胃と腸 10巻10号 (1975年10月)

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 良性所見を呈する胃潰瘍とⅢ型早期胃癌の鑑別は日常臨床上きわめて重要である.生検により診断し得た潰瘍辺縁の一部に偏在性に微小癌を有するⅢ型早期胃癌を経験したので報告するとともに良性潰瘍に対する生検の意義について考察を加える.

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 胃レ線診断および内視鏡診断の進歩に伴い,近年胃粘膜下腫瘍の報告例は増加し,決して稀な疾患ではなくなってきている.しかし,胃粘膜下腫瘍には鑑別診断が困難な症例も多く,ときには胃外性病変との鑑別にも慎重な配慮が要求される.

 筆者らは,比較的大型の胃外発育を示した胃平滑筋腫を経験し,胃レ線および内視鏡検査に加えて,血管造影ならびに気腹レ線撮影を行なうことにより診断しえた興味ある症例を経験したので報告する.

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 現在,X線ないし内視鏡の診断技術をもってしても典型Ⅱbの診断は容易ではない.細胞診,生検が診断の有力な手がかりとなった噴門部の微小Ⅱb型早期胃癌を経験したので報告する.

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 最近,筆者らは,8カ月間経過観察した,3個の隆起性病変が合併し,うち2個は異型上皮の一部に癌が併存し,他は過形成性ポリープであった1症例を経験したので,若干の考察を加え報告した.

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 癌はほとんど全胃に拡がっていながら胃集検のレベルでは恐らく発見困難であったろうと思われる平坦型早期胃癌で,かつその癌巣の拡がりが,X線検査,内視鏡検査の所見および切除標本の肉眼所見でも判然としなかった症例を報告する.

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 サルコイドーシスは系統的全身疾患で,リンパ節,肺,眼,皮膚,骨などに好発するが8)12)20)30)特に胃に限局したサルコイドの報告はきわめて少く,諸外国の報告例を集計しても46例,本邦では17例に過ぎない.そのうち,胃癌と胃サルコイドの合併例は,外国ではBauerの1例,本邦では,門田,佐藤の2例のみであった.最近,われわれはこの稀な1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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 早期胃癌の診断にとって,いわば最終目標として示されたⅡb型早期胃癌もその後の診断学的努力により幾多の報告がなされるに至っている.しかし,病理組織学的検討にもたえる厳密なⅡbは中村の報告によれば,5mm以下の微小胃癌にしか存在せず,そのようなⅡbの診断は臨床上未だ不可能に近い.

 現在,臨床診断の対象になっている症例の多くは類似Ⅱbあるいは随伴Ⅱb症例であり,X線および内視鏡所見の検討もある程度の拡がりをもつ“いわゆるⅡb型早期癌”についてなされているが,診断基準確立までには至らず生検による組織診断により確診されているのが現状であろう.

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 チリーにおける胃癌の頻度は高いが,多くは進行癌で,治療成績が不良であった.近年胃の診断について日本との交流が行われて,X線,内視鏡のすぐれた診断技術をとり入れ早期胃癌の診断が可能になっている.われわれは日本の早期胃癌研究者の協力を得て,1970~71年の2年問にVan Buren Hospital(Valparaiso,Chile)において,4例の早期胃癌を経験したので報告する.

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 消化管のカルチノイドに関しては,以前からその細胞の由来,形態および機能について多くの報告がみられる.その中で,十二指腸壁に発生したカルチノイドの症例は比較的少なく,またその細胞学的な検索もわれわれの知る限りにおいては十分になされていないようである.今回われわれは多発性胃ポリープを伴った,十二指腸に発生せるカルチノイドの症例を経験したので,同細胞の有する顆粒について,組織化学的および電子顕微鏡的に検索した結果を中心にここに報告する.

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 十二指腸良性腫瘍は比較的稀な疾患とされていたが,近年の消化器診断技術の発達と胃集検の普及とによりその増告が増加してきた,著者らのひとり中村ら1)(1969年)が集計した当時は欧米で422例,本邦で87例であったが,その後の本邦報告例をみると200例近くになる.

 著者らの症例も十二指腸良性腫瘍は経過観察例15例,手術例5例,計20例におよんでいる.手術例のうち乳頭状腺腫は1例であり,比較的稀な症例と考えられるので報告する.あわせて文献的考察を加える.

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 1年10カ月の経過観察を行ない,生検診断にて癌と確診し手術を施行した小さな平盤状の直腸早期癌の1例を呈示する.

 症 例

 患 者:T.N. 55歳 男性 公務員  主 訴:便秘  現病歴:元来便秘気味であったが,便秘が強くなったといって近医を受診,注腸X線検査を施行.偶然に直腸の小ポリープ陰影を指摘され,1972年10月30日千葉大学第1内科を受診,大腸ファイバースコープを施行,腸洗中に小指頭大のポリープの脱落を認めた.大腸ファイバースコープでは直腸およびS状結腸に2個の小さな広基性の隆起を認めた.直腸のものは平盤上で,S状結腸のものは無茎の小円形隆起であった.脱落ポリープは,直腸の隆起の一部と考えられ,組織所見は異型の強い腺管の増殖がみられ,腺腫性ポリープで悪性の疑もあると診断された.精査と手術の目的で1972年12月5日から12月20日まで千葉県がんセンターに入院,直腸の隆起について癌と確信できず退院,その後Fig.1のように経過検査を行ない,生検検査でS状結腸の小隆起は良性,直腸の平盤状隆起は乳頭状腺癌と診断されたため,1974年6月12日再び千葉県がんセンターに入院,最後の生検検査も癌と診断され同7月4日手術を施行した.手術はpull through法により人工肛門を作らず,約13cm直腸を切除した.以降現在まで健康である.

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 消化性潰瘍は現在までは主として内科的または外科的治療といった医療の問題からのみとりあげられてきたが,今後はさらに国民の健康保持または増進といった予防医学的立場からも取り組まれるべき問題である.アメリカでは人口の7~11%が生涯の間に一度はこの病気に悩まされるであろうとSun1)は述べているが,消化性潰瘍の病態生理に対する関心のみでなく,消化性潰瘍のみられない消化管とは何かといった方向も後述する疫学的手法とともに重要な方向といえる.

 潰瘍の発生論に関しては,動物実験または臨床的経験を基礎に数多くの仮説がみられるが,Sun,Shayらをはじめ多くの研究者は潰瘍発生の多因子説をとって,いくつかの因子が生体内でバランスをくずした時に潰瘍が発生するとし2),この考え方が広く一般に認められて現在に至っている.しかし,ここでは単に患者における消化性潰瘍といった問題提起だけでなく,われわれの臨床経験も加えて総説的に消化性潰瘍の成因,地理病理学的検討といった疫学的アプローチから巨視的にその発生論の分析を試みてみたい.

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 近年食道癌を取り扱う施設が増加し,数多くの手術が施行されており,早期食道癌も1970年の鍋谷1)の全国集計以来,各施設よりの報告が目につくようになってきたが,われわれの直面する食道癌は,いまだ進行癌が圧倒的に多く,その予後も他の消化器癌に比して決して満足すべきものでない.こうした中で,食道癌手術成績向上のためには完全切除症例であるべき症例を断端浸潤(特に口側浸潤)(+)のために不完全切除としてしまうことは絶対に避けなければならない.一般に食道癌切除線に関しては手術手技上,肛門側より口側に注意がはらわれているが,この方面の術前診断の報告は少ない.食道癌口側浸潤病変の内視鏡像の把握は,照射範囲の決定,切除範囲の決定に役立ち,ひいては食道癌早期発見にもつながり,治療成績向上の一助となる.われわれは食道癌口側に付随する病変の内視鏡的検討と病理組織学的検索を行ない,若干の知見を得たので報告する.

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 いわゆるⅡb病変の肉眼的な性状については,X線学的,内視鏡学的あるいは病理組織学的な立場から種々の検討が行なわれているが1)~27),なお不明な点が残されている.Ⅱb病変の性状は各検査法別に各論的に詳細に吟味されているが,各部門相互の所見の相関に留意した報告は比較的に少ないように思われる.

 われわれはⅡb病変の病理組織標本による断面像,摘出標本肉眼所見および内視鏡所見それぞれについて検討するとともに,各部門の所見を比較検討することにより,Ⅱb病変の肉眼性状の解明をはかり,2,3の知見を得たので報告する.

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 従来,胃粘膜下腫瘍の生検あるいは細胞診に基づく病理組織診断は,腫瘤表面に陥凹もしくは潰瘍形成を見る如き若干の例外を除き殆んど不可能であった1).最近のX線,内視鏡診断の目覚ましい進歩は,胃粘膜下腫瘍の存在診断を比較的容易とし,またそれらの発見頻度が増すにつれて腫瘍の占居部位,形および表面の性状から,かなりの確率でその質的診断を推測することもある程度可能とした.しかし,病理組織学的には推定診断の域を出るものではない.臨床的に出血,潰瘍形成あるいは閉塞等を顕わす症例は即刻外科的手術の対象となるが,一方,偶然に発見された無症状,あるいは比較的小さな粘膜下腫瘍も,究極的には外科的処置にゆだねられることが原則であった.かなりの粘膜下腫瘍が偶然発見され,かつ無症状,小腫瘤であるがため,当然かかる症例に対して多大の外科的侵襲が加えられることの疑問が生じてくる.これらの症例に対して,もし質的診断が判明すれば経過観察も可能となり,また臨床症状あるいは合併症が発現した時点で,最少限の外科的手段を講じうる可能性も生じてこよう.このように胃粘膜下腫瘍診断に於ては,予後の判定,さらに発育過程を追求するためにも病理組織診断の確立が極めて重要な課題である.われわれは,胃粘膜下腫瘍の病理組織診断を確立するアプローチとして,高周波電流応用に基づく凝固生検を試みているので,その概要について報告したい.

胃と腸ノート

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 症例14 64歳 男(伊勢市民病院 中野氏例)

 幽門輪に接して,これを全周性に取り巻く胃壁の硬化と,粘膜の深い陥凹および潰瘍が認められ臨床的にボルマンⅢ型癌と診断された(Fig.1).しかし,手術時に良く観察したところ幽門部より胃体部の切除線にいたるまで胃粘膜の退色がみられ,しかも胃壁は全体に肥厚し水腫状で“こんにゃく”を握るようであったという.組織学的に検索すると幽門部は硬化した進行癌であったが,変色した粘膜固有層にはⅡb型様に未分化型腺癌の浸潤があり,それ以下の胃壁全層には切除線部まで著明な癌細胞のリンパ管内浸潤がみられた(Fig.4).この部分はFig.3に示すように肉眼所見と一致して胃壁のfibrosisはほとんどみられず水腫状の肥厚を示していた.すなわち,本例はびまん性癌であるが,通常経験される胃壁の硬化を来したびまん性癌とは異なり,その前段階の水腫期に相当する例である.

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 蛇行型verrucosaは,粘膜ひだが蛇行したごとき外見を呈するもので,臨床的にはⅡa+Ⅱc型早期癌との鑑別が重要となる.本病変は,(イ)幽門輪付近の幽門前庭部に好発すること,(ロ)多くの場合,蛇行型それ自体は単発でも,その周辺粘膜にタコイボ型およびポリープ型の合併をみることなどの特徴を有する.図1a(38歳♂):立位圧迫像.図1b:同カメラ像.図2(62歳♂):立位圧迫像.ともに幽門前庭部に出現した蛇行型verrucosa症例で,蛇行する粘膜隆起の主体は,組織学的にその大部分が幽門腺の過形成よりなっており幽門腺領域に見られるGastritis verrucosaの特徴を有している.

 以上6回にわたり,Gastritis erosivaおよびGastritis verrucosa(タコイボ型,ポリープ型,こん棒型,蛇行型)の各型につき,そのX線像を供覧した.

重複胃癌(3) 三宅 政房 , 安井 昭
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 奇異な例 図1は切除胃標本の写真で,図2はその組織診によるプロットである.術前,幽門前庭部のBorrmann Ⅱ型癌と診断し,胃切除を行ない,組織学的検索によってⅡa+Ⅱc型早期癌(sm)と,その口側(oral)および肛門側(ana1)にそれぞれ小さなⅡb型早期癌を認めた.そのさらにoralの胃切除線附近,すなわち胃体部後壁小彎側寄りに3.7×2.0cmの範囲に粘膜下層(sm)~漿膜下層(ss)にかけて管状腺癌(tubular adenocarcinoma)の浸潤および脈管侵襲(v(+))も認められたが,奇妙なことに粘膜層(m)には癌は認められなかった.

 この例は断端陽性(ow(+))であるので,術後3カ月および6カ月の2回にわたり再入院させ,精査したが,残胃内には癌性病変,およびその他の所見は認められなかった.したがってペッツで把持された部分の約1cm幅で切除した部に癌巣が含まれていたのか,癌巣を残胃断端に縫い込んでしまったものか,あるいは,いわゆる壁内転移のため(幽門部の病巣より口側に離れすぎている嫌いはあるが)のものか,今のところ確診されていない.しかし精査の目的で肝動脈造影を行なったところ,肝転移を指摘されており,この点からみれば,壁内転移の可能性を強く疑える例である.したがって厳密な意味では重複癌の範疇に入らない症例かも知れない.とにかく厳重に警戒観察中である.

大腸血管造影のmerit(3) 木戸 長一郎
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大腸の良性腫瘍と血管撮影

 腺腫性ポリープにおいても,その部位に一致して血管増生や早期の静脈出現がみとめられる.しかし,癌との鑑別は決して容易でなく,腫瘍血管としての異常性を証明するか,どうかにかかっている.Villous adenomaやmyoma,神経原性腫瘍は拡張せる血管の増生が特徴的ではあるが,LymphomaではReticulum cell sarcomaのようにむしろhypovascularであるので良性腫瘍の診断に関する血管撮影の利益は少ないといえる.

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 前回の胆道造影能と肝機能との関係を理解するために今回は,胆道造影機序を,iopanoic acid(Telepaque)について述べる.

 iopanoic acid(I.A)は,経口的に摂取されると,腸に達して溶解する.I.Aは脂溶性の物質で,水には溶けないから,腸で溶解するには胆汁酸の存在が必要である.すなわち,I.Aが腸に達した時に,胆汁が十分に排泄されなければ造影剤は溶けない.

印象記

Digestive Disease Week '75に出席して 山川 達郎
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 最近,出席の機会を与えられたDDW '75(Digestive Disease Week '75)についての学会記をという本誌編集部の御用命で筆をとった次第ではあるが,元来浅学非才の私には,すべてを理解しここに記すことは余りにも大きな課題であり不可能なことに近く,単なる印象記に終ってしまうであろうことを,あらかじめ御許しいただきたいと思う.

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欧文目次

質疑応答 田中 弘道
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<質疑応答欄>への質問事項がありましたら「胃と腸」編集室質疑応答係宛お送り下さい.読者の皆様と本誌を結ぶ欄として御活用頂ければ幸いです.

(なお,解答の先生を御指定頂いても御希望に添いかねる場合もありますので御諒解下さい)

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 本書は著明な放射線科医Greenfield教授およびCooper技師長の共著によるルーチン撮影法の手ほどき書である.簡潔で要を得た原著であるが,訳書となるとその訳者に人を得ないとせっかくの良書も悪書となりかねない.幸い訳者秋貞博士は一言一句たりともゆるがせにせずに正確に意味を汲みとってから日本文におきかえるという態度で原著に接し,原著の誤りと思われる所や不明の部分については直接に原著者に問合わせるという慎重さで翻訳を手がけておられたのを知っているので,内容が正確に伝えられているという点では問題がない.また監訳者として田坂教授が目を通して助言を与えられていることも内容の信頼性をたかめている.

 さて,本書の内容についてであるが,この書物はあきらかに実地にたずさわる放射線技師を対象としたものであり,またその内容は日常のルーチン撮影法にかぎられている.従って部分的にみれば,もう少し撮影法を追加してもらいたいと思われる箇所もないわけではない.しかし全体としてみるとこの書の本来の目的にかなった,バランスのとれた内容となっている.第1章は撮影法の最も基礎的な部分を要領よく解説している.とくに整位(positioning)の概念がよくわかるように図で説明してあるのが便利である.この節の始めと終りにそれぞれ撮影の総論的な事項および放射線防護についての注意を1頁つつにまとめておさめてあるのは適切な配慮である.第2章から第9章へかけては,各部位の撮影についての目的,整位,撮影方向の指示,チェックポイントなどについての記載とその記載を視覚に簡潔に訴えるための写真および線画からなる内容が盛られている.これらの写真や図はスペースをゆったりととっていて,見易いものとなっている.

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 食道,胃病変の内視鏡と生検は何といっても図説と書いているように全体の半分,右ページに235図と,非常に豊富な写真で目を楽しませてくれる.

 この書は私にとって非常に懐かしい本である.というのは私ごとになるが,著者のひとり,当時Privat DozentであったDr. Ottenjann(彼は1970年,大阪での日本消化器病学会総会〔会長・増田正典教授〕にProf. Elsterと一緒に出席し,演題を発表しているので,本邦でも記憶の方も多いと思うが)のWiesbadenでの自宅に泊った時のことで確か1971年の秋だったと思うが,彼の地下の書斎で,刷り上ってきたこのFarhatlasのゲラを見ながら話がはずみ,夜遅くまでディスカッションした思い出があるからである.「いずれこの書が出版されたら,世界の何力国かで翻訳してほしいのだが……」といっていたが,今このように竹本教授・神津講師によって監修・翻訳されてみると,過ぎ去った西独での滞在の日々が昨日のように思い出されてくるのである.

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 「免疫学からみた肝臓疾患」を通読させていただいた.臨床免疫学叢書全10巻のうちの一巻である.

 内容は11章からなり,α-フェトプロテインと肝癌,慢性肝炎,肝硬変の免疫学的成立機序,薬剤性肝障害,肝炎の免疫抑制療法がその中心をなしている.いずれも,ごく今日的な話題であることはいうまでもない.

編集後記 熊倉 賢二
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 今月は症例・研究特集であるが,一読して1つの傾向がみられる.まず,ⅢないしはⅡbの症例が数例もあるということである.やはりむずかしいのかといった感じとともに,もっと何とかならないのかといった思いもする.偶然を必然にするためには,どうしたらよいのであろうか.生検が主力になって診断がすすめられているなかに,細胞診がきっかけとなった症例が目立つ.Ⅱbの診断には,はやくから細胞診に期待がかけられていたのに,このような症例はあまりにも少なすぎる.

 ところで,レントゲンはどうなのか.9月号の座談会でも明らかなように,遠隔操作のTV装置が全国的にあまりにも普及したために,X線写真の鮮鋭度は極端にわるくなってしまった.暗室透視でも同じ傾向である.そのため,長い年月をかけて発展してきた胃の微細病変のX線診断が著しく後退してしまった.各症例をみて,果してどんなX線装置でとった写真なのだろうかとも考えてみたりする.被写体とフィルム間の距離が大きくなったためにおきた幾何学的ボケによると,原因がはっきりわかっているのだから,元へもどしてもらわねば困る.拡大撮影を取り上げる前に問題にすべきである.

基本情報

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胃と腸
10巻10号 (1975年10月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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