特集 ナースが患者の性に向き合うとき
私たちは患者さんの性の悩みにどう向き合っているか―不妊症看護における性の視点
森 明子
1
Akiko Mori
1
1聖路加看護大学
pp.113-117
発行日 2008年2月1日
Published Date 2008/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101199
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はじめに
不妊症の定義は,「生殖年齢の男女が妊娠を希望し,ある一定期間,性生活を行なっているにもかかわらず,妊娠の成立をみない場合をいう」とされている1).不妊は,まさに生殖をめぐって性のからむ問題である.そして,日本社会において,不妊は,不毛であり,不幸・不孝という社会的烙印を押されてきた.だからオープンに語られにくい健康問題の代表格と言ってもよい.こうしてみると,暗い悲観的なイメージをもってしまいがちであるが,カップルの10組に1組は遭遇している(欧米では6-7組に1組の割合で人生のある時期,不妊に悩む経験をするといわれている),実はとてもポピュラーな問題なのである.
今や年間の出生児55人に1人が生殖補助技術で生まれる時代になった.生身の性交渉でしか成しえなかった生殖の過程の一部を医療技術がとって代われるようになった.不妊症看護では,人間の性の特質に目を向けたとき,単に生殖性だけでなく,快楽性や連帯性のすべての特質について,一人ひとりの患者,カップルに関心を寄せ,かかわりを大切にしてケアしていく必要がある.
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