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はじめに
理学療法士の養成校を卒業し国家試験に合格すると,病院や診療所などに入職し理学療法士としての「学び」がスタートする.学校教育では,一定の決められたカリキュラムをクリアし国家資格という目標に到達することがゴールと言える.
一方,職場教育には,そのような明確なゴールが存在するわけではない.個人ごと,組織ごとに求めるゴールや期待値は異なる.そのため入職後は,個人目標と職場での期待値(目標)のすり合わせが不可欠となり,そこで決められたゴールに向け継続的な「学び」が始まる.
当然のことながら個人目標と職場の期待とが異なる場合があるが,人事考課などを通して個人の特性や能力などを加味して,意見の一致を図ることが大切である.
入職時に,自分の将来のセラピスト像をイメージしている場合もあるが,明確なイメージをもたない場合も多い.将来像のイメージを有していたとしても,就職後一定のローテーションまたは転職を経験することで入職当初にイメージした姿に変化が生じる場合も少なくない.例えば,入職時にはスポーツリハビリテーションを行いたいと思っていても,急性期場面や回復期場面で自宅退院の困難さに遭遇すると,自宅復帰や地域活動への支援のために訪問リハビリテーションや地域リハビリテーションへの配置を希望するといった場合がある.
将来像のイメージを有しない場合においても,多くの患者や理学療法士,その他の医療職との出会いを通して,徐々に将来像のイメージが形づくられる場合も少なくない.特に経験的バイアスの少ない入職時においては,職場教育としてのかかわりは,その後の理学療法士としてのキャリア(経験)形成に大きく影響することが予想される.
本稿では,今日の職場教育における課題と,亀田メディカルセンター(以下,当センター)での取り組み例を示し,地域医療の中核病院としてどのような人材を期待し育成するか,現在模索中の方法と私見を述べる.
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