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あとがき
小寺 泰弘
pp.650-650
発行日 2017年5月20日
Published Date 2017/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407211630
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子供のころに「人体の図鑑」というものを愛読しましたが,裏表紙は腹部外科手術の光景でした.白いタイル張りの手術室で開腹手術が行われており,おなかの中はとにかく真っ赤になっていて,外科医が赤く染まった紐のようなものを持っていました.とにかく恐ろしい光景でしたが,それにしても紐なんかで何をやっているのだろうと子供ながらに不思議に思ったものです.あれは結紮だったのですね.その後,現在に至るまでに何度糸を縛ったことでしょう.私が卒後研修をさせていただいた病院の上司が門脈圧亢進症や肝細胞癌の手術の伝統がある肝臓研究室の出身であったため,とにかくリンパ漏を回避するためにリンパ節郭清のあらゆる局面でどんなに細い索状物でもひたすら結紮する習慣を叩き込まれました.その後見学に行った国立がんセンター(現国立がん研究センター中央病院)ではとにかく結紮のスピードアップが求められており,レジデントがもたもたしていると,糸を縛っている間中,「君,まだ縛ってるの? まだ縛ってるの? ま〜だ縛ってるの?」と言い続けてプレッシャーをかけるスタッフの先生がおられたのが印象的でした.
最近,結紮をしなくなりましたね.手術には古典的な鋼製小物も使用しますが,デバイスを握りしめている局面が増えているように思います.あくまでも個人的な印象に過ぎませんが,デバイスの使用は手術時間の短縮につながっているように感じられます.しかし,時々脾門部などここだけは勘弁してと言いたいところでデバイスに裏切られて血柱が上がり,腹が立つこともあります.え? 使い方が悪いって? ということで,今月も勉強です.本特集を日常診療にお役立ていただければ幸甚です.
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