連載 Estrogen Series・3
性ホルモンと癌生存率
矢沢 珪二郎
1
1ハワイ大学
pp.322-323
発行日 1996年3月10日
Published Date 1996/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902456
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男女差という性差は,悪性腫瘍に対抗する機能である宿主抵抗(host resistance)に何らかの影響を与え,その転移能力を抑制するのではないか?多くの場合,悪性腫瘍での女性の予後は男性のそれよりも良好である.すでに大腸癌や悪性メラノーマのような腫瘍では,その生存率に性差が認められている.女性の乳癌の場合でも,更年期以後に発病したものよりも更年期以前に発病した場合のほうがexcess death rateがかなり低いことが知られている.エストロゲンやプロゲステロンの性ホルモンが癌の転移を防ぐ働きがある,という仮説が可能となるゆえんである.
著者らは性ホルモンと癌生存率との関係を知るために,性的成熟の起こる以前,最中,以後の年齢,すなわち20歳以前の男女で,癌生存率の男女差を調べてみた,対象はスウェーデンの癌登録機構(Cancer registry,1958年設立)で,ここには法律によりすべての癌が登録されている.登録は漏れがないよう二重に行われる.法律により医師はあらゆる悪性腫瘍をこのregistryに登録しなければならない.一方,病理学者はすべての悪性腫瘍の組織および細胞診断をレポートしなければならない.癌の登録は臨床医と病理学者の両方から行われることになり,その結果,スウェーデンで発生した悪性腫瘍は実質的に100%が把握されることになる.
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