看護学雑誌 45巻2号 (1981年2月)

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‘成人病とは何か?’と問われて,即座に答えられる人はどれだけいるだろうか.このわかりにくい抽象的な言葉よりも,“習慣病”(あなたの日常の悪い習慣が生み出す病気)という言葉のほうが,より日常生活(暮らし)に身近なものとして理解しやすいのではないだろうか.

 この“習慣病”の提唱をめぐって,従来のヘルス・コントロール(健康管理)という考え方から,ライフ・プランニング(生涯を通しての健康生活の設計)という考え方へ発想の転換をし,より具体的で実践的なセルフ・ケアの方向と,そのなかでの看護の役割はどうあるべきかを探ってみたい.

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子どもは生活するために入院しているのではない

 ご紹介いただきました吉武でございます.本日,入院中の子どもの生活を考えるにあたり,当たり前のことをひとつはじめに申し上げておきたいと思います.それは,子どもは‘病院で生活するために入院しているのではない’ということです.入院しなければならない病気があるからこそ入院しているということ.この原点をもう一度見つめ直して,その限界の中でFどもの生活を楽しくすることを考えたいと思います.

 さて,私たち看護婦の本当の願いは,子どもたちがみんな健康で,幸せであることです.だからこそ子どもを病気から守り,健康を増進させるため努力しています.でもやっぱり病気になってしまう子どもたちがいます.どんなに努力しても未熟児は生まれます.昔は助からなかった新生児の手術が可能になりましたが,それはまたそれだけ私たちの対象になる患者がふえたことでもあります.また,白血病は予後不良であっても生命は延長されています.私たちが入院中の子どもとして対象にする数は決して減ってはいません.

外来ナーシング・カンファレンス・2 ライフプランニングセンタークリニックにて

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もらった薬を飲まない患者

 日野原 第2回のカンファレンスを始めましょう.患者の服薬の実態の例を出してください.

 三角 薬を飲まないことを建て前にしている患者さんが時々います.例えば,ほかでもらっているけれども,実際には飲んでいないという形で,このクリニックに来る患者さんがいます.あるいは,ほかで薬をもらっていても,このクリニックでは薬は特に出しませんと言われるから,今までかかった先生からの薬も飲まないという患者さんがいます.

いのちの現場で したたかに生きる看護婦を追って・2

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‘看護婦さん,起きてくだせい.花村さん,花村さん,おせんちゃんがおかしいでよ’

 時計を見ると午前3時.看護婦の花村さんはもう部屋の外に飛び出していた.7号室の佐藤きよさん(73歳)が目をしょぼつかせて廊下に立っている.7号室に駆けつけると,せんちゃんと呼ばれる沢田せんさんはいつもより大きな目を見開いて天井をにらんでいた.手を握ると温かかったが,脈は触れず呼吸が停止している.慌てて心臓マッサージと人工呼吸を交互に開始したとき,当直の療母が部屋に走り込んで来た.

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治癒見込みのない重症患者の中でも,末期癌患者の身体的苦痛,特に癌性疼痛が治療や看護の上で最も困難な問題のひとつである.その癌性疼痛もペインクリニック等の発達によりずいぶん緩和されたとはいえ,まだまだ未解決の部分が残されている.患者の苦痛の程度はおよそ他者からは察し難い.患者の苦しむ様を目前にして医療者側である私たちは,まず患者との信頼関係を成立させ,少しでも患者に近づくよう心がけねばならない.その苦しみの中には身体的な痛みだけではなく,精神的な苦しみも大いにあるからである.それゆえ私たちは,癌性疼痛に苦しみ,なおかつ精神的な苦痛を背負った患者に,少しでも苦痛を和らげるためにはいかにケアすればよいのかを真剣に考える必要がある.痛み,痛みで明け暮れる患者とのかかわりの中で,今回私たちは回復を信じきっている末期肺癌患者に,ブロンプトン液という麻薬水容液を与え続け,癌性疼痛から逃れることができた事例を経験したので,ここに紹介したい.

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はじめに

 癌患者には病名を告げないことが常識とされている中で,今回我々は病名を知った胃癌末期の患者に遭遇した.そして,この患者に対し,どのように接すればよいのかという戸惑いを感じた.そこで病棟カンファレンスを開き,アプローチの方法によっては闘病意欲を失うことなく,安らかな死が迎えられるのではないかという仮説を立て,カンファレンスを中心に,状態に応じた援助を続けた.

 キューブラ・ロスは,死への心理過程には拒否,怒り,約束,抑うつ,受容の5段階があり,その段階に長短はあっても入れ替わることはなく,すべての患者に共通していると述べている.この患者の経過を精神状態の変化から4期に分け,キューブラ・ロスの唱える死への心理過程と比較し,死に臨んだ患者への援助のあり方について考えてみたい.

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不治の病と言われ,死をまぬがれない白血病患者にとっても,医学の進歩はかなりの延命効果をもたらすようになってきている.しかしながら,その延命効果も限界があるものであり,そのような患者に対し,私たちはどのような援助が,どこまでできるのだろうかといつも考えさせられている.末期の精神状態を的確に把握することは非常に困難であるにせよ,死に立ち向かわなければならない患者が,前向きに生きられるような援助こそ,私たちに与えられた課題であろう.真剣になればなるほど悩み,言いようのない虚しさを感じながらも,常にひたむきな看護婦の姿勢は,その家族に対しても,勇気を持たせる原動力になるのではなかろうか.

 私たちが,最近体験した白血病患児の精神面の援助を中心とした看護を,ここに報告したいと思う.

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はじめに

 近年医療の進歩,福祉の向上などから透析患者も幅広い年齢層にわたり,年々増加の傾向にある.当施設においても,小児を含め,透析者は現在40名で70歳以上の老人を除き,病院から通学中の例を含め社会復帰率は65%である。そのうち7名は社会復帰者を優先とした夜間透析を行っている.

 この状況は,透析療法の目覚ましい進歩のおかげでもある.効率の良い透析器械が出現し,透析に伴う制限・苦痛もかなり軽減してきたが,患者自身の安易な考えから,自己管理不良に伴う高カリウム血症,心不全,肺水腫などの合併症を伴うことが多くなったように思われる.そして,患者サイドに立って看護する者には,幅広い観点から熟達した技術と指導能力が要求されるようになった.

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はじめに

 これまでの学習の積み上げと技術実習を踏まえて,私は初めての病院実習(基礎実習)を行った.2週間の実習の目的は‘対象の援助を行うための第1段階として,患者の基本的欲求を把握し,看護援助の必要性を判断し援助する’というものであった今回初めて患者を私独りで受け持ち,同じく内科病棟で実習するグループ員の経験からも学ぶことを通し,今後私たちが看護をしていく中で最も直接的な対象となる患者の多様性を把握すること,また入院や闘病生活などが患者にもたらす変化を理解することが目標でもあった.

 私が受け持った患者は,肺癌からの全身的骨転移という,一般状態も予後も不良の重症な患者であった.日に日に募っていく疼痛と衰弱の中で,残された時間をいかに充実させていくか,1日1日をいかに安楽に過ごしていくかという点で,課題の余りに大きい患者であり,現在の私の力量や技術ではどうにもならないことばかりだった,ひとつひとつのケアにナースの力を借りて,なんとか実習を終えたが,どれだけ目標に近づけたかを考えると不安である.しかし,持てるものは少ないけれど,なんとか少しでも安楽にと思う気持ちで患者に接し,私自身が学んだことは多い.

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 鎌倉に遊びに行った折,紙人形の栞を見て、そのなんとも言えない魅力にひかれ手をそめた。「紙だから手軽にできると思っていましたが案外難しいですね」気が向いた時手を出せるように材料をいつも身の回りにおいている。

バイタルサイン・11

呼吸[5]—異常呼吸 岡安 大仁
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呼吸には,生理的にも病的にも種々の変化がみられることは,これまでに述べてきた.ここに挙げるのはそれらとは別な特殊な異常呼吸である.

カラーアトラス 褥創・2

坐骨結節部の褥創―1 木村 哲彦
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 坐骨結節の部分に発生する褥創は,その発生経過からみて2種類に大別できる.1つは,他の仙骨部などに生ずるものと同様に,麻痺患者等に局所的循環障害を生ずるに十分な圧力(1cm2当たり100g以上とみるべき)が長時間(2時間が限度と考えられている)持続した場合に発生するもので,骨と皮膚の外側から挾まれた部分が循環障害のため壊死に陥り,皮膚から骨に向かって組織は脱落する.

 もう1つは,骨と皮膚に接触する部分とで挾まれた軟部組織が強い外力(多くは捻れ,側方向への力)により微細な損傷を受け,血腫や嚢腫状変化を来し,感染,自潰し,結果的に褥創潰瘍の状態に至るものである.この他に擦過創,毛嚢炎等でも同結果に至る.

マイ・オピニオン

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昨年の本誌11月号の特集‘看護者自身の中の准看制度’をたいへん興味深く読んだ.私自身も,今は現場を離れているものの,准看護婦として准看制度の廃止と看護制度の一本化を心から願っている者の1人である.

 その私の立場から最近,どうしてもこれだけはと思わされたことがある.それは同じ11月号巻頭本欄の河霜昭子氏の発言である.氏の一准看護婦の立場から一言"を読んで私は,氏がほんとうに准看の利益を守る立場から発言しているのかと疑問に思った(もちろん私も,准看制度の廃止に関して,それが准看の利益のみでなく,国民の医療を受ける権利を保障するものであることは重々理解しているつもりである).

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塩川医院は横浜市南部の新興住宅街の一角に位置し,地域医療の新しいスタイルを模索しつつ,意欲的な活動を進めている開業医院である.糖尿病の専門医として知られ,関係著書も多い塩田善朗院長が,専門医療と地域医療の両立を意図して,小児科担当の塩田チヱ子副院長とともに3年前に開院したものである.

 高い水準の医療を行うために,能力もあり経験も豊かな有資格看護婦が不可欠と考える塩田氏は,秋田六子婦長らとともに,徐々に看護婦の増員を計画していった.現在6名の有資格看護婦がいるが,特に秋田婦長は病棟婦長を歴任し敏腕をふるった逸材である.率先垂範の姿勢はそのままスタッフ全員にも貫かれている.

看護ミニ事典

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レーザーとは

 自然光は波長(すなわち色)も位相も異なる雑多な光の混合である.これに対しレーザー光は単一波長(すなわち単色光)で,位相もそろっている.従ってその波の山と山,谷と谷を重ねあわせて増幅すると,大きなエネルギーを持つ光とすることができる.またレンズにより集束させると極めて小さい焦点にまで絞れ,ここに高いエネルギー密度を作り出すことができる.

くりにかるふぁーまころじー・2

ポスト・ホック論法 佐久間 昭
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明治のはじめころ,日本海軍では毎年1000人をこえる脚気患者の発生に悩んでいたという.高木兼寛が提唱して明治17(1884)年にパン食をはじめたところ,明治18年から20年にかけて患者は激減し41人,3人,そして0人になったといわれる.

 海軍の様子を横目で眺めていた陸軍も,兵食の改良を考えはじめた.堀内利国は麦飯が脚気予防に効果があると考え,明治18年に麦飯を大阪の兵団に用いたところ,脚気患者は,うそのように姿を消しはじめた.同様な成績は,これに続いて行われた他の兵団での“実験”においても再現された.しかし,陸軍では正式に麦飯の採用に踏み切れなかった.

コンピュータを学ぶ人のために・2

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何もしてくれないコンピュータ

 近藤 私は初め,コンピュータというのは,とにかくなんでもしてくれるものだと思っていたわけ.ところが,もともとコンピュータっていうのは,人間が何かをしなければ,それだけの働きをしないわけでしょう.

 だから,コンピュータを扱う人間が10のものを持っていれば,コンピュータも10のものを与えてくれるかもしれない.100のものを持っていれば,コンピュータは100の考えや働きをしてくれるかもしれない.こんなふうに考えているんですが,どうでしょうか.

性の臨床・13

性教育 河野 友信
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性情報が氾濫(はんらん)し,セックス産業が隆盛を極めている陰で,性犯罪,ティーン・エージャーの妊娠,性の不一致,難治性の性病など,性にまつわる不幸な出来事や性問題が数多くみられます.

 これは,一般の人々が正しい性知識を十分持ち合わせていないことに一因があると考えられ,このことは,ひいては現在の日本では適切な性教育がなされていないことを反映しているともいえるでしょう.

呼吸器病Q&A・11

縦隔腫瘍 岡安 大仁 , 福田 幸子
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主な症状とその原因

腫瘍が周囲の臓器を圧迫すると症状が出現する

 Q 今まで10回にわたって,先生からいろいろな疾患についてわかりやすくお話していただきましたが,今日は‘縦隔腫瘍’について伺いたいと思います.まず,縦隔腫瘍とは縦隔内に発生する腫瘍である,という理解の仕方でよろしいでしょうか.

滅菌と消毒・7

手術室と消毒・滅菌 林 和枝
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手術室は,無菌病室に次いで清浄な環境が必要とされる場所である.手術創があり抵抗力が減弱した患者をいかに感染から守るか,またそのためには手術室の環境をどうすれば清浄に保持できるのか.このことは,手術室勤務者に課せられた重要な課題である.

 また,完全滅菌された医材を,どのようにすれば無菌のまま手術操作に使用できるかということも,大きなテーマである.

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 幼年期体が弱く何回か入院生活を経験した。そのためかどうか看護婦になりたいという思いは幼いころから強く、中学を卒業した時点ですぐ看護学校へ入学したかったが、高校は出てほしいとの両親の希望で高校卒業後迷わず看護学校に入学。看護学校で整形外科を実習した時、たまたま脊損の患者に出会い、リハビリテーション看護に強く興味をもった。それ以来看護婦になったら脊損看護を是非やってみたいとの思いがつのり、脊損病棟のある現在の病院で働くようになった。

 「就職面接でも脊損病棟勤務をお願いしたんです」

ビバ!ラプラタ アルゼンチンの日系人とともに・2

アルゼンチンの医療 藤原 美幸
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掃除で終わった初出勤の日

 雨の音が気になって眠れないままの第1夜が明けた.雨はまだ降り続いている。同居の女性が用意してくれたクロワッサンとミルクコーヒーの朝食をとり,アルゼンチンの通貨ペソ(1ドル=約660ペソ)に両替えをしてもらい,エレベーターの壁面いっぱいの大きな鏡で,疲れた表情の自分を発見しながらいよいよ初出勤である.

 アパートのある地区は東京なら山の手,そして診療所は下町にあり,バスで約50分位である.‘セテンタ(70ペソ)’と小さな声で言って乗車券を買う.公園と街路樹の多さにホッとしながら,それでも明日からの独り出勤に備えて道順を必死で覚えた.

余白のつぶやき・19

戦中派の喧嘩 べっしょ ちえこ
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私は、貧乏家に生まれいじけて育ったせいか、人間関係においてはからきし意気地がなくて、こどもの頃から人とちゃんとした喧嘩をしたことがない.したくとも出来ないのである.それが、こないだ電話で凄いのをやってしまった.相手は肝胆相照らす仲といってもいい三十年らいの古友達である.この年になって、なんだっていまさらそんなことをしてしまったのか.

 そもそも喧嘩の発端は、その日の朝偶然にみたテレビ番組であった。それは、女性史研究家のもろさわようこさんをゲストとして、戦争中に爆撃で亡くなった一人の女子挺身隊員の、心の軌跡を追うというものなのだが、画一教育によって目つぶしされたその愛国少女の像が、ほとんど完全にかつての私自身と重なるということもあって、ついついひきこまれたのだった.

基本情報

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看護学雑誌
45巻2号 (1981年2月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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