連載 産科外来超音波診断・14
—妊婦外来での超音波スクリーニング—胎児腹部の異常(1):消化管閉鎖と腹水
伊原 由幸
1
,
清水 卓
2
1神戸市立中央市民病院産婦人科
2清水産婦人科
pp.327-333
発行日 1996年3月10日
Published Date 1996/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902457
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はじめに
妊娠中期の正常胎児の腹部で無エコー領域(anechoic)としてまず見えるものは上腹部左方の胃と下腹部の膀胱である.また上腹部横断面で中央前方に臍帯静脈が,右方に胆嚢が見える(さらに詳しく見ると臍帯静脈の延長に門脈,後方に下行大動脈,下大静脈,少し下方に腎盂がある),一方,小腸、大腸は妊娠中期はあまり明瞭ではなく,末期になるほど見えやすくなる.小腸は腹部中央にあり小嚢胞が集合したように見える.大腸は周辺にあり,より太く,管状構造がわかりやすく,胎便のため内部のエコー輝度が小腸より高い.
妊娠中期以降に超音波で胎児腹部を見る時は以下の点に注意する.①胃と膀胱が確認できるか?ただし正常胎児でも蠕動や排尿により空虚な時もある.ともに繰り返し観察して判断する.②腹部内部に異常な無エコー領域があれば消化管閉鎖,水腎症,腹水,卵巣嚢腫などを考える.③腹壁より突出するような異常エコーがあれば腹壁異常(臍帯ヘルニア,腹壁破裂),仙尾部奇形腫などを考える.④羊水量に注意する.妊娠後半の主たる羊水の供給源は胎児尿で,羊水の吸収は胎児の嚥下による.羊水過少ならば胎児尿量の減少(胎児健康状態の悪化,腎無形成,尿路閉塞)を,羊水過多ならば上部消化管閉鎖を考える.
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