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理学療法ジャーナル第51巻第8号をお届けします.今回の特集は「理学療法と臓器連関」です.骨格筋を主たる治療ターゲットとする理学療法士にとって,ともすると臓器は強い興味の対象ではないかもしれません.しかし,近年,骨格筋は各種ホルモン(マイオカイン)を分泌する内分泌臓器としても認識されるようになってきました.さらに近年,臓器間の連携(臓器間クロストーク)が個体全体での恒常性の維持に重要であることが明らかになってきました.理学療法という心身へのストレスを与える治療介入を行う際には,いかに安定した個体であるかを確認することが重要であり,無用な事故を最小限に防ぐために,個々の臓器機能の安定性に加えて,臓器連関の影響について熟知しておくことが重要なのです.
先日,ある方に言われました.「理学療法士さんが血液データの結果をみることなんてあるんですか?」,「めまいや息切れなどの自覚症状や徴候を鑑別することなんてあるんですか?」と.理学療法士もたいそう低く見積もられたものだと思いましたが,それが世間の評価なのかもしれません.臓器の機能を示す血液データを読めることは,医療者間の共通言語を理解することに他なりませんし,自覚症状や徴候を鑑別できることは地域で働く理学療法士にとっては必須の能力で,何よりも「全人的アプローチ」と称されるリハビリテーションの専門家が,ヒトの体の仕組みや機能を理解することは,特別な手技を覚える以前に持ち合わせておくべきコア・コンピテンシーだと思います.一方,検査結果を読み,自分なりの解釈を並べて,病態把握こそがコア・コンピテンシーとすることも極端です(実際,内部障害分野では,そういうことを格好いいと勘違いする風潮があることは否めません).臓器を理解しつつ,「ひとを診る理学療法」を実践していきましょう.
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