とびら
老人のリハビリテーション雑考
江藤 文夫
1
1東京大学病院リハビリテーション部
pp.1
発行日 1985年1月15日
Published Date 1985/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103236
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キケロの言葉と伝えられる「老年は病気そのもの」とか,エジプトのパピルスにある「老人になることは,あらゆる面で災である」といった言葉は何千年か昔のものだが,20世紀後半は大多数が70歳を越えて生き続けることが見込まれる時代である.長寿が現実となっても,後半生のqualityについては相変わらず悲観的な気分が蔓延している.
非再生系細胞の代表である神経細胞は20歳代後半から既に減少し始め,80~90歳になると,前頭回,側頭回,帯状回,中心前回,線条体,黒質などのニューロンの約45%が消失するという.しかも,ニューロンが存在するからといって機能的に正常と考えるのは早計に過ぎる.水平樹状突起や棘突起の数も減少しているという.ただ幸いなことに,加齢脳でも樹状突起の発芽は認められることがある.いずれにしても,こうした老化に伴う形態的変化は筋肉,骨格,内部臓器にも生じ,同時に機能面での低下を伴う.病的過程があれば,よりこれらの変化は増幅される.老年者では機能形態障害を免れることはできない.機能形態障害は能力障害を伴うとは限らないが,1つのハンディキャップでもある.
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