看護学雑誌 72巻2号 (2008年2月)

特集 ナースが患者の性に向き合うとき

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開放的になったとは言え,わが国ではまだまだ性生活についておおっぴらに話す機会は多くありません.ですから,自らの性の悩みを相談したくても,誰にすればいいのかを決めるのはなかなか難しいのが現実です.ただ,患者さんの場合,誰に相談するかと言うと,ナースが一番ではないでしょうか.本特集では,性の悩みに向き合う機会の多い分野のナースの体験を中心に,その対応法とそこに至るナースの性に対する考えかたについて述べていただきます.また,セックス・カウンセリングという形での対応についても紹介します.

患者さんから性に関する相談を受けるということは,性に対する自らの姿勢が問われることでもあります.まず,向き合うことから始めてみませんか.

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高橋 がんの予後が改善されるにともなって,生活の質の1つとしてのセクシュアリティというものが避けて通れなくなってきたと思います.特にナースは,患者さんにとって一番身近な存在として,最も性の悩みの相談を受けやすい立場です.そこで本日は,婦人科,乳腺,皮膚・排泄ケアとそれぞれの専門の分野のナースにお集まりいただき,治療に由来した性の悩みや,その悩みにナースが対応する際の試行錯誤などについて,ざっくばらんにお話しいただければと思います.

 まずはそれぞれに印象的な,性の悩み相談の経験を語っていただきましょう.

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はじめに

 近年,乳がん診療の急速な進歩にともない,最新のエビデンスに基づいた治療が患者個々に応じて行なわれている.われわれ医療者は,患者が治療を受けるなかで,治療にともなう副作用を最小限に抑えながら日常生活を送れるよう支援し,「患者のQOL」を高める援助を考え医療や看護を実践する必要がある.

 「患者のQOL」を考えたとき,生活の一部であるセクシュアリティへの介入は重要であり,大きな課題である.当院乳腺科(以下当科とする)では,2004年より,看護師が臨床で行なうセクシュアリティへの介入について検討を重ねながら取り組んでいる.そこで,これまで行なってきた取り組みについて紹介し,今後の課題について考えたい.

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はじめに

 不妊症の定義は,「生殖年齢の男女が妊娠を希望し,ある一定期間,性生活を行なっているにもかかわらず,妊娠の成立をみない場合をいう」とされている1).不妊は,まさに生殖をめぐって性のからむ問題である.そして,日本社会において,不妊は,不毛であり,不幸・不孝という社会的烙印を押されてきた.だからオープンに語られにくい健康問題の代表格と言ってもよい.こうしてみると,暗い悲観的なイメージをもってしまいがちであるが,カップルの10組に1組は遭遇している(欧米では6-7組に1組の割合で人生のある時期,不妊に悩む経験をするといわれている),実はとてもポピュラーな問題なのである.

 今や年間の出生児55人に1人が生殖補助技術で生まれる時代になった.生身の性交渉でしか成しえなかった生殖の過程の一部を医療技術がとって代われるようになった.不妊症看護では,人間の性の特質に目を向けたとき,単に生殖性だけでなく,快楽性や連帯性のすべての特質について,一人ひとりの患者,カップルに関心を寄せ,かかわりを大切にしてケアしていく必要がある.

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 筆者は長年,総合病院で,性相談に携ってきた.その対象者は,ほとんどが性相談を受けるために来所する外来患者であり,身体的疾病にともなう性障害の相談は少ない.では,そうした性機能障害を主訴とする外来患者に対する性治療から,一般的な疾病の患者に接するナースが学べるものはないのであろうか.

 筆者は,ナースが性治療の実際を知ることは,患者の性的な側面を援助しょうとするに際して大いに助けとなると考えている.それは,性機能障害の治療を知ることは,どのような場合にセックス・セラピストに依頼すればよいかがわかるだけでなく,患者への性的側面の援助の基本が理解できるからである.その意味で,セックス・セラピーの実際を紹介する.

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「臨床法医学」という視点

―法医学というとこれまで,死体を解剖し,裁判あるいは警察調査へ協力するという印象が強かったと思います.しかし,佐藤先生の取り組まれている「臨床法医学」は死者よりも生者に焦点をあてるものということですね.

佐藤 臨床法医学は,虐待やDV,あるいは性犯罪など,生きている人間にかかわる問題を扱います.特に,医療機関での虐待の発見と対応については,診断・治療・援助・予防といったさまざまな点で,臨床法医学から提案できることがあると思います.

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 2007年7月29日(日),神戸女学院大学オープンキャンパス企画として「甲野善紀・島﨑徹・内田樹『身体性の教育―舞踊と武術:神戸女学院大学の実験』」が行なわれた.スポーツ,医療・介護,ロボット工学など,多領域へ大きな影響を与え続ける武術研究者・甲野善紀氏,現代舞踊の世界的なコレオグラファー(振付師)である島﨑徹氏,先ごろ書籍『私家版ユダヤ文化論』(文春新書,2006)で第6回小林秀雄賞を受賞した内田樹氏の三者による鼎談は,身体,感覚,矛盾など,人間存在に深く踊み込むテーマで展開した.

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 平成20年 新春の候です.

 平成19年度も国の内外で大規模な自然災害が頻回に発生しています.本邦の災害発生を概観してみると,桜の便りが聴かれる3月25日に「能登半島」においてマグニチュード6.9の地震が発生しました.復旧作業の休む間もなく7月16日に「新潟県中越沖地震」に見まわれました.新潟県は中越地震とその前は大洪水災害を経験し,そして,この度の地震と数年間に3回もの「大災害」を被ることとなり,心中,いかばかりかとお察しする次第です.

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多発性硬化症の世界最大の学会,ECTRIMS

 視力障害や手足のしびれなど,全身のさまざまな場所に神経症状が現れ,再発と寛解を繰り返しながら進行していく多発性硬化症(Multiple Sclerosis;以下,MS).再発を繰り返せば車椅子生活になる場合もある難病だが,このほどチェコ共和国プラハで開催されたMS世界最大の学会・欧州MS症治療研究委員会第23回大会(European Committee for Treatment and Research in Multiple Sclerosis;以下,ECTRIMS)では,早期治療を行なえば障害も軽減し,進行を4割遅らせるという臨床試験の結果など,最新情報が報告された.ここではECTRIMSで発表された最新情報とともに,今後MS患者の増加が予測されている日本の臨床現場で求められるMS治療にかかわる情報をまとめた.

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はじめに

 呼吸理学療法の一分野である呼吸介助法の目的について,石川らは「1回換気量の増加,気流速度の増加,呼吸パターンの正常化であるが,肺胞の低換気の予防や排痰も目的としてあげられる」と述べている1).このことから,呼吸介助法は看護基礎技術における「呼吸・循環を整える技術」2)に該当するのではないかと考えた.

 しかしながら,今回調査を行なったA病院をはじめ,多くの臨床現場では,この技術を看護師が看護ケアとして取り入れて実施している頻度は極めて少ない.

 理論と技術を習得すれば誰もが実施できる呼吸介助法は,救急医療(プレホスピタル)や在宅医療,災害時医療など医療機器の乏しい現場でも有用である.

 現在の医学領域における法令において,呼吸介助法は一職種の独占業務という規制はない.それゆえ,医療機関内において終始,患者の傍にいる看護職が呼吸介助法の有効性を認識し,その技術を習得し活用することは,看護の質を高め,患者のQOLを充足させることにつながるのではないかと考えた.

 「看護技術教育は,看護基礎教育,臨床での卒後教育の中で行なわれるものである」3)と定義されている見地から,本研究では看護職の呼吸介助法に対する認識を明らかにし,今後の看護職への効果的な技術の定着方法を見出したい.

巻頭カラー連載 A-LSD!病床からの誘惑・10

甲谷 匡賛 , 久保田 テツ
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 一九九五年の春、僕はギラン・バレー症候群という病気にかかった。比較的重度の症状だったらしく、身体が動かないまま半年近く病院で寝たきりの日々を過ごした。秋が近づき、なんとかベッドから離れられるようになると、毎日のように外をぼんやり眺め、“下界”に暮らす人々の生活を想い、退院してからの自分に当てはめた。あれがしたい、これをしよう。病棟から見下ろす家々の窓はいつしか、自身の欲望を写す窓となっていた。

 甲谷さんの作品「風にそよぐ星」は、その時の記憶を呼び戻す。病棟から眺める無数の窓と、そこから漏れる光に心が動かされる奇妙な感覚を。隔離された塔より見下ろす世界の慌ただしさと、驚くほど静かで緩やかな病室の時間のそのギャップを。

連載 こんな方法もあるかもしれない―介護発,武術経由の身体論・2

「無駄」の効用 岡田 慎一郎
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無駄の多い講習会

 私の行なう講習会では,現場ですぐに使える介護技術だけではなく,身体の動きを意識してもらえるような武術的な遊びや,身体運用法のトレーニングなども多く行ないます.そのため,参加者の方の中には「現場の介護に関係ないことはやめて,もっと具体的な技術を教えてほしい」とリクエストを受けることがあります.そういう方は,武術的な遊びは講習会の息抜きに過ぎず,自分にとっては無駄なものだと感じておられるようです.

 確かに,病院,施設,在宅で看護,介護をされている方にとって,個別のケースにおける具体的方法を学びたいというのは切実な問題です.介護現場では身体介助によって身体を痛めてるケースも多いですから,今すぐにでもよりよい技術を身につけたい,という希望は切迫したものだと思います.

連載 世界の感受の只中で・10

ケア・3 天田 城介
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 「はっきり分かったのは,今の日本が老人福祉では非常に遅れていて,人口の老齢化に見合う対策は,まだ何もとられていないということだけだった.もともと老人は希望とも建設とも無縁な存在なのかもしれない.が,しかし,長い人生を営々と歩んで来て,その果てに老耄が待ち受けているとしたら,では人間はまったく何のために生きたことになるのだろう.あるいは,彼は,もう終った人間なのかもしれない.働き,子孫を作り,そして総ての器官が疲れ果てて破損したとき,そこに老人病が待っている.」

連載 患者・看護師双方のためのアクティビティケア・11

ボランティアの活用 六角 僚子
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ボランティア活動をアクティビティケアに生かす

 今回はボランティアを活用したアクティビティケアについて紹介していきます.

 広辞苑によるとボランティア(volunteer)は「志願者.奉仕者.自ら進んで社会事業などに無償で参加する人」とあります.文部科学省でもボランティアを「個人の自由意思に基づき,その機能や時間等を進んで提供し,社会に貢献すること」としています.この自発的なボランティアの力を借りることは,高齢者が人,自然,さまざまな文化とのふれあいを体験し,そのことが高齢者の活性化を高めることにつながる.アクティビティケアの目的を達成するのにもってこいです.

連載 自分の人生を自分でコントロールするために 看護師のためのセルフコーチング・11

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はじめに

 プロジェクトとは「計画,企画事業」という意味があります.私たちは普段から後輩の指導,新しいシステムの導入,研究会,研修会の企画,勉強会など日常の業務から,プライベートでもキャリア・アップ,子育て,趣味,ボランティアにいたるまでさまざまなプロジェクトを進行させています.そのなかには成果の出ているものもあれば,スタックして身動きの取れないものもあるかもしれません.

 今回はプロジェクトマップという方法によって,あなたが期待する通りの成果を手に入れる方法について紹介しましょう.

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編集後記 鳥居 , 大野
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●頭と身体,という言い方があります.頭で考えるより身体を動かしたほうが早いとか,身体で覚えろ,とか.でも,よくよく考えてみると,脳だって他の内臓と同じく「身体」なんですよね.発生学的に脳と腸は近いという説もあります.「頭と身体の境界線」は,実際にはかなり不分明なのでしょう.

 今号の鼎談で内田樹氏が「他人の頭を自分の身体に載せる」という話をされています.「知」が身体中のいたるところに偏在しているのだとしても,その性質には違いがある.クリアカットで有意味な「知」はやはり「頭」が作り出すものなのでしょう.しかし,人間の「知」全体がクリアカットなものだけでできているわけではない.特に看護実践のような,混沌とした人間存在の全体性を扱う現場では,頭が切り捨ててしまう「ノイズ」をつぶさに拾い上げる,文字通りの意味の「身体知」が求められるのではないでしょうか.【鳥居】

基本情報

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看護学雑誌
72巻2号 (2008年2月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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