呼吸と循環 31巻7号 (1983年7月)

特集 ペースメーカー最近の進歩

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 電池式植込みペースメーカは,1958年Senningらによって初めて臨床に用いられて以来多くの技術的改良が加えられ,性能が著しく向上した。

 ペースメーカの性能に必要な技術には2つの面がある。すなわち,(1)ペースメーカを構成する要素,たとえば電池,電子回路素子,電極などの技術.および(2)機能の選択および評価たとえば刺激波形,センシング特性,信号処理、プログラム機能,機器のメンテナンスなどの技術が必要である。(1)はハードウェア的な技術,(2)はソフトウエア的な技術と言っても良いかもしれない。

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 1930年Hyman1)が臨床例において最初に針電極を用いて経胸的心臓電気刺激を行い,また1952年にはZoll2)が前胸部皮膚に与えた電気刺激が徐脈の治療に有効であることを報告して以来,電気生理学的研究の進歩,ペースメーカーのGeneratorや電極の開発,改良が行われ徐脈性不整脈に対するペーシング療法は一般的となり,なお普及しつつある一方,頻脈性不整脈に対しても積極的にペースメーカー療法が行われるようになってきた。特に近年各種のペーシング方式の異なるベースメーカーが製造されているが,中でも注目されるのは生理的ペーシングの応用とそのための機種の開発である。現在まで徐脈性不整脈に対して多数の心室刺激型ベースメーカーが植込まれているが,心拍数は一定レベル以上に維持されているものの心機能はなお不満足な状態にある例も少なくない。また中には低血圧,頸静脈怒張,目まい,腹部不快感,動悸など一連の症状を呈するpacemaker syndromeを認める例も稀ではない。多くの例でこれらの原因が心房機能を無視した非生理的な心室ペーシングによることは,血行動態的に証明されている。これらの対策としての生理的ペーシングには,生体の要求する適切,良好な血行動態を得るために,生理的に心拍数を変える能力,心房の補助ポンプ作用(boosterpump),適当な間隔での心房心室の順次的収縮性(A-Vsynchrony)が望まれる。

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 ペースメーカー本体の急速な進歩に比較し,ペースメーカーリード.特に心室用リードは確立しているといって良い。しかし,リート耐久性,リード固定性,リード挿入の容易さなどにつき,年々着実な進歩がみられる。

 一方,心房ペーシングの必要性が強調されている今日,心房用リード開発は心室用リードほど十分でなく,この分野の発展が今後の課題である。ペースメーカー本体とリードは車の両輪のごとくで,一方の故障は全機能の停止につながる。

ペーシング方式の選択 桜井 淑史
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 ペーシング方式の選択,簡単なテーマであるが,他の生理的ペーシング,ペースメーカーリードの進歩,さらに不整脈の適応のテーマと重視する可能性がある。

 ペーシング方式では単極ペーシングか双極ペーシング,経静脈性心内膜電板ペーシングか,心外膜電極ペーシング,さらに最近の進歩の著しいDual chamberedpacingかsingle chambered pacingかの問題にふれなければならなくなる。

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 植え込み後に,体外より非侵襲的にペーシング機能を変更する事ができるprogrammable pacemakerの開発は著しいものがあり,急速に普及して来ている。program—mable pacemakerは植込み後に発生する各種合併症に対して,再手術する事なく対処する事ができるだけでなく,植込み後の種々の愁訴に対して各種パラメーターを変化させて症状の改善をはかる事も可能であり,その適応の範囲が広がっている。programmable pacemakerは2機能までの可変条件を有する狭義のprogram—mable pacemakerと3機能以上の機能を有するmulti—programmable pacemakerとに分類される。プログラム機能の可変条件としては,各機種により異なるが,パルス・レート(pulse rate),パルス幅(pulse width),パルス振幅(pulse amplitude)、モード(mode)、不応期(refractory period),ヒステリシス(hysteresis),域値測定(threshold measurement),テレメトリー(telemetry)等がある。図1に各可変条件の模式図を示す。以下,自験例を中心に各可変条件の有用性を述べる1)

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 今日徐脈性不整脈に対するベースメーカー治療は唯一確実な方法として広く臨床に用いられている。また近年の技術的な進歩によりペースメーカーは小型軽量化され、マルチプログラマブルなど多種機能が組入れられるようになり,電極にも種々の改良が加えられている。一方心臓電気生理学的検査法の発達も著しく,不整脈がより詳細に解析されるようになったこととあわせて,ペースメーカーの適応は拡大されるとともに,単に心室ペーシングのみならず個々の患者に対して最適なペーシングモードが選択されるようになってきている。更に植込み後のfollow upに際しても種々の新しい機構が利用され,その有用性が示されているのが現状である。ここではペースメーカーや心臓電気生理学的検査法の進歩と患者の経過観察結果などから,最近の徐脈性不整脈に対する適応について考えてみたい。

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 教室では頻拍発作を繰り返す症例にペースメーカー療法として1969年岩ら1)が開発した高周波誘導型ペースメーカー(三栄測器製Atricon)を植え込み治療する方針をとってきた。現在までに23症例に植え込み,最長13年1カ月で何らの合併症もなく良好な遠隔成績をえている2)。本論文においては,教室の経験をもとに頻拍に対するペースメーカー植え込みの適応に関する我々の考えを述べることとする。

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 従来より,血管径を連続的に測定する試みはしばしば行われてきた。特に微小血管径の測定には複雑な光学系と信号処理回路を組み合わせた測定系が用いられている1〜7)。最近,われわれは一眼レフカメラの焦点面に1個のイメージセンサを設置し,実体顕微鏡と組み合わせて30〜1,000μmの微小血管ならびにリンパ管外径を測定できるカメラ型微小脈管径測定装置を製作した8,9)

 今回は,3個のイメージセンサを用いて,画像表示型脈管外径計測装置を試作した。本装置は脈管の長軸方向上における3点の外径変化が同時測定できると共に,脈管の走行状態ならびに測定状況がオシロスコープ画像で常時モニタできる。

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 IgEで感作した,うさぎのbasophilを,抗原刺激することにより.活性の高い,低分子量,可溶性物質が放出されることが知られている。この物質は,血小板を変形し,凝集し,その顆粒を放出させる作用を有する事より,Platelet Activating Factor(PAF)と命名された1)

 その後の研究により,PAFは種々の動物の異った細胞系から,種々の刺激により放出されることが明らかになってきている2,3,4)

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 種々の病的状態における細胞膜機能を知る目的で赤血球が細胞モデルとして用いられることが多い。ショックという急性全身性循環不全においても,赤血球の細胞内Na濃度が増加するとの報告がみられ,赤血球浸透圧脆弱性の増加が示唆きれる1〜5)。著者はショック時の赤血球浸透圧脆弱性の発生機序を解明する目的で,臨床ショック患者,およびヒトと良く似た赤血球膜Na-K—ATPaseをもつ幼若家兎を用いたショックモデルを対象として,赤血球の浸透圧脆弱性の変化を観察した。さらに健康人赤血球にショック時に生ずると思われるライソゾーム酵素等を加えin vitroでin vivoと同様の変化が起こるかを検討し赤血球浸透圧脆弱性の解明を試みた。

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 肺疾患に基づく肺高血圧症は右室に負荷をおよぼし,究極的には肺性心に到ることも多い。しかしながら,その原因は種々雑多であり、右室負荷の程度も基礎疾患により異なる。

 なかでも原発性肺高血圧症(PPH)1,2)は全く原因不明の稀な難治性疾患で肺血管病変を主体とし,直接右室へ影響をおよぼすために右室圧負荷の代表的疾患の1つである。一方.慢性肺気腫(CPE)3)は肺実質病変であり肺胞低換気による種々の影響の結果,肺循環血液量の増加を生ずるため,右室への容量負荷疾患の1つとされる。

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 ファロー四徴症(T/F)の臨床症状やその重症度は主に右室(RV)の形態により規定されているが1),手術適応の決定等において,その重症度を左心系にも求める必要がある。主に幼小児T/Fの術前後の左心機能に関しては,Jarmakaniら2),Rocchiniら3),Borowら4).Millerら5),中沢ら6),等の報告があるが,年長者に関する報告はみられないようである。今回我々は18歳以上のT/F延べ37例において,心内修復術前後の左心機能の変化を検討し,幼小児のそれとは異なる知見を得たので報告する。

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 最近,開心術中のヘパリン投与およびプロタミン投与に際し賦活凝固時間(activated clotting time,以下ACTと略す)を測定し利用する施設が増加している。いくつかの報告例をみても,術後出血の減少1),プロタミンの過量投与の防止2,3),その他数々の利点を持っている4〜8)。ヘパリンおよびプロタミンの投与基準に対する考え方は,各施設で異っており,一律に比較検討することはできないが,その基本となる考えは,血中ヘパリン濃度の安全域への維持と,適切なプロタミン中和量の投与である。本論文では,当教室におけるACT測定の経験と考え方を述べた。

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 大動脈—冠状動脈バイパス術前後における収縮動態については以前より多くの検討がなされている。それに対して拡張動態についての検討は少ない。今回我々は大動脈—冠状動脈バイパス術前後において左室壁の収縮動態のみならず拡張動態についても検討を加えたので報告する。また術前後における各種心機能についても検討を加えた。

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 我国の虚血性心疾患の特徴として,(1)単位人口あたりの死亡率が欧米の8〜9分の1である。(2)異型狭心症の頻度が多い。(3)高安病,川崎病等の炎症性疾患による虚血性心疾患が多い。1908年.本症は高安1)により初めて記載された。比較的若年婦人に好発する動脈炎で大動脈,主要分枝動脈,肺動脈等を主に侵し,壁肥厚と非特異性慢性増殖炎,線維症を呈し,石灰化等が生じることがある。

 本稿では本症の冠状動脈病変を選択的冠状動脈造影所見より検討し,さらに外科療法について述べる。

呼と循ゼミナール

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 血管壁平滑筋のtoneを減少するカルシウム拮抗薬の登場など循環器疾患の治療における血管拡張薬の有用性は広く知られている。血管拡張薬は主として静脈系に作用し心室の前負荷を下げる亜硝酸剤などと,nifedipiineに代表される主として動脈系を拡張し後負荷を減少する薬剤に分けられている。右心負荷とのかかわりあいを考える場合にも,このような概念を当てはめるならば,左心に対する高血圧症と同様に肺高血圧症,特に前毛細管性肺高血圧症およびこれに伴う右心機能の障害を治療する手段として血管拡張薬を用いることができる,対象となる疾患は各種の慢性肺疾患およびその急性増悪期.肺血管系を障害する膠原病,原発性肺高血圧症などである。肺高血圧の成因として肺血管の器質的病変に加え血管攣縮の併存,少くともある領域では平滑筋のtoneが保たれている,あるいは病変に先行してtoneの増加がおこっているとの前提あるいは仮定の上に立った議論であることばいうまでもない。従来より数多くの報告がみられるが,二三の経験をまとめてみたい。

 狭心発作の治療に広く用いられているisosorbidedinitrateを肺小動脈抵抗の著しく上昇した慢性肺疾患例(図1,2)に舌下投与しその反応を検討した。

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 詳細な術前の電気生理学的検査や術中に行う心表面マッピングの正確な解析によりWolff-Parkinson-White(以下W-P-W)症候群に対する副伝導路切断術の対象は,潜在性W-P-W症候群や綾数副伝導路症例にまで拡大され,後者では一期的に2本の副伝導路の切断も可能となった1〜5)

 今回,心電図上洞調律時には心室早期興奮所見のない発作性頻拍症の28歳の女性に対し,術前と術中検査により,右心型と潜在性左心型の2本の房室副伝導路を有するW-P-W症候群と診断し,一期的に2本の副伝導路を切断し,頻拍発作を治癒せしめたが,右心型の副伝導路は順伝導時間の長い副伝導路であった。術前検査と術中の心表面マッピングにより,右心型の副伝導路の伝導時間や頻拍発作の機序についての解析が可能であったので報告する。

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 サルコイドージスは,全身の種々の臓器に病変を来たし,種々の臨床症状を呈する。我々は呼吸困難および胸部圧迫感を訴えて来院し、心電図上,急性心筋梗塞を思わせる所見を呈しながら,その後の検索の結果,広範な心室瘤を伴う心サルコイドージスである事が判明した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

基本情報

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呼吸と循環
31巻7号 (1983年7月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

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