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はじめに
本シリーズのテーマである情報収集・評価・プログラム立案の流れは,SPDCA(Survey-Plan-Do-Check-Act)サイクルに基づくものが重要と考えます.SPDCAとは,事業活動やプログラム運営において,着実な活動の実行およびその品質の向上を円滑にマネジメントするための手法です.サイクルを構成する「Survey」とは,情報収集とその分析で,「Plan」は計画でさまざまな知識をもとにした理学療法プログラムの立案となります.「Do」は実行で,初期プログラムに基づく理学療法の実施となり,「Check」は評価で理学療法実施後の効果判定モニタリング,「Act」は改善でCheckによる効果判定をもとに初期プログラムの継続か修正を検討します.この最後のActは,活動を継続的に改善する次のSPDCAサイクルにつながっていきます.特に質の高い理学療法実現のためのマネジメントにおいて,利用者主体の日常生活に着目した目標を設定するために,PDCAに先立つSurveyが重要であると言われています.
また,このサイクルにおいて「評価」という言葉がSurveyとCheckの2か所に使われていますが意味合いが異なります.Surveyにおける評価は,assessmentであり,理学療法プログラムを立案する前段階での初期評価です.一方Checkにおける評価は,evaluationであり,理学療法プログラムを実施しながらの効果検証と細部にわたる理学療法評価の同時進行的で中間評価的なものとなります.この評価の違いも理解しておくと考えやすいと思います.
その評価の手法として大きく2つあり,その過程には対象者優先で本人の価値観から問題を考えていくトップダウンモデルと,科学優先で機能から問題を考えていくボトムアップモデルの2つの考え方があります.
先に,トップダウンモデルは,対象者の社会参加としての地域や家庭での役割や活動,楽しみなど,要望(demand)を問診などから情報収集します.その目標達成に必要な活動や心身機能(needs)を考えて1),姿勢や動作を観察し分析することで,動作を困難にしている原因を仮設していきます.ただ,姿勢・動作分析が中心となるため,その姿勢や動作の構成要素を適切に把握できないと2)正しい問題点を導き出せず,できない動作や不良姿勢のみを改善する非効果的な理学療法となるデメリットもあります.
ボトムアップモデルの評価は疾患から考えられる問題点をすべて評価し,結果から得られたすべての問題点に対して理学療法を立案する方法です.この方法は,必ず問題点が把握できるメリットはありますが,あらゆる検査を行うので評価に時間がかかるというデメリットもあり,しかもみつかった問題点が必ずしも重要なものではない場合があります.加えて,心身機能課題中心の対症療法となる可能性も高くなり,個別理学療法プログラムにならないことが多くあります.
臨床場面ではどちらも重要で,どちらか一方では真の問題はみつからず,トップダウンとボトムアップを同時進行で思考展開していき,対象者の要望(demand)を前提として,科学的根拠をもとに予後予測し,客観的な評価結果から,目標に対する課題を分析しアプローチすることが重要となります.
これらのことを踏まえたうえでSPDCAに沿って,今回のテーマであるSurveyからPlanを中心に述べていきます.
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