臨床外科 60巻6号 (2005年6月)

特集 化学放射線療法―現状とイメージングによる効果判定

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要旨:消化器癌の分野における化学療法の進歩は目覚ましく,新規開発薬剤であるTS-1,CPT-11,Taxanes,L-OHPなどによる生存期間の延長とQOLの改善に寄与する化学療法の確立が期待されている.さらに,分子生物学的手法により,癌細胞の増殖因子やその受容体,アポトーシス関連分子,細胞周期制御蛋白を標的とする抗癌剤の開発も最新の癌化学療法として期待されている.それらと対照的に,従来から行われてきた放射線療法に関しても,近年,米国のMacdonaldらによって胃癌の術後化学放射線療法の有効性を示す信頼性の高いデータが報告され,消化器癌の化学放射線療法も再び注目されている.本稿では,新規抗癌剤の臨床応用と化学放射線療法の現状に関して最近の状況をまとめた.

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要旨:今日の情報処理能力の進歩はめまぐるしく,放射線治療はその恩恵を享受し,飛躍的に発展した.これにより副作用が軽減され,総線量増加により局所制御率が向上した.欧米では強度変調放射線治療の施行率が急激に増加中である.日本でもさまざまな社会的要因により,今後,放射線治療を受ける患者の増加が予想される.最新機器の導入と品質維持によりさらなる治療成績向上が望まれる.本稿では,3-D conformal radiotherapy(3-D CRT,原体照射),intensity modulated radiotherapy(IMRT,強度変調放射線治療),stereotactic radiotherapy(SRT,定位放射線治療),重粒子線治療(炭素線,陽子線),小線源治療について簡単に説明する.

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要旨:癌の治療法の開発に当たっては,科学的な治療効果の評価方法を確立することが基盤的な要件となる.日本癌治療学会が採択しているRECISTガイドラインはいくつかの問題を指摘されてはいるが,質の高い臨床試験の推進のために今後のいっそうの普及と活用が期待される.最近,同学会では医薬品の臨床試験における評価の指標である「抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン」の改訂を試みたが,その中でもRECISTガイドラインを推奨している.

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要旨:FDG-PET検査は新しい画像診断法として特にがんの診療領域に普及しつつある.特に健康保険の適用,さらにはがん検診への利用などがPET検査普及の原動力になっている.この新しい画像診断技術を放射線治療や化学放射線治療の効果判定にどのように応用していくかについては,わが国での経験は必ずしも十分ではなく,まだ研究的要素も残っている.本稿ではFDG-PETによる治療効果判定を行ううえで必要なFDGの基礎的知見と最近の治療効果判定・効果予測に関する報告,考え方を紹介する.

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要旨:術前化学療法よって,術後化学療法と同等の生存率と,高い乳房温存療法施行率が得られる.術前化学療法で病理学的完全奏効(pCR)を得ると,無病再発生存率が向上することより,高いpCR率を得ることができるアンスラサイクリン系薬剤とタキサン系薬剤の順次投与が標準治療である.乳癌では,(1)局所療法である乳房照射が全身療法の効果を向上させない,(2)化学療法と乳房照射を同時併用すると美容上悪影響がある,(3)化学療法と乳房照射の併用による心臓障害がある,などの理由で術前化学療法と乳房照射は同時に行わない.CT,MRI,特に高精細MR-マンモグラフィは術前化学療法の効果判定に有効である.術前化学療法とそれに続く放射線照射の有効性・安全性試験(JCOG0306)の結果が待たれる.

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要旨:食道癌は他の消化器癌と比較し,放射線治療や化学療法に対する感受性が高く,食道癌治療において放射線治療や化学療法が重要な役割を果たしており,化学放射線治療単独で根治的治療が期待されている.本稿では化学放射線治療の現状,術前後の化学放射線治療,その治療評価法の特徴と問題点,留意点,評価のタイミングについて概説し,実際の症例を呈示する.

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要旨:新規抗癌剤により胃癌治療成績は向上した.放射線療法は欧米で胃癌の標準治療とされ,日本ではその有用性が否定的である.本稿では,最新治療をMEDLINEで網羅し,胃癌化学放射線療法を検討する.日本ではS-1が広く用いられ,S-1/CDDP・taxanes・CPT-11との併用効果が高い.欧米の標準治療は5-FU/CDDP,LV/5-FUで,他の新規抗癌剤を併用することでより高い奏効率となる.2002年のIntergroup 116の報告を先頭に,術後・術前化学放射線療法の有用性が報告され,治療後の手術合併症の増加もなく,胃癌では安全・有効とされる.慶應義塾大学外科での化学放射線療法の結果も一部供覧する.

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要旨:原発直腸癌に対する手術はTME(total mesorectal excision)手技の普及により治療成績が飛躍的に向上したが,特に低位の進行癌に対しては機能温存や局所根治性の向上を目指して放射線治療が従来併用されてきた.しかし放射線治療は局所再発率の低下というコンセンサスは得られたものの,術後の生存率向上にはなかなか結びつかないことが指摘されていた.一方,高度進行大腸癌に対する近年の化学療法の進歩はめざましく,5-FU/LVを中心にoxaliplatinやirinotecanなどの多剤併用療法,さらに経口剤での良好な治療効果も報告されている.このような背景の中,局所の治療効果を向上させ,さらに遠隔成績の向上を期待して,原発直腸癌に対する放射線化学療法が様々なレジメンで行われ,近年その良好な治療成績が発表されつつある.本稿においてはこれらの一部を紹介し,今後の展開について考察を行った.

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要旨:胆道癌の治療は切除が第一選択であるが,切除不能例あるいは切除後の補助療法として化学放射線療法が施行されている.しかし,その治療効果についてはrandomized controlled trial(RCT)によるエビデンスが確定していないため,各施設ごとのプロトコールにて施行されているのが現状である.本稿では,当施設にて施行している切除成績と腔内照射,体外照射,化学療法の集学的治療成績を比較するとともに,他施設での治療法をまとめたので,化学放射線療法の参考になれば幸いである.

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要旨:過去10余年間に欧米を中心として局所進行膵癌を術前放射線・化学療法によって治療し,その後に手術を行うneoadjuvant therapyが徐々に普及してきた.同治療の完遂率や手術の安全性についてはほぼ確立された感があり,組織学的根治度や局所再発制御効果に優れているという報告が多い.無作為比較試験がないので遠隔成績の向上にどのくらい寄与できるかは未だ明らかではないが,肝転移再発対策などと併用すれば今後大いに期待できる治療戦略である.

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要旨:限局型小細胞肺癌に対する化学療法単独と化学療法+TRT併用療法を比較したメタアナリシスから,化学放射線療法併用群が化学療法単独群より3年生存率で5.4%の上積みがあり,死亡率で14%低いことが示されている.また切除不能Ⅲ期非小細胞肺癌に対しても,化学放射線併用療法は2年生存率で7~25%の上乗せ効果があることが報告されている.したがって,化学放射線療法は少なくともplatinumを含む化学療法との併用でその有効性が明らかにされ,併用のタイミングは逐次併用より同時併用がより有効的であることが証明されている.しかし,同時併用では毒性が増すことは明らかであり,PS,背景肺の状態などその適応決定には慎重を要する.特に高齢者が多い実地医療レベルでは,両者の副作用が重ならないことにも留意すべきである.今後,より安全かつ有効な効果を得るためには,分子標的治療薬を含めた抗がん剤の選択,投与のタイミング,放射線の照射方法などのさらなる検討が必要である.

カラーグラフ 内視鏡外科手術に必要な局所解剖のパラダイムシフト・9

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◆◆◆

はじめに

 総胆管結石症の診断は超音波検査の進歩やCTの3次元表示や解像力の向上,そしてMRCPなどの画像診断によって容易かつ正確になった.同様に,低侵襲化の流れのなかで総胆管結石症の治療も内視鏡的治療が主流となったとされる1).そんななか,開腹外科手術は見捨てられた感すらある.しかしながら,内視鏡的治療には十二指腸乳頭機能障害による結石再発や胆管炎の可能性,そして胆囊温存による弊害などの問題が横たわる.

 一方,古色蒼然とした開腹手術でも専門の胆道外科医にかかればその成績は良好で,乳頭が温存され胆囊摘出による結石再発の危惧もないなど,一度の手術治療で後顧の憂いなく治癒が見込める.それをさらに進化させたのが腹腔鏡下手術で,低侵襲性で創が小さく,早期退院・早期社会復帰が可能であるなど利点が多い.現時点では,実行が可能であれば総胆管結石症に対する最も正当性が高い治療であろう.しかし,この腹腔鏡下手術は手術難度が高く,現在は限定された施設で行われているにすぎない.本手術の一般化と定着が望まれるところである.その手技の習得に当たっての攻略の要は胆道の解剖と手術展開にあり,これらは本手術の成否の分水嶺となる.

 本稿では,術式の詳細よりもむしろ局所解剖とその炎症などによる変化に対する注意と手技のポイントを列挙して述べたい.

外科の常識・非常識 人に聞けない素朴な疑問 17

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【To err is human】

 消化管手術後に腹腔内にドレーンを挿入する目的は,大きく2つに分けられる.第一は術後出血などの合併症を早期に発見するためであり,第二は縫合不全発生時に漏出物を体外に排除し,汎発性腹腔炎の発症を防止するという目的である.前者を“information drain”,後者を“therapeutic drain”と表現するが,1本のドレーンがその両方の役割を担うことが圧倒的に多い.しかし,手術終了時の状況によっては,目的別に数個のドレーンを挿入する場合も決して少なくない.

 「通常の胃切除術や結腸切除術では,術後のドレーン挿入は不要である.欧米では予防的ドレーンは挿入しない」と公言する外科医がいるのはよく承知しているが,筆者はこの意見には反対である.結果論的に考えれば,通常の胃切除術や大腸切除術などで後出血を経験することはきわめて稀であるし,術後縫合不全発生率も確かに低率である.しかし,たとえ大多数の症例において手術時のドレーン挿入が無駄な操作であったという統計的事実があったとしても,その結果をエビデンスとしてドレーン不要論を唱えるのはいかがなものであろうか.これは外科医の傲慢であると筆者は考えている.極端に在院日数を短縮せざるを得ないアメリカの医療事情は日本とは別に考えるべきであって,外国でもドイツの外科医1,207名の調査報告では,86.2%が結腸切除術後にドレーンを挿入していると回答しているのが現実である1)

日米で異なる外科レジデント教育・医療事情・12

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◇はじめに◇

 今回は,ここ1年間にわたった連載の総まとめ的文章を書かせていただく.

病院めぐり

青森労災病院外科 小倉 雄太
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八戸市は青森県の東南部に位置し,太平洋に面した人口約25万人の街で,イカをはじめとする海の幸が豊富にあります.平成14年には東北新幹線が八戸まで延び,利便性が増しました.

 当院は昭和37年に労働福祉事業団によって設置されました.開設当時は8診療科,302床でしたが,診療科の増設,増床,増築を重ね,平成元年には18診療科,510床を有する地域の中核病院となりました.その後,三陸はるか沖地震によって甚大な被害を受けましたが,これを契機に大幅な改築を行って現在の姿となり,18診療科,474床となっています.また,開設母体の労働福祉事業団は国の行政改革の一環として平成16年に独立行政法人労働者健康福祉機構に移行しました.

麻生飯塚病院外科 長家 尚
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当院は大正7年,石炭産業を生業とする麻生産業の附属病院(120床)として産声を上げ,その後86年の間,一貫して地域医療の向上に努め,飯塚市を中心とする筑豊一体の市民の病院として親しまれてきました.

 現在,診療科目31科,19病棟1,157床(外科病床は約100床)で,1日平均の入院患者は874名,外来患者は1,975名です.医師194名とコメディカルを含め,総勢1,452名のスタッフを擁し,臨床研修病院,災害拠点病院,エイズ拠点病院,日本医療機能評価機構認定,地域周産期母子医療センター,地域がん診療拠点病院,福岡県予防接種センター,DPC試行的適用病院となっています.また,TQM活動の開始やISO14001認証取得など,医療の質と安全性を高める多くの委員会活動を継続し,活発な院内改善活動を行っています.救急医療においては昭和57年に筑豊地域救命救急センターを併設して地域医療に大きく貢献しています.

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はじめに

 閉鎖孔ヘルニアは術前に診断されることは稀であり,原因不明のイレウスとして開腹時に発見されることが多かった1).近年,画像診断の進歩により術前診断される症例が増加してきており,特に腹部CT,超音波検査の有用性について多数報告されている.今回,筆者らは当院で経験した閉鎖孔ヘルニア10例について臨床的検討を行ったので報告する.

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はじめに

 陥入爪は爪が強く彎曲して側郭部に陥入し,外傷や深爪を契機に感染をきたして,激しい痛みとともに発症する.この際に生じた創に接触する爪は生体には異物となるため大きな肉芽腫を形成し,さらに難治性となる.Heifetz1)はこの病期の進行をStage 1(初期炎症期),Stage 2(排膿期),Stage 3(肉芽腫形成期)と分類している.また陥入爪は変形した爪甲の形態により半月型,ステープル型,ピンサー型,トランペット型に分類2)されているが,観察を重ねると1個の爪で2つの病型が混在する例も少なからず見受けられるので,本稿では混在例は右順位に分類し,記述した.

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はじめに

 近年,腹部超音波検査や腹部CT検査などの画像診断が進歩し,閉鎖孔ヘルニア(以下,本症)の症例報告が増加しているが,その多くは女性であり男性例は稀である1).また高齢者に多いことや腸閉塞状態で発見され,緊急手術となる場合が多いことなど,生命に危険が及ぶ場合がありうる疾患である.今回,87歳の高齢男性に発生した本症の1例に対し,超音波ガイドでの整復により緊急手術を回避し,待機的に低侵襲な手術を選択し良好な結果を得たので,若干の文献的考察を加え報告する.

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はじめに

 外傷性胆管狭窄は腹部の鈍的外傷により生じる稀な疾患である.今回,腹部外傷による後腹膜血腫の治療中に黄疸で発症した総胆管狭窄の1例を経験したので報告する.

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はじめに

 手術不能の進行肝細胞癌に対する治療の選択枝として肝動注化学療法が行われている2,4~8)が,今回われわれは,著明な癌病巣の縮小を認め,根治切除,病理学的完全寛解に至った症例を経験したので報告する.

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はじめに

 特発性大腸穿孔は明らかな原因がなく大腸に穿孔をきたす稀な疾患で,予後不良といわれている1).明らかな原因がなく,異なる部位に合計3回の穿孔を起こし,いずれもショックに陥らず救命しえた症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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はじめに

 腎細胞癌1),悪性リンパ腫2),肝囊胞3)など様々な腫瘍性病変が退縮または自然消失に至る報告はしばしば散見される.しかし肝細胞癌4)に関するものはほとんどなく,まして腫瘍細胞が完全に消失した報告例はない.今回,筆者らは巨大な肝細胞癌が特別な癌治療を行わず完全に壊死,消失した症例を剖検により確認したので報告する.

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はじめに

 一般的に,脾門部脾動脈瘤に対しては脾摘出術や経皮的動脈瘤塞栓術,大開腹による瘤切除再建術が行われている.今回,筆者らは腹腔鏡補助下に脾門部脾動脈瘤切除再建術を行った2例を経験した.従来の術式と比較して脾梗塞を最小限に抑えることができ,かつ低侵襲な治療法と考えられた.

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はじめに

 現在,免疫染色でCD34およびc-kit陽性病変をgastrointestinal stromal tumor(以下,GIST)と定義するのが一般的である.その良・悪性度診断はGISTの概念が確立される前,すなわち平滑筋腫や平滑筋肉腫などと呼称していた時代より難しいことが多く,術前に確定診断を得ることは稀である.そのため,手術適応の基準は議論の分かれるところである.

 今回われわれは,腹膜播種性転移をきたした胃小型GISTの1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

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臨床外科
60巻6号 (2005年6月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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