胃と腸 17巻4号 (1982年4月)

今月の主題 胃の隆起性病変(polypoid lesion)―その形態と経過

序説

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 胃内に隆起する病変としては,過形成性ポリープ,いわゆる異型上皮巣(境界領域病変),疣状びらん(gastritis verrucosa),Ⅰ型あるいはⅡa型早期癌,Borrmann 1型および2型進行癌,カルチノイド,好酸球性肉芽腫,各種の粘膜下腫瘍など多くのものがみられる.これらをすべてpolypoid lesionと総括してよいのか?polypoidというと,従来われわれの頭の中にあるpolypという概念がひっかかるので,むしろelevated lesionとしたほうがよいのではないか?という意見が聞かれる.しかし,これは早期胃癌の分類と同じようにわが国で生まれた言葉であり,しばらくは隆起性病変イコールpolypoid lesionと了解してゆくべきであろう.表題にわざわざ括弧を付けてこの言葉を入れたのも,このことを理解してもらいたかったからでもある.

 しかしそれにしては,本号の内容が過形成性ポリープといわゆる異型上皮巣(境界領域病変)とに重点が置かれすぎているとの御批判もあろう.企画に際してもその点はいろいろと議論されたが,とにかく今回は診断よりもむしろ経過に重点を置いて,きめ細かく,確実にfollow upできた例をたくさん集め,そこからある病変の病態生理学的な解明に迫ろうということになった.そうなると,現状では症例のたくさん集まっているのは前述の2病変,すなわち過形成性ポリープと隆起性異型上皮巣ということになる.

主題

胃の隆起性病変の形態 山田 達哉
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 われわれが“胃隆起性病変”という新しい言葉とその考え方を提唱したのは,1965年秋に札幌で開催された内視鏡学会と胃集検学会との合同シンポジウム“胃ポリープについて”の席上であった.

 今回,胃隆起性病変の形態について述べるに当たり,なぜわれわれが新しい言葉を考え出さなければならなかったか,その点についてまず説明したうえで,その形態について述べたいと思う.

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 本号の座談会でも話題となっているが,まず胃の隆起性病変(polypoid lesion)という定義が生じた事情について述べる.Poiypという語を初めて用いたのは,Gallenosであり,鼻孔から突出している粘膜が,小さなクラゲに類似していたためと言われている.この語は,消化管粘膜の隆起性の変化の肉眼的記載にも用いられ,更には病理組織学的にも隆起性病変のうち,悪性でないものを意味するようになった.

 私は,かつて“胃のポリープの悪性化”を考察するための前提として,胃ポリープについての諸家の記載と組織像を対比して検討した結果,おのおのの著しく異なる内容に驚いたことがあり,この語は少なくとも肉眼的形態の形容としては用いられようが,組織学的所見を表す語としては,種種の形容詞を付けても厳密な表現となりえないと考えられた1).日本大腸癌研究会の組織学的分類の欄にも,同じ趣旨の記載がある.

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 胃の過形成性ポリープは,かつては腺腫性ポリープと呼ばれ前癌病変の1つと考えられており,胃にポリープが見付けられれば,胃切除の適応があると考えられていた.筆者が胃ポリープの研究を始めたころはちょうどそんな時期で,比較的容易に胃ポリープの材料が手に入った.手術材料を用いた胃ポリープの組織学的研究の結果,腺腫性というよりは過形成性の性格を有していること,胃ポリープの癌化のポテンシャルは決して高くなく,前癌病変とはみなし難いことなどがわかってきた1).この結果,胃ポリープに対して胃切除が行われることはほとんどなくなり,標本の入手が困難なために胃ポリープの組織学的研究もしばらくは中断せざるを得なくなった.しかし,最近になって内視鏡的ポリープ摘除が行われるようになり,再び胃ポリープを組織学的に検索する機会が増えてきたようである2)

 このような情勢に鑑み,本稿では筆者が過去に行った胃過形成性ポリープの形態発生に関する研究をもう一度振り返ってみることによって,今後のこの方面の研究発展の叩き台とするつもりで筆を執った次第である.

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 胃ポリープは以前より病理組織学的1)~3)あるいは臨床的経過観察4)~12)の方面よりいろいろと研究されており,その研究テーマはポリープの悪性化とポリープの発生・発育に関するものであった.そのうちポリープの発生・発育に関しては,主に経過観察の面から検討され,内視鏡的にはポリープは“ポリープの芽”と呼ばれる小さな発赤から発育するのではないだろうかと言われるようになった4)5)8)~10)12)13)17).“ポリープの芽”という言葉は現在,頻繁に使用されているが,それに関する詳しい研究報告は非常に少ない.われわれの施設では以前からこの方面の研究を行っており,以下われわれのいう“ポリープの芽”を中心に述べてみる.

 なお,ここでいうポリープとは胃ポリープを過形成性ポリープと腺腫性ポリープに分けた場合の前者に相当し,以下ポリープと略す.

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 胃異型上皮巣は,臨床の場で1つの疾患単位として扱われて久しいにもかかわらず,その本態が腫瘍か過形成か,また癌との関連においていかに位置づけるべきかなど,未解決の問題が多い.したがって,本病変の臨床的な扱い方についても,早期胃癌に準じて手術すべきであるとするもの,polypectomyの適応であるとするもの,経過観察で十分とするものなど,様々に議論されているのが現状である.そこで本稿では,長期経過観察から得た知見をもとに,異型上皮巣に対する臨床的な対応の仕方について著者らの考えを述べてみたい.

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 Ⅱa-subtypeとわれわれが仮称した病変は,特有な内視鏡的および組織学的所見を示すと共に,特徴のある臨床病理学的背景を有する1つの病変であり,現在では,良性悪性の境界領域にある病変とみなされている.

 近年,このような境界領域性病変について,その本態や癌化の可能性が論議されるようになった.それらの病変は腺腫と呼ばれたり,異型上皮巣と呼ばれたりしているが,その範疇や定義が明確でないため,必ずしも同一の病変を取り上げて問題を提起していることにならず,いろいろな混乱が生じてきている.例えば,最もよく用いられている異型上皮の語の中の異型という概念は病理組織学的なものであり,個々の細胞ないしその形成する構造が本来のものと異なっているという状態を示し,厳密には高度から軽度に至るまでの程度を付記して表されている.そういう状態を示す上皮としては,悪性腫瘍細胞から変性などによる非腫瘍性の上皮の変化に至るまで様々な状態が存在する.それゆえ,厳密には良性悪性境界領域の異型上皮巣と言うべきであろうが,この異型についての病理組織学的判断の個人による違いのために,特に生検診断においては,いろいろの種類のものがこの名の中に取り込まれるおそれがある.特に,生検診断学的なGroup分類のGroup Ⅲというのは,診断する人により,あるいは試料により,判定が一致しないので,これをもって直ちに単一の病変であるⅡa-subtypeと同一なものであるとは言えない.Ⅱa-subtypeの診断過程について述べると,まず内視鏡的観察によりその診断が下され,適切な生検組織試料の組織学的所見によって裏付けられ,更に厳密なコントロールの下にfollow-upされるのである.これらの手続きのなかで診断が誤っていたり,あるいはこの範疇に入らぬものを,相当数見出し除外することができた.

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 芦澤 胃の隆起性病変と申しますと,皆様御存知のように,早期癌のⅠ型,Ⅱa型,進行癌で言うとBorrman 1型,あるいは2型も入るかもしれません.それから,粘膜下腫瘍,珍しいものとしては好酸球性肉芽腫,carcinoid,またgastritis verrucosaなどが入るわけですが,それらの診断については,もう何回か取り上げられています,したがって,本日の座談会では,主としてそれらの経過を話題にします.

 今申しました珍しい病気については,経過をみた例は少ないので,話題の中心は過形成性のポリープと,いわゆる境界領域の病変が主体ではないかと思います.

Coffee Break

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 消化性潰瘍は種々の病態を示し,1つや2つのパターンに分けて理解するのが困難である.この傾向は病態の研究が更に進むに従ってますます深まるであろう.とりあえず引用をもって紹介することにする.Annals of Internal Medicine 95:609~627, 1981に,今は亡きM. I. Grossmanが司会をしたUCLA Conference, Peptic Ulcer:New Therapies, New Diseasesが掲載されていて,その中で,J. I. Rotterの発言の中に引用された表をここに紹介する.現在わかっていることだけでもこれだけあり,わかりつつあることは更に次々と消化性潰瘍は1つの症状であることを示唆しつつあるようである.

残胃胃炎
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 消化性潰瘍で胃部分切除術を施行された残胃の胃炎については多くの報告があるけれども,なかなか対象の質的バラツキが甚しいので細かい内容については説得力が乏しいきらいがあった.特にコントロールの選び方が難しい感がある.しかし,なるべくうまく合わせようとして,年齢,性などについてきちんとしたマッチテストをしてみると,意外に早い時期に,意外に高頻度に術後胃炎が出てきていることがわかる.

 たとえば,表のように消化性潰瘍手術後の残胃粘膜と,それにマッチさせた十二指腸潰瘍患者の胃体部腺領域の粘膜像の差がかなりなものであると,Saukkonenらが報告している.しかも,特に吻合部近辺では,術後の年月が長いほど腸上皮化性や異型が増えてくるようである.これらの背景因子としては血中ガストリン値が取沙汰されているが,腸液の逆流も考えに入れておく必要がある.

Enteroinsular Axis
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 McIntyreらやPerleyらは,ブドウ糖を経静脈投与したときよりも,経口投与したときのほうがインシュリンの反応が大きいことを見付けた.インシュリン分泌は血中ブドウ糖濃度に影響されるけれども,それとは別に,経口摂取されたブドウ糖に対して消化管から分泌される何かが関与していると考えられた.

 それからは,多くの消化管活性ペプタイドについて,この現象とのかかわり合いを検討する仕事がなされたのである.結果は,多くの活性ペプタイドが関与しうることがわかったのだが,ブドウ糖の生理的な量を投与した場合,これに対応してくるものはGastric Inhibitory Polypeptide(GIP)とエンテログルカゴンであることが判明した.Makhlouf,Thomasら,O' Dorisioらがこういう研究をした.

便潜血反応
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 便潜血反応はヘモグロビンのpseudoperoxidase反応を利用したものである.血液の存在により,過酸化水素がベンチジン,グアヤック,オルトトリジンなどを酸化して発色させることによって潜血の検出をする.便潜血反応の臨床的意義については諸論があるが,もう長いこと臨床第一線で使われてきた検査であり,今も盛んに大腸疾患のスクリーニングとして用いられていることに変わりはない.

 便中血液が2ml/100g以下であれば,潜血食をきちんと守った場合には,かなりしっかりと潜血反応が陰性になり,食餌制限をゆるめた場合の5分の1に偽陽性は減ることがわかっている.食餌制限をきちんと守らなかった場合にベンチジン反応偽陽性になる原因としては,腸詰め,赤い肉,生野菜,新鮮な果物などがある.だから,このようなものは潜血食から除外する必要がある.

飲酒者の血中トリプシン
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 Temlerらによって開発された血中トリプシン様免疫活性を測定する方法が現在膵炎診断に広く用いられるようになってきた.

 Adrianらによれば,慢性膵炎で脂肪性下痢を伴う患者の空腹時血中トリプシン値は極端に低値を示し,脂肪性下痢を伴わない慢性膵炎患者では正常値を示すという.そこで,食餌負荷を行うとどうだろうと気になるが,AdrianらやLake-Bakaarらによれば,余り有意の結果が得られないということである.

バイパスのあとに
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 肥満のために腸バイパスを作る手術は米国などではよく行われているようである.この手術のあとには,いろいろな代謝障害を来すことも年々詳細にわかってきた.もちろん,障害だけでなくよくなる面も同じである.

 この手術のあとには,肥満によるインシュリン過分泌もよくなり耐糖能も改善する.小腸全域から放出されインシュリン分泌を促進するgastric inhibitory po1ypeptide(GIP)の食後分泌も減少する.

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 偽膜性大腸炎の多くは抗生物質投与によってひき起こされ,Clostridium difficileが関与しているのだろうとされている.診断に際し内視鏡検査は重要な手段であるが,従来言われていたようなシグモイドスコピーで十分であるというのは余りあてにならないのだそうである.

 フィンランドのK. Seppalaらの報告によると,次のような内容になる.

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 大腸におけるlinitis plastica型硬性癌の頻度は非常に少なく1)2)7)9)10)~12)14)15)19)20),いまだその特徴がはっきり浮き彫りにされていない.この型の癌は,X線像,内視鏡像,肉眼像からは原発性,続発性の区別が非常に難しく11),また炎症性疾患との鑑別が重要とされている12)21)

 また,大腸における腺腫の癌化は,様々の情況証拠から多くの研究者により支持されているが4)13)17),癌が進行するとその先行病変の痕跡をたどることが困難な場合が多い.

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 大腸の進行癌の肉眼分類は胃進行癌で用いられているBorrmann分類に準じて規定されているが,それに基づくと,大腸進行癌のうち,その頻度は2型が最も多く60~65%を占めている.次いで,3型,1型の順に多く,びまん浸潤型を示すものは極めてまれである.著者らは,下行結腸に約20cmに及ぶ広汎な狭窄を起こした大腸原発のびまん浸潤型癌を経験したので報告する.

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 慢性に経過するクローン病がfissuring ulcerを伴い,ときには腸管外に瘻孔を形成することはよく知られているが,腹腔内にfree perforationを来すことは比較的少ない.特に大腸クローン病では非常にまれとされている.

 われわれは炎症性大腸疾患として投薬治療開始1年2カ月後に,free perforationを来した大腸クローン病の1例を経験したので報告する.

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 大腸ポリープに関するMorson1),武藤2)らの組織学的分類は,その診断および治療の際に極めて有用で,現在広く採用されている.しかしながら,この分類のいかなる範疇にも該当しない症例がまれに存在するようである.われわれは,直腸炎罹患後約6年を経過して発見され,著明な低蛋白血症を伴い,巨大でしかも興味深い組織像を呈した直腸腺腫の1例を経験したので報告する.

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 潰瘍性大腸炎は本邦においては漸次増加の傾向にあり,病因,病態の解明はもとより治療面においても多くの努力がなされている1)~3).本症は内科的治療に抵抗する重症型や激症型症例も少なくなく,外科的処置を受けるものも本邦では11.8%から20.3%ある2)4)5)とされている.

 今回,われわれはあらゆる内科的治療にも抵抗を示し,奇異な炎症性ポリープの不規則な形成と頻回かつ多量の粘血便が続いたため外科的切除を行ったところ,海草状あるいは胎盤の分葉化状と形容される形態を示す多発・集簇性炎症性ポリポージスが認められた症例を経験した.いわゆる緩解期にみられるような萎縮・ポリポージス型とは趣きを異にした,極めてまれな続発性病変と考えられたので報告する.

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 ランブル鞭毛虫症(giardiasis)は上部小腸および胆道に寄生する原虫Giardia lambliaに起因し,分布は全世界的で保養地における流行や旅行者の下痢の原因として注目されている1)~5).わが国では衛生環境の改善と共に最近では診断されることが少なくなり,胆囊炎症状を呈する症例の報告が散見される程度である6)~8).今回われわれは原因不明の腹痛と便通異常を示す症例において,内視鏡下直接胆汁採取により,初めて本症を診断し,十二指腸・空腸生検組織の光顕ならびに走査電顕的検索により興味ある所見を得たので報告する.

入門講座 大腸疾患診断の考え方・進め方・4

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便潜血反応

 <質問>便潜血反応は,大腸疾患の場合,1日だけでなく,3日法がよいと言われますが,1日だけではどうしてだめでしょうか.

 武藤 False negativeが多いからです.これは京都の多田正大先生が,同じ人について1日目と2日目と3日目で偽陽性率がどう変わるかを,内視鏡学会で出された成績がありますが,それによると,control groupは多少false positiveが多くなるけれども,それよりもfalse negativeがずっと減ってくるんです.だから,病変があることがわかっている人で比較すると,3日間やれば99%つかまるということです.

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欧文目次

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 診察術マニュアル(日野原重明監訳)が上梓された.一読して驚いた.まさに診察術である.原題名は“Manual of History Taking, Physical Examination and Record Keeping”である.まことに訳者の翻訳の妙と言える.本書は,問診,診察,記録管理,付録の4章より成り,診察術のすべてを網羅してある.監訳者の序のとおり,患者を診察するものが,①どう問診して病歴をとるか,②どう診察し,③どう記載するか,を極めて明確に具体的に示した本である.日本ではこのような本はまだない.米国というのは何とプラクティカルな国であろうか.

 われわれが医学生のころ―30数年も前になるが―教わった内科診断学にも,この本にあるような項目はちゃんと記載はされていた.しかし,このような具体的な形で教わるのは,おそまつながら,医者になって30数年たった今日初めてである.

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Association of Clostridium difficile Toxin with Symptomatic Re1apse of Chronic Inflammatory Bowel Disease: Y. M. Trnka, J. T. LaMont (Gastroenterology 80: 693~696, 1981)  抗生物質による偽膜性大腸炎の95%,抗生物質性下痢の20%の便で,Clostridium difficile toxinが陽性である.このtoxinは,抗生物質による下痢に特異的と考えられていたが,Larsonらは,潰瘍性大腸炎の患者の便中にtoxinを認め,Clostridium difficileの繁殖に抗生物質が必須でないことを示唆した.

 著者らも最近,活動性の慢性非特異性腸炎患者の便中にC. difficile toxinの存在を報告し,その患者が症状再燃を来し,vancomycin治療に奏効したのを経験した.

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Dysplasia-associated Lesion or Mass (DALM) Detected by Colonoscopy in Long-standing Ulcerative Colitis: an Indication for Colectomy: M. O. Blackstone, R. H. Riddel, B. H. Gerald Rogers, B. Levin (Gastroenterology 80: 366~374, 1981)  著者らは,シカゴ大学で病歴の長い潰瘍性大腸炎患者の監視システムを作り,大腸癌の発生をできるだけ早く診断する努力をしている.今回,4年間に7年以上病歴のある広汎なあるいは全結腸型の潰瘍性大腸炎112名に対して大腸ファイバースコープを施行し,Dysplasia associated lesion or mass(以下DALM)について検討した.ルーチンに盲腸から直腸まで平坦な粘膜から10cm間隔に少なくとも5個所の生検が,疑わしい病変からは少なくとも3個所の生検が施行された.

 Dysplasiaの分類は,なお病理学者の間で問題となっているが,共著者のR. H. Riddelが生検標本をmild,moderate,severeと分類した.

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Propranolol for Prevention of Recurrent Gastrointestinal Bleeding in Patients with Cirrhosis. A Controlled Study: D. Lebrec, T. Poynard, P. Hillon, J-P. Benhamou (N. Engl. J. Med. 305: 1371~1374, 1981)  門脈圧を低下させると言われるpropranololは門脈圧亢進に伴う消化管出血の予防に有効と思われる.組織学的に肝硬変症と確認された患者(28~74歳,男57例,女17例)で消化管出血(食道または胃静脈瘤破裂56例,急性びらん性胃炎18例)で入院した例をat randomに2群に分け,一方にpropranolo1を脈拍数が25%減少する量(20~180mg/日)を経口投与し,他方にplaceboを投与した.いずれも出血源は内視鏡で確認され,入院当初24時間の輸血量は500ml以上,血清ビリルビン6mg/dl以下,腹水はないか,一過性かつ少量であった.1年間の経過でpropranolol投与群38例中,再出血は食道静脈瘤破裂1例のみ,死亡例は敗血症1例,肝不全1例の計2例であった.これに対して,placebo投与群では36例中16例が再出血(静脈瘤破裂12例,急性びらん性胃炎4例)し,うち4例が大量出血のため死亡した.Kaplan-Meier法によると,再出血のない患者の割合は,propranolol群で96%/12カ月,placebo群では50%/12カ月と計算され,統計的に有意差(p<0.0001)があった.出血源別にみても,propranolol群の再出血は有意に少ない.Propranolol投与により,一過性の脱力以外の副作用はなく,生化学的肝機能検査値,血清クレアチニン値にはplacebo群との間に有意差を生じなかった.Propranololの投与は肝硬変患者の消化管出血に対して予防的効果があると考えられる.また,本剤は経口投与可能な門脈圧低下作用を有する薬剤で,vasopressinやsomatostatinのような持続点滴が不要である,などの利点がある.長期投与による再出血予防効果を検討してみる価値があろう.

編集後記 福地 創太郎
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 胃隆起性病変はこれまでにも再三主題として取り上げられてきたが,今回は胃隆起性病変の中でも,いわゆる過形成性ポリープと,良性悪性境界領城に属するⅡa-subtypeあるいは隆起型の異型上皮巣と称される病変に絞って,その形態と経過が論じられている.内容的に全く新しい知見というべきものは少ないが,従来の論文に比し,より多数の症例と長期間にわたる経過観察に基づく知見が加えられ,これらの病変の臨床病理学的特性がかなり浮き彫りにされると共に,胃隆起性病変,特に境界領域病変に関する種々の呼称の概念や定義が明らかにされ,座談会にみられるように,ある程度の合意が得られているように思われる.

 しかし,実際には個々の症例で内視鏡的,生検組織学的に診断を下す場合,ときには手術された症例においてさえ,境界領域病変か高分化型の癌かを確実に鑑別することが困難な場合があり,また少数例ではあるが,腺窩上皮型の腫瘍性増殖を示す病変で内視鏡や生検で過形成性ポリープと誤られる例もあるので,これらの病変の臨床診断は極めて慎重になされるべきであり,この際,生検組織診断と共に内視鏡的肉眼所見の把握が極めて重要であり,更に定期的な経過観察所見を加味した総合的な診断が必要である.したがって,Group Ⅲと診断された病変の経過観察中に,最終的に癌と診断された場合,これらの症例を癌化とみなすべきか否かの判定は極めて慎重を要する.また,胃ポリペクトミーの適応に関する見解についても,これらの病変の本態をどう考えるか,実地臨床における癌との鑑別診断の可能性をいかに考えるかによる面が大きい.

基本情報

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胃と腸
17巻4号 (1982年4月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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