書評
—日本肝臓学会(編)—肝癌診療マニュアル(第3版)
岡上 武
1
1大阪府済生会吹田医療福祉センター
pp.69
発行日 2016年1月20日
Published Date 2016/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407211053
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1975年以来わが国では年々肝癌が増加し,その7割以上をC型肝炎ウイルス(HCV)持続感染者が占めてきた.この背景には第2次世界大戦後の社会の混乱や肺結核患者への積極的な肺葉切除の際の輸血など医療行為を含む種々の要因が関係しており,厚生労働省と日本肝臓学会は罹患者の早期発見と適切な治療の普及のために多くの努力をしてきた.
この間C型肝炎治療法は格段に進歩し,軽減した副作用のもとで高率にウイルスが排除されるようになった.治療の進歩により2005年頃からC型肝炎起因の肝癌が減少に転じ,5年以内にHCV起因の肝癌は50%以下になるのではないかと推定している.一方,過去10年間でいわゆる非B非C肝癌が倍増し,この傾向は今も続いているが,これには生活習慣病に伴う肝疾患である非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の増加が原因と考えられている.この間,HBV,HCV,NASH由来の肝発癌機序の研究は確実に進展したが,最近増加しているNASH由来の肝発癌機序に関してはまだまだ不明な点が多い.
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