看護学雑誌 45巻5号 (1981年5月)

特集1 POS導入の経験—滋賀医科大学付属病院の場合

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‘本学医学部の学生には,診療というものは患者を中心とするPOS,問題志向型システムで行うのだと教えています.その学生が病棟実習や卒後研修で母校の付属病院の診療の実際に触れたとき,自分たちの学んできたPOSとはほど遠い,古いシステムのカルテを使って旧態依然たる診療を行っているのをみると,彼らはどのように思うでしょうか’

 1978(昭和53)年,開院を4か月後にひかえた6月のある日,私は病院長室に呼ばれ,学長・病院長と共に,卒前・卒後教育の立場から病院の組織を挙げてPOSを導入するように,看護部長に協力を求めた.看護部長はしばらく考えた後,‘POSについてはいす’れは通らなければならないものだと思っています.本学の学生にそのように教育されているのでしたら,看護部としても取り組んでみたいと思いまずと答えた.このときの心境を看護部長日下部政子はこう語っている.

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医師がPOSをやるのは何の造作もないことです.やらないのは医師の怠慢,やらせないのは管理者の資質が問われます.しかし,POSにも欠点があります.本稿では欠点にのみ焦点をしぼって述べたいと思います.

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最初,私たちはPOSを記録の形式と受け取っていました.そして毎日,観察したことや計画をいろいろと考えてみるのですが,記録の上ではSとOが連続するだけでした.1年ほど経過して,形式を整えるために何について書こうとするのかをタイトルとして書くことにしました.すると,そのタイトルがあるとSや0だけでなく,AやPについてもスラスラと書けるので驚きました.

 タイトルをつけることをしばらく続けていると,タイトルといっているものがプロブレムであり,記録をするときになってから何について書くかを,つまりプロブレムを思い浮かべるのではなく,ベッドサイドに行く前にプロブレムを思い浮かべて看護をするべきであると思うようになりました.そして,プロブレムを念頭において看護をするということは,記録の方法であると理解していたPOSが,じつは看護を行う方法であった,という質的変換を意味するものでありました.

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本誌 滋賀医科大学付属病院では,開院以来,病院全体としてPOSを採用されたということですが,今日は準備段階からの苦労話や裏話,そしてPOSをやることによって看護がどう変化したかといった点についてお話し願いたいと思います.

 まず,坂井さんからPOS採用の決定のころのいきさつをお話しください.

特集2 浣腸療法の指導

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はじめに

 人工肛門ゆえの不定期な排便・排ガスに対する対策として,定期排便を目的とした浣腸療法は,結腸人工肛門(colostomy)の人にとってひとつの福音である.この浣腸療法は,ここ10年問,特にこの5年の間に,かなりの勢いで普及してきているといえる.それは,患者会活動の手ごたえとして,また看護関係の報告の増加から推察できる.

 このように,浣腸療法が基準化・一般化してきつつある今口でも,まだまだ検討しなければならない問題も多く,さらに充実させていくためには何をどう取り組んでいけばよいのだろうか.

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はじめに

 近年,人工肛門の術後管理のひとつとして,我が国においても淀腸療法(洗腸療法)の指導が広く行われるようになってきた.周知のごとく,本法は微温湯または生食水を人工肛門から結腸内に注入し,結腸の排便運動を誘発し結腸内に貯留している便を排泄させるもので,その手技に習熟すれば1-2日に1回人工肛門から排便を得て,次の浣腸時までは排ガスはあるが排便はないというようにコントロールすることができる.

 しかしこのように浣腸療法が広まってきたものの,浣腸指導を術後のいつごろから開始するか,その指導方法あるいは退院後のアフターケアなど,なお多くの問題が残っている,私たちは1977年より積極的に淀腸療法を指導し人口肛門造設者の社会復帰に好結果を得ているが,その経験より,看護の立場から指導上の問題点について考えてみたい.

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1.家庭での理解が不十分であった事例

 患者紹介

 く患者> 43歳(結婚後6か月),女

ベッドサイドの看護

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はじめに

 当院の内科外来では,寝たきり患者を初めとし,継続的治療看護を行うために,1975年より外来看護婦による訪問看護を開始し,今年で5年目を迎えた.現在23名の患者に往診・訪問看護をしているが,ほとんど毎日訪問する必要がある患者から,週1回程度でよい患者など,症状や看護必要度から見て様々な患者がいる,

 ここで紹介する患者は,慢性リウマチの患者である.37年前に発病し,52歳で歩行困難をきたし,67歳でほとんど寝たきりの状態となり,69歳の時,回復する可能性のない自分の病気と,息子夫婦の不和を理由に,前途を悲観し自殺未遂をした.それ以来口癖のように‘死にたい’と叫び続け.70歳で死亡したが,3年8か月間の訪問看護を通して,‘人間が生きること’について深く考えさせられた.

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我が国における小児疾患の中でも,ピエールロバン症候群は,分娩2200例に4例という数少ない疾患のひとつである.本疾患は一種の先天性奇形であって,主症状としては,小顎症,舌下垂,口蓋裂等があり,小顎症によって引き起こされる舌下垂による呼吸障害や哺乳困難等がみられる.

 多くの事例の場合,多少の哺乳困難は見られても,次第にその児なりに吸啜も上達し哺乳量が増量していくが,本事例については口蓋の大部分が欠損している極めて重度の口蓋裂であり,舌下垂により陥没呼吸もみられ強度の呼吸困難と哺乳困難を伴っていた。また月齢が進むに従い,身体的・精神的な発育遅延や頻回の嘔吐,肺炎の合併など重篤な状態を呈した児である.このような多くの障害をかかえた児へ経口哺乳および心身の発達への援助を行ったので,その援助経過を述べてみたいと思う.

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当院整形外科では近年,股関節の疾患に対し股関節全置換術が多く行われるようになってきた.対象者が中年から老年であり,成人病を合併していることが多いため全身の侵襲が大きく,治療の全過程を通しての看護の大きなポイントとして,術後の良肢位保持による同一体位の苦痛の緩和,リハビリテーションへの身体的・精神的負担の軽減などがあげられる.

 過去に行われた全置換術の数例をみると,同一肢位による身体の苦痛を訴える患者が最も多かった.そこで良肢位を保持しながら患者の苦痛を緩和させることを目的として看護を試み,ある程度の成果を得たのでここに報告する.

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患者紹介

 〈患者〉0氏,66歳の女性(主婦)

 〈病名〉直腸癌,肝転移,癌性腹膜炎併発

学童内科の子どもたち・1

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 今日もまた,幼い生命がひとつ消えた.

 ショートカット(と呼ぶには,あまりにも髪が短すぎるかもしれないが)で,色白のポチャッとした女の子が薄化粧をされ,ピンクのワンピースを着て横たわっている.そのかたわらで家族と看護婦と医師が女の子の思い出話にふけっている.だれの目にも涙の跡があったが,話し方は明るく,笑い声が聞かれた.あたかも,女の子のかつての歯ぎれの良いおしゃべりや,カラカラという笑い声が今ここに聞こえているかのように…….

いのちの現場で したたかに生きる看護婦を追って・5

准看からの脱出 長岡 房枝
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最初のショック

 関西地方の小都市B市にある個人経営のK病院は,外来患者1日120名前後,ベッド数30床を持つ,耳鼻科・整形外科の病院であった.

 その病院に住み込みで働く准看護婦の山田洋子(仮名)さんの1日は,朝6時の起床から始まる.診療室の掃除,診療準備,綿球綿棒などの材料作り,器具の消毒を済ませ,朝食を終えると平常どおり午前8時30分,受け付けの窓口を開けた.

素顔のナース

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高校生のころら絵が好きになり、一人でよく描いていた。疲れていても、夜勤明けでもカンバスに向かうと不思議に気が安まる。他人にはなかなかうまく伝えられない自分の心もカンバスには伝えられるような気がする。

バイタルサイン・14

体温[3]—発熱—1 岡安 大仁
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 発熱は,自覚的にはまず寒気あるいは悪寒戦慄としてとらえられる.その後,顔のほてりや身体の熱感を感じてくることが多い.発熱を定義づけると,体温調節中枢の働きに異常が発生し,そのために体温が高められた状態ということになる.

 体温調節中枢は視床下部にあるが,ここが刺激されると体温のレベルが高まる.そして高体温になるが,これが急激に起こると,悪寒やふるえや立毛がみられるようになる.そのようにして体熱を産生し,放散を妨げているわけである.このような体温調節中枢の刺激はいろいろのことで起こるものである.

 例えば脳の出血や腫瘍による機械的刺激,外傷による圧迫,また細菌や組織の分解産物が血流によって運ばれ,これが化学的に刺激となる(化学的刺激),このような感染の際に動員される白血球の分解産物や甲状腺ホルモン(サイロキシン),セロトニンなどの内因性化学物質も発熱物質である

カラーアトラス 褥創・5

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脊髄に損傷を生じる程度の外傷は,外傷の程度から言えば重傷に属するものである.何よりも脊髄の損傷によって生じた対麻痺が,回復するか否かが判定不可能であるし,受傷部位について手術をするか否かについては,学会でも20年前から結論の出ていない論争の的である.また,第一線の医師も,局所の安静保持という遵守事項を,ただひたすら守ることに専念するあまり,体位変換が二の次になってしまう傾向がある.

 看護サイドでも,急性期の局所安静の大切な時期に,2時間毎に神経をすり減らしながらの体位変換は,3人以上の複数で処置できればよいが,そうでない場合,特に少人数での夜勤の折などには,看護の原則などと言ってみたところで物理的に不可能なことに相違ない.できるだけ回転ベッドを用いて省力化に努めるべきではあるが,第一線の救急医療を扱う病院すべてに設備を整えることなど不可能であろう.1年に1回使用するかどうかわからない対象を考えて高価な設備を整えることは,現在の我が国の医療の現状からはとても望めることではない.従って,脊髄損傷が発生した場合には,可能な限り速やかに褥創管理を含めてトータルにケアの行き届く専門病院に移送するべきである.

マイ・オピニオン

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先日,当院の内科病棟で糖尿病性腎炎のKさんが亡くなった.外来通院していた当時のKさんのことを,私たちは‘食事療法がうまくいかない症例’として取り上げ,実際に食事を作る家族の方を呼んで指導したり,来院予定日に受診しなかった場合は電話で受診するように勧めたりした.このような時,いつもKさんは浮かない顔をして,迷惑そうであった.合併症が次々と悪化してKさんは入院した.合併症の進んだKさんの病状は,外来治療ではどうにもならないところまで来ていたのである.

 Kさんに限らず,糖尿病の合併症の恐ろしさを知る例は多く,合併症が生じない早期の指導が重要となってくる.糖尿病と初めて診断された患者に対しては,その患者の一生のコントロールが確実に行われるよう,徹底した指導が必要である.今や国民病として注目を集めている糖尿病の指導に,私たち外米看護婦が本格的に取り組んで数年たったが,集団指導や個人別指導などと試行錯誤を繰り返す一進一退の状況の中で,定期的に月1回の糖尿病教室(集団指導)を開くことが軌道にのってきた.医師・栄養士と,専門の講師の協力を得て,中身の濃い指導ができるようになった.

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‘56豪雪’と言われるほどの近来にない大雪が年末から正月にかけて,東北・北陸地方を襲った,ここ福井でも,例年だと1回ですむ屋根の雪おろしをもう3回もしなければならないほどであった.

 外来診療のみで入院患者をとらない医療生協光陽診療所(所長・大門和,福井市光陽町)では,豪雪時,外来患者がガタッと減り半分以下になってしまった.車で来ようにも道が雪で通れなくなり,除雪された幹線道路を通って来たとしても,診療所の駐車場が雪で埋まってしまっている.歩いて来ようにも年寄りや子供はとても歩けない状態であった.

 そこで,雪のため診療所に来たくても来られない入がいるなちば,こちらから出かけて行こう,そのために診療所はある,とカルテを見て薬が切れている人などを探して訪問した.もちろん車は使えないため,診療所牟らあまり遠くない患者宅ばかりだったがこの雪の中をよく来てくれたと,とても喜ばれた,ただ,まだ訪問蕎護それ自体があまり理解されておちず,玄関わきの4mもの雪を越えて訪閣した家では,患者さんが恐縮してしまって玄関先で体の状態を聞くだけで帰らなければならないようなこともあった.

看護ミニ事典

人工心臓/ショック 渥美 和彦
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人工心臓の定義

 人工心臓は,心臓の機能を部分的あるいは完全に代行する装置である.これには補助循環,補助心臓および完全人工心臓の3つがあるが,一般には完全人工心臓のことをいい,補助心臓をも含めることが多い.

くりにかるふぁーまころじー・5

統計的推論 佐久間 昭
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1枚のコインをn回投げて,表と裏の数α,bを記録する.表の割合はρ=α/nで.裏の割合は,q=1-ρ=b/nであるから,さしあたり,表のことだけを考えればよいだろう.nが無限大(n→∞)になればρはある安定した値πになるはずであるが,このπを表が出る(頻度的)確率という.

 さて,10回のコイン投げ(n=10)で表が3回(α=3)の結果を得たときp=0.3となり,このコインは‘公平’(π=0.5)ではないようにみえる.しかし,つぎのn=10のコイン投げではα=7となるかもしれないので,これだけでは確定的な結論は出しにくい.

コンピュータを学ぶ人のために・5

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コンピュータの5大要素

 和田 もし,佐藤君が入工頭脳みたいなものを作ってみたいとしたら,どんな基本的な要素を組み込みますか.

 佐藤 人工頭脳ですか,うーん.

性の臨床・16

老人の性 河野 友信
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平均寿命の延長と高齢者人口の増加は,まさに深刻な政治問題や社会問題になってきた感があります.

 老年学会では,一般に65歳以上を老年期として区分することになっていますが,だれもが年を取り,老化してゆくことを思えば,.老年期の問題や老人の生活について,何人たりとも無関心ではおれないでしょう.

肝臓病・胆のう病・膵臓病Q&A・2

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感染源をつきとめることが第一

 Q 前回はウイルス肝炎についてお話していただきましたが,今日は,B型肝炎ウイルスの感染が血液を取り扱う臨床のあらゆる領域で問題となっているため,その感染予防対策についてお伺いしたいと思います.

 まず,HBs抗原キャリアーには,感染させる危険性の高い人と低い人とがあると聞きましたが,それはどういう理由からですか.

滅菌と消毒・10(最終回)

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消毒・滅菌—その目指すもの(最終目的)は何であろうか.ある人は‘疾病治療への援助’と言うだろう.また,ある人は‘安全な医療の提供’と言うかもしれない.昨今は,医療の安全性があらゆる意味で問われている.しかし,消毒・滅菌の完全実施による安全性については,必ずしもそうとはいえない.

 消毒・滅菌は安全性の原点である.いうならば,消毒・滅菌の目指すものは,‘病院内感染予防’のひと言に尽きるのではないか,と筆者は考えている.もちろん感染の成立には,感染源となる病原徴生物や感染経路,あるいは感受性を持った人などが存在する.当然,病院内感染の予防には,これらの検討が必要である.

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 アフリカ諸国で現地軍に雇われた外人部隊が戦闘に加わっているとの報道がよくされるが、ネパール人は勇敢で剛健、食糧事情が悪くても耐えられるということで、私兵ではなく国から認められた形で各国の軍隊で働いている。ライさんの父親もマレーシア、シンガポール、ホンコンなどで軍人として働いた。そのため十七歳でネパールに行くまで、東南アジア各国のネパール人コロニーで生活した。

 高校を卒業し、今は大学となっている看護学校で三年半学ぶ。その後結核療養所、地方の病院を経てカトマンズの病院で働いた。現在も所属しているBIR病院ではICU室で三年間働いていた。そのBIR病院で日本青年海外協力隊員である看護婦と一緒に勤務することになった。その隊員が日本でICU看護を学ぶことを勧め、推薦人となって、神奈川県の国際交流課で受け入れている留学生の一人として来日した。

ビバ!ラプラタ アルゼンチンの日系人とともに・5

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‘今日夕方6時からヒノキエット病院で手術をするけど手伝ってくれる? 僕も助手でいるから通訳はするよ’と医師に言われたのは働き始めて4日目だった.その時私の知っていたスペイン語の医療器材名は‘ピンサ(鑷子)’と‘テヘラ(はさみ)’ぐらいだった.いくら通訳がいるといっても慣れない場で,そのうえ言葉もわからないのではあわてるばかりで手術の進行の妨げにならないかという危惧があった.反面,診療所以外のアルゼンチンの病院を初めて知ることができそうだという魅力を感じた.そして結局は学生時代の実習でしか行ったことのない手術の介助を引き受けた.

 5時までの外来診療が終わった後,医師とともにブェエノスアイレス大学医学部の近くにある,オープンシステムのヒノキエット病院へ行った.

余白のつぶやき・22

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 四人組裁判のもようをテレビでみた。

 私にはそもそも、あの文革というごたごたの意味がさっぱりわからなかったのだから、それを批判するリクツの方もわかりようがない。ただあの裁判が、純然たる政治裁判であることだけはわかった。裁判といういちおうの形式は踏んでいるけれど、要するに勝者が敗者に引導を渡したということである。相変らずの力は正義マイト・イズ・ライトなりだ。

基本情報

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看護学雑誌
45巻5号 (1981年5月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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