理学療法ジャーナル 52巻11号 (2018年11月)

特集 生涯学習—卒前教育との連動と発展性

EOI(essences of the issue)
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 2016年8月号では,「社会の要請に応える理学療法教育」の特集を組んだ.本特集では,さらに多様なニーズに基づくキャリアパスを踏まえた卒後の学習を豊かに継続するための生涯学習として,卒前教育との一貫した連動と発展性について現状と展望について整理することにした.

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専門職の責務と権利としての生涯学習

 専門職(profession)は,高い倫理観と公益性に基づく卓越した知識と技術を,社会のニーズに対して適応と創造を図りながら,常に進化させる必要がある1).これに対し,社会は専門職に対して,免許制度や医療保険制度を含む適応の範囲や水準から認知と意思を示している.

 生涯学習(continuing professional development:CPD)は,その言葉の意味するとおり,継続的に専門職としての発展を遂げる過程である.卒前教育ならびに卒後の自己研さんを通じて,現在のみならず将来を見通した自律的な変革と創造の原動力を養い,キャリア形成・成熟を支援する過程となる2).生涯学習は,基本的には個々人の自己研さん・努力であるが,それを効果的に展開するための組織にも重要な役割がある.専門職は個々の対象者との契約に加えて,その名称を使用する職種としての信頼や水準が認知されている.

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はじめに

 生涯学習は自己実現の手段であり社会貢献の具体化であり,社会認知と合理的に連動していることが重要である.諸外国に目を向けると,理学療法士は選ばれた学生から選ばれた職業として選択されており,米国などでは理学療法のスキルが社会にわかりやすく提示される仕組みになっている.本稿では理学療法の生涯学習について,国内の医学教育や米国の生涯学習制度と対比させながら,課題と展望について解説する.

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 社会に求められる専門職としての質を高めるため,また何よりも患者や利用者の方々によりよい理学療法を提供していくためには,卒前教育との連動を図った生涯学習の環境整備が喫緊の課題である.少子高齢社会の到来や科学技術の革新など,さまざまな変化への対応が求められるなか,卒前・卒後の学習の有機的なつながりをどのように生み出し,発展させていくことができるのか.臨床,教育,地域で活躍する先生方に語り合っていただいた.(2018年8月2日収録)

理学療法における生涯学習の展開—医療機関での取り組み

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はじめに

 生涯学習を展開し優秀な人材を育成するために必要不可欠なことは,採用試験における人材の選別,キャリアラダーを中心とした生涯学習システムの構築,そして人事考課を併用した生涯学習システムの適切な運用である.これらを展開するうえで管理職の育成は必須であり,管理職としての仕事を遂行するうえで必要な時間を,十分に保証することが理想である.

 本稿では,採用試験,職場配置,業務配分,人事考課の観点から,そのあり方や成果,課題について述べる.

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はじめに

 理学療法士の養成校を卒業し国家試験に合格すると,病院や診療所などに入職し理学療法士としての「学び」がスタートする.学校教育では,一定の決められたカリキュラムをクリアし国家資格という目標に到達することがゴールと言える.

 一方,職場教育には,そのような明確なゴールが存在するわけではない.個人ごと,組織ごとに求めるゴールや期待値は異なる.そのため入職後は,個人目標と職場での期待値(目標)のすり合わせが不可欠となり,そこで決められたゴールに向け継続的な「学び」が始まる.

 当然のことながら個人目標と職場の期待とが異なる場合があるが,人事考課などを通して個人の特性や能力などを加味して,意見の一致を図ることが大切である.

 入職時に,自分の将来のセラピスト像をイメージしている場合もあるが,明確なイメージをもたない場合も多い.将来像のイメージを有していたとしても,就職後一定のローテーションまたは転職を経験することで入職当初にイメージした姿に変化が生じる場合も少なくない.例えば,入職時にはスポーツリハビリテーションを行いたいと思っていても,急性期場面や回復期場面で自宅退院の困難さに遭遇すると,自宅復帰や地域活動への支援のために訪問リハビリテーションや地域リハビリテーションへの配置を希望するといった場合がある.

 将来像のイメージを有しない場合においても,多くの患者や理学療法士,その他の医療職との出会いを通して,徐々に将来像のイメージが形づくられる場合も少なくない.特に経験的バイアスの少ない入職時においては,職場教育としてのかかわりは,その後の理学療法士としてのキャリア(経験)形成に大きく影響することが予想される.

 本稿では,今日の職場教育における課題と,亀田メディカルセンター(以下,当センター)での取り組み例を示し,地域医療の中核病院としてどのような人材を期待し育成するか,現在模索中の方法と私見を述べる.

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学内教育と臨床実習教育の連動

 2017年に日本理学療法士協会が臨床実習指導者や学生を対象に行ったアンケート1)では,臨床実習指導者の56.0%が「学生の臨床実習を行うための技能等が不足していると感じる」と答え,実習前の学生にもっと教育してほしい内容に「コミュニケーション,接遇」,「臨床推論を含む理学療法評価学」が多かった.また,学生に対して「養成施設の授業で修得した知識・技能が,臨床実習の現場で必要とされた知識・技能と一致していたか」の問いに学生の61.9%が不足していると感じていると答えている.これらの結果は,学内教育では臨床場面に即した具体的な実践教育が不足しており,臨床実習教育ではコミュニケーションがうまくとれず,理学療法を施行するうえで必要な評価が十分にできない学生が多いことを意味している.

 実際の臨床実習では,検査・測定はできても問診による情報収集ができず,検査・測定で得た結果を統合して評価することのできない学生をみかけることが多い.これは学内教育で問題解決型思考が学生に理解されていないことや,臨床実習指導者が実習で学生に対して知識偏重の指導を行っていることが要因と考えられるが,それ以上に「コミュニケーション能力の低下」が大きな問題と感じている.臨床においてはコミュニケーションのなかでも対話能力の低さが問題となる.相手が伝えたいことを言葉で受け取り,自分の言いたいことを言葉で伝える言葉のキャッチボールができないと対話は成立しない.対話が成立しなければ信頼関係を築くのは難しい.臨床実習におけるさまざまな問題はこの「対話能力の低下」が根底にあると考えている.対話能力が低ければ今後,ますます重要となる「多職種連携」にも支障が及ぶと思われる.

理学療法における生涯学習の展開—教育機関での取り組み

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はじめに

 筆者自身,理学療法士の生涯学習とは,基本的に自身の臨床スキルの底上げを目的に,生涯にわたって学び,学習活動を継続していくことと理解している.そのため,教育機関には卒前教育のみならず,卒業生をはじめとした地域の理学療法士の生涯学習を支援する役割があると認識しており,特に大学には社会貢献としてもその責務があると考えている.筆者が勤務する長崎大学医学部保健学科(以下,本学)は前身の医療技術短期大学部の時代から卒業生の生涯学習を支援・推進してきた経緯があり1),特に筆者が主宰している運動障害リハビリテーション学研究室で展開している「基礎医学的研究を通した生涯学習」は全国的にも珍しい試みではないかと思われる.そこで,本稿では主宰研究室の生涯学習の時系列的な流れを紹介し,その意義について考えてみたい.

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はじめに

 理学療法士が専門職としてその社会的地位を確立するためには,高い自律性と倫理感,社会のニーズを察して要請に応える態度,社会が必要とする新たな情報や解決策の創造と実践が重要であると言われている1).このためには,協会および学会としての機能・役割の充実と,個々人の継続した知識・技能の向上(生涯学習)に対する意欲と利他的奉仕2)の精神が不可欠である.

 充実した生涯学習への展開を見据え,自律した専門職としての理学療法士を育成するために,理学療法士養成教育機関においては,学生に対して「専門的な知識・技術」を教授するだけでなく,幅広い教養を教授するとともに,「専門職」としての倫理観や利他的奉仕の精神を涵養することと,知的好奇心を刺激し,積極的に学術活動に参加したいと思う精神や科学的思考力,新しく創造する力,生涯を通して学習しようとする意欲,課題発見・解決能力,コミュニケーション能力,他職種を理解し尊重する精神などを育むことが大切である.本稿ではこれらを意識して,筆者が所属している新潟医療福祉大学(以下,本学)での取り組みを紹介する.

3.群馬大学大学院の現状と課題 臼田 滋
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群馬大学大学院での支援の現状

1.本学大学院の概要

 群馬大学大学院(以下,本学大学院)の概要を表に示す.博士前期課程は職種横断型の3ユニット,後期課程は職種に応じた看護学,生体情報検査科学,リハビリテーション学の3領域で構成され,教員は9分野のいずれかに属している.入学定員は前期課程50名,後期課程10名である.

 最近5年間におけるリハビリテーション学の入学者の割合は,前期,後期課程ともに,全体の入学者数の約4割である.リハビリテーション学の入学者のうち理学療法士は約7割で,そのほぼ全員が社会人であり,社会人ではない学生のほとんどは留学生である.また,理学療法士の学生のうち,その4割弱が本学の学部を卒業後すぐに前期課程へ進学した学生,1割強が本学を卒業後数年経過後の入学者,約4割が本学以外の養成機関の卒業生である.

特別企画 理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則改正のポイント・3

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はじめに

 1999年以来18年ぶりに理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則(以下,指定規則)が改正される.理学療法士・作業療法士学校養成施設カリキュラム等改善検討会(以下,検討会)における報告書(以下,報告書)1)に基づく指定規則改正は,医道審議会理学療法士作業療法士分科会の承認を受け,2018年後半に指定規則および理学療法士作業療法士養成施設指導ガイドラインの改正通知が発出される予定である.この改正は2020年4月入学生から適用される.

 報告書1)では「臨床実習については,その実施方法や評定方法などが,学校養成施設や臨床実習施設によって様々であることや,臨床実習時間外に恒常的な課題を行うなど学生にとっても大きな負担となっていることから,理学療法士及び作業療法士の質の向上のため,臨床実習の在り方を見直す」ことが求められているとし,改正の大きな柱となっている.本稿では臨床実習にかかわる改正について,変更点や努力目標として示された点などについて概説する.

とびら

巨人の肩の上に立つ 神津 玲
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 最近,臨床研究に関する業務に携わる時間が増えてきました.なかでも,大学院生や若手臨床スタッフとの研究計画の立案は,お互い多大なエネルギーを使って内容を磨き上げていく大変な作業です.その反面,その後の研究の展開や結果を想像すると不思議とワクワクして楽しみになります.

 研究計画のなかで,先行研究のレビューとそのための文献検索は,必要不可欠なステップです.網羅的かつ効率よく検索するために,各種検索サービスや文献データベースの活用は今や当たり前になっています.なかでもPubMedやGoogleが代表的ですが,後者にはアカデミック検索のGoogle Scholarがあります.これは主に学術用途での検索を対象としており,大変有用です.「巨人の肩の上に立つ(Stand on the shoulders of giants)」という言葉は,Google Scholarのトップページに掲げられている言葉であり,同サービスのスローガンになっています.これは,「偉大な先人の積み重ねた発見や研究などを『巨人』に例えて,現在の学術研究の新たな知見や発見,学問の発展も,それらの積み重ねの上に成り立っている」ことを意味しているそうです.

1ページ講座 理学療法関連用語〜正しい意味がわかりますか?

速度と加速度 井野 拓実
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 速度とは単位時間あたりの物体の変位量であり,加速度とは単位時間あたりの速度の変化量である.国際標準であるSI単位記号で表すとおのおの,メートル毎秒m/s,メートル毎秒毎秒m/s2となる.

オリパラ関連企画 理学療法士が知っておきたい重要なスポーツ動作・11

障がい者水泳における平泳ぎ動作 島 樹
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はじめに

 障がい者水泳競技は,肢体不自由,視覚障害,聴覚障害,知的障害に分けられる.肢体不自由の場合は脳障害,脊髄障害,切断・欠損などの障害を有するため,当然のことながら多種多様な代償機能を利用して競技に出場する.また種目もクロール,背泳ぎ,平泳ぎ,バタフライがあり,すべてを紹介するのは困難なため,本稿では両上肢欠損者の平泳ぎについて述べたい.

入門講座 高齢者の理学療法を行うために知っておこう—検査・栄養・薬・運動・3

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はじめに

 医療現場では高齢者が急増している.近年,薬剤師が高齢者の薬物療法に医師と協働して携わることが多くなった.

 薬物は高齢者の覚醒や活動性へ影響するため,機能回復・機能改善を目的とした指導・運動に取り組まれる理学療法士の方々にとっても,高齢者への投与において注意すべき薬物の特徴を理解することは有用であると考える.

講座 人工知能と理学療法・2

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はじめに

 人工知能(artificial intelligence:AI)の実力は,チェスや将棋のプロを凌駕するだけではなく,自動運転の技術などでわれわれの生活のなかにも応用され始めている.本稿では,理学療法学,工学,神経リハビリテーション,ヘルスプロモーションの各専門家がそれぞれのテーマにおけるAIの活用の可能性について解説する.医療現場,特に理学療法におけるAIの活用につき,読者の方々へ多様な視座をお示しできれば幸いである.

臨床実習サブノート どうする? 情報収集・評価・プログラム立案—複雑な病態や社会的背景の症例・8

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はじめに

 本シリーズのテーマである情報収集・評価・プログラム立案の流れは,SPDCA(Survey-Plan-Do-Check-Act)サイクルに基づくものが重要と考えます.SPDCAとは,事業活動やプログラム運営において,着実な活動の実行およびその品質の向上を円滑にマネジメントするための手法です.サイクルを構成する「Survey」とは,情報収集とその分析で,「Plan」は計画でさまざまな知識をもとにした理学療法プログラムの立案となります.「Do」は実行で,初期プログラムに基づく理学療法の実施となり,「Check」は評価で理学療法実施後の効果判定モニタリング,「Act」は改善でCheckによる効果判定をもとに初期プログラムの継続か修正を検討します.この最後のActは,活動を継続的に改善する次のSPDCAサイクルにつながっていきます.特に質の高い理学療法実現のためのマネジメントにおいて,利用者主体の日常生活に着目した目標を設定するために,PDCAに先立つSurveyが重要であると言われています.

 また,このサイクルにおいて「評価」という言葉がSurveyとCheckの2か所に使われていますが意味合いが異なります.Surveyにおける評価は,assessmentであり,理学療法プログラムを立案する前段階での初期評価です.一方Checkにおける評価は,evaluationであり,理学療法プログラムを実施しながらの効果検証と細部にわたる理学療法評価の同時進行的で中間評価的なものとなります.この評価の違いも理解しておくと考えやすいと思います.

 その評価の手法として大きく2つあり,その過程には対象者優先で本人の価値観から問題を考えていくトップダウンモデルと,科学優先で機能から問題を考えていくボトムアップモデルの2つの考え方があります.

 先に,トップダウンモデルは,対象者の社会参加としての地域や家庭での役割や活動,楽しみなど,要望(demand)を問診などから情報収集します.その目標達成に必要な活動や心身機能(needs)を考えて1),姿勢や動作を観察し分析することで,動作を困難にしている原因を仮設していきます.ただ,姿勢・動作分析が中心となるため,その姿勢や動作の構成要素を適切に把握できないと2)正しい問題点を導き出せず,できない動作や不良姿勢のみを改善する非効果的な理学療法となるデメリットもあります.

 ボトムアップモデルの評価は疾患から考えられる問題点をすべて評価し,結果から得られたすべての問題点に対して理学療法を立案する方法です.この方法は,必ず問題点が把握できるメリットはありますが,あらゆる検査を行うので評価に時間がかかるというデメリットもあり,しかもみつかった問題点が必ずしも重要なものではない場合があります.加えて,心身機能課題中心の対症療法となる可能性も高くなり,個別理学療法プログラムにならないことが多くあります.

 臨床場面ではどちらも重要で,どちらか一方では真の問題はみつからず,トップダウンとボトムアップを同時進行で思考展開していき,対象者の要望(demand)を前提として,科学的根拠をもとに予後予測し,客観的な評価結果から,目標に対する課題を分析しアプローチすることが重要となります.

 これらのことを踏まえたうえでSPDCAに沿って,今回のテーマであるSurveyからPlanを中心に述べていきます.

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学術大会の概要

 第2回日本呼吸・心血管・糖尿病理学療法学会合同学術大会[第5回日本呼吸理学療法学会学術大会:関川清一大会長(広島大学),第3回日本心血管理学療法学会学術大会:渡辺敏大会長(聖マリアンナ医科大学病院),第5回日本糖尿病理学療法学会学術大会:大平雅美大会長(信州大学)]が,大平雅美合同大会長のもと,2018年7月16日(月・祝)にパシフィコ横浜で開催され,参加者1,500名以上と大盛況でした(図).

 合同テーマ「呼吸・心血管・糖尿病理学療法の両輪—臨床&学術活動」を旗標に,各分科学会がテーマを掲げプログラムが企画されていました.各分科学会のテーマは,第5回日本呼吸理学療法学会学術大会が「学術としての呼吸理学療法のチカラ」,第3回日本心血管理学療法学会学術大会が「在宅心リハを考える」,第5回日本糖尿病理学療法学会学術大会が「糖尿病に対する理学療法—学びを更なる高みへ」とし,合同シンポジウム,ランチョンセミナー,一般演題が行われていました.理学療法発展のために,臨床と学術活動を両立していくことの重要性をあらためて感じさせられる内容でした.

甃のうへ・第64回

チャンスを引き寄せる力 井上 倫恵
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 自身のこれまでの歩みを振り返ると,出会いに恵まれていると心から思います.まず,私のキャリア形成の原点となったのはウィメンズヘルス領域との出会いでした.きっかけは大学の講義のなかで偶然読んだ一本の論文で,運動療法により女性の尿失禁が改善することが記されていました.理学療法にはこのような可能性もあるのだと興味をもち,恩師である鈴木重行先生に導かれて,ウィメンズヘルス領域の研究に没頭することとなったのでした.

 大学院へ進学し,博士課程(後期課程)の最終学年となった頃には,どうにかしてウィメンズヘルス領域に携わる道はないだろうかと模索する日々でした.学会に参加した際に自身の胸の内を周囲に打ち明け,相談に乗っていただいたことがきっかけで亀田メディカルセンターウロギネコロジーセンター(現在は,ウロギネ・女性排尿機能センターに改称)センター長の野村昌良先生と出会い,幸運にも臨床でウィメンズヘルスに携わることができるようになりました.もしもあのとき,自身の胸の内を周囲に伝えていなかったら,今の自分はないかもしれません.

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要旨 【目的】健常成人と運動機能障害をもつ患者を対象とし,理学療法士による主観的立位動揺評価の信頼性と妥当性を検討することである.【対象と方法】健常成人11名と運動機能障害をもつ患者8名とし,検者は健常成人と患者それぞれに対し経験年数の異なる理学療法士3名ずつ,合計6名とした.対象者は重心動揺計上で開眼・閉眼での立位をとり,検者は11段階の主観的立位動揺評価を行った.【結果】健常成人,患者ともに主観的立位動揺評価のKendallのW係数(検者内,検者間)は高い値を示した.また,検者の主観的立位動揺評価と重心動揺値の間に有意な相関が認められた.【結論】理学療法士による主観的立位動揺評価は良好な信頼性と妥当性を有していることが示唆される.

ひろば

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 一昨年度,30年間勤務した国立大学(以後,前大学)を定年退職し,昨年度4月から関東にある私立大学(以後,本学)に勤務している.本学は徳を重んじ,入学式での理事長による本学のポリシーの1つにインクルージョン(共生)があるという挨拶に感激した.

 さて,本題の身体化,イメージ化,言語化,論理化であるが,これは本学のA教授(心理学者)に教わったことである.関節可動域の学会法[日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会(1995年)]を説明した表を例にとると,図でイメージ化して動きを説明しており,国家試験の関節可動域の部分はイメージ化だけでつくられている場合が多い.基本軸と移動軸の動きは言語によって説明しているが,学生が関節可動域の実技を行うときは身体の動きのみの練習を行っている.

臨床のコツ・私の裏ワザ

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 特に訪問の臨床においては,高齢の利用者が多く,正しく効率的な動作パターンがなかなか習得されないことがある.その理由としては,認知面や高次脳機能,筋・骨関節の廃用,疼痛,そしてこれまで長く行ってきた自己流の方法への執着,身体イメージの低下などが考えられる.その場で習得したものを次には忘れている,ということも珍しくない.

 そのようななかでも,現時点でたしかにできている動作が,セルフイメージの低さから,自分のなかでは「できていない」,「まだ不十分だ」と認識されてしまうことがある.そこで筆者は,正しい動作をより認識し,確定化させるためにバーバルコマンド(口頭指示)をより意識すべきと考えている.

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目次

文献抄録

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 初めて澤村誠志先生の講演を聞いたのは,介護保険制度施行前の全国地域リハビリテーション研修会のことでした.主催者側の私の御礼に対する先生の返しがとても謙虚で,先生の素敵な人間性が一瞬で伝わってきたことが忘れられません.澤村先生の講演は淡々としたものでしたが,何の飾りもなく,さりげなく話す内容があまりにも偉大で圧倒されました.自分の理論を主張するようなことは一切なく,最初から最後まで障がい者に寄り添っていました.この著書を読み,あのとき聞いた澤村先生の感動の講演が鮮明に蘇ってきました.

 本書には,前半に澤村先生が医師をめざしリハビリテーションにかかわるようになった経緯とその後の歩みが書かれていますが,驚くべきは,それに伴って日本のリハビリテーション自体が変わってくるさまがよくわかるところです.マスコミで騒がれたベトナムの骨盤結合児を澤村先生が受け入れることになった経緯なども書かれています.そして,澤村先生が起こした変革の傍には,必ず当事者(患者や障がい者)が存在していたことに注目して読んでほしいと思います.近年,地域包括ケアシステムが叫ばれていますが,システムありきで形を整えるだけの取り組みならば長続きはしないはずです.背景に当事者がいて,当事者が「よかった」と思えるような具体的な取り組みを起こさなければ意味がありません.本書は,医療関係者やリハビリテーションに携わる者だけでなく,地域包括ケアシステムにかかわる行政の担当者にも読んでほしい一冊であると感じました.

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 「リハビリテーションの主たる対象は臓器障害ではなく,臓器障害を持ったヒトである」.

 心臓リハビリテーションの第一人者であり,わが国の内部障害系ならびに集中治療領域のリハビリテーションを先導してきた高橋哲也先生のメッセージを本書の随所で感じた.

次号予告

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

第30回理学療法ジャーナル賞について

編集後記 内山 靖
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 第52巻11号をお届けします.

 今月のテーマは「教育」です.教育に関するテーマは年間企画会議における常設枠の一つで,おおよそ1年に1回程度の頻度で特集が組まれます.今回は,「生涯学習—卒前教育との連動と発展性」として,主に医療・教育機関の先生方から実践的なご紹介をいただき,座談会として生の声をお伝えしました.いずれも理念が明確で,さまざまな工夫と取り組みによって成果をあげられている様子が伝わってきます.

読者の声募集

基本情報

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理学療法ジャーナル
52巻11号 (2018年11月)
電子版ISSN:1882-1359 印刷版ISSN:0915-0552 医学書院

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