Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
1932年にLofflerらは,一過性で遊走性の胸部浸潤影と末梢好酸球増多を来し,無症状または軽度の呼吸器症状を呈する症例を報告し1),以後,このような症例を単純好酸球増多症またはLöffler症候群という疾患名が用いられるようになった.1942年にWeingartenによりインドにおいて経験された,激しい呼吸器症状を伴い肺の浸潤影と末梢血好酸球増多を来す症例が報告され,熱帯性肺好酸球増多症と命名された.1952年にReederらは,上記疾患も含め原因によらず末梢血好酸球増加を伴い,肺浸潤を呈する疾患をPulmonary infiltration with eosinophilia, PIE症候群として提唱した2).この概念に基づき同年,CroftonらはPIE症候群を単純性肺好酸球症,遷延性肺好酸球症,熱帯性肺好酸球症,喘息を伴う好酸球症,結節性多発性動脈炎の5つに分類した3).
1969年,LiebowとCarringtonらは,末梢血好酸球の増多によらず組織学的に肺局所への好酸球の浸潤のみられる症例を広く総括して好酸球性肺炎Eosinophilic pneumoniaという疾患名を提唱した4).このような疾患概念が提唱されるようになった背景には,気管支鏡検査の進歩により気管支肺胞洗浄や気管支肺生検による組織学的評価が可能になったことがあった.また,同年,Car—ringtonらは,原因不明の長期にわたる呼吸器症状,胸部写真の末梢型浸潤影,肺組織への著明な好酸球浸潤,良好なステロイド反応性および高頻度の再発を特徴とする9例を報告し,慢性好酸球性肺炎Chronic eosinophilic pneumoniaという疾患名を用いた5).
これに対し,1989年になってAllenらは,急性の経過で発症し重症呼吸不全を呈するが,ステロイドが著効した4例の好酸球性肺炎を報告し,その臨床像から急性好酸球性肺炎Acute eosino—philic pneumoniaと命名し,慢性好酸球性肺炎とは独立の疾患概念を提唱した6).
これら歴史的変遷の上にたって,本稿では慢性好酸球性肺炎と急性好酸球性肺炎を中心に,好酸球性肺炎の臨床像と治療法について言及する.
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.