臨床婦人科産科 50巻3号 (1996年3月)

今月の臨床 産婦人科とウイルス感染

Overview

産婦人科とウイルス感染 川名 尚
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 この25年間で産婦人科臨床においてウイルス感染は重要な位置づけを獲得した.もともとウイルス感染は,小児科,内科の疾患と結びついていたために産婦人科ではあまり重要視されなかったが,風疹の催奇形性の問題に始まり,B型肝炎ウイルスの母子感染など,産婦人科にも重要な問題が登場してきた.それだけでなく,性感染症(sex—ually transmitted diseases,STD)においてウイルス性のものがわかるようになり,性感染症の立場からもウイルス感染が重要になってきた.また,子宮頸癌が感染性のウイルスによって発症するということが示唆され,ヘルペスウイルス,あるいは最近ではパピローマウイルスに注目が集まっており,発癌の問題としてのウイルス感染も大きなテーマとなってきた.本稿では,これらの歴史的な点も踏まえて,overview を試みたい.

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 胎内感染を起こすウイルス感染症の中でも,実際の臨床現場で判断を求められる症例に最も多く接するのが風疹である.とくに,妊婦の初診時に風疹HI抗体を測定することが次第に一般化するに従って,高いHI抗体価の妊婦において感染時期を知る必要が生じてきた.

 発疹などの臨床症状があった場合には簡単であるが,不顕性感染や再感染の可能性まで考えると,たとえIgM抗体の有無を参考にしたとしても,胎内感染の可能性を判定することがきわめて難しい状況にある.この問題を解決するために胎児感染の遺伝子診断法が開発され,現在までの臨床応用の結果,きわめて有力な診断法であることが明らかとなった.

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 ヒトサイトメガロウイルス(CMV)は胎内感染および周産期感染症の因子としては最も一般的なものであるが,免疫抑制状態における持続感染および再活性化も臨床的に問題となっている.CMVの活動性感染の評価および抗ウイルス剤による治療効果判定の指標としての診断およびウイルス学的検査の意義も検討されている.今後は出生前診断も含めた信頼度の高い迅速診断法の開発とともに安全で有効性の高いCMV感染症の治療法の確立が課題と思われる.

 今回は胎内感染,周産期感染を中心とするCMV感染症の診断の問題点と胎児・新生児異常について近年の知見を中心に報告する.

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 ヒトパルボウイルスB19(以下パルボウイルス)は1975年に発見され,1983年に小児の発疹性疾患である伝染性紅斑,いわゆるりんご病の病原体であることが明らかにされた1).我々産婦人科医がこのパルボウイルスに関心を持ち始めたのは,1984年にこのパルボウイルスと非免疫性胎児水腫との関連が報告されてからであった2,3).わが国においても多くの総説が述べられている4-11)

産道感染

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 性器ヘルペスはSTDとして約20年前よりクローズアップされるようになり,患者数も増加の傾向にある.とくに妊娠に合併した場合,分娩時の産道感染を中心とした新生児ヘルペスが大きな問題となっている.ここでは女性の性器ヘルペスを取り上げ,その病型と妊娠に合併した時の管理を中心に述べたい.

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 従来,水痘は小児期に罹患する疾患で,成人とくに妊婦の水痘の発症は比較的まれとされてきた.しかし,麻疹などにおいて確認されている罹患年齢層の上昇が,水痘にも十分起こりうると考えられる.すなわち,水痘ワクチンの普及や生活環境の変化などにより,水痘の流行が小規模になり,ワクチン未接種者が,免疫を持たないまま妊娠し,本症に罹患する可能性が高くなることが予測される.本稿では,妊婦の水痘罹患の胎児に対する危険性について,本邦の結果を含めてまとめてみたい.

3.パピローマウイルス 是澤 光彦
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 パピローマウイルス(human papillomavirus:HPV)は,尖圭コンジロームの原因ウイルスとして知られていたが,約10年前より子宮頸癌との関連で注目を集めている.パピローマウイルスには70種以上のタイプが知られており,そのなかでtype 16,58,52,18,31が子宮頸癌との関連が深いとされている.これらのタイプのDNAが異形上皮の90%以上から見つかっている.逆に女性性器におけるHPVの頻度についての調査では,救急外来患者1,573名の4.4%,妊娠中絶患者623名のうち148名(8.8%),スメア異常でコルポスコピー検査に来院した472名の31.4%にHPVが発見された1).このように子宮頸癌の危険が高い群に有意に高頻度でHPVが発見されている.これにより,HPVは子宮頸癌において非常に重要な役割をもつものとして研究が続けられており,子宮頸癌のみでなく,内膜癌や卵巣癌の一部,さらに乳癌についても報告がある.

 HPV感染の有無の診断については,電子顕微鏡を含む形態学的な検査法と,パピローマウイルスのDNAをみつける方法,パピローマウイルスに対する抗体を検査する方法がある.ウイルスの型まで同定するには,DNAをみるか,抗体法が必要である.診断はかなり容易に確実になってきたが,治療は難しく,レーザー焼灼・薬物焼灼,切除などが行われるが,再発率が高い.

分娩と授乳

1.HTLV-I 安藤 良弥
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 HTLV-I(ATLV)は,ヒトT細胞リンパ腫・白血病の原因となるウイルスであることが報告されて以来,その感染経路ならびに感染防止策について精力的に検討が行われてきた.その結果,感染経路については,疫学調査とともに感染者を中心とする家族内感染の実態調査をもとに,このHTLV-I感染者には地域的偏在性があり,また加齢とともに感染者が増大している実態が判明した.

 一方,家族内感染者の検索から,このウイルスは,きわめて濃厚な接触を持つ個体間においてのみ感染が成立し,夫婦間においては夫から妻への一方向性感染を認めるとともにHTLV-Iに感染している母親から子どもへの感染の存在も証明された.したがって,このような感染系を持つHTLV-Iは,単なる母児感染ウイルスとしてではなく,STD(Sexually transmitted disease)としての側面をも有していることも事実である.

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 1995年4月1日より厚生省B型肝炎母子感染防止対策事業は健康保険適用となり,妊娠初期のHBs抗原検査は公費負担であるが,それ以降のHBs抗原陽性妊婦に対する対応は各医療施設にまかされることになった.具体的にはHBe抗原陰性妊婦に対する対応が従来とは異なるだろう.本稿はB型肝炎母子感染を防止するための実地臨床家への指針を示すことをめざした.

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 B型肝炎ウイルス(HBV)の母子感染はHBIGとHBワクチンによる予防対策により,その数は激減し1),さらに1995(平成7)年度からはHBVキャリア妊婦から出生した児すべての乳児に感染防止処置が行われるようになり,感染児の数はさらに減少すると考えられる.C型肝炎ウイルス(HCV)の母子感染についても研究が進められているが,母子感染の頻度,母子感染成立の要因,母子感染した児の臨床像と予後などについていまだ多くの問題が残されている.

 本稿ではHCVの母子感染に関連して,上記の点を中心に最近の知見をまとめ,さらに母乳投与について言及する.

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 日本では現在まで15人(AIDS発症7人)の母子感染が報告されているが,妊婦のHIV抗体検査の実施率が低いため,その正確なところは不明である.HIV母子感染防止に向けての第一の出発点はHIV感染者のスクリーニングである.1993(平成5)年7月厚生省は妊婦のHIV抗体検査を推奨したが,各県,各病院でその対応に差異がみられる.しかし術前検査としてのHIV抗体スクリーニングも行われはじめ,今後妊婦のHIV 抗体検査は広く普及していくものと思われる.本稿では HIV 感染妊婦の現状とHIV抗体検査について述べることにする.

2.診断と治療の進歩 木村 哲
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 HIVの感染経路としては,血液を介する感染を除くと性行為による感染,母子感染が主な経路であり,婦人科および産科との関連が深い.HIVは他の性感染症(STD)があると感染を受けやすく,また感染を伝播しやすいので,普段のSTDの治療がたいせつである.日本における母子感染例は幸いまだ少ないが,これまでに感染妊婦はわかっているだけでも100人を越え,分娩が70例弱あった.このうち母子感染例は15例報告されている.母子感染がzidovudine(AZT)で3分の1に減ることもわかってきた.日本では静注用のAZTがまだ使えないので,現法どおりの予防措置はできないが,感染妊婦が来診した際の治療法についても対応を考えておく必要がある.

ウイルス感染の治療

1.性器ヘルペス 金澤 浩二 , 神山 茂
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 ヒトにヘルペス/疱疹(herpes)をつくりうるウイルスには,単純疱疹ウイルス,水痘帯状疱疹ウイルス,サイトメガロウイルスがある.性器ヘルペスは,単純疱疹ウイルス(herpes simplexvirus, HSV)の感染による外陰・腟を中心とする病変である.HSVは,その抗原性(血清中和抗体に対する反応性)の違いにより1型(HSV−1)と2型(HSV−2)に分類される.HSVは神経組織,とくに知覚神経組織と親和性があり,外陰・腟への感染後はそこを支配する仙骨神経節(S2-4)にとどまり,なんらかの誘因により当該神経節で再活性化し,再発を繰り返す.

 本症は,性行為感染症(sexually transmitteddisease, STD)のひとつとして臨床的にも重要である.本稿では,性器ヘルペスについて概説し,課題に沿って,その治療について解説する.

2.帯状疱疹 戸倉 新樹
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 小水疱が集簇する状態を疱疹とよぶが,帯状疱疹はこの疱疹が帯状に並ぶことから命名された疾患である.

 本症は水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zos—ter virus, VZV)によって生じ,水痘罹患後,神経節に潜伏したウイルスが再び活性化することにより発症する.

3.ウイルス性疣贅 早川 謙一
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 産婦人科領域におけるウイルス性疣贅は具体的には,大部分がパポバウイルス科に属する小型のDNAウイルス,ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)によるものであるが,外陰部にはポックスウイルス群(DNA)ウイルスによる伝染性軟属腫(mol—luscum contagiosum)もみられるようになった.両者ともに以前より増加の傾向にある.

 HPVは現在DNA塩基の配列の差により,60種近くに分類されており,HSVによって起こる各種病変は別表のとおりであるが,ウイルスの型と臨床病型はよく一致する(表1).

トピックス

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 ウイルスは自己による増殖能を持たず,感染宿主細胞に感染することによりはじめて増殖が可能である.核酸をエンベロープという外殻で包み込む構造をしており,核酸の種類により大きくDNAウイルスとRNAウイルスとに分けられる.これらのウイルスの感染により,癌,免疫不全,感染症,中枢神経障害など,さまざまな疾患が引き起こされる.本稿ではウイルス発癌モデル,およびヒトにおけるウイルス発癌についてDNA腫瘍ウイルスを中心に概説する.

2.ウイルス感染とSTD 野口 昌良
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 性行為によって伝播する疾患をsexually tran—smitted disease(STD)とWHOが呼ぶようになって(1975年)すでに久しいが,年々性行為によって感染する疾病は増え続けている.その後のAIDSの登場を示すまでもなく,人間にとって致命的な感染症も存在する.この中でもウイルスによって引き起こされる疾病はその予防対策がいまだに不十分であり,適切な治療方法が確立されていないものが多い.中でも産婦人科領域においては,これら多数のSTDのうち,性器ヘルペスと尖圭コンジロームはその代表的なものである(表1).

 性器ヘルペスに関してはすぐれた抗ヘルペス剤が登場し,治療に対するひとつの光明が示された.これはヘルペスウイルスの特異酵素を標的としたヌクレシドアナログである,今後同様の作用機序に基づく薬剤が続々と開発されてきている.

3.妊婦と予防接種 内田 章
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 予防接種を考えるとき,通常は接種を受ける本人の利益不利益が問題である.しかし妊婦という特殊な条件での予防接種を考えるときは,接種を受ける母体と同等以上に胎児の利益不利益が問題となる.

 ワクチンは弱毒生ワクチンと不活化ワクチンに大別される.母体と胎児の利益不利益を検討するにもまずこの二つに分けるとよい.弱毒生ワクチンでは自然感染と同様にウイルス血症が起こる.このときワクチンウイルスが胎盤を通して胎児に移行すれば児への影響が懸念される.不活化ワクチンではウイルス血症は起こらないので,母体に起こる発熱などの副反応で流産などが誘発されないかどうかを考えればよい.

連載 シリーズ 胎芽の発育と形態形成・3

器官形成期 塩田 浩平 , 上部 千賀子
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 受精後第3週までの胎芽は板状に近い形をしているが,第4週にはいると,胎芽の形が大きく変化する.脳胞が発生して頭部が膨らんでくると同時に,羊膜腔が急速に大きくなって胎芽全体を背方から包み込むようになるので,胎芽は棒状となり,さらに,胎芽の頭尾方向への屈曲foldingによって,第4週終わりには胎芽はC字形を呈する(図1).体節はその数を増し,第4週終わりには体節数が30近くに達する.胎芽が屈曲する際、卵黄嚢の一部が胎芽内に取り込まれて管状となり,消化管の原基である原始腸管primitive gutを形成する.体外の卵黄嚢は,やがて消失する(図2).

 第4週中頃には頸部側面に鰓弓が現われ,その週の後半には,体表から4対の鰓弓が認められる.第4週後半から第5週にかけて,上下肢の原基(上肢芽upper limb budsと下肢芽lower limb buds)が出現する.第5週以降,心隆起cardiac promi—nenceと肝の膨大が著明となり,また,脳胞が発達して頭部の大きさが増してくる.第6〜7週には,網膜に色素上皮が発現し,第1鰓弓と第2鰓弓によって外耳が形成される(図3).上下肢ともに長さを増して,指,肘,膝が明瞭になる.手と足では,指間陥凹が深くなり指が分離する.第8週終わりまでに主要な器官形成organogenesisが行われ,ヒトとしての外形がほぼできあがる(図4).

連載 産婦人科クリニカルテクニック

ワンポイントレッスン—私のノウハウ

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 子宮破裂は,頻度はまれであるが,その診断と処置の遅れが母体死亡に結びつく可能性のある疾患である.帝切既往例,鉗子・吸引分娩例などリスクの予測される場合が多いが,分娩後の外出血が多い症例,腹腔内出血が疑われる症例では,つねに子宮破裂を念頭において出血原因の究明をすることがたいせつである.

 子宮破裂の位置と程度により出血状態は異なり,臨床所見にも違いが生じる.分娩中に子宮が破裂し,異常出血,下腹痛,胎児心拍数の変動,母体ショックなどの臨床所見から帝王切開となる場合は,開腹時に破裂状態が確認される.しかし,経腟的に児が娩出された場合は,無症候から母体ショックまで臨床所見が多様であるため,子宮破裂の診断に時間を要し,母体の生命を危うくすることも少なくない.そこで経腟分娩後の子宮破裂の診断を迅速かつ正確に行うことが求められる.

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 われわれは,1968(昭和43)年頃より子宮肥大を有し,不正性器出血を主訴として来院した患者に積極的に子宮腔からの吸引細胞診と同一検体によるcell blockを作成し,組織診を実施してきた.しかし,これらの方法では,やはり一掻き掻爬の域を出なかった.多くの研究者が言うまでもなく,子宮体癌の診断には,子宮頸管を拡張し,子宮腔内の全面掻爬,いわゆるD&C(cervical dilata—tion and uterine curettage)を施行し,それによって採取された検体で診断することが原則であるが,これらの方法を外来診察時に,上記所見のあるすべての患者に実施することについては種々問題がある.そこで当科(国立仙台病院産婦人科)における過去20年間の子宮体癌患者の臨床統計から得られたデータより,正診率の高いscreen—ing法とは,どのような方法か,また病理医より判定覧に記載されているQNS(Quantity is notsufficient for histological examination)をいかにしたら減少させ得ることができるかについて,以下の項目を目標に検討を加えてみた.

連載 Estrogen Series・3

性ホルモンと癌生存率 矢沢 珪二郎
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 男女差という性差は,悪性腫瘍に対抗する機能である宿主抵抗(host resistance)に何らかの影響を与え,その転移能力を抑制するのではないか?多くの場合,悪性腫瘍での女性の予後は男性のそれよりも良好である.すでに大腸癌や悪性メラノーマのような腫瘍では,その生存率に性差が認められている.女性の乳癌の場合でも,更年期以後に発病したものよりも更年期以前に発病した場合のほうがexcess death rateがかなり低いことが知られている.エストロゲンやプロゲステロンの性ホルモンが癌の転移を防ぐ働きがある,という仮説が可能となるゆえんである.

 著者らは性ホルモンと癌生存率との関係を知るために,性的成熟の起こる以前,最中,以後の年齢,すなわち20歳以前の男女で,癌生存率の男女差を調べてみた,対象はスウェーデンの癌登録機構(Cancer registry,1958年設立)で,ここには法律によりすべての癌が登録されている.登録は漏れがないよう二重に行われる.法律により医師はあらゆる悪性腫瘍をこのregistryに登録しなければならない.一方,病理学者はすべての悪性腫瘍の組織および細胞診断をレポートしなければならない.癌の登録は臨床医と病理学者の両方から行われることになり,その結果,スウェーデンで発生した悪性腫瘍は実質的に100%が把握されることになる.

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はじめに

 妊娠中期の正常胎児の腹部で無エコー領域(anechoic)としてまず見えるものは上腹部左方の胃と下腹部の膀胱である.また上腹部横断面で中央前方に臍帯静脈が,右方に胆嚢が見える(さらに詳しく見ると臍帯静脈の延長に門脈,後方に下行大動脈,下大静脈,少し下方に腎盂がある),一方,小腸、大腸は妊娠中期はあまり明瞭ではなく,末期になるほど見えやすくなる.小腸は腹部中央にあり小嚢胞が集合したように見える.大腸は周辺にあり,より太く,管状構造がわかりやすく,胎便のため内部のエコー輝度が小腸より高い.

 妊娠中期以降に超音波で胎児腹部を見る時は以下の点に注意する.①胃と膀胱が確認できるか?ただし正常胎児でも蠕動や排尿により空虚な時もある.ともに繰り返し観察して判断する.②腹部内部に異常な無エコー領域があれば消化管閉鎖,水腎症,腹水,卵巣嚢腫などを考える.③腹壁より突出するような異常エコーがあれば腹壁異常(臍帯ヘルニア,腹壁破裂),仙尾部奇形腫などを考える.④羊水量に注意する.妊娠後半の主たる羊水の供給源は胎児尿で,羊水の吸収は胎児の嚥下による.羊水過少ならば胎児尿量の減少(胎児健康状態の悪化,腎無形成,尿路閉塞)を,羊水過多ならば上部消化管閉鎖を考える.

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 この座談会は1994年10月22日(於:東京ベイヒルトンホテル)に行われたEMART研究会(EM:endometriosisとART:assisted reproductive technologyを組み合わせた造語)でのディスカッションを再構成したものです.この研究会は子宮内膜症と不妊との関連性について基礎,臨床の両面から追求し,さらに子宮内膜症合併の不妊におけるART の位置付けについても検討しようと設けられたもの.したがって主たる研究テーマには①子宮内膜症におけるARTの位置づけ,②子宮内膜症に伴う不妊に対する免疫因子の関与,③子宮内膜症婦人のARTの指標の確立,などが挙げられている,今後2年間にわたって各テーマについて共同研究を行い,不妊研究を行うことを目的としている.

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 腹膜偽粘液腫は,原発巣や悪性度のいかんを問わず,粘液性細胞が分泌したゼリー様物質で腹腔内が充満されるまれな疾患である.その病因病態について不明な点が多く,治療法も定まっていない.われわれは粘液産生組織の悪性度が異なる3例,すなわち境界悪性であったもの,腺癌であったもの,良性腺腫であったものを経験した.境界悪性例は,卵巣粘液性嚢胞腺腫で他院にて手術を施行,4年後に後腹膜腫瘍として再発したため当科において腫瘍摘出術を行い,境界悪性腫瘍と診断した.その後再び再発し,初発から9年後に死亡した.悪性例は開腹するも,腹腔内に原発巣の同定もできないほど一塊となった粘液腫瘤を形成し,腫瘍の摘出もできなかったため化学療法を行ったが,発症後約1年で死亡した.良性例は右卵巣原発の粘液性嚢胞腺腫が存在したが,術後15か月間再発を認めていない.

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 原発性外陰癌の中でも腺癌はまれな組織型であるが,その発生母地としてこれまでに3例の報告しかされていない胎生期遺残物由来と思われる外陰部腺癌を経験した.症例:71歳,会陰正中部に直径1.5cmの腫瘤を認め,単純外陰切除術を施行,高分化型腺癌の病理診断を得た.その発生母地は解剖学的位置によりバルトリンおよびスキーン腺は否定的であり,外方発育性で間質浸潤に乏しく皮下粘液腺や皮膚付属器との関連も認められないため,小前庭腺および皮膚付属器由来とも考え難く,腫瘍の腺上皮が周囲の扁平上皮と移行する像も認めることより胎生期遺残物と推定した.一般に外陰癌は予後不良であるが,胎生期遺残物由来の外陰部腺癌は高分化かつ予後がよいという報告があり,自験例でも同様であった.従来の報告および自験例より胎生期遺残物由来の外陰部腺癌では縮小手術の可能性が示され,外陰部腺癌の発生母地を推定することは治療法を選択する上で重要であると思われた.

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 1994(平成6)年8月から1995年4月までに開腹術または腹腔鏡を施行した122例に対し,術後疼痛管理目的でフルルビプロフェン・アキセチルまたはペンタゾシンを投与した群と,無投与群に分け,フルルビプロフェン・アキセチルの術後疼痛に対する投与法を検討した.

 フルルビプロフェン・アキセチル1回投与後に鎮痛剤の追加を必要としなかったのは開腹術では33%であり,腹腔鏡では81%であった.

基本情報

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臨床婦人科産科
50巻3号 (1996年3月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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