人の法制度の潮流・第2回

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はじめに

 障害と人権という本連載の大きなテーマについて考えるとき,2006年に国連総会で採択され,日本が2014年(平成26年)に批准した障害者権利条約(障害者の権利に関する条約)は,世界でいえばエベレストであり,日本であれば富士山に例えられるであろう.その高みにたどり着く道は長く険しい.しかし,目指すべき頂上が定まった意義は大きい.

 私たちはその意味では,「巨人の肩に乗り」はるかかなたを見渡そうとしている.その私たちの足元を振り返るとき,世界人権宣言までたどり着くことはさほど難しくない.1948年に国連総会が採択した同宣言の前文は「人権の無視及び軽侮が,人類の良心を踏みにじった野蛮行為をもたらし,言論及び信仰の自由が受けられ,恐怖及び欠乏のない世界の到来が,一般の人々の最高の願望として宣言された」としている.自分の国,日本が国内外で「人類の良心を踏みにじった野蛮行為」に及んだことを私は忘れることはできない.そのために,1948年(昭和23年)当時,日本は国連の加盟国ですらなかった.

 昨年8月の戦後70年内閣総理大臣談話が「何の罪もない人々に,計り知れない損害と苦痛を,我が国が与えた事実.歴史とは実に取り返しのつかない,苛烈なものです.一人ひとりに,それぞれの人生があり,夢があり,愛する家族があった.この当然の事実をかみしめる時,今なお,言葉を失い,ただただ,断腸の念を禁じ得ません」と述べているように,ともすれば自国の被害にばかり及びがちな私たちの思いは,特に海外での加害に向けなければならない.

 「野蛮行為」の障害分野の極北は,20万以上のドイツ人障害者を殺害したナチスドイツのT4計画(障害者「安楽死」計画)である.19世紀に生成された障害者を否定する思想である優生学が,史上まれにみる暴力的な政権のもとで悲惨な結果を招いたのである1).同計画の首謀者が,ニュルンベルク医療裁判で処刑されたのは,世界人権宣言が採択された1948年である.

 この世界人権宣言から足かけほぼ60年に及ぶ長い歩みの一つの到達点が,この4月に施行される障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律),そして改正障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律)である.

 本稿では,障害者の「尊厳の尊重」(障害者権利条約第1条)を念頭に置いて,日本での障害差別禁止の経緯とともに,日本の障害者権利条約の実施の大きな柱である障害者差別解消法および,改正障害者雇用促進法の実施を中心に述べる.

連載 続・歴史と遊ぶ・第2回

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横浜市歌の思い出

 小学校5,6年の担任K先生は,自分でアコーディオンを弾き,いろいろな歌を教えてくれた.小学校6年の途中で,横浜から女生徒が転校してきた.彼女は,自分の好きな歌を披露するとき,必ず「横浜市歌」を歌った.歌詞はよくわからなかったが,とても素敵な音の響きだった.それに刺激されたのか,担任が中野区に区歌があることを調べ,全員が暗誦するまで歌わされた.3番まであり,今でも1番の歌詞は覚えていて,メロディーも思い出せる.しかし,小学校卒業以来,耳にしたことがないほど区民には知られていない.1950年(昭和25年)に区民から歌詞を募り,当時区内在住の堀内敬三(1897-1983)が歌詞の補作と作曲をしたものと聞いていた.念のためにインターネットで検索してみたところ,驚いたことに今年(2015年)新しい中野区歌が策定されていた.もっとも,旧歌の優れた歌詞について中野区の人に尋ねても知っている人に出会ったことがない.

 小学校卒業と同時に引っ越し,横浜市の中学校に入学して,クラスの誰もが横浜市歌を歌えることを知った.小学校で教えられたらしく,中学で教わることはなかったので,私は今でも歌うことができない.あまりにも周知の歌であるせいか替え歌まであり,皆が歌う替え歌の歌詞のほうが今でも印象に残っている.この横浜市歌は,1909年(明治42年)に開港50周年を記念して森 鴎外(1862-1922)に作詞が依頼された.作曲は南(みなみ) 能衛(よしえ)(1881-1952)である.南は,私たちの世代までは覚えていることの多い小学唱歌の「村祭」や「村の鍛冶屋」の作曲者でもある.横浜市歌は以下の通りである.当時の時代背景もあろうが歌詞も曲も壮麗である.

学会長・大会長・学術集会長の言葉

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 1966年(昭和41年)に日本ではじめてOTが誕生し,半世紀の節目を迎えます.70年代以降,日本では高齢化が進みはじめ,80年代には,医療領域だけの対応ではなく保健福祉領域でのOTの活動が期待されるようになっていきました.

 私が卒業したころの第20〜23回〔1986〜1989年(昭和61〜平成元年)〕の日本作業療法学会では,「作業療法の核を問う」というテーマシンポジウムが3回開催され,専門職としてのOTの役割がいかにあるべきかの議論が展開されていました.4半世紀前〔1991年(平成3年)〕に札幌で開催された第25回学会で,故 佐藤 剛学会長は,「四半世紀からの出発—適応の科学としての作業療法の定着を目指して」というテーマのもと,「個人と環境との相互作用の中に作業療法の基盤を定着させることで,OTは高齢化社会を迎えて大きな変換が迫られている保健医療の一翼を担う専門職になり得る」と述べました.

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 日本理学療法学術大会は,昨年の第50回記念大会を節目に,新たな一歩を踏み出しました.日本理学療法協会は,2013年(平成25年)に学術活動の自律性を意識した組織改正を行い「日本理学療法士学会」を改組し,下部機関となる「分科学会」と「部門」が設立され,日本理学療法士学会の分科学会化がなされました.第51回日本理学療法学術大会は,全12の「分科学会の学術集会」が時,場所を同じくして開催される最初の“連合”大会です.日本理学療法士学会が,より専門性を高め分科していく過程において,あらためて理学療法のアイデンティティの再確認の必要性を感じております.そこで,本大会のテーマを「理学療法学のアイデンティティ—基盤と分科」としました.

 本大会では,大会企画として4講演を企画しています.初の“連合”大会であることを踏まえた基調講演から始まり,特別講演1では日本理学療法士協会・相談役(元会長)の奈良 勲先生に「理学療法士のアイデンティティ」をテーマにご講演をお願いしております.情熱あふれる奈良先生の歴史的省察と提言を生で拝聴できる貴重な時間になるものと思います.特別講演2では再生医療に関する第一人者であられる札幌医科大学医学部附属フロンティア医学研究所・教授の本望 修先生に「再生医療における理学療法への期待」をテーマにご講演をいただきます.再生医療は理学療法における今後の重要な対象領域であり,これからの理学療法士のあり方をご示唆いただけるものと確信しております.国際講演ではワシントン大学のShirley A. Sahrmann先生に,世界的名著である『運動機能障害症候群のマネジメント』(訳本)に基づく「理学療法のアイデンティティ」をテーマにご講演をいただきます.協会企画は,国際展開と医療介護現場という理学療法の広がりを感じさせるテーマとなっております.各分科学会・関連部門の企画セッション,特別講演,教育講演等は完全にそれぞれの分科学会と関連部門の企画です.本大会の演題数は全分科学会学術集会で総計1,754演題に上ります.産学連携セッションも企画しました.本大会と企業が連携して,学術的な内容を企業指定の講演者によって講演いただく企画です.

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 STは同じリハ専門職のOTと比較しますと,約30年遅れて国家資格制度ができました.そのため,人数はまだまだOTと比べるべくもありませんが,第1回国家試験が1999年(平成11年)に実施されてから,年を追うごとにその数が増加してきています.日本言語聴覚士協会HPによりますと,2016年2月末現在の有資格者は2万5,549人であり,主に医療福祉関係に就業し,他に学校教育・研究機関や養成校に勤務しています.STという職業は社会的にまだ十分認知されているとは言いがたい状況ですが,摂食嚥下障害,失語症,高次脳機能障害,認知症,発声発語障害,小児の発達・言語障害,聴覚障害等,多岐にわたる対象に業務を行っております.今後,社会がますます高齢化していく状況では,他のリハ専門職と同様にSTへの社会的ニーズは高まっていくことが予想されます.

 そのようなニーズの高まりの中で,今年の6月,京都で第17回日本言語聴覚学会を開催することになりました.今回の学会テーマは「コミュニケーション 知と技の融合—そうだ 学会へ行こう」に設定致しました.私たちの生活はコミュニケーションによって成り立ち,私たちの存在がコミュニケーション的と言ってもよいかもしれません.そして,リハを遂行する業務も各専門職の連携とコミュニケーションの上に成り立ち,リハを受ける当事者とセラピストとのコミュニケーションは不可欠な要素です.今学会ではこの「コミュニケーション」をキーワードに学会の内容を企画し,充実させました.

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 2016年(平成28年)6月9日(木)〜11日(土)の3日間,第53回日本リハビリテーション医学会学術集会を,国立京都国際会館とグランドプリンスホテル京都で開催させていただきます.

 現在,リハビリテーション医学・医療は超高齢社会の到来に伴い,その役割が期待されています.多様な疾病や障害に対して,安全で効率的なリハビリテーション医療を提供するためには,基本的知識と技能の熟知,各臨床医学分野との協調,多職種間の連携,最新情報の収集と活用が大切になります.

お裁縫をはじめましょう・5針目

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 今回は,中表にする縫い方,ループや持ち手のつけ方,タグのつけ方等をおさらいしながら,さらに簡単なマチのつくり方をご紹介.マチをつけることで,バッグの種類の幅が広がります.アレンジして,オリジナルバッグをつくってみましょう.

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Abstract:【はじめに】今回,慢性期の重度片麻痺患者に対し,A型ボツリヌス毒素製剤(Btx)療法と電気刺激療法,装具療法,課題指向型訓練と麻痺手の機能向上を実生活の活動に反映するための戦略を用い,その効果を検討した.【患者】40代,男性.右利き.慢性期に外来作業療法を開始した.初診時麻痺手の痙縮が高く,手関節・手指の伸展運動が困難であった.患者の希望は,食事動作時に麻痺手での食具使用であった.【介入】第Ⅰ期:電気刺激療法,装具療法,課題指向型訓練を併用し,1日2時間,週2〜3日,8週間実施した.第Ⅱ期:Btx療法後に第Ⅰ期より操作範囲を拡大し,1日2時間,週2〜3日,11週間実施した.【結果】第Ⅰ期において,上肢機能および食事動作における麻痺手の使用は変化を認めなかったが,Btx療法後に大きな変化を認めた.【結論】慢性期重度上肢麻痺に対するBtx療法と複合的訓練は,患者の希望を可能とし,意味のある活動の獲得に影響したと考えられる.

プラクティカルノート

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はじめに

 半側空間無視(以下,USN)の治療として視覚走査練習1)があるが,より効果的に治療を行うために,対象者が自発的に無視側を探索することが必要と思われる.今回,自発的な探索を促すために,手の形をモチーフにしたUSNに対する治療器具を作製したので報告する.

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50巻記念エッセイ募集

表紙のことば/今月の作品

Archives

次号予告

第51巻表紙作品募集

学会・研修会案内

研究助成テーマ募集

編集後記 長野 敏宏
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 編集に携わらせていただいて2年弱,いまだ障害,精神科関連以外のところは「興味深く読んでいます」としか言えない状況ですが,徐々にインプットされるものも増えてきています.特に,50巻記念企画の記事を読み,感じはじめたことがあります.これまでは「OTは専門性が十分に確立していないのでは?」と思うこともありましたが,そうではなく,どの職種より対象者の状況や環境,また地域や制度の変化に柔軟に対応し,常に「専門性について自問自答を続けている」職種なのかもしれないと考えはじめるようになったのです.時代の流れの中で,根底にある専門性は守りながらも,イノベーションを続けようとしている職種ともいえるかもしれません.ただ,地域にも,医療保健福祉にも課題が山積している状況においては,OTだけの話ではありませんが,その実践と自問自答が追い付いていない状況も垣間見えているような気もします.

 今回は「めざそう,就職! 障害者雇用支援の今」の特集を中心としてかかわらせていただきました.今,本当に障害者雇用にとって,大きなチャンスの波がきていることを再認識しています.ただ,心配もあります.この社会のチャンスを活かし切れるだけの準備が整っていない地域が,まだ大部分ではないかということです.OTの皆さんに期待します.多くの仲間を募って,ぜひ,行動を起こしてほしいと思います.

基本情報

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作業療法ジャーナル
50巻5号 (2016年5月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0915-1354 三輪書店

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