臨床外科 71巻1号 (2016年1月)

特集 十二指腸乳頭部病変に対する新たな治療戦略—新規約・新ガイドラインに基づいて

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 内視鏡的診断・治療の進歩により,十二指腸乳頭部腫瘍に対するEndoscopic Papillectomy, Ampullectomyが,消化器内科医を中心に近年さかんに施行されている.その安全性・有用性は徐々に向上してきているものの,腫瘍径の大きなもの,また特に乳頭部癌についてはその適応に限界があるのは明らかである.胆道癌診療ガイドラインの第2版も2014年末に出版され,乳頭部癌への内視鏡的乳頭切除と膵頭十二指腸切除の適応について,第1版から若干の修正がされた.胆道癌取扱い規約も2013年11月に第6版へと改訂されたが,UICCに準拠するなかで,その今後の問題点について本邦独自のsubtype分類を取り入れる形で修正されている.このようななか,乳頭部腫瘍に対する外科的な切除適応や治療法の選択についても新たなエビデンスが集積されてきつつある.

 本特集では,現状における十二指腸乳頭部腫瘍に対する診断の意義と限界,および治療選択の考え方について,最新データをもとに述べていただき,up-to-dateの診断・治療の現況,および今後の展望を示した.

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【ポイント】

◆乳頭部腫瘍全体および早期病変ともに胆管内進展のほうが膵管内進展よりも長く進展していた.

◆乳頭部腫瘍全体では,40%の症例が胆管上皮内進展をきたしており,さらに16%が乳頭部を超えて進展し,2%は肝臓側断端にまで進展を示していた.

◆早期病変でも50%の症例が胆管上皮内進展をきたしており,さらに11%が乳頭部を超えて進展していた.

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【ポイント】

◆胆道癌取扱い規約改訂の重要なコンセプトは国際性で,ステージングをUICC/AJCC分類に準じている.

◆今後にむけての問題点と考えられる項目は“Japanese rules”としてあてはめている.

◆リンパ節転移に関しては,領域リンパ節を定義し,それ以外のリンパ節への転移は遠隔転移としている.

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【ポイント】

◆十二指腸乳頭部腫瘍(乳頭部腫瘍)では,内視鏡所見のみでの良悪性診断には限界があり,生検が必須である.

◆胆管・膵管開口部の深部の異型度が高いとされ,この部位からの生検を行う.近年,生検で診断困難な乳頭部腫瘍に対するEUS-FNAの有用性が報告されている.

◆現在,CTやMRIは,遠隔転移の有無や他疾患の除外診断を目的に実施されている.高分解能MRIや拡散強調画像(diffusion-weighted MR imaging:DWI)などが期待されている.

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【ポイント】

◆超音波内視鏡検査(EUS)・腔内超音波検査(IDUS)による十二指腸浸潤,膵浸潤は,いずれも十二指腸固有筋層を指標として判定される.

◆十二指腸浸潤は,腫瘍(低エコー)が十二指腸固有筋層(低エコー層)と連続し境界が不明瞭化することにより判定される.

◆膵浸潤は,腫瘍が十二指腸固有筋層を超えて膵実質内に進展しているかどうかにより判定される.

◆胆管内進展,膵管内進展の有無についてもEUS,IDUSは有用とされている.

◆Oddi筋浸潤の評価は,EUS,IDUSともに困難とする報告が多い.

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【ポイント】

◆内視鏡的乳頭切除術は最も低侵襲な手術であり,十二指腸乳頭部腺腫の治療においては第一選択となる.

◆内視鏡的乳頭切除術は良性腫瘍の治療目的にとどまらず,完全生検としての有用性も高く評価されている.

◆手技の標準化が未完成,保険未収載,専用の処置具がない,など課題が多く残っている.

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【ポイント】

◆十二指腸乳頭部癌に対する標準治療は膵頭十二指腸切除術である.

◆現状のEUS,IDUSを用いてもT1aとT1bの正確な判定は困難である.

◆術前にTisあるいは腺腫内癌の診断が得られれば内視鏡的乳頭切除術の適応となりうるが,遺残,再発などの長期予後を含めたデータの集積が必要である.

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【ポイント】

◆乳頭部腫瘍に対する,経十二指腸的乳頭部切除に代表される縮小手術は,まずその適応を慎重に検討する必要がある.

◆経十二指腸的乳頭部切除を行うにあたっては,膵管,胆管を確保したうえでの,腫瘍を牽引しながらの切除が有用である.

◆術後合併症,とくに膵管,胆管狭窄などの長期的合併症を避けるためには,ステンティングが有効であると考えられる.

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【ポイント】

◆経十二指腸乳頭部切除は局所切除術であり,十二指腸乳頭部の良性腫瘍,もしくはリンパ節転移を伴わない粘膜癌が適応である.

◆Oddi括約筋まで癌が浸潤していてもtub1かつly0,v0,EM(−)であれば治癒切除になりうる.

◆姑息的治療として進行乳頭部癌に対し経十二指腸乳頭部切除を行っても,根治性の面からの縮小手術にはなりえない.

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【ポイント】

◆十二指腸乳頭部癌は膵癌や胆管癌に比して予後良好であるが,リンパ節郭清範囲は治療のポイントとなる.

◆局所的乳頭部切除術は癌の浸潤がOddi筋を超えない局所進展度Tis-T1a(M)症例に適応となる.

◆T1b以深の十二指腸乳頭部癌はリンパ節転移の可能性があり,リンパ節郭清を伴う膵頭十二指腸切除(PD)が適応となる.

◆乳頭部癌に対する至適術式はNo. 14,15および17リンパ節郭清を伴う上腸間膜動脈(SMA)神経叢温存幽門輪温存膵頭十二指腸切除(PPPD)である.

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【ポイント】

◆T1乳頭部癌のリンパ節転移は9〜45%の頻度であり,標準術式は膵頭十二指腸切除術(PD)である.

◆乳頭部癌に対するPDにおいて,上腸間膜動脈リンパ節(No. 14)の郭清が重要なポイントである.

◆胆道癌取扱い規約第6版はUICCに準拠する形で改訂され,今後本邦と欧米の治療成績が比較しやすくなる.

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【ポイント】

◆当教室ではT1十二指腸乳頭部癌5例に対して,膵頭十二指腸第Ⅱ部切除術を施行し,現在までに再発・原病死を認めていない.

◆しかし,術前EUS・IDUSでは,膵・十二指腸浸潤,Oddi筋への浸潤の正診率は現段階では十分とはいえない.

◆腺腫またはT1乳頭部癌との術前診断であっても,現状では膵頭十二指腸切除術を選択すべきであると考えられる.

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【ポイント】

◆乳頭部癌に対する標準術式は,膵頭十二指腸切除術が標準的治療であり,局所的乳頭切除は推奨されていない.

◆低侵襲手術として,腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術やロボット補助下膵頭十二指腸切除術が行われている.

◆ロボット支援手術は,膵管空腸吻合や胆管空腸吻合などの細かい操作において特に威力を発揮する.

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はじめに

 胃癌を含めたあらゆる固形癌において,癌の臨床試験における有効性データの評価には,個々の研究単位で作られる効果判定規準ではなく研究グループごとに共通の効果判定規準が用いられてきた.その中でも,1979年に世界保健機関(WHO)がWHOハンドブックとして公表し,1981年にMillerら1)によって誌上発表されたWHO規準が,世界中で最もよく使用される効果判定規準となった.しかし,WHO規準を用いるうちに様々な問題が明らかになり,その改訂版として1999年にRECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumours)が誌上発表された2).RECISTはWHO規準よりも簡便になったこともあって,画像による効果判定規準として世界中で頻用されるようになった(表1).しかし,これらの規準はあらゆる固形癌共通の規準として作られたものであるため,個々の癌種に最適化されたものであるとは言いがたい.特に胃癌においては,RECISTで用いられるCTやMRIでは原発巣の評価が困難であるため,胃癌取扱い規約第13版3)では,X線所見や内視鏡所見による独自の判定規準を採用していた(表2).

 また,これら画像による効果判定規準以外にも,組織学的な効果判定規準も存在する.これは,CTやMRIでの評価と違って,癌細胞の壊死・融解・変性の程度に基づく判定規準であり,より直接的な指標として,おもに術前補助療法の評価において頻用されている(表3)3).ただし,組織学的な効果判定を行うには,外科的切除による組織標本が必要であるため,CTやMRIのような非侵襲的な診断法とは根本的に利便性が異なり,また非切除症例での適応が不可能という問題点も指摘される.

 このように,術前補助療法の腫瘍縮小効果の判定規準には様々なものが存在するものの,あらゆる癌種において最適であるといえるような規準はないため,癌種ごとに検討する必要がある.

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はじめに

 いまやすっかりわが国における周術期管理法の一つとして定着してきた感がある術前経口補水療法であるが,すでに導入している施設,これから導入を考えている施設,あるいはまったく導入を検討していない施設,いずれにおいてもすべての関係者が正しく理解をしているとは言えないのが現状であろう.

 術前補水療法に関わる多くの論文・総説が誌上を賑わし,多くの臨床系学会でもシンポジウムやパネルディスカッションの主題として取り上げられ,周術期管理・臨床栄養の最大のトピックと言えよう.

 本稿では,いまさら他人に聞けない術前補水療法の意義について,ERAS®(Enhanced Recovery After Surgery)protocolとの関連,投与液の種類による効果の違い,問題点などを簡潔に解説する.各項目の「ポイント」のみ斜め読みしていただいてもかまわない.

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 当院は,京都市の北西部にあり,近くには大報恩寺(千本釈迦堂),金閣寺,二条城,桜の名所の平野神社,そしてJR東海の「そうだ 京都,行こう.」2015年秋のポスターにもなった北野天満宮があります.また,病院名の通り,着物で有名な西陣織の町並みの中心に位置しており,今でも周囲には町家と呼ばれる風情ある家並みが多数残っています.そのなかには,花街である上七軒もあり,夏には日本庭園でビアガーデンが開催され,芸妓さんや舞妓さんがおもてなしをしてくれます.

 当院は,昭和9年に地域の民生委員の寄付金により,現在も隣接する千本釈迦堂の境内の一部に西陣診療所として設立されたのが始まりです.当時,西陣地区の低所得者層を対象として無料または減免診療を行い,地域医療に貢献しました.昭和25年には西陣病院(総病床数86床)と改称し,早くから老人医療に取り組み,低所得者層の老人専門病院となりました.昭和47年には当院の特徴でもある血液透析が厚生省の指定医療機関として開始されました.その後,何度か増改築を経て,現在は一般病床320床,透析センター132床となり,21診療科,常勤医師34名が在籍しています.また,平成21年に手術室が増改築され,当時最先端のLED無影灯や吊り下げ式内視鏡外科手術用ハイビジョンモニターが設置され,腹腔鏡手術件数が飛躍的に増加しました.

図解!成人ヘルニア手術・8 忘れてはならない腹壁解剖と手技のポイント

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■一般外科医がTEPに対するときの心構え

 各種の成人鼠径ヘルニア修復術のなかで,腹膜前修復法は鼠径部の構築を破壊することがなく,ヘルニアが発生する可能性のあるすべての部位を一度に補強できるという長所がある.そのなかでも腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(laparoscopic inguinal hernia repair:LIHR)は整容性が高く,術後早期の痛みが軽く,早期社会復帰が可能であるが,そもそも,鼠径部ヘルニアは腹壁の脆弱性に由来する疾患であるので腹腔内操作は必要なく,TEP(totally extraperitoneal approach;腹腔鏡を用いた腹膜前到達法による腹膜前修復術1))であれば腹壁内の操作のみで完了することができ,腹腔鏡下手術のもつ低侵襲性を十分に発揮することができる.しかしながら,TEPのほうがlearning curveが長く,その間の合併症や再発が多いことが報告されており,日本内視鏡外科学会のアンケート調査によれば,2013年には5%と非常に高い再発率が報告されている2).その要因として,腹膜外腔への到達が盲目的である,見慣れない視野である,間接ヘルニア囊の処理が難しい,などが挙げられるが,これらの課題を克服するためには,腹壁解剖の正確な理解が不可欠であり,特にTEPにおいては,腹膜前腔の層構造の正しい理解なしには正確な修復術はできない3〜7)

 初めに,腹壁解剖に基づく標準化した第二世代のTEPともいうべき手術手技を十分に理解し習熟したうえで,最新の器材や手技へも取り組み,TEPの素晴らしさを体感し,患者と共有していただきたい.

具体的事例から考える 外科手術に関するリスクアセスメント・10

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 外科手術においては,術前に手術に関する説明と同意を得ることが重要であるが,説明と同意に関連してさまざまなインシデント・アクシデントが発生している.本稿では,日本医療機能評価機構の「医療事故情報収集等事業」の公開データ検索1)を用いて,外科手術における説明と同意に関連して発生した事例を抽出し,発生概要,発生要因と再発防止策について検討した.

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要旨

腹膜外腔アプローチ 単孔式腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(SILS-TEP)における2泊3日クリニカルパス(CP)の有用性を検討した.CP変更前をA群(4泊5日:47例),変更後をB群(2泊3日:47例)としてバリアンス・CP完遂率・術後成績・退院後予定外外来受診・再入院・在院日数・医療費を検討した.バリアンス発生率はB群で低かった.術後成績・退院後予定外外来受診・再入院に有意差はなかった.B群の在院日数はA群より短かった.B群の総入院医療費はA群より低く,1日あたり入院医療費はA群より高かった.SILS-TEPに対する2泊3日CPは有用であった.

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要旨

 ストーマ傍ヘルニアは人工肛門造設後の晩期合併症の一つである.治療法に確立された方法はなく,近年メッシュを使用した修復術が報告されている.われわれはストーマケアに難渋する2症例に対して,パリテックスパラストーマルメッシュを使用した腹腔鏡下修復術を施行した.症例1にはSugarbaker法を施行し,症例2にはSugarbakar法のみでは挙上腸管がヘルニア門に滑脱する可能性があり,Sandwich法を行った.2例とも術後2年以上無再発で経過している.ストーマ傍ヘルニアに対する腹腔鏡下修復術Sugarbaker法,Sandwich法は安全な手術法であり,今後標準術式になりうると考えられる.

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要旨

サイトメガロウイルス(CMV)腸炎による小腸出血のため外科手術を必要とした症例を経験した.症例は34歳の男性.3か月前に腎移植を施行され免疫抑制剤を内服していた.下痢・下血を主訴に受診し,CT検査で小腸からの出血が疑われた.アンギオグラフィにて出血部位の動脈塞栓術を試みたが,困難であったため,緊急小腸切除術を施行した.小腸にはびらんと潰瘍を複数箇所に認め,粘膜固有層にCMVによる封入体細胞が多数認められた.CMV小腸感染の報告は稀であり,診断・治療に苦慮すると思われたため,若干の文献的考察を加えて報告する.

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要旨

症例は52歳,女性.2年ぶりに行った検診の腹部超音波検査で巨大囊胞を指摘され,当科へ紹介された.CTにて膵尾部尾側で左腎腹側に境界明瞭な囊胞性病変を認め,後腹膜腫瘤と診断された.悪性の可能性も考え開腹下に完全摘出した.囊胞内容は乳糜で,囊胞の内皮細胞がD2-40陽性となり,後腹膜リンパ管腫の診断となった.後腹膜リンパ管腫は稀な疾患で,根治には完全切除が必要である.巨大後腹膜リンパ管腫の1切除例を,文献的考察を加え報告する.

1200字通信・87

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 最近は,癌化学療法(ケモ)の進歩により延命が得られ,QOLの改善がもたらされてきていることに疑う余地はありません.私が医者になった頃のことを思えば,雲泥の差と言っても過言ではないでしょう.しかし,一方で,こうした治療の大半を外科医が行っているというのが現実であり,執刀後,術後管理を行い,さらにケモまで担うことになった外科医の負担が増えているのが実情です.

 こうした現状のなかで,ケモが効かなくなった後,「お近くの施設へ」と紹介ができる大きな施設の先生方は羨ましいことですが,当院のような地域密着型の施設では,初診時の問診に始まり,検査や手術,術後のフォローと続き,最期の看取りまで行わなければならないことになっています.大きな施設では,最期まで看ていては新規の患者さんの治療ができないという現実を理解した上での愚痴ですが,逆に最期の看取りまでできることは,医師としてやりがいがあることと考えています.

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 1975年以来わが国では年々肝癌が増加し,その7割以上をC型肝炎ウイルス(HCV)持続感染者が占めてきた.この背景には第2次世界大戦後の社会の混乱や肺結核患者への積極的な肺葉切除の際の輸血など医療行為を含む種々の要因が関係しており,厚生労働省と日本肝臓学会は罹患者の早期発見と適切な治療の普及のために多くの努力をしてきた.

 この間C型肝炎治療法は格段に進歩し,軽減した副作用のもとで高率にウイルスが排除されるようになった.治療の進歩により2005年頃からC型肝炎起因の肝癌が減少に転じ,5年以内にHCV起因の肝癌は50%以下になるのではないかと推定している.一方,過去10年間でいわゆる非B非C肝癌が倍増し,この傾向は今も続いているが,これには生活習慣病に伴う肝疾患である非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の増加が原因と考えられている.この間,HBV,HCV,NASH由来の肝発癌機序の研究は確実に進展したが,最近増加しているNASH由来の肝発癌機序に関してはまだまだ不明な点が多い.

ひとやすみ・133

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 生来健康なため,還暦を過ぎた現在まで入院したことがなかった.しかしながら健診にて前立腺癌が見つかり,手術のために初めて入院することになった.そこで一般患者の入院環境を体験するために,個室を勧められながらも敢えて大部屋を選択した.そして手術を伴う10日間の入院生活を送った.

 かつては6人部屋が主体であり,隣人との間隔も狭くカーテン1枚であった.したがって中間に入院した患者は,両端のベッドを,できれば窓側のベッドを希望し,病室ではいつもベッド移動が行われていた.現在は4人部屋が基本であり,トイレや洗面台も各室に常備されていた.さらにベッド間には棚が設置され,居住環境は格段に改善された.しかしながら実際に入院してみると,廊下側よりは窓側のベッドが使い勝手が良く,また同室患者のいびきや咳嗽が気になり共同生活は大変であった.

昨日の患者

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 赤十字血液センターにて,日常業務の一環として献血ルームや献血バスの健診医を務めている.そして健康状態,既往歴や渡航歴などを尋ねながら,献血者との会話を楽しんでいる.

 制服姿の女子高校生が,週日の午後4時頃に献血ルームへやって来た.若年の献血者が稀なため,献血を思い立った理由を尋ねた.すると「今日は私の16歳の誕生日です.私が生まれる際,お母さんは胎盤剝離で大量出血をきたしたそうです.当初入院した病院では手に負えず,大きな病院に緊急搬送されました.そして大量の輸血が行われ,緊急の帝王切開で私が生まれました.術後も出血が止まらず,たくさんの血液にお世話になりました.幸いなことにお母さんは危機を脱し,私も母なし子にならずに済みました.お母さんから私の出産時の話を聞いていたので,献血ができる16歳になったら,必ず献血しようと思っていました」と,答えた.

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バックナンバーのご案内

あとがき 宮崎 勝
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 十二指腸乳頭部腫瘍には,良性のvillous adenomaから悪性化した乳頭部癌まで広いスペクトラムの腫瘍が発生するが,その治療としては切除がベストかつ唯一の方法である.近年,内視鏡的乳頭切除術が多くの消化器内視鏡医により報告がなされるようになってきているが,いまだその合併症も少なくなく,また癌であった場合の適応についてさまざまな問題が提議されてきている.2014年に発刊された胆道癌診療ガイドライン第2版においてもこの点が特に詳しく記載されており,内視鏡的であろうが外科的な経十二指腸的であろうが乳頭部切除は良性腫瘍のみの適応とすべきであり,切除標本でcarcinoma in situが認められた場合までにとどめるべきであるとなっている.

 本特集ではこのような十二指腸乳頭部病変に対して,実臨床においてどのような診断法に基づいて,具体的にどのような治療戦略を行っていくかを,さまざまな病変ごとにその各エクスパートらに述べてもらっている.ボーダーライン的な部分もあることより,この特集号のすべてを俯瞰してみると,現時点での十二指腸乳頭部病変に対する結論の得られていない課題点もよく見えてくることと思う.そのような最新の情報がこの特集号から多く得られるものと思われる.ベストプラクティスとスタンダード診療の違いについても考えさせられるこの特集号を楽しんでもらえれば幸いである.

基本情報

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臨床外科
71巻1号 (2016年1月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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