産婦人科の実際 70巻2号 (2021年2月)

特集 COVID-19に対する産婦人科医療の対策

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未曽有の新型コロナウイルスの感染拡大と医療崩壊の危機という,終わりのみえない状況は現在なお続いています。第2波,第3波と感染者数もなお増加の方向にあります。その一方で,医療に携わる人々の努力と経験から,感染者数は増加しても死亡率は減少しつつあります。感染者や重症者,死亡者が桁違いに多い諸外国と比較してもわが国の医療の優位性を感じることも事実です。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はSARS-CoV-2による呼吸器感染症である。2019年12月から武漢で流行が始まったCOVID-19は,またたく間に世界中に拡大し,2020年12月現在,世界中で7,000万人,日本では18万人の感染者が報告されている。長期的な免疫が誘導される画期的なワクチン開発により集団免疫が獲得されるなど劇的な進歩が訪れるまでは,継続的に新型コロナウイルスと対峙していかなければならない。

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永寿総合病院は,東京都台東区にある400床を有する分娩を取り扱う地域中核病院である。今回のCOVID-19の流行のなかで,当院では大規模院内感染が発生して多数の患者が亡くなられた。不幸な結果になられた患者およびご家族に哀悼の意を表したい。また,東京大学医学部附属病院,日本医科大学付属病院をはじめとした近隣の病院の先生方,東京都福祉保健局の職員の方およびその要請に応じてくださった東京都立墨東,大塚病院,東京都保健医療公社豊島病院の先生方にご尽力いただいたことに,この場をお借りして御礼申し上げたい。

本稿において,当院でのアウトブレイクの経験をお示しする機会をいただいた。読者諸兄の今後の診療の参考になれば幸いである。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対し,厚生労働省対策推進本部は,政府の対策本部の指示により国民の命と健康を守ることを最優先に,本感染症を指定感染症と定め,都道府県単位の協議会設置を要請した。妊婦はハイリスクに分類され,軽症でも自宅や宿泊施設等での療養が認められていない。また,無症状だが不安を抱える妊婦に対し,母性健康管理指導事項連絡カードを用いた措置と分娩前PCR検査への公費助成が始まったが,無症状で陽性だった場合の分娩方法は今後の検討課題である。東京都の陽性妊婦の頻度は全陽性者の0.34%で,人口あたりの妊婦の割合を下回り,第1波に比較し,第2波では減少傾向であった。

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新型コロナウイルス感染症の第3波が日本で猛威を振るっている。三重県でもいくつかのクラスターが発生し,過去最多の陽性者数となっている。そんななか,県内の産婦人科施設は県と協力し,新型コロナウイルス感染に不安を抱える妊婦を対象に唾液検体でPCR検査を実施している。また,新型コロナウイルスに感染した妊産婦に対し,退院後,助産師や保健師などが定期的な自宅への訪問や電話などにより,不安や孤立感の解消,育児に関する助言や支援など寄り添ったケア支援を実施するよう準備している。新型コロナウイルス感染妊婦の入院・分娩施設も2施設に限定し,一般産婦人科疾患への影響がないように対応している。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは,SARS-CoV-2と命名されたコロナウイルスにより引き起こされる。COVID-19パンデミック下においても,女性と男性が子どもを産み,家庭を築く権利をはじめとしたreproductive rightsが尊重され,COVID-19の拡大を防ぐ社会のニーズと調和させるための努力が求められる。本稿では,COVID-19パンデミックにおける日本生殖医学会の取り組みについてまとめる。

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COVID-19流行拡大を受けて不妊治療は不要不急かという問題が生じた。日本受精着床学会では,会員および不妊治療施設に2020年5月および11月にアンケート調査を実施した。その結果,一時的な減少はあるものの,感染対策を図りながら不妊治療を前向きに考える姿勢が明らかになった。また,山王病院リプロダクションセンターの臨床実績では,移植件数の一時的減少はあったが,採卵件数は増加傾向を示し,患者アンケートでも感染対策に配慮のうえで治療継続の意思が強く,一定の条件を満たせば不妊治療は不要不急でないと考えられ継続可能であることが示唆された。

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2020年2月に始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的なパンデミックはがん診療に大きな影を落としている。がんは,診断,治療の両面から患者の受診行動に制限がかかってしまうと予後に直結する可能性がある。一方,新型コロナウイルス感染自体によるがんの病態への影響は否定的であるが,がん患者ではCOVID-19が重症化する。コロナ禍でがんによる死亡率が上昇することが危惧されるのは,がんの発見と治療の遅れや本来行うべき治療やフォローアップの実施困難さである。本稿では,婦人科悪性腫瘍に関する感染蔓延による影響と国内外の対応を紹介したい。

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アジア婦人科腫瘍学会(ASGO)は,新型コロナウイルス感染拡大下でも学術活動を維持すべく,また診療現場や患者への不利益が生じないように,様々な取り組みを行っている。学術集会はWebベースの開催様式に変更したが,本来であれば海外渡航しなければ参加できなかった国際学会に自宅/職場にいながら参加できるWeb開催ならではの利点を周知し,各国から多くの会員が参加し成功裏に閉会した。新型コロナウイルス感染拡大下における婦人科腫瘍診療に関する学術情報は,ASGO機関誌JGOにより迅速審議のうえで世界に発信する体制を構築しており,今後も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する各国の医療体制,臨床現場からの症例報告や診療指針,基礎的研究の最新情報などを迅速に共有していきたい。新型コロナウイルス感染拡大下での婦人科悪性腫瘍に対する治療指針もASGOホームページに掲載している。このような状況下でもアジアの婦人科腫瘍学が停滞することなく発展できるよう,またアジアの婦人科腫瘍患者への不利益が生じることのないよう,今後もASGO各国との連携を密にして取り組んでいきたい。

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2020年2月のLancetの報告以来,妊婦の新型コロナウイルス感染に関する論文が多数発表された。これまでの報告では,早産リスクは高いが,胎児異常,流産,死産のリスクは高くはない。母子感染率は2~3%と推定されるが,胎児感染は稀である。妊婦の症状は,非妊婦と変わらないとの報告が多い。11月に米国疾病管理予防センター(CDC)は,妊娠は重症化リスクであると発表した。母体重症化のリスクは,肥満,糖尿病,喘息,高齢とする報告が多い。

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2020年初めからわが国でも流行が拡大している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,その強い感染力や未発症者からも周囲の人間に感染を起こすことから,院内感染の防止が困難な感染症である。院内感染の防止には,病院全職員が情報と方針を共有し,職員のみならず患者やその家族にも協力してもらい感染防護策を徹底することが必要である。また,COVID-19患者と疑い患者・非感染患者の分離のみならず,それらの患者に接する医療者も厳格に分離することが重要である。産科診療では,時間外の緊急入院が多いため,患者には日頃から感染リスクの低い生活を心がけてもらい,入院時には感染リスク評価とそれに応じた対応が必要である。

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急速なパンデミックとなった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して,わが国では欧米に比して軽微な感染蔓延で制御されつつあったが,2020年末になり第3波の感染拡大を迎えつつある。本稿ではCOVID-19の特性に鑑みつつ,全国で4施設の特定感染症医療機関のうちの1つである当施設で,実際に患者を受け入れてきた経緯,病室の管理,医療スタッフの配置などについて述べる。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が拡大している状況などを踏まえ,妊娠中の女性労働者に対しても様々な母性健康管理が図られてきたが,職場の作業内容などが感染のリスクを高め,妊婦の不安やストレスを増長する事例も散見されている。国はこれらに対しての「新型コロナウイルスに関する母性健康管理措置」を講じ,働く妊産婦や事業主を支援するとともに,新型コロナウイルス感染拡大下における離職防止にも取り組んでいる。

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2020年,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界中で蔓延し,2021年1月現在も感染拡大は続き,第3波が到来,いまだ収束の兆しはみえてこない。感染予防として「3密回避」や「ソーシャルディスタンス」が重要であり,社会経済への影響も残るものの,今も緊迫した医療体制が続いている。このCOVID-19は産婦人科領域を含む医療界に大きな影響を与えた。日本産科婦人科学会は,緊急事態宣言下における産婦人科診療の変化について知っておくことが望ましいと考え,2020年5月に全国緊急アンケート調査を行った。

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妊娠初期に発見された子宮頸部細胞診(Pap test)異常症例を追跡した報告は少ない。当院で妊娠初期にPap testを実施した961例中46例(4.7%)に異常所見を認めた。そのうち,ASC-USが26例(2.7%),軽度扁平上皮内病変(LSIL)が10例(1.0%),ASC-Hが6例(0.6%),高度扁平上皮内病変(HSIL)が4例(0.4%)であった。LSIL症例の70.0%(7/10),ASC-H症例の66.7%(4/6),HSIL症例の50.0%(2/4)でPap testは陰性化したが,0.5%(5/961)に子宮頸部円錐切除術を要した。

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母体や新生児の急変対応や心肺蘇生を学ぶため,NCPRやJ-MELSコースなどシミュレーションを用いた講習会が近年各地で開催されている。しかしながら,多くの施設では,実際に急変対応をすることは非常に稀であり,一度だけの受講では知識・スキルが身についていない可能性がある。われわれは,in situ(シミュレーション用の模擬環境ではなく,実際の分娩室などの臨床現場)で定期的にシミュレーション研修を行った。業務の一環として定期的に実際の現場で研修を行うことで,スキルや知識の定着だけではなく,物品や動線などの問題点が速やかに解決され,病棟の「医療安全文化」の醸成に寄与することができると思われた。

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頸管無力症に対する頸管縫縮術の一定の有効性は示されており,当院では妊娠経過中に頸管無力症と診断した場合は治療的頸管縫縮術を行っている。今回われわれは,妊娠23週の胎胞脱出に対し治療的頸管縫縮術を試みるも結果的に腟壁を縫縮する形となり,4週間の妊娠継続を図れた1例を経験したので報告する。症例は36歳,1経産婦で,前回は正期産であった。妊娠23週1日の定期健診時に胎胞脱出を認め当院に母体搬送となり,同日緊急腟壁縫縮術を行った。妊娠27週6日に胎胞の再脱出を認め,骨盤位であることから同日緊急帝王切開術を施行した。頸管無力症の胎胞脱出例で胎胞の還納が困難な場合でも,腟壁縫縮により妊娠期間の延長が図れる可能性がある。

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卵管間質部妊娠は,異所性妊娠の2~4%と比較的稀な疾患である。腹腔鏡下手術による外科的治療の有効性が多く報告されているが,術後の妊娠時に子宮破裂のリスクや分娩方法の選定が必要になるなどの問題が生じる。今回われわれは,メトトレキサート(MTX)の全身投与による保存的治療が有効であった卵管間質部妊娠の4症例を経験した。平均年齢は30.8歳,治療前の平均血中ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)は15,162mIU/ml,1例に胎児心拍を認めた。MTXは50mg/m2で投与した。平均投与回数は2.5回で,hCG陰性化までの平均日数は113.8日であり,治療中に有害事象は認めなかった。卵管間質部妊娠のMTXによる保存的治療は子宮への損傷が少ないと考えられ,挙児希望のある症例には有用となる可能性がある。

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産婦人科の実際
70巻2号 (2021年2月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0558-4728 金原出版

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