理学療法と作業療法 19巻1号 (1985年1月)

特集 シンポジウム/チーム医療の人間関係

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はじめに―現在の問題状況

 「チームにおける人間関係」というシンポジウムの冒頭に,医師の立場から,また企画者の一人として問題提起の一翼を担わざるを得ないことになって,最初に考えたのはどうしてこのようなテーマをとりあげることが必要になったのかということである.

 総じてあるテーマが大きくクローズアップされるのは,現実の世界でそれが大きな問題になっている時であり,言いかえれば,要するに物事がうまく行っていない時である.

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 Ⅰ.はじめに

 リハビリテーション(以下リハビリと略)の最終的目標は障害を持つ者の全人間的復権4)にあると言うことに関しては,今さらながら論を待つほどのことではない.

 また,これらの目標を成功させるためには同じ目的意識のもとで医師をはじめとして,理学療法士(PT),作業療法士(OT),言語治療士(ST),看護婦,ソーシャルワーカーなどの多くの専門職鍾が当然,参加して行わなければならない.そして,これらの各種専門職種間の水をも洩らさない連携と綿密なチームワークが必要であることも疑いの余地はない.事実,それらの必要性については数多く論じられていることからも,伺い知ることができる5~10).さらに,このチームワークについても,それぞれの専門職種がチーム内で各自の役割を十分に認識した上で相互の信頼と専門性を尊重しながら成立することが理想であろう.しかしながら,現実的には専門職種の人員不足,相互の役割の認識や理解の不十分さ,チームメンバーのパーソナリティ,病院運営機構上の問題などの種々の制約により機能的かつ有機的なリハビリ・チームワークの運営を行うことが困難な場合も少なくない.さらに,このチームワークの運営のまずさによって本来十分な恩恵を受けるべき障害者およびその家族に対してのリハビリサービスに支障があってはならない.そこで今回,チームワークに関して大学病院に所属する一理学療法士としていくつかの問題点を述べてみたいと思う.

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はじめに

 リハビリテーション(以下リハビリ)はチームによる医療といわれ,患者を中心とした,それぞれの職種の深い関わり合いが求められる.しかも,リハビリ意識の拡大や社会情勢の変化により,作業療法士(OT)も多くの職種の人達や種々の環境に対応するよう迫られている.

 しかし,現時点での身障のOTはほとんど病院という環境におかれており,今回はこの範囲におけるチームワークの現状を当院の現状を基に報告し,OTにおけるチームワークの問題点について考えてみたい.

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はじめに

 チームワークを二つのタイプに分けて考えてみた.基本的には単独で行うのだが多くの人が分業しているタイプと,始めから多くの人が居なければ成り立たないタイプとである.医療の場合はどうだろうか? その昔は医師が一人で何もかもやっていた前者のタイプではないだろうか.看護は家庭看護から派生したものかもしれないが,看護・薬局・検査と周辺が拡がり,中央部分の医師も内科・外科・産婦人科等多くの科に分れ細分化していった.これは西洋医学の合理性のあらわれだと思う.細かく分れそれぞれが深く追求していくことで,医学は進歩しいろいろな発明や発見をして進んで来た.しかも今なお,医師が中心に医療を行い看護・薬局・検査等は手伝いという形の始めのタイプが歴然と存在している.

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 司会 論文は執筆されませんでしたが,いままで討論して戴いた4つの論文を読まれたうえで,この総合討論に臨まれた,PTの嶋田さん,リハビリソーシャルワーカーの奥川さん,ナースの上野さんにチームワークについてのお話を伺いたいと思います.

 嶋田 うちのセンターは,リハビリ病院ですので全てのスクッフがリハビリ部みたいなものですが,一応リハビリ部には10科あります.PT科,OT科,SW科,心理科,ST科,体育科,職前科,リハビリ工学科,職業更生科と,それらを調整する調整連絡科となります.リハ部のスタッフ数は大体100人です.その中で調整連絡科は現在事務系の職員が多いためカンファランス,ブレースクリニック等の調整,患者の時間割等が主な仕事です.

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 キケロの言葉と伝えられる「老年は病気そのもの」とか,エジプトのパピルスにある「老人になることは,あらゆる面で災である」といった言葉は何千年か昔のものだが,20世紀後半は大多数が70歳を越えて生き続けることが見込まれる時代である.長寿が現実となっても,後半生のqualityについては相変わらず悲観的な気分が蔓延している.

 非再生系細胞の代表である神経細胞は20歳代後半から既に減少し始め,80~90歳になると,前頭回,側頭回,帯状回,中心前回,線条体,黒質などのニューロンの約45%が消失するという.しかも,ニューロンが存在するからといって機能的に正常と考えるのは早計に過ぎる.水平樹状突起や棘突起の数も減少しているという.ただ幸いなことに,加齢脳でも樹状突起の発芽は認められることがある.いずれにしても,こうした老化に伴う形態的変化は筋肉,骨格,内部臓器にも生じ,同時に機能面での低下を伴う.病的過程があれば,よりこれらの変化は増幅される.老年者では機能形態障害を免れることはできない.機能形態障害は能力障害を伴うとは限らないが,1つのハンディキャップでもある.

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はじめに

 スウェーデン式反張防止膝装具は,反張膝に対して有効であるが,小児用の市販品がない.そこでオルソプラストを用いて,スウェーデン式膝装具を製作してみたところ,容易に製作でき,かっ6カ月以上の耐久性があることがわかった.3~6歳の小児用として実用性があるがそれ以上の高年齢児に対しても,スウェーデン式膝装具の適応があるかどうか試着用として利用できる.

片手用爪切り自助具 杉本 和哉
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 Ⅰ.はじめに

 患側が廃用手である片麻痺患者の場合,市販の爪切りで健側上肢の爪を切ることは非常に困難であり,そのため,これまでいくつかの爪切り自助具が考案されている.

 今回製作した爪切り自助具は,健側上肢を用いて健側の爪を切るもので,以下の条件を満たすよう工夫した.

 1)健側の手指,あるいは手掌を用いて操作する.

 2)健側上肢は,机上で手掌を下向きに置いた肢位とし,自然な坐位姿勢のままで机上で操作する.

 3)切る爪の深さを,切りたがら目で確認できる.

 4)市販の爪切りを使用し,同一サイズであれば交換可能で,着脱が片手動作で可能.

 5)小型・軽量・堅牢

プログレス

神経再建術 長野 昭
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 近年手術用顕微鏡,微小外科用手術器具,縫合系の開発により神経再建術の成績は従来の裸眼手術の時代に比較して良好となってきているが,いまだ解決されるべき多くの問題が残されている.神経再建術の現況とともに最近の新しい試みについて紹介する.

 神経縫合の時期については,一般的には早期二次縫合(受傷後3週頃が最適)が安全かつ確実であるが,指神経断裂の場合と新鮮かつclean cut injuryでスタッフ,設備が十分な場合には一次縫合が積極的に行われている.

インタビュー PT・OTの素顔

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 <先生は,PTになられた後,医師の資格を取得されたわけですが,何故そういう道を選ばれたのですか.>

 鈴木 私は国立療養所東京病院付属リハビリ学院の4期生でしたが,学生の頃,解剖・生理学研究会のサークルに入り,主に痙性麻痺について国内・外の文献を読みながら勉強していましたが,どうも自分のやっていることは,知識の羅列だけで基礎がない.一歩進んで何か新しいことをやろうとすると,すぐ壁に突き当ってしまうということを感じました.

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 ポルトガルやリスボンというと,子供の頃は歴史の教科書で,少し前は第二次世界大戦のスパイ小説で,最近は大航海時代の書物やTV番組で,常に興味を持っていた.第15回リハビリテーション世界会議(RIと省略)がリスボンで開催されるというので,悪友を誘って出かけることにした.出かけることが決ると,この雑誌から学会印象記の原稿依頼を戴いた.光栄ではあったがお断りした理由は,この会議の参加者が多くの分野にわたっており,難しい術語に加えお国訛りの英語(特にラテン訛り)は遙かに理解の限界を越えるからである.ところが編集委員の1人からポルトガルの印象も加えてよいという再度の申し出があり断り切れず,御引き受けした.

 雨模様のリスボンに着いたのは6月3日でRIの大きな歓迎看板や,車椅子専用バス等が早速眼に入る.その日ホテルでは旅行団体の夕食会があり,先着の方から食事のサービスが遅いことやスリについての注意があった.固い話は後にしてポルトガルの印象をまず述べれば次のようなことになるだろうか.

講座

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はじめに

 日本では近い将来,痴呆が重大な社会問題になるであろうといわれている.痴呆―とくに老年痴呆は高齢になるにつれて,加速度的に増加する.一方,日本の人口構成は老齢化が急速に進行し,高齢者の数が著しく増えてきている.したがって,痴呆患者が今後急激に増加することが予想される.

 社会問題としての第2の理由は,痴呆がコントロールし難いことにある.神経細胞は再生能力が非常に低いため,痴呆のように神経細胞が脱落してしまうと代償が難しくなる.

 第3の理由は,患者自身の問題だけでなく,家族などに及ぼす影響が大きい.また痴呆患者は自分のおかれている状況に無関心なことが多く,自分の病気についても気付かず,病識がないことも少なくない.このような点が理学療法や作業療法を行う点に大きな支障になるため,この支障を乗り越える方法が検討されなければならない.痴呆患者の理学療法や作業療法のアプローチを行うに際して,痴呆がどのようなものであり,どのような機序によって発症するかをよく見きわめておかないと,間違った方向に進む恐れもある.そこでまず痴呆についての考え方を紹介し,痴呆の形態学的および生化学的基盤について述べる.

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はじめに

 3年次臨床実習の目的は,学内教育により得た知識を患者または障害という具体的な対象に接し,検査・測定を行いそれに基づいて治療計画を作成し実施することである.これに対し臨床実習指導者(以下SVと略す)は,技術面のみの指導だけではなく,専門職としてのあり方や態度および人間としての行動の仕方などについて幅広く指導することが望まれている.限られた時間の中でいかに学生を指導し評価するかはSVにとっても頭の痛い問題である.臨床実習を効果的に行うには,学生からいかに正確な情報を収集するかである.各養成校からある程度の情報を入手することは可能であるが,実習では学内教育では得られない情報が必要な場合もある.しかし情報が多すぎると先入観を持って判断しがちになる.実習生の評価についても多くの項目について評価する方法が有効であるが,評価時間などから考えると煩雑になってしまう傾向がある.

 一般に各実習施設では中間および最終評価を行っており,その結果により臨床実習の合否の判定を行っている.このような結果だけの判定では,実習生が次回の実習においてどのように改善すればいいのか不明確であり,学生にフィードバックしにくい点がある.筆者らは現在の臨床実習評価に対し,学生自身による評価法について模索しており,1981年2月カナダのToronto Rehabilitation Centreで研修を受けそこで“Competency test”という自己評価法について知る機会を得た.わが国では医学教育の中で自己評価を利用している所もあるが,PT・OT教育の中ではほとんど用いられていない.我々はこの自己評価法を臨床実習評価における新しい試みとして,当大学におけるPT実習生に対し使用する機会を得たので報告する.

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はじめに

 最近,左片麻痺の患者で発病直後より大脳半球の病巣に顔を向けたままの患者がみられ訓練を開始しても長期間この症状が持続した.この症状を伴っている患者は理学療法上,機能の回復に問題があり,右向き(Right Neck Rotation)と名づけ約5カ月間にわたって経過を観察したので報告する(図1).

FORUM フォーラム ふぉーらむ

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 膝あるいは股関節の整形外科手術後の患者で長期間の患側下肢の免荷を要求される場合,当然松葉杖歩行訓練が必要となる.術後,担当医師から理学療法の指示を受けて病室でROM cxcrciseおよび筋力増強訓練を開始し,起立訓練を経て松葉杖歩行訓練に至る.松葉杖歩行において最も危惧されるのは転倒の危険性である.

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 Tシャツにショートパンツ,からっとした暑さとはいえ昼間は汗ばむ.東部はマサチュセッツ州のスプリングフィールド,西部はカリフォルニア州ロサンゼルスに理学療法士が自営するいわゆる理学療法診療所を訪ねた.

 パーマPTが経営する“Challenge”.玄関のドアーを開けて入る.受付から診療室がのぞかれる.私を招いた都合上,午前中休診.診療室は三つの部分に.部分渦流浴槽の設置された水治療法室.新しい機構の頸牽引装置.車輪のスポークが風車の羽根のようになった固定自転車,ペダルを踏むと空気抵抗が適度にやわらかく加わる.電気刺激装置.

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 脊髄損傷者における理学療法の基本的プログラムは規格化されたものと言えるが,プログラム進行の際,二次的障害・合併症の有無により予後は大きく左右される.このため,リハビリテーション医療に携わる全スタッフは残存能力の最大限の活用に加えて二次的障害・合併症を最小限に留めるよう,実施することが必要である.また,年齢層が若いことから心理・社会・職業・経済的指導も当然必要となってくる.

 今回,安藤徳彦・大矯正洋・石堂哲郎・木下博先生により,上述した点を十分に考慮した実践的な技術書が出版された.

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文献抄録

編集後記
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 読者の皆様,思い思いのお正月を迎えられましたでしょうか.本年もよろしくお願いいたします.

 さて本号は,シンポジウム形式で「チーム医療の人間関係」を取り上げました.

 (編集室)

基本情報

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理学療法と作業療法
19巻1号 (1985年1月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0386-9849 医学書院

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