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書評 —澤村誠志(編著)—「地域リハビリテーションと私」
金谷 さとみ
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1菅間記念病院在宅総合ケアセンター
pp.1039
発行日 2018年11月15日
Published Date 2018/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551201365
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初めて澤村誠志先生の講演を聞いたのは,介護保険制度施行前の全国地域リハビリテーション研修会のことでした.主催者側の私の御礼に対する先生の返しがとても謙虚で,先生の素敵な人間性が一瞬で伝わってきたことが忘れられません.澤村先生の講演は淡々としたものでしたが,何の飾りもなく,さりげなく話す内容があまりにも偉大で圧倒されました.自分の理論を主張するようなことは一切なく,最初から最後まで障がい者に寄り添っていました.この著書を読み,あのとき聞いた澤村先生の感動の講演が鮮明に蘇ってきました.
本書には,前半に澤村先生が医師をめざしリハビリテーションにかかわるようになった経緯とその後の歩みが書かれていますが,驚くべきは,それに伴って日本のリハビリテーション自体が変わってくるさまがよくわかるところです.マスコミで騒がれたベトナムの骨盤結合児を澤村先生が受け入れることになった経緯なども書かれています.そして,澤村先生が起こした変革の傍には,必ず当事者(患者や障がい者)が存在していたことに注目して読んでほしいと思います.近年,地域包括ケアシステムが叫ばれていますが,システムありきで形を整えるだけの取り組みならば長続きはしないはずです.背景に当事者がいて,当事者が「よかった」と思えるような具体的な取り組みを起こさなければ意味がありません.本書は,医療関係者やリハビリテーションに携わる者だけでなく,地域包括ケアシステムにかかわる行政の担当者にも読んでほしい一冊であると感じました.
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