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学内教育と臨床実習教育の連動
2017年に日本理学療法士協会が臨床実習指導者や学生を対象に行ったアンケート1)では,臨床実習指導者の56.0%が「学生の臨床実習を行うための技能等が不足していると感じる」と答え,実習前の学生にもっと教育してほしい内容に「コミュニケーション,接遇」,「臨床推論を含む理学療法評価学」が多かった.また,学生に対して「養成施設の授業で修得した知識・技能が,臨床実習の現場で必要とされた知識・技能と一致していたか」の問いに学生の61.9%が不足していると感じていると答えている.これらの結果は,学内教育では臨床場面に即した具体的な実践教育が不足しており,臨床実習教育ではコミュニケーションがうまくとれず,理学療法を施行するうえで必要な評価が十分にできない学生が多いことを意味している.
実際の臨床実習では,検査・測定はできても問診による情報収集ができず,検査・測定で得た結果を統合して評価することのできない学生をみかけることが多い.これは学内教育で問題解決型思考が学生に理解されていないことや,臨床実習指導者が実習で学生に対して知識偏重の指導を行っていることが要因と考えられるが,それ以上に「コミュニケーション能力の低下」が大きな問題と感じている.臨床においてはコミュニケーションのなかでも対話能力の低さが問題となる.相手が伝えたいことを言葉で受け取り,自分の言いたいことを言葉で伝える言葉のキャッチボールができないと対話は成立しない.対話が成立しなければ信頼関係を築くのは難しい.臨床実習におけるさまざまな問題はこの「対話能力の低下」が根底にあると考えている.対話能力が低ければ今後,ますます重要となる「多職種連携」にも支障が及ぶと思われる.
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