- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
Propranolol for Prevention of Recurrent Gastrointestinal Bleeding in Patients with Cirrhosis. A Controlled Study: D. Lebrec, T. Poynard, P. Hillon, J-P. Benhamou (N. Engl. J. Med. 305: 1371~1374, 1981) 門脈圧を低下させると言われるpropranololは門脈圧亢進に伴う消化管出血の予防に有効と思われる.組織学的に肝硬変症と確認された患者(28~74歳,男57例,女17例)で消化管出血(食道または胃静脈瘤破裂56例,急性びらん性胃炎18例)で入院した例をat randomに2群に分け,一方にpropranolo1を脈拍数が25%減少する量(20~180mg/日)を経口投与し,他方にplaceboを投与した.いずれも出血源は内視鏡で確認され,入院当初24時間の輸血量は500ml以上,血清ビリルビン6mg/dl以下,腹水はないか,一過性かつ少量であった.1年間の経過でpropranolol投与群38例中,再出血は食道静脈瘤破裂1例のみ,死亡例は敗血症1例,肝不全1例の計2例であった.これに対して,placebo投与群では36例中16例が再出血(静脈瘤破裂12例,急性びらん性胃炎4例)し,うち4例が大量出血のため死亡した.Kaplan-Meier法によると,再出血のない患者の割合は,propranolol群で96%/12カ月,placebo群では50%/12カ月と計算され,統計的に有意差(p<0.0001)があった.出血源別にみても,propranolol群の再出血は有意に少ない.Propranolol投与により,一過性の脱力以外の副作用はなく,生化学的肝機能検査値,血清クレアチニン値にはplacebo群との間に有意差を生じなかった.Propranololの投与は肝硬変患者の消化管出血に対して予防的効果があると考えられる.また,本剤は経口投与可能な門脈圧低下作用を有する薬剤で,vasopressinやsomatostatinのような持続点滴が不要である,などの利点がある.長期投与による再出血予防効果を検討してみる価値があろう.
Copyright © 1982, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.