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講座
痴呆 1.痴呆の病態生理
Dementia 1. Pathophysiology of Dementia
中村 重信
1
Shigenobu NAKAMURA
1
1京都大学医学部神経内科
1Department of Neurology, Faculty of Medicine, Kyoto University.
pp.53-58
発行日 1985年1月15日
Published Date 1985/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103248
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はじめに
日本では近い将来,痴呆が重大な社会問題になるであろうといわれている.痴呆―とくに老年痴呆は高齢になるにつれて,加速度的に増加する.一方,日本の人口構成は老齢化が急速に進行し,高齢者の数が著しく増えてきている.したがって,痴呆患者が今後急激に増加することが予想される.
社会問題としての第2の理由は,痴呆がコントロールし難いことにある.神経細胞は再生能力が非常に低いため,痴呆のように神経細胞が脱落してしまうと代償が難しくなる.
第3の理由は,患者自身の問題だけでなく,家族などに及ぼす影響が大きい.また痴呆患者は自分のおかれている状況に無関心なことが多く,自分の病気についても気付かず,病識がないことも少なくない.このような点が理学療法や作業療法を行う点に大きな支障になるため,この支障を乗り越える方法が検討されなければならない.痴呆患者の理学療法や作業療法のアプローチを行うに際して,痴呆がどのようなものであり,どのような機序によって発症するかをよく見きわめておかないと,間違った方向に進む恐れもある.そこでまず痴呆についての考え方を紹介し,痴呆の形態学的および生化学的基盤について述べる.
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