理学療法ジャーナル 51巻8号 (2017年8月)

特集 理学療法と臓器連関

EOI(essences of the issue)
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 各種臓器は単独で存在しているのではなく,それぞれ影響を及ぼし合いながら機能している.また,運動療法や物理療法により体にストレスをかけることにより,各種臓器にも少なからず影響が及んでいる.理学療法士としてなぜ臓器連関を意識しなければならないのか.理学療法周辺にはどのような臓器連関が考えられるのか.臓器同士の連関について理学療法士として知っておかねばならないことについて解説していただいた.

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はじめに—疾患別リハビリテーションの嬉しくない副産物

 2006年度診療報酬改定の「質の高い医療を効率的に提供するために医療機能の分化・連携を推進する視点」により,「理学療法料」は廃止され,脳血管疾患等リハビリテーション,運動器リハビリテーション,呼吸器リハビリテーションおよび心大血管疾患リハビリテーションの4つの疾患別の評価体系となった.ちなみに2006年度診療報酬改定では,当時の高齢者リハビリテーション研究会より,「長期にわたり効果が明らかでないリハビリテーションが行われている」との指摘があり,疾患ごとに算定日数上限が設定されたことや,「リハビリテーション医療の必要度の高い患者に対し重点的にリハビリテーション医療を提供する観点から,集団療法にかかる評価は廃止し,個別療法のみにかかる評価とする」となったことも記憶しておくべきである.

 あれから,わずか10年で,「理学療法料」を経験していない理学療法士の数のほうが多くなった.この疾患別リハビリテーションの導入が唯一の原因とは言わないが,理学療法士が疾患別の専門性を求められるようになり,臓器や機能の各種連関をはじめ,身体全体をシステムとして捉えることが疎かになっていることは否めない.ひとを診る理学療法から,疾患を診る理学療法へ後退した,と言っても過言ではないかもしれない.

 一方,わが国は世界で唯一の超高齢社会である.2006年度の診療報酬改定が議論されていた2005年にわが国の高齢化率は20.2%となり初めて20%を超えたが,2016年の高齢化率は26.7%と世界で類をみないほど急激に高齢化が進んでいる1).人口の高齢化に伴い,理学療法対象者の高齢化も進んでおり,主病名が付いたとしても複数の疾患を有し,重複した障害を有する患者を担当することも日常茶飯事である.例えば,転倒による左大腿骨頸部骨折で入院した高齢男性では,病名欄や既往歴欄に「慢性心不全」,「心房細動」,「肺炎」,「慢性腎臓病」,「貧血」,「骨粗鬆症」,「脳梗塞後遺症」,「イレウス」,「認知機能低下」の記載がある場合がある.高齢化率の上昇,疾病や障害構造の変化があるなかで,「私は脳血管疾患等リハビリテーションが専門(なので,他の疾患や障害のことはわからない)」というのは,あまりにも無責任である.

 各種臓器や各種機能はそれぞれ影響を及ぼし合いながら働いている.誌面の都合上,すべての連関を網羅することはできないが,本特集では,内部障害分野の各種疾患を軸に,理学療法士としてなぜ臓器連関を意識しなければならないのか,理学療法周辺にはどのような臓器連関が考えられるのか,世界一の超高齢社会で活動する理学療法士として知っておかねばならないことについて解説いただくことにした.本稿では,総論として,理学療法と臓器連関の関係について概説する.

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はじめに

 急性発症による疾患は少なからず炎症が基盤にあり,身体はその影響を受けてさまざまな反応を示す.炎症反応として代表的なものは,腫脹,発赤,発熱,疼痛であるが,全身性に炎症反応が及ぶと敗血症が生じ,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC),多臓器不全を引き起こす.このような炎症による全身反応は,従来,白血球数,脈拍,呼吸数,体温からなる全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome:SIRS)として知られていた.身体のさまざまな臓器は,サイトカインやホルモンなど神経内分泌伝達系を介して相互に連携があり,多臓器連関と呼ばれる.急性期の理学療法において多臓器連関を理解することは,リスク管理,目標,プログラム,禁忌事項を考慮するうえで有用である.

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はじめに

 腎臓の役割は老廃物の排泄や体液量,電解質,酸塩基平衡の調節,ホルモンの産生など多岐にわたる.何らかの理由で腎機能が低下するとこれらの働きが十分できなくなり,後述する呼吸・循環器症状,精神神経症状,消化器症状,骨関節,血管,血液など,多臓器に関連した腎不全症状がみられるようになる.症状によっては理学療法を行ううえで阻害因子となる場合もある.

 本稿では,腎不全症状と臓器連関を解説し,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)患者の理学療法を実施する際の注意点について述べる.

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はじめに

 多臓器連関は各臓器の障害が両方向性に影響を及ぼし合い,各々の臓器障害が進展していくことを指す.心臓は全身の組織へ酸素や栄養を運搬するポンプの役割を担っており,心臓に障害が出れば多臓器に障害が波及することは自明のことである.

 しかし近年,循環器領域において多臓器連関がクローズアップされる背景には,多臓器の障害が心臓に悪影響を及ぼし,それがむしろ予後を規定する重大な因子であることが明らかになってきたためである.2016年に改訂されたヨーロッパ心不全学会1)の心不全診療ガイドラインにおいては,comorbidityのセクションに多くの頁が割かれ,心不全の予後改善には多臓器への介入を考慮せざるを得なくなっている.本稿では,循環器疾患における多臓器連関について最近の知見を交えて述べてみたい.

呼吸理学療法と臓器連関 平澤 純
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はじめに

 慢性呼吸器疾患患者の理学療法において,患者の換気障害(閉塞性,拘束性,混合性)の有無や程度,動脈血ガス分析等によるガス交換異常の有無や程度を知ることは大切である.さらに,呼吸を理解する場合,肺や全身への血液供給や酸塩基平衡,呼吸調節など他臓器とのかかわりも重要である.

 慢性呼吸器疾患では低酸素血症や高二酸化炭素血症が生じるため,恒常性を保つために心臓や腎臓での代償が行われる.また,呼吸器疾患では併存症も多いことが報告されている.本稿では,慢性呼吸不全患者の多臓器連関における運動療法中のリスクマネジメントや運動療法に注意を要する併存症について解説する.

連載 超音波で見る運動器と運動療法Q&A・第8回

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Question

 17歳女性,バレーボール部員.左膝前方痛を主訴に来院した.痛みのためジャンプするのがつらい.エコー所見を示す(膝前方走査,長軸像).何が生じているか?

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 2011年3月11日に東日本大震災が発生し,甚大な被害を受けた.現在も「自宅がなくなった」,「自宅に帰りたくても帰れない」などの理由で仮設住宅や被災地外で暮らしている方が多くいる.また,コミュニティが確立できず,介護や福祉のサービスを満足に受けることができずに生活不活発病と向き合い生活されている方も多くいる.

 被災から1年が経過したとき,福島県内で「よろず健康相談」が開催され,国立病院機構災害医療センターの小早川義貴医師に紹介を受け,筆者も参加した.小早川医師は災害派遣医療チーム(disaster medical assistance team:DMAT)事務局の医師であるが,超急性期だけではなく,生活不活発病の予防を視野に入れた慢性期の活動も行っている.現在も被災地の診療業務支援,自治体職員の産業保健,住民対応などを行い,一方で2015年9月の関東・東北豪雨や2016年4月熊本地震など,その後に発生した災害対応も行っている.

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はじめに

 2017年5月12〜14日の3日間,伊橋光二大会長のもと,幕張メッセとそれに隣接する東京ベイ幕張ホールにて,第52回日本理学療法学術大会が開催されました(図).本学術大会は「理学療法士の学術活動推進」という大テーマのもと,各分科学会がそれぞれテーマを掲げ,昨年と同様に12の分科学会と10の部門による分科学会連合大会方式で開催されました.

 私は,一般病院に勤務しながら大学院博士後期課程に在籍している経験4年目の理学療法士です.臨床業務はもちろんのこと院内での学術活動や大学院生としての学術活動に携わっており,本学術集会のテーマである「理学療法士の学術活動推進」にはとても魅力を感じていました.院内での学術活動を推進させるためにはどうしたらよいのか,大学院生として行っている研究の質を高めたり発信したりするにはどうしたらよいのか,といった点を学びたいという思いを胸に本学術集会に参加しました.

 本稿では,私が参加した企画について報告します.

甃のうへ・第49回

齋藤 悟子
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 理学療法士をめざした理由と,現在の理学療法士としての目標は,大きく変容しました.養成校における縁,臨床実習における縁,それぞれが現在の就職先をめざすきっかけとなりました.そして,社会人となってからの縁により現在に至ります.

 就職のための面接で「忍耐があるか」と尋ねられ,「あります」と返答したのは10年以上前になります.よく言えば「忍耐のある人間」,悪く言えば「頑固者」だったのでしょう.ここまで続けることができたのも,この性格によるものかもしれません.現在の私は,新生児および小児の理学療法に携わっています.自分がここまで新生児および小児の理学療法をめざすとは,理学療法士をめざしたころの10代の私には考えられないことでしょう.

1ページ講座 理学療法関連用語〜正しい意味がわかりますか?

脳浮腫 卜部 貴夫
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■概念および病態

 脳浮腫とは,さまざまな原因により脳実質の細胞外腔や細胞内に水分が異常に貯留し,脳の容積が増大した状態である.高度な脳浮腫では頭蓋内圧の亢進により,容量が限られている頭蓋内では脳が裂孔から脱出する脳ヘルニアを来し,重篤な脳損傷が生じることがある.

 病態は,発症機序により血管原性浮腫と細胞障害性浮腫の2つに分けられる.血管原性浮腫は,血液脳関門の破綻により血管透過性が亢進し血漿成分が細胞外腔へ漏出し貯留することで生じる.細胞障害性浮腫は,細胞の代謝障害により細胞膜でのイオンの移動が障害され,細胞内へナトリウムイオンと水が流入し水分貯留により生じる.

1ページ講座 障がい者スポーツ

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 2020年東京パラリンピックに向けて,首都圏では準備が進められ,全国的に障がい者スポーツの啓発,また選手の発掘活動が行われている.本稿では,パラリンピック正式種目のシッティングバレーボールにおける理学療法士のかかわりについて紹介する.

入門講座 「はじめて」への準備(臨床研究編)・2

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はじめに

 研究倫理は種々の分野の研究に際して研究者が遵守すべき倫理です.医学系研究においては,病気の診断や治療など,患者を対象として実施する臨床研究と,基礎医学などの患者を対象としない非臨床的研究があります.臨床研究の目標は,人の健康の改善(疾病の治療・予防などの改善)あるいは人に関する生物学の解明(疾病の発症機序・原因・病態などの解明)につながる種々の知識・知見を創出し一般化させて,医学を進歩させることです1)

 しかし,近年の相次ぐ研究不正行為や不誠実な研究活動は科学と社会の信頼関係を揺るがし,臨床研究の倫理に関するさまざまな問題が相次いで生じています.これらによって国際的な信用問題が懸念されていることもあり,本邦での倫理教育の徹底が求められています2).研究不正はあらゆる学術分野で問題となる一方で,理学療法のように患者や健常者ボランティアなどの研究協力者を研究の対象とし,成果を出すにあたって人間の心身をある種の実験対象として用いる必要のある研究分野においては,より大きな倫理的問題が生じるため,単に研究不正を禁じるだけではなく,人を研究の対象とするがゆえの特別な配慮が要求されます.

 臨床研究を積極的に実施し,その成果を学会発表や論文投稿などの形で公表して世界中の医療従事者と共有することは,確たる根拠を重視することでよりよい医療を実践しようというevidence based medicine(EBM),あるいは診療ガイドラインなどで示される標準的な医療をより確かな形で実践することにつながります.その一方で,臨床研究は,研究対象者の身体および精神または社会に対して大きな影響を与える場合もあり,さまざまな倫理的,法的または社会的問題を招く可能性があります.研究対象者の福利は,科学的および社会的な成果よりも優先されなければならず,また,人間の尊厳および人権が守られなければなりません.

 臨床研究の倫理に関する知識は,臨床経験がいかに豊富であっても,おのずと身につくといった性質のものではなく,また,臨床研究を取り巻く国内外のさまざまな環境変化や時間経過とともに少しずつ変更されていくものです.

 以上のことから,はじめて臨床研究を行う理学療法士の方々には本稿を通して臨床研究の倫理についての理解を深め,積極的に取り組んでいただきたいと思います.

講座 運動と分子生物学・4

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はじめに

 運動療法を中心にした包括的心臓リハビリテーションは心臓や血管のみならず,骨格筋や自律神経などに作用し,多面的な効果を有することは論を俟たない.例えば,心ポンプ機能改善,血管内皮機能改善,骨格筋ミトコンドリアの増加,交感神経緊張の低下などが挙げられる.近年の分子生物学の進展に伴い,運動療法の分子生物学的機序には,insulin-like growth factor(IGF)1-phosphoinositide 3-kinase(PI3K)-Akt経路,nitric oxide(NO)合成,サーチュイン,マイオカイン,micro-ribonucleic acid(miRNAs),endothelial progenitor cell(EPC)など多くの役者がかかわることがわかってきた.本稿では,最近の筆者らの知見も加えて,心臓リハビリテーションの予後改善効果の分子機序について老化や各臓器への運動の効果,運動の早期疾病予防の観点から概説する.

臨床実習サブノート 歩行のみかた・5

パーキンソン病 須貝 恵理
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はじめに

 パーキンソン病の有病率は人口10万人に対し約150人と言われており,好発年齢は50〜70歳です1).日本では高齢化とともに患者数が年々増加しています.原因は不明ですが,中脳の黒質ドパミン性神経細胞の変性,減少によりドパミン産生が減少し,ドパミンが正常の20%以下になると大脳基底核の機能障害により運動症状が出ると言われています2)(図)3)

 症状は,運動症状(安静時振戦,筋固縮,無動,姿勢反射障害)と非運動症状(精神症状,起立性低血圧,認知機能障害,リズム形成障害など)の2つに大別されます1).そのなかで歩行障害は運動症状と非運動症状の両面から影響を受けており,また,病期の進行によって変化していきます.罹患している年齢層も高齢者が多くなるため,場合によっては,加齢により脳血管性パーキンソン症候群の症状が混在してくる症例にも多く出会います.そのため,歩行障害の種類は多様であり,またメカニズムも複雑で症例それぞれに合わせてアプローチしなければ,対処することは困難です.特に歩行障害は日常生活のなかでの移動としての制限因子につながりやすいため,症例や家族から「歩けるようにしてほしい.転ばないようにしてほしい」といったニーズを聞く機会も多くあります.

 一見難しそうに感じるかもしれませんが,「見方」の基本となるのは正常歩行です.研究や多くの論文が発表されていますので,神経生理学的な説明は,参考文献などを参照していただきたいと思います.本稿では,パーキンソン病の歩行障害についての概説と筆者が普段臨床で行っている方法やポイントなどを紹介します.

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要旨 本邦における母趾種子骨疲労骨折についての報告の多くは,手術方法や足底挿板療法に関するものが多く,われわれが渉猟した限り運動療法に関する報告は認めない.今回,母趾内側種子骨の疲労骨折が原因で歩行時痛が出現した症例を経験した.超音波画像診断装置を用いた評価を参考に運動療法を行い,良好な治療成績が得られた.母趾内側種子骨は第一中足骨頭底側部にあり,短母趾屈筋内側頭が内側種子骨を足底から覆うように走行する.母趾内側種子骨と短母趾屈筋,第一中足骨に囲まれた領域には疎性結合組織が存在し,母趾の屈伸に伴いその形状を柔軟に変化させながら,種子骨の移動を円滑にさせている.本症例は疎性結合組織の拘縮により種子骨の可動範囲が制限され,疼痛を惹起させていたと推察した.

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はじめに

 本邦では団塊の世代が75歳以上になる2025年に向けて,地域包括ケアシステムの構築が推進されている.そのなかで,理学療法士,作業療法士には,医療と介護の連携を促進し,高齢者の生活機能の維持・改善を支援する役割が期待されている1).しかしながら,理学療法士および作業療法士の卒前教育に「地域」が盛り込まれたのは,1999年の理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則2)改正以降であり,現在も地域理学療法学および地域作業療法学は4単位に過ぎない.また訪問リハビリテーションにかかわる理学療法士・作業療法士の87.6%が卒前卒後の訪問リハビリテーション教育の環境整備が重要だと感じており3),社会ニーズに応えるためには,教育プログラムを再構築する必要がある.

 そこで大阪府立大学(以下,本学)では,2014年度から課題解決型高度医療人材養成プログラム4)として「在宅ケアを支えるリハビリ専門職の育成—医療と在宅ケアの連携を推進する人材育成プログラム」を開始した.本事業は,地域包括ケアシステムで活躍できる理学療法士・作業療法士の育成をめざし,学士課程の学生および現職者を対象とした2つの教育プログラムから構成されている.ここでは,現職者を対象として開講した「地域リハビリテーション学コース」について紹介する.

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次号予告

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 運動療法を行っている場合,誰かに「それ何のためにやっているの」,「それをやってどんな効果があるの」,「その根拠は」と問われ,自分の意思決定の過程を適切に説明できる療法士がどれほどいるだろうか.毎年数多くのリハビリテーション関係の書籍が出版され,エビデンスに関しても多くの情報が提供され,例えばインターネットで国内外の文献を手軽に検索,入手することも可能である.そんな環境のなか,なぜ臨床現場ではevidence based medicine(EBM)や診療ガイドラインの利用や活用が進まないのか.今後,ユーザー側の教育に焦点を当てないと,いくら情報環境が整っても臨床に変革が進まないと考えられる.

 そんな課題のなかで,本書は満を持してタイムリーに出版された.「診療ガイドラインは質の高いエビデンスを系統的に収集し,そのエビデンスと専門家たちの知見などから推奨度を決定する」とされている.まず診療ガイドラインを理解すべく,本書では第2章で「エビデンスの評価と批判的吟味に必要な知識」を取り上げ,研究デザインなどに関して詳細に記述し,研究の初学者にとっても大変参考になる内容である.第3章では「診療ガイドラインの基礎知識」について書かれており,ガイドラインの質的評価を行うGRADEを紹介し,より質の高いガイドラインの作成,また質を見分けることの重要性を示唆している.

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 1966年(昭和41年)の第1回理学療法士国家試験合格者183名以降,社会の要請を踏まえた近年にみる急激な養成校の増加により,2016年3月現在,理学療法士国家試験合格者は139,214名となり,毎年約1万人の合格者が誕生するようになった.現在では,多くの施設で新人教育の充実化が図られ,先輩理学療法士のサポートにより,いわば受動型で理学療法士としての経験を積んでいける環境になりつつあると思う.一方で,一定の経験を積んでからは,多くは自己努力(能動型)で,より最善・最良の理学療法を提供する方法を追い求めなければならない.しかし,最近では以前と比べて理学療法にかかわる専門書が多くなったものの,臨床経験も十分でない若手理学療法士がそれを読み解き,内容を理解することは容易ではない.

 本書は《理学療法NAVI》シリーズ『“臨床思考”が身につく運動療法Q & A』(医学書院,2016年)の姉妹本であり,各分野の理学療法に関するエキスパートの臨床思考過程に触れる機会を与える書籍である.

文献抄録

編集後記 高橋 哲也
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 理学療法ジャーナル第51巻第8号をお届けします.今回の特集は「理学療法と臓器連関」です.骨格筋を主たる治療ターゲットとする理学療法士にとって,ともすると臓器は強い興味の対象ではないかもしれません.しかし,近年,骨格筋は各種ホルモン(マイオカイン)を分泌する内分泌臓器としても認識されるようになってきました.さらに近年,臓器間の連携(臓器間クロストーク)が個体全体での恒常性の維持に重要であることが明らかになってきました.理学療法という心身へのストレスを与える治療介入を行う際には,いかに安定した個体であるかを確認することが重要であり,無用な事故を最小限に防ぐために,個々の臓器機能の安定性に加えて,臓器連関の影響について熟知しておくことが重要なのです.

 先日,ある方に言われました.「理学療法士さんが血液データの結果をみることなんてあるんですか?」,「めまいや息切れなどの自覚症状や徴候を鑑別することなんてあるんですか?」と.理学療法士もたいそう低く見積もられたものだと思いましたが,それが世間の評価なのかもしれません.臓器の機能を示す血液データを読めることは,医療者間の共通言語を理解することに他なりませんし,自覚症状や徴候を鑑別できることは地域で働く理学療法士にとっては必須の能力で,何よりも「全人的アプローチ」と称されるリハビリテーションの専門家が,ヒトの体の仕組みや機能を理解することは,特別な手技を覚える以前に持ち合わせておくべきコア・コンピテンシーだと思います.一方,検査結果を読み,自分なりの解釈を並べて,病態把握こそがコア・コンピテンシーとすることも極端です(実際,内部障害分野では,そういうことを格好いいと勘違いする風潮があることは否めません).臓器を理解しつつ,「ひとを診る理学療法」を実践していきましょう.

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基本情報

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理学療法ジャーナル
51巻8号 (2017年8月)
電子版ISSN:1882-1359 印刷版ISSN:0915-0552 医学書院

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