Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
末梢神経損傷の治療にさいしては,損傷の病態・時間経過によって,再生可能か不能か,あるいは腱移行・関節固定術などによる機能的再建策を考えるべきものかなどによって,根本的な態度が違うはずである。したがって,リハビリテーションの方法にもそれぞれ適応があるべきである。また末梢神経損傷の形式が,いかなる状態にあるかを論ずる前に,末梢神経の正常な解剖学的・生理学的な機能にむすびついた病態の認識がなければならない。
末梢神経はその解剖学的部位によって差異はあるが,大径の有髄線維(A線維と呼ばれ,径1~22μ),小径の有髄線維(B線維と呼ばれ,径3μ以下で,自律神経の節前線維がそれに相当する)ならびに無髄線維(C線維と呼ばれ0.3~1.3μの直径を有し,自律神経はこれにあたる)の3種類から構成されている。
これらの神経線維の刺激伝導の速度には差異があり,A線維では1秒間に5~100mであり,運動・知覚線維は主としてこれに属する。B線維では3~14mであり,内臓知覚を司る神経がこれにあたる。C線維では0.5~2.0mと言われており,自律神経は主としてこれである。太い有髄の神経線維ほど,速い刺激伝導能力をもっている(Maximow and Bloom)。
これらによって構成され神経線維は内膜・周膜・外膜によって被覆されている。電話線のケーブルのような末梢神経を想像してみるとき,外傷によって,どのような形式の損傷を受けるであろうかということは想定されるはずである。
この場合の外傷には,切創・圧迫・牽引・捻れなどの機械的性質と,高速・高振動・電撃・高温などの物理的な性質と,薬物などによる化学的な性質のものがあって,一概に単一な様相を呈するものばかりではない。
しかし,その病態を単一化して考えてみることも大切であり,古くからSeddonの分類が広く用いられてきた(図1)。
1)Neurapraxia…一過性の刺激伝導障害
2)Axonotmesis…神経線維は連続性を保つが受傷部以遠の軸索が変性する。
3)Neurotmesis…神経線維は離断し,その以遠の軸索は変性する。
以上3種類の損傷型式である。
臨床的には,外傷を受けた末梢神経がどうした病態にあるかを適確に診断することが何よりも大切であり,そのためには以下のごとき方法が有用とされているが,それぞれについては詳述することは避けたい。
【診断方法】神経学的な一般臨床検査,筋電図検査,低周波による電気刺激テスト,発汗テスト,アクソン・レフレックスによるテストなど。
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.