臨床外科 72巻5号 (2017年5月)

特集 百花繚乱! エネルギーデバイスを使いこなす

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 超音波凝固切開装置と血管シーリング装置の登場で内視鏡手術が大きく進歩し,開腹手術にも使用されるようになった.以前からあるモノポーラに代表される高周波手術機器についても,さまざまな出力モードを備え,内視鏡下で使用されるようになってきている.近年,腹腔鏡下肝切除が普及したのは,このような各種エネルギー機器の進歩が大きい.

 これらの機器の特徴を生かし,場面ごとで使い分けたいところではあるが,多くがディスポーザブル機器であるのでコストの問題もあり,手術の時間や出血量の軽減,クオリティと,経済性とのバランスが求められている.また,超音波凝固切開装置では当初からキャビテーションによる周囲組織損傷が指摘されていたが,これらのエネルギー機器全般において,発生する熱による臓器への影響や損傷が重要な問題点である.

知っておきたいデバイスの特徴と安全な使用法

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【ポイント】

◆高周波交流電流により細胞内温度が上昇し,切開や凝固といった組織反応を引き起こす.組織反応は電流密度の二乗,組織抵抗,通電時間に比例し,電圧が高いほど周辺まで熱変性が起こる.

◆低電圧・連続波である切開モードをいかに使いこなすかがコツとなる.先端をシャープに当て直線的に動かすことで組織が切れ,先端を動かさずに面で当てるように使うことで良質な凝固が得られる.

◆電気の流れは目に見えない.予想もしない場所へ流れていくため,最低限の出力設定,低電圧モードの使用を心がけ,できるだけ短時間の通電につとめ,空打ちや焦げた標的組織への過剰な通電は避ける.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2020年5月まで)。

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【ポイント】

◆超音波凝固切開装置(USAD)は,電気エネルギーを超音波振動に変換し,振動するブレードと組織の間で生じる摩擦熱で蛋白質を凝固しながら,摩擦により組織を物理的に切断する装置である.組織に電流は流れない.

◆血管シーリング装置(VSS)は,組織抵抗を感知しながら電流を制御するバイポーラ電気メスであり(組織の切断は付随する鋼製刃で行う),高周波手術装置の一つである.

◆USADとVSSの原理を理解したうえで,各機種の特性を生かして使用することは,現代の手術において重要なスキルである.

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【ポイント】

◆「THUNDERBEAT®」は迅速な組織切開と強力な血管封止を同時に行うことができる新たなデバイスである.

◆同デバイスはわれわれの提唱するリンパ節郭清手技においても有用と考える.

◆デバイスの特性と注意点を理解して使用することにより,安全で円滑な手術が可能となる.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2020年5月まで)。

術式別:デバイスの選択と活用法

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【ポイント】

◆LigaSureTM Marylandは,血管およびリンパ管のシーリング効果が高く,周囲臓器の熱損傷のリスクが低い.

◆胸腔鏡下手術では,反回神経周囲や気管周囲の操作において,安全・確実な郭清手技を行うことができる.

◆用手補助腹腔鏡下手術では,胃脾間膜の切離や,膵上縁の郭清操作を安全に施行できる.

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【ポイント】

◆高周波手術機器(電気メス)の特性を理解して,幽門側胃切除術の場面に応じた使い分けが重要である.

◆幽門下領域の郭清では,粗な結合織を切離して血管にアプローチして,静脈壁や動脈周囲の神経を電気メスでなぞって郭清を行う.

◆膵上縁では膵や動脈周囲の神経,門脈,脾静脈をなぞるように郭清を行い,境界部は血管シーリング装置で凝固・切離する.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2020年5月まで)。

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【ポイント】

◆腹腔鏡下胃切除は,デバイスを正しく使い分け,使用することで手術時間の短縮と出血量の減少が得られる.

◆郭清の際は超音波凝固切開装置を用いて,層の連続性を維持しながら郭清組織と温存組織を分けていく.

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【ポイント】

◆ポート数が少なく,器具挿入の角度が制限されるので,左右の手でエネルギーデバイスを操作する.

◆エネルギーデバイスのハンドリングの軽さ,グリップ形状,コードの有無が操作性に影響する.

◆経験豊富な熟練した内視鏡胃外科医が施行すべき術式である.

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【ポイント】

◆右側結腸周囲臓器との複雑な解剖学的関係を十分に理解し,腫瘍局在に応じた手技の定型化が重要である.

◆広範囲な結腸間膜授動に加え,豊富な血管バリエーションに対応した血管処理,リンパ節郭清が必要である.

◆超音波凝固切開装置は止血凝固能に優れ,右側結腸の剝離・授動に有用であるが,機器の原理を理解し適正に使用する.

◆完全なcomplete mesocolic excision(CME)のためには,十分なカウンタートラクションをかけた視野で超音波凝固切開装置を使用する.

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【ポイント】

◆大腸癌に対する腹腔鏡手術は,主に「スパチュラ型電気メス」「超音波凝固切開装置」の両刀使いで行われている割合が多いが,本稿では超音波凝固切開装置の活用法について述べる.

◆超音波凝固切開装置のアクティブブレードによる熱損傷を避けるためのコツやピットフォールを述べる.

◆エネルギーデバイスの長所だけではなく短所も熟知し,正しい使用方法を身につけることが重要である.

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【ポイント】

◆Laennec被膜の概念を正しく理解したうえで,①肝外グリソン鞘先行確保・遮断,②主肝静脈の根部からの安全な剝離・露出手技,③“one-way resection”による過不足のない肝実質切除,からなる定型化された術式を行う.

◆肝切離を行うにあたり,脈管処理や出血に対するCUSAの特徴を理解する.

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【ポイント】

◆Pringle法による流入血遮断と気腹圧による静脈系出血の抑制にて無血野が確保できる.

◆熱凝固を最小限に抑えた超音波凝固切開装置によるクランプクラッシュにて精細な手術が可能である.

◆ハンギング手技は,腹腔鏡下肝切除において切離面の展開と切離方向の確認に有用である.

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【ポイント】

◆電気メスの特性を理解して,各種モードで組織に伝わる熱の範囲と深さを考慮しながら設定を調節する.

◆超音波凝固切開装置は,デバイスの先端の形状・握りやすさ・重さの違いなどを理解したうえで状況に応じて使い分ける.

◆肝床部からの出血に際しては多様な止血方法を準備する.

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【ポイント】

◆自由度の高い開腹の膵頭十二指腸切除では,モノポーラ電気メスが最もその真価を発揮する.

◆モノポーラ使用のコツは,術者と助手の協調動作でカウンタートラクションを作りだし,ピンポイントでの通電で組織の焼け方を観察しながら切離,剝離を行うことである.

◆超音波凝固切開装置,vessel sealing deviceは,止血を兼ねた切離を実現することで,手術のスピードアップに貢献する.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2020年5月まで)。

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 膵癌取扱い規約第7版での主な改訂項目は,①腫瘍占拠部位の定義(膵体部と尾部の境界は大動脈の左側縁とする),②T分類,③膵外神経叢の解剖学的再検討,④N分類(群分類から領域リンパ節内の転移個数による分類),⑤Stage分類(治療方針に重点を置き,UICC第7版との整合性を図る),⑥病理組織学的分類(WHO分類との整合性を図る),である.新規項目としては「切除可能性分類」が新たに加えられ,正確な切除可能性を評価するうえで重要であるCT診断指針について詳細に言及し,具体的な画像所見を多数示した.また,近年の膵癌の病理組織診断における超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)の普及,術前化学療法,化学放射線治療の進歩に伴い,病理所見の項目では細胞診・生検診の指針,術前治療後の組織学的評価についても詳細な記載を追加した.本改訂により,本規約が膵癌の診療に従事する誰もが簡便でわかりやすく,信頼性のあるものとなり,本規約がさらに広く普及し,膵癌の治療成績の向上に役立つことが望まれる.

病院めぐり

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 実は秋田県には5年前まで肛門科専門の医療施設が存在しませんでした.それまでは「痔といえば盛岡」というのが秋田県民の常識で,電車や車で片道約2時間をたびたび往復された方も少なくありませんでした.

 そんな状況に危機感を覚え,前職の中通総合病院消化器外科の頃から少しずつ肛門疾患診療に力を入れ始めていきました.内痔核のALTA療法の普及に伴い,痔核の低侵襲治療,日帰り手術のニーズは高まる一方でした.総合病院での専門科の立ち上げも頭にはあったのですが,プライバシーの配慮,専任スタッフの教育などを考えると,開業がよりよい選択肢と思うに至りました.某金融機関からは「秋田で肛門科専門のクリニックが成り立つはずがない」と融資を断られたこともありますが,周りの先生方の励ましもあり,何とか平成24年9月1日に無床診療所として開業いたしました.

ラパコレUpdate 最近のコンセプトと手技・10

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はじめに

 近年,整容性,低侵襲性から良性疾患に対する胆囊摘出術はほとんどが腹腔鏡下で行われている.一方で,その難易度は胆囊頸部,Calot三角への炎症の波及などによって左右され,高度炎症例や解剖同定困難例などにおいては開腹手術への移行,臓器損傷や出血などの合併症をみる場合もある.腹腔鏡下胆囊摘出術困難例のリスク因子は,男性,高齢,急性胆囊炎,幅広く短い胆囊管,胆囊消化管瘻,上腹部手術既往,肥満,肝硬変,解剖学的変異,胆管癌,術者の経験,などが報告されている1,2).日本内視鏡外科学会の「内視鏡外科に関するアンケート調査—第13回集計結果報告」によると,合併症・偶発症の頻度は以下の通りであった3).開腹止血を要した術中出血例が2,558例(0.5%),胆管損傷が3,137例(0.6%),その他の臓器損傷が1,300例(0.2%),術中合併症以外による開腹移行例は17,900例(3.4%)であった.開腹移行の要因としては,局所炎症による癒着・解剖不明例が13,359例(74.6%)と最も多く,次いで既往手術による癒着が2,921例(16.3%)であった.特に胆管損傷は極めて重大な合併症であり,この場合,死亡率は約10%と報告される.胆囊摘出術が困難となる要因としては,局所高度炎症による癒着,線維化,それによる解剖同定困難,また,既往手術による癒着,さらには解剖学的異常などが挙げられる.合併症予防のためには,術前に炎症の程度や胆管走行の異常の有無を把握しておくことが重要であり,本稿では,当科で経験した胆摘困難例の画像を供覧し,術前画像診断のポイントについて述べる.

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要旨

症例は52歳,男性.主訴は上腹部痛.腹部CTで膵体部に単房性囊胞,およびその周囲に微細な異常血管の増生を認めた.また脾動静脈のシャント血流を認め,膵体部動静脈奇形(AVM)と診断した.経過観察中に腹痛が増悪し,腹部CTを再検すると,囊胞は増大し脾静脈への流出血管の消失を認めた.膵囊胞内への出血により囊胞が増大した可能性があり,破裂の危険性を考慮し,膵体尾部切除術を施行した.病理組織検査では,AVMを原因として囊胞が形成,増大した可能性が示唆された.膵AVMは経過中に膵囊胞内への出血をきたし,かつそれに伴いシャント血流が消失することがある.本邦でこのような報告は過去になく,文献的考察を加え報告する.

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要旨

双孔式結腸ストーマ脱は脱出長が長いと管理困難になり,患者のquality of life(QOL)を著しく低下させる.しかし,双孔式ストーマを造設された患者は下部腸管に切除不能癌などが存在して全身状態が不良であることが多く,修復術はできるだけ低侵襲であることが望ましい.今回われわれは,自動縫合器を用いて横行結腸の双孔式ストーマのproximal側の脱出を切除した.この方法は腹腔内操作を行わず低侵襲でストーマ脱の修復が可能であり,治療法の選択肢のひとつになりうると考える.

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要旨

PET/CTで集積を認めた十二指腸球部の粘膜下腫瘍に対し腹腔鏡・内視鏡合同手術(laparoscopy and endoscopy cooperative surgery:LECS)を行い,過不足のない切除を行うことができ,良好な経過であった1例を経験したので報告する.症例は40歳,男性.健診で施行した上部消化管造影検査にて異常を指摘された.近医を受診し,上部消化管内視鏡検査を受けたところ,十二指腸球部に2 cmほどの隆起性病変を認め,十二指腸粘膜下腫瘍と診断された.精査加療目的に当院を紹介され受診した.手術はLECSを行い良好な経過であった.本術式は内腔に突出する十二指腸粘膜下腫瘍において有用な術式と考える.

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要旨

症例は67歳,男性.2014年9月に褐色尿,白色便,皮膚横染に気づき内科を受診した.精査にて膵頭部癌の診断で同年10月,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的に膵癌と内分泌腫瘍の膵併存腫瘍と診断した.膵癌成分のリンパ節転移を認めたためTS-1による術後補助化学療法を行った.2016年2月の画像検査で肝S6/7,S5/6に肝転移を認めた.化学療法を変更したが転移巣は増大傾向であった.同年6月,2病変に対し肝後区域切除および肝部分切除術を施行した.病理組織検査では2病変ともに内分泌癌の転移であった.術後4か月経過するが再発は認めていない.膵併存腫瘍術後肝転移に対し肝切除が有効と思われた1例を経験したので報告する.

ひとやすみ・150

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 急患センターの外科外来には,さまざまな処置を要する患者が受診する.患者は突然の受傷,そして創傷治療を受けることに大いなる不安を抱いている.そこで患者の不安を少しでも解消し,外来処置が順調に行えるように,ささやかな気配りをしている.

 子供の裂傷に対して縫合する際には,「良い子は痛くないからね」と,まずは本人に話しかける.また付き添う母親への対応も重要で,「傍に居て手を握り,お利口さんにしているお子さんを褒めてあげてください」と,協力をお願いする.そして子供が素直に協力してくれたら,「痛くないのは,お母さんに似て性格が良いからかな」と,母親のプライドをくすぐる.

1200字通信・104

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 当院では,平成元年から研修医を受け入れて指導を行ってきています.平成16年からの新臨床研修制度までは,当院の母体ともいえる大学医局からの派遣でありましたが,新制度になってからは定期的なローテーションが難しくなっています.ただ,若い先生方への指導方針に大きな変化はありません.

 指導内容に関しては,細かな手技や診療内容の指導が中心ですが,これらは研修医にとって直接的に自分のキャリアアップに繋がることから,また,指導する側も具体的な事柄が多く目標も立てやすいことになり,指導し易く学び易いことではあります.しかし,一方で,総論的な内容,とくに患者さんやご家族への説明や心配りといった内容になると,なかなか具体的に指導しにくく大変なことであるというのが現実ではあります.

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 本書は大腸癌診療の経験が豊富な駒込病院の大腸外科の高橋先生を中心とする大腸外科スタッフによって,消化器内科や腫瘍内科,放射線診療科,麻酔科,緩和ケア科,看護部と共に,大腸癌の診療に関連する全ての領域,つまり,診断,治療ばかりではなく,大腸の解剖や,大腸癌の発癌機序,疫学からストーマ管理や大腸癌手術後の生活まで解説しています.本当に大腸癌の診療に関する事項全てが網羅されています.

 本来これらの内容の本を作成するとなるとA4判で1,000ページを超える分厚い書物となり,机に向かって腰を落ち着けて読む本となります.ところが本書はそれらの膨大な内容を,そのエッセンスの部分だけを簡潔にまとめ,箇条書きに,または図表として一瞬で理解できる体裁をとっています.しかも片手で持って読める大きさであり,白衣のポケットに入れて持ち運びができることから,日常診療の合間に時間ができたときに読むことができ,また,患者さんとの面談の際に患者さんに本書に記載されている図を示しながら説明を進めることもできます.

昨日の患者

死期を悟った医師 中川 国利
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 医師が自分の専門とする分野の末期癌に罹患したとき,どんな想いを抱き,そしてどんな行動をするであろうか.自分の亡き後について家族と真剣に相談し,そして自分の想いを実行した医師を紹介する.

 Kさんは60歳代前半で,胃癌や大腸癌,さらには肝臓癌を専門とする消化器外科医であった.そのKさんが上腹部痛にて精査の結果,胃癌が判明した.しかもすでに多発性の肝転移もきたしていた.さらに開腹すると,わずかながらも腹膜転移を認めた.Kさんは術前に,「腹膜転移を認めたら単に胃切除のみに留め,あとは癌化学療法に託したい」と希望していたため,幽門側胃切除術のみを行った.

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バックナンバーのご案内

あとがき 小寺 泰弘
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 子供のころに「人体の図鑑」というものを愛読しましたが,裏表紙は腹部外科手術の光景でした.白いタイル張りの手術室で開腹手術が行われており,おなかの中はとにかく真っ赤になっていて,外科医が赤く染まった紐のようなものを持っていました.とにかく恐ろしい光景でしたが,それにしても紐なんかで何をやっているのだろうと子供ながらに不思議に思ったものです.あれは結紮だったのですね.その後,現在に至るまでに何度糸を縛ったことでしょう.私が卒後研修をさせていただいた病院の上司が門脈圧亢進症や肝細胞癌の手術の伝統がある肝臓研究室の出身であったため,とにかくリンパ漏を回避するためにリンパ節郭清のあらゆる局面でどんなに細い索状物でもひたすら結紮する習慣を叩き込まれました.その後見学に行った国立がんセンター(現国立がん研究センター中央病院)ではとにかく結紮のスピードアップが求められており,レジデントがもたもたしていると,糸を縛っている間中,「君,まだ縛ってるの? まだ縛ってるの? ま〜だ縛ってるの?」と言い続けてプレッシャーをかけるスタッフの先生がおられたのが印象的でした.

 最近,結紮をしなくなりましたね.手術には古典的な鋼製小物も使用しますが,デバイスを握りしめている局面が増えているように思います.あくまでも個人的な印象に過ぎませんが,デバイスの使用は手術時間の短縮につながっているように感じられます.しかし,時々脾門部などここだけは勘弁してと言いたいところでデバイスに裏切られて血柱が上がり,腹が立つこともあります.え? 使い方が悪いって? ということで,今月も勉強です.本特集を日常診療にお役立ていただければ幸甚です.

基本情報

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臨床外科
72巻5号 (2017年5月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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