巻頭カラー連載 A-LSD!病床からの誘惑・10
窓
甲谷 匡賛
,
久保田 テツ
1
1大阪大学コミュニケーションデザイン・センター
pp.89
発行日 2008年2月1日
Published Date 2008/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101206
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- 文献概要
一九九五年の春、僕はギラン・バレー症候群という病気にかかった。比較的重度の症状だったらしく、身体が動かないまま半年近く病院で寝たきりの日々を過ごした。秋が近づき、なんとかベッドから離れられるようになると、毎日のように外をぼんやり眺め、“下界”に暮らす人々の生活を想い、退院してからの自分に当てはめた。あれがしたい、これをしよう。病棟から見下ろす家々の窓はいつしか、自身の欲望を写す窓となっていた。
甲谷さんの作品「風にそよぐ星」は、その時の記憶を呼び戻す。病棟から眺める無数の窓と、そこから漏れる光に心が動かされる奇妙な感覚を。隔離された塔より見下ろす世界の慌ただしさと、驚くほど静かで緩やかな病室の時間のそのギャップを。
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