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編集後記
福地 創太郎
pp.472
発行日 1982年4月25日
Published Date 1982/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403108876
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胃隆起性病変はこれまでにも再三主題として取り上げられてきたが,今回は胃隆起性病変の中でも,いわゆる過形成性ポリープと,良性悪性境界領城に属するⅡa-subtypeあるいは隆起型の異型上皮巣と称される病変に絞って,その形態と経過が論じられている.内容的に全く新しい知見というべきものは少ないが,従来の論文に比し,より多数の症例と長期間にわたる経過観察に基づく知見が加えられ,これらの病変の臨床病理学的特性がかなり浮き彫りにされると共に,胃隆起性病変,特に境界領域病変に関する種々の呼称の概念や定義が明らかにされ,座談会にみられるように,ある程度の合意が得られているように思われる.
しかし,実際には個々の症例で内視鏡的,生検組織学的に診断を下す場合,ときには手術された症例においてさえ,境界領域病変か高分化型の癌かを確実に鑑別することが困難な場合があり,また少数例ではあるが,腺窩上皮型の腫瘍性増殖を示す病変で内視鏡や生検で過形成性ポリープと誤られる例もあるので,これらの病変の臨床診断は極めて慎重になされるべきであり,この際,生検組織診断と共に内視鏡的肉眼所見の把握が極めて重要であり,更に定期的な経過観察所見を加味した総合的な診断が必要である.したがって,Group Ⅲと診断された病変の経過観察中に,最終的に癌と診断された場合,これらの症例を癌化とみなすべきか否かの判定は極めて慎重を要する.また,胃ポリペクトミーの適応に関する見解についても,これらの病変の本態をどう考えるか,実地臨床における癌との鑑別診断の可能性をいかに考えるかによる面が大きい.
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