臨床外科 8巻8号 (1953年8月)

特集 輸血・輸液の諸問題

酸素飽和血輸血 齊藤 淏
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 輸血の持つ多彩な効用の中でO2運搬に関する重大な因子は黙認されつゝ深い研究は少い.近来特に外科に於て,低O2血は多くの注目を惹くところとなり,之に関連して輸血に動脈血を使用すること血液のO2加が二三の学者によつて取り上げられて来た.偶々筆者等は術中術後の肝臓庇護を目的として高張葡萄糖液の門脈内注射(門注)を創め,その價値を高くかつていた時,Fine等のショック肝の低O2に対する動脈血の門注に関する実驗は筆者を刺戟すること多く,直ちに靜脈血をO2飽和して門注してみるに甚だ興味ある成績を得たので諸方面にわたる系統的な実驗研究を行い,更に多くの臨床経驗をつみ,その利用價値の尠くないことを知り,かつ輸血のもつ効果に対して新しい面を観察し得たと信ずるに至つた.

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 保存血液が如何なる変化を蒙むるかと云う問題は古くより研究されていたが1)2),血液銀行の普及した今日に於ては理論的興味の域を脱して実地臨床上の切実な問題となつた.保存血液の研究は次の2つの方面に大別出来る.第1は優秀な保存液の発見であり,第2は保存液添加血液が日を逐って如何に変化するかを詳細に追求することである.第1の問題はさておき,こゝでは第2の問題について私共の研究の結果の概略を報告する.

 今日最も広く用いられているA.C.D.液添加血液は保存法が適当であれば約3週間,安全に使用出来るというのが定説である.しかし長く保存した血液は一應使用に堪えても,既に種々の変化を受け,利用價値が劣ることは言を俟たない.

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いとぐち

 輸血が実用化されてから既に長くなるけれども,今日程外科医が輸血の重要性についてはつきり認識させられた時代はないと云つても過言ではない.殊にこゝ数年間に明らかにされた外科患者の生理や病理上の知見は輸血の量や適應の範囲を著しく増大し,更に目ざましい手術の進歩は輸血の需要を際限なく拡大しつゝある.津田外科教室に於ける主要疾患に対する1人平均の輸血量を見て(表1),從来の如き新鮮血のみでは到底應じきれない量に達しており,保存血によつて始めてこの需要を充しうるのである.当教室では昭和26年6月以来大阪の日本ブラッドバンクの神戸支社より保存血の供給をうけ.最近の年間輸血量50万cc中90%はこの保存血によつており,本邦の現況ではかなり大量の経驗と思つている.

 併し保存血輸血にはその利点の蔭に新鮮血輸血の場合と異つた諸問題を藏していることを看過してはならない.これらに対する認識が充分でないと直ちに副作用の増加となつて現われることは必定である.一体多くの臨床家は從来輸血によつて副作用の発生することは認識していても,その原因や結果については完全な理解が欠けていた感がある.本邦に於ても今後輸血の実施が更に一段と増加するにともない副作用の問題も又重要となつてくることは明らかで,この際我々は保存血輸血に限らず一般輸血による副作用の諸問題により深い関心をもつべきことが痛感される.

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 今日輸血は必要欠くべからざるものである.しかし血液やその製剤は高價であり,採取には限度があり,一部には人道問題,供血者の健康問題その他に就いて議論のある処である.それ故これ代にる物質の研究が多数行われ,ポリビニール,アルコール(政山,田代),Hemicellulose硫酸カルシュウム(岩永,浜).カラメル液(大村) Periston,Dextran等の研究がある.これらは何れも塩類や含水炭素による物理的作用を利用せんとするものである.

 そもそも,輸血の歴史は動物血の輸血に始まつて居り1)2),人血代用と見る事が出来る.最近に於ける動物血の利用は,木口,大坪,斎藤,瀨名波,大宮,丸田の諸氏,動物血漿の利用は,酸アルカリ処置牛血漿,(調,德永),人血球凝集素を除去せる牛血漿(方,Kremer,Wangensteen),牛血漿アルブミン(郭,Davis&.Eaton),結晶せる牛血漿アルブミン(Bailey)等があるが,現在使用されていない.

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 約13年前,Rh因子という新しい血液型因子が発見され,其の後の詳細な研究により,此の血液型はABO式血液型についで重要なもので,臨床的には輸血副作用や溶血性疾患である胎兒赤芽細胞症等に重大な関係のある事が判明した.一般に血液型因子の分布には人種的差異があり,Rh因子の場合も,日本人と白人とでは状況が異り,之に伴い,臨床的問題も日本人の場合は白人に於ける程注意されていなかつた.しかし,日常輸血を頻繁に行う我々外科医として,果してどの程度にRh因子を顧慮しなければならないか,という点に関しては,從来あまり明でなかった.以下にRh因子の概要を述べ,併せて,日本人のRh因子についても少しく言及したい.

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 1.

 われわれが考案創製した「グリコアルギン」すなわちアルギン酸ソーダの0.3%濃度の5%ブドー糖液剤が,手術侵襲としての出血,ショックの対策としてきわめて有効且つ好適であることについてはすでに3回にわたつて報告してきた.すなわち本剤は,実驗的潟血による下降血圧をよく持続的に上昇せしめるばかりでなく,肺手術,胃切除等の侵襲大なる手術に際してもその持続点滴注入はよく血圧下降を防禦すること,循環血液量ならびに循環血漿量に関しては,從来の糖液剤に比較して最も理想的にこれを正常値域に確保せしめること,細胞外相の増大をきたさず,また心筋図学的にも心筋に対する影響のほとんど皆無であること等,アルギン酸ソーダ食塩水液剤と比較してはなはだ優秀であること等につき,実驗的ならびに臨床的に証明してきたが,今回は腎機能に及ぼす影響を知らんとして血漿尿素クリアランス,尿量および尿比粘度,腎容積等の檢索をおこなう一方「グ・ア」(以下このように略記する)血中滯溜の状況ならびに血清粘稠度に及ぼす影響等について檢索した結果について報告する.

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 末梢血管障碍,特に自発性壤疽(Srontane Ga—ngraen)及びレーノー病は,われわれ外科医が比較的頻繁に遭遇する疾患であり,しかもその症状の激しい時には,全く生存意慾をなくさせる程患者を苦しめるものであるから,その治療は実地医家のおろそかに出来ないところである.しかるに現状を見るに,本疾患の治療はいさゝか等閑に附されている感がないとは云えない.その大きな原因として考えられるのは,これ等疾患の原因が不明であり,而も決定的治療法がいまだに見出されていないことである.

 古来文献中には数多の治療法が見られるが,それを保存的療法と手術的療法にわけて見ると,現在手術的療法としての自律神経系に対する外科的侵襲は,その効果及び再発の問題等に関し未だ種種議論のあるところである.一方保存的療法も結局対症療法の範囲に止るものが多く,根治的療法と考えられるものは先ず見当らない.われわれは年来この問題に些か興味を持ち,その一部は既に発表したが,その後更に種々の保存的療法を行い,2,3の比較的効果があると考えられるものについて,その臨床的効果と,皮膚温測定による効果判定を行つたので,こゝに報告して大方の御批判を仰ぐ次第である.

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 結核性膿胸の治療方針については,從来しばしば青柳教授や,馬場,八塚,房岡博士等により述べられてきたが,全膿胸又は,之に次ぐ広大な腔を布するものゝ治療成績は満足すべきものではない.結核性膿胸の治療にあたつては,気管支瘻の有無,混合感染の有無と共に,肺病巣の状態を常に考慮しなければならぬ事は周知の通りであるが,肺病巣がなお活動性である時は症例によつては,肋膜嚢剔除と共に肺切除を行つたならばどうかという事も,念頭に浮んでくるだろう.かゝる考えは肺切除が,かなり安全な手術となつた昨今に於てのみ,実施可能となつた問題である.外國ではすでに,Sarot,Overholt,Santy,Jos Daum,Robertpanier & Cotton等の報告があり,本邦では八塚博士等により始めてその良好なる成績が発表されている.我々は國立岡山療養所に於て,結核性亞全膿胸を有し,肺の再膨脹は不可と考えられる患者に,肋膜外肺切除術を施行し,経過良好であったので報告する.

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 癩患者の顔面は屡々甚しい醜形を呈するのであるが,その主な原因は顔面皮膚の結節・浸潤・瘢痕及びそれによる拘縮.或は鼻中隔穿孔による鞍鼻,又は顔面神経麻痺による兎眼,限瞼外反症及び下口唇外反下垂症等である.これらの醜形を更に別けてみると,單に美容的な障碍のみのものと,美容的な点もあるがそれよりも顔面の二次的奇形の爲に大きな機能障碍を起しているものがある.

 各種の眼瞼の二次的奇形の場合には,それが結膜炎,角膜炎その他の眼疾患を起す直接或は間接の原因となると考えられるし,鞍鼻は往々にして呼吸困難を伴う.更に下口唇外反下垂症では構音障碍が現われ,液体を口内に含むことが困難であり,唾液が口角から流出し,飲食物の攝取が甚だ不自由であつて,食餌攝取或は談話の際に手をもつて下口唇を押上げてその用を足すことは我々が日常屡々見受ける処であり,又歯科学的見地からも歯牙の保護上,芳しからぬ状態である.

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 頭蓋内に原発した黒色肉腫は稀有とされ,從つて其の報告例も極めて少々,外國では40数例我が國では,所氏の1例と,齊藤氏の1例,計2例に過ぎない.我が國の2例は何れも剖檢例である.

 我々は脳腫瘍患者の頭頂葉より黒色の腫瘤及び腫瘍の撒布した脳表の一部を剔出し,組織学的に,中枢神経系に原発した黒色肉腫で既に脳表に広汎な轉移を見ていることを知り,術後之にナイトロヂェンマスタード治療を行つて著明な効果を見た1例を経驗したので茲に報告する.

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 唾液腺殊に耳下腺に於ける腫瘍は多くは混合腫瘍の形態をとる事は古くから記載されて居る.而してその本態,発生原因は不詳であるが之等は多く良性経過をとるもので癌腫形成は比較的稀である.私は最近19歳の若年女子に発生した耳下腺癌の1例を経驗したので之を報告し諸家の例に追加する.

先天性上肢1畸形症の1例 久本 欽也
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 飯野教授は昭和12年13年に於て,從来極めて稀とされた骨欠損のない先天性彎曲手として又は先天性多発性関節攣縮として記載されて来た症例の中に散見される一連の症候を有する疾患を,先天性上肢一畸形症としてその9例を挙げ詳細に述べられて居る.それ以来日本に於ては昭和14年に三好氏が発表して居られる他は,同様の症例を見出すことが出来なかつた.

 私はこの1例に遭遇して,入院中興味ある経過を取つたのを見る事が出来たので報告する.

下顎Reticulosarkomの1例 安藤 次雄
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 Reticulosarkomは1916年Chon及びRomanが最も未分化の淋巴肉腫として記載したのに始り,其の後Komocki,Ewing,Connor,Roulet等により種々なる名称にて呼ばれたが,1928年Oberlingにより明かにされReticulosarkomなる名称を用いた.斯くしてその報告例は急激に増加し,Greifenstein,Oliveira,Ardoin,Baumann-Schenker,Eigler u.Koch,緒方,高原,山本,赤崎等剖檢例並に臨床例が陸続として報告されている.私は昭和25年9月本例に遭遇,その発育程度早く何等治療の遑ないうちに死亡し,病理組織学的に非常に興味深く思われる例を経驗せるためここに報告し,併せて考察をなし諸氏の御批判を仰ぐ次第である.

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 肋骨々折は吾々臨床家が日常経驗するものであるが筋力に依る肋骨々折の例は報告例は極めて少い.表1は最近8年間教室外来を訪れた骨折患者の分類であるが肋骨々折は117名4.9%に当つている.表2は骨折部別にしたものであるが第VI—第Xに多く左側が右側より1.5倍多い.原因別に見ると筋力によると考えられるものは線路工夫がシャベルを使つて起つた1例丈である.吾々はゴルフ練習中局所に何等外力を受ける事なしに肋骨背側に骨折を起した1例を経驗したのでここに報告する.

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 胆石による腸閉塞症は比較的稀な疾患であつて,近年の本症例報告は大正3年以来7例を見出し得たに過ぎない.飜つて本邦の腸閉塞症の統計より観察すると,高安,藤井,松原,後藤,田中,橋本の諸氏の累計1578例中,胆石に因るものは1例(0.1%)を算えるのみで,本邦腸閉塞症の統計中に於ける本症の発生頻度は微々たるものである.茲に報告する例は戸田外科教室に於ける最近の経驗例であつて,回腸下部に於て亘大胆石により惹起された腸閉塞症である.

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 胆石による閉塞性イレウスは比較的稀で,本邦に於ける報告例も十指に満たぬ程である.又胆石の通過経路は,多く推測の域を出ず,生前確認した例は極めて少ないのであるが,最近我々は典型的な1例を得たので,ここに其の経過を報告する.

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 横隔膜下膿瘍は主に成人にみられる重篤な上腹部疾患の1つとして知られており,文蛔虫の淫浸は戰後甚しいものがもる.われわれは最近発生した横隔膜膿瘍で胸壁排膿創より生きた蛔虫の脱出による治驗例を得たので報告する.

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 種々の型と,異常な経過を辿つた分娩の報告並に之を伴う畸型兒の研究は臨床医家並に多数病理学者により記載せられ,牧挙にいとまない程である.吾々は最近,陣痛直後に腟より腸が脱出して居つたために子宮破裂と誤診,送院されて来た1例が,極めて高度の畸型を有し,且つ極めて稀有な経過を辿つた異常分娩を経驗したので,其の経過並に所見の概要を報告し,諸兄の御批判を仰ぐ次第である.

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 胃潰瘍に対する胃切除術は広く一般に行われる様になり中山外科教室に於ては昭和21年8月より昭和27年12月迄に約600例に達して居る.しかしながら胃潰瘍に対し胃切除に依り苦痛が除去された後新たに原発性噴門癌の現われた報告は殆どなく,更に其の噴門癌副出手術に成功せる症例の報告は文献上発見する事が出来なかつた.之は從来噴門癌剔出手術が極めて困難であり斯る症例は手術不能症とされていたためと思われるが,今日教室に於ては昭和21年1月より昭和27年12月迄に約350例の食道噴門癌根治手術例を持つに至り,茲に胃潰瘍切除後みられた噴門癌の根治手術に成功せる4症例を経驗致しましたので稀有な症例と思い御報告する.

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 惡性腫瘍の化学療法は近時頓こ進歩し,就中ナイトロゼン,マスタードは腫瘍細胞に毒性を有しこれに親和性を示し,この有効性は多数報告されている.一方惡性腫瘍としての白血病の化学療法剤としてナ・マの効果も重視されて来ている.即ち本剤は骨髄の白血病細胞を破壞除去することにより本症への有効性が考えられている.

 胆石症胃潰瘍虫垂炎を併発する所謂腹部3主症の報告例は多く,我々も時に経驗するのであるが,胆石症に胃癌の併発報告例は稀有でしかも術後経過中癌再発阻止の目的でナ・マの1剤たるナイトロミン投與後白血病を発症し,其の経過を支配した1例を経驗したので報告し批判を仰がんとす.

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 原発性胃肉腫は比較的稀な疾患で1840年Landsbergの420円形細胞肉腫報告をはじめとして,1934年にはBaumgartnerの420例蒐集報告がある.本邦では明治25年今の円形細胞肉腫剖檢2例にはじまり,現在迄に私の蒐集し得たものは私の1例を加えて64例である.

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 回盲部癌と盲腸周囲膿瘍とは鑑別すべき疾患として成書或いは臨床講義などでも述べられているが,本邦に於ける虫垂炎或いは盲腸周囲膿瘍と思われた回盲部腫瘍の報告は多くない(高安氏,大野氏).我々は再三繰返し,心窩部に始まり,回盲部に限局する疼痛を来し,回盲部の著明な筋緊張,圧痛,ブルンベルグ氏症候を示し,38℃の発熱,10,200の白血球増多症等全く盲腸周囲膿瘍を思わせる回盲部癌の1例を経驗したので報告する.

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 胃石は一般に比較的稀な疾患に属する.胃石の中では,毛髪塊よりなるものが最も多く,之に次いで果実や植物纖維からできた植物性結石があり,極めて稀には樹脂或いは藥物による結石も報告されている.植物胃石は,1854年Quainが剖檢例に於て偶然発見した椰子の実からなるものが嚆矢と云われ,吾が國では,1908年三宅(速)教授が藺草よりなるものを報告したのが其の初めである.植物胃石では柿にもとづくものが其の大半を占め,柿胃石については,1914年永富によつて初めて報告された.其の後漸次症例を増してきたが最近までに未だ100例を出ない.吾々は,最近相ついで,胃潰瘍を伴つた柿胃石の2例を経驗したので,茲に其の概要を報告すると共に,いささか文献的考察をこころみた.

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 十二指腸憩室は古く,1710年Chomel,1839年Mor—ganiniの病理解剖学的報告に次ぎ,臨床方面より,最初1912年Baron,Barsonyがレ線的に証明し,其の後1914年Forsel Keyが初めレ線学的に診断し,後外科的手術により確証した例を報告して以来,多数の報告がある,我國に於ては,脇坂,本多氏等の本邦最初の臨床報告以来,臨床報告例も増加し,現在では,左程稀有ならざる疾患となつた,しかし本症外科手術例は尚達比較的少く,私達の集めた文献では,手術治癒例数は,36例に過ぎない.

 私は此処に,テール様便,胃部圧痛,呑酸嘈囃を訴え,全く胃潰瘍の症状を呈し,之が諸檢査の結果,十二指憩室と診断されしかも潰瘍の併然していた誠に興味ある症例を報告する.これらは実に他病院に於て,胃潰瘍と診断され,入院したものである.十二指腸憩室で潰瘍を証した例は,集め得た我國の文献には見当らぬ.

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 本病は1892年Bechterew氏により初めて記載されたもので,本態不明なる原因によつて,慢性に脊椎の強直を起す疾患で,強直性脊椎関節炎,強直性脊椎炎,肢根性強直症,或は靱帯化骨性脊椎炎と云われて居ります.レントゲン及び病理解剖学的見地から,本病は脊椎小関節より起る特殊の慢性強直性脊椎関節炎で,明らかに畸形性脊椎炎と区別されています.本病は比較的稀な疾患と云われて居りますが,欧米に於ては相当多く報告されているのに反し,本邦に於ては詳細な報告例は割合少く,今日尚不明な点が多い様であります.私は高度な本症の3例を経驗しましたので臨床的観察事項を報告し,併せて2,3の報告例と比較して申述べたいと思います.

轉移性甲状腺腫について 前田 淸
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 約5年前國立名古屋病院に於て,頭部腫瘤を主訴とし轉移性甲状腺腫を疑わしめる例を診察し,該腫瘍を剔除したが,其後の経過観察により診断の確かな事を知り得た.この疾患は甚だ稀有なもので,殊に其の本態並に生物学的所見は誠に興味深いものがある.爰に経驗した1例を報告すると共に本邦に於る症例を纒めて諸賢の御批判を仰ぐ訳である.

最近の外國外科

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 1928年v. Finstererが曠置切除術(以下R. z. A. とす)を公にして以来一時は歓迎せられたが次第に反対するものもあらわれ又色々と変法も行われた.

 著者はR. z. A. の有効性と必要性について述ぶ.R. z. A. の有効性に関しては著者は常に幽門を含む胃部の切除が一般的とされ又有意義なりとし,v. Finstererの謂う様な幽門及び前庭部を残す様な方法は有効性が疑われ両者は区別されねばならぬとしている.又頻度も20年前にはPlenk 55%,Denk 22%,Finsterer 6%v. Haberer 15%であったが後にはv. Haberer 6%,Finsterer 3.5%,Plenk 3%を見るのみで次第に稀なものとなりつつある.

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集談会
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第517回東京外科集談会 28.5.16

 1)感電直後経過を詳細に観察し得た電撃症の1例

          慈恵大大井外科 広野 恵三

 57歳男子,110Voltの交流に感電せるものに対し人工呼吸,オーロパンソーダ靜注(救出後2,7,16時間後)によつてショック状態より離脱せしめ得た.ショック中強直性痙攣があつたが,意識及び諸反射も第3病日には恢復した.尚経過中膀胱直腸瘻形成.85日で治癒退院.

  追 加        慶大外科 依田 圭司

 宿題報告に於て電撃症ショックの発生機序は,脊髄→大脳→腹部交感神経の反射経路を辿ることを証明した.この臨床例は吾々の実驗結果を裏書きするものである.尚傷害として膀胱直腸瘻は珍らしい.

基本情報

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臨床外科
8巻8号 (1953年8月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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