看護学雑誌 42巻8号 (1978年8月)

特集 実践のなかでの体験と学び・2

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無念の涙をのんでの選択──看護学院へ

 こどもの看護に喜びを見いだした日から,私はこどもの看護への一筋道を歩きつづけてきた.

 しかし,高校時代の私には,こどもをかわいがる女性のイメージはない.今でこそ男女共学は定着したが,そのごく初期の時代,女性には苦手といわれた数学や物理にばかり興味を示し,家庭科など軽蔑しきっていた私であった.

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 臨床看護の経験は十数年になる.この間,‘看護とは何か’を問いつづけ,具体的には整理できないまま現在に至っている.個別的な看護を目標に,真の意味での看護的援助を実現しようとして,試行錯誤を繰り返してきたような気がする.その繰り返しのような1つひとつの看護実践は,私自身に何らかの影響を与え,体験として意味のあった事柄である.

 これまでにみてきた医療の進歩は治療を専門分化し,診療を複雑にしてきている.そして,医療は生命の延長に多大な貢献をなしてきた.その一方,器機によって人を操作する状況をもつくりあげている.その医療とともに看護をする看護婦もまた,器機を通して患者さんを眺める風景も生じている.そうした状況の中で,看護婦は多様な診療の補助的業務に追われ,病める人の人間性を問題にするはずだった看護の視点が,いつの間にかズレていることに気づく者は少ない.

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1.書くことによって自己を知るために

 とてつもなく大きなこのテーマを手にした時,私が書くにはまだまだ早い年齢ではないか,と感じた.その一面,体験を語るのに年齢は無関係,その年齢で感じたことをそのまま書き表せばよいはず,という気持ちもわいてきた.‘アメリカへ行った看護婦が,現在の看護観にどのような影響をとどめて,毎日生活しているのだろう’の疑問が,私自身にぶつけられているようにも思った.

 ‘どんなに自己を知らずにいるか,自分の書いたものを読みかえして初めて気がつく’(ヴァレリー)の言葉と,父がよく私に話した‘体験は,書いて初めて自分のものになる’を思い出す.

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私は看護婦として4年目の夏を迎えようとしています,最初臨床に入ったときは,看護婦は2年間だけ,と心に決めていました.その2年間は,中学のころから目指していた保健婦になったときに役立てるための臨床経験だと割り切っていたのです。しかし,看護婦としての日々を重ねるうちに,離れ難い仕事の中身であることをつくづく感じはじめ,そのまま今日に至っています.“離れ難さ”とは何なのでしょうか.それは,看護の確実な手ごたえと言えるかもしれません.

 今,看護婦としての自分を振り返り,看護の本当のスタートともなったある教師との出会い,その後の臨床での印象深い看護事例を述べてみようと思います.

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‘よい看護をしたい’という看護婦たちの一途な願いが,医師団への点滴静注返上に向かってから,もう3年になろうとしている.その後,感情的なしこりがいまだに尾を引いているし,また,腰痛で休んだ同僚もいるなど,現実の職場には労働条件の問題や人間関係,そして看護観の相違やズレなど,さまざまの問題があり,なかなか思うようにならない.

 だが,きりきりと忙しい中にも,何とかしてチームとしての力を発揮し,よい看護を目指そうと頑張っている仲間たちがいる.苦しいけれど民主的な討議を繰り返し,1つの目標に向かって意識的な実践をしていかなければならない,と考えている友達がいる.私はこのチームの中で,看護婦として悩みながらも精いっぱい努力しようとしている.この今の私が看護婦であるために,いかに多くの人々とのかかわりがあったのであろうか.幼いころのショウ子ちゃんとの出会いはその第一歩であった.

マイ・オピニオン

体験的患者心理 中尾 アヤコ
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過日,ある研修会のシンポジウムで“患者中心の看護”がテーマに取り上げられ,私は‘患者の経験をもつ総婦長の立場’から発言の場を与えられた.私は2年ほど前,癌疾患の手術を受け,現在も通院加療中である.そのシンポジウムで私は,看護婦として理解している患者心理と,実際に体験する患者心理とでは,ずいぶん違いがあることを話した.

 私が癌の診断をくだされた時,周囲の人は手術に対する心配はないこと,すぐ元気になれることを知人などの例を挙げながら説明してくれた.私はその心遣いをありがたく思いながら,一方には,そんなことは当たり前のことであって,これぐらいのことで大層な事態になってはたまったものではない,という思いもあった.それよりも,その時の私の心を占めていたものは,手術に対する心配でも転移への恐怖でもなく,ひたすら女性として外観を損なわれることへの悲しさであった.だから,いくら‘大丈夫’‘心配ない’と言われても,私の気持ちは少しも‘大丈夫’ではなく‘心配’であった.しかし,手術後は術前の考えとは別の意味でけっこう大層な事態になり,そこで初めて友人や知人の話が私の中に生きてきたのである.

ベッドサイドの看護

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はじめに

 小児が心身ともに円満な発達をとげるため,ぜひとも身につけなければならない基本的生活習慣がある.それらが形成されるためには,健康児でさえも家庭において繰り返しの訓練が必要となってくる.

 本事例では,長期入院により,家庭で受けるはずの訓練,つまりしつけを看護婦や保母により受けた場合で,今回,特に排泄において,疾病による身体的障害および発育段階に並行して訓練を施すことで,かなりの成果を得たため,このプロセスをまとめ発表したい.

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はじめに

 ‘看護とは何か’と問われて,すでに久しい.現状では,看護が行われているにもかかわらず,看護婦それぞれが不安を感じながら,常にこれで良いのかと問うている毎日である.

 今回,私たちは,精神障害をもつということで,援助に困難を極めたが,看護の基本的な姿勢について考えさせられた事例を経験した.外科という病棟の中においての反省と,今後の課題をも含めてまとめてみたので述べてみたいと思う.

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はじめに

 私たちは,常に患者の有形・無形の訴えをよく聞き,問題を察知し,全体的には受容の姿勢で看護にあたってきた.この事例では,術後経過の鍵を握る経管栄養をかたくなに拒否し,常に激痛を訴え,腹痛を理由に経管栄養をしばしば中止するなどの場面もあったが,再三の心理的アプローチにより,良好に経過したので紹介する.

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はじめに

 老齢人口が増加している近年,当病棟においても老齢患者は昭和51年度入院数のほぼ20%を占めている.老化に加えて,病的変化により安静を余儀なくされたことに端を発し,長期臥床状況におかれ,寝たきり老人になってしまうケースも多く,看護上にも種々の問題を投げかけている.

 ここに述べる事例の患者も肺結核,結核性左股関節炎,さらに結核性左膝関節炎と次々に起こってくる身体的変化に加え,老人特有のがんこさと内向的な傾向は例外なく顕著であった.家族からは,入院させたことによって責任を回避したかのような態度がうかがえ,患者の悲そう感を増してしまった.そのような状況の中での手術の決定,転棟による環境の変化などが重なり,意思表示がはっきりしない毎日が続いた.そのままでは疎外感に輪をかけてしまい,生きたいという意欲すら失ってしまうようになることは明らかであった.

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はじめに

 脊髄損傷患者には排尿障害が必発する.その排尿障害の型は受傷の部位や程度,受傷後の経過年月によって異なる.

 初期の治療においては,生命の保持と神経障害を最小限にとどめることに努力がはらわれる.その後,一般に約6か月の間に,患者のリハビリテーション(以下,リハビリと略す)が行われるが,そのリハビリの成否は,排尿管理いかんによるといわれており,リハビリ看護の果たす役割は重要である.

学生の眼

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はじめに

 看護学校に入学以来,看護学の講義や,看護について書かれている本などから,私の心をとらえていたのは‘看護婦は感受性が豊かでなければならない’あるいは‘患者を観察し,患者の援助を要するニードを見きわめ,そのニードを満たすための援助を行ない,その援助が有効であったことを確認する時に,自分の感じたこと,思ったことを活用できるようになったならば,自分の行なっている援助サービスから,つきることのない満足感を得ることができる’1)などの言葉であった.

 これらの言葉は,私の学習の指針となり,私自身このような看護婦に近づきたい,このような看護を行いたいと思っていた.

障害児を育てて 母親の手記・3

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幼稚園入園をめぐって,世間の厳しさを知る

 昭和37年,子供が幼稚園へ行く年齢になったとき,A病院の幼稚園へ入園させたいことを担当の先生(医師)にお話ししました.先生は,さっそく幼稚園の方へ話しておきますから,ということでした.それからしばらくして病院から知らせがあり,行って話を聞いているうちに,私はそれが特殊学級であることを知り愕然としました.

 私は子供のことをだれよりも知っています.医学的見地からでなく,母親として同年齢の子供といたるところで,いろんな時に観察し比較をしてきました.自分の子供が運動神経の鈍いことも,手先の無器用なことも知っています.でもそれらは特殊学級へ行くほどのものではなく,折り紙も一応できますし,家の周りでは走り回っています.それに読み書きもできました.

病める心の人とともに・8

青空がない,青空がない 羽生 りつ
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‘青空がない,青空がない,白い壁ばかりだ’と怒声まじりで独語しながら,病室からホールへと,またきびすを返して病室へと,行ったり来たりを,先ほどから繰り返しているのは男子患者のSさんです.

 看護婦はナースステーションの中で,積み重ねられた数個のダンボール箱から書類を出して,その整理に余念がありません.ナースステーションを囲む大きなガラス窓に額を押しつけて,数人の患者さんたちが看護婦の行動を見つめています.

世界のナースたち

アンネP. マーチンさん—インド
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聖なるガンジス,ヒンズー教,カースト制度,極端な貧富の差,爆発する人口.インドはあまりにも豊かで,かつ貧しい.そこに6億の民が生きている.伝染病などで倒れる人の数は今まお多く,医療者に向けられる期待は大きい.しかし看護婦というと‘ああ看護婦か’という声が残念にもまだ残っている.

アイディア

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膀胱腫瘍の根治療法として行われる尿路変更術には,回腸導管法が広く用いられている.この手術を受けた患者に使用されている人工膀胱装具は,体動や,バッグに尿がたまるとその重さなどで,皮膚接着面より尿漏れが生じやすい.そのため尿漏れをなんとかなくすことができないかと,補助用具の工夫を試みてみた.対象とした人工膀胱装具は,ストマ・ユーリン人工膀胱(男性用)とラピデス人工膀胱(女性用)で,いずれも外国製である.

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日本看護協会(大森文子会長)の昭和53年度通常総会は,5月18-20日の3日間,東京・杉並の普門館など3会場で会員延べ5000人が参加して開かれた.

 総会では①協会組織を改革し,生き生きとした活動をしよう,②看護制度を改善し,よりよい看護をしよう,③ILO看護職員条約の批准と勧告の適用を促進させよう,④医療政策を改革し,国民の健康を守ろう,の4つのスローガンを掲げて,報告・討議が行われた.

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 第24回医学書院看護学セミナーが,5月18日午後6時から,東京・中野文化センターで約400人の看護婦・学生を集めて開かれた.

 同セミナーは,例年日本看護協会総会に際して開かれ好評を博しているもので,今回は‘アメリカにおける看護活動の動向’をテーマとして,近藤潤子(聖路加看護大学教授)の講演が行われた.

免疫と病気・8

移植拒絶反応 矢田 純一
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I.移植の必要な病気

 ある組織や臓器に欠陥が生じ,ほかの方法では治癒の見込みがない時には,ほかの動物やヒトの組織を移植することが考えられる.現在,実際に行われているものとして,角膜,皮膚,腎,骨髄細胞,心の移植などがある.

 角膜の移植は最も古くから手がけられ,しかも成功率が高く,角膜疾患の治療に広く行われている.腎の移植も盛んに行われていて,かなりの成功をおさめている.慢性腎機能不全はそのままでは回復の見込みがないし,生命を維持していくためには,月に何回か人工透析を行って体内に蓄積してくる老廃物を除去し,尿毒症の発生を予防しなければならない.そのためのばく大な費用と手間とを考えると,成功すれば腎移植は患者にとって大変な福音である.

やさしいX線写真の読み方・8

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 胃の早期癌診断を中心とする上部消化管X線検査および診断法は,我が国における数多くの優れた業績により,ほぼ完成され体系化されたといっても過言ではない.上部消化管X線検査は日常の造影X線検査のなかでも最も件数が多く,また重要なものの1つとなっている.

 今回は,日常の検査を円滑に行い,また多くの情報を得るのに有効なものとするために必要な,前処置をはじめとする諸準備について述べてみたい.

救急医療と看護・17

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嫌気性菌感染症(ガス壊疽,破傷風)では医師の最初の処置が重大な要素であるが,異物,溺水,電撃症の治療・予後の良否は,現場でどのような救命処置がなされたかによる.そのため,すべての人が心肺蘇生法のABCを行えるよう教育,啓蒙することが大切である.そして一般の人や救急隊員から患者を引き継いだ場合,蘇生に対する迅速で的確な処置を行い,数時間におよぶ懸命の努力を惜しんではならない.

脳性麻痺児の発達とその援助・4

麻痺児の介助の実際 1 井上 保
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第1回から第3回まで正常児および脳性麻痺児の運動・発達の特徴を述べてきたが,今回からはそれらのことを考慮しながら,実際にどのように介助していくかを述べる.

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 小学校から高校,看護学院と一貫してセブンスデー・アドベンチスト(キリスト教プロテスタントの一派で土曜日が礼拝日,菜食主義で有名)系の学校で学ぶ.生まれ落ちたところが,今勤務しているセブンスデーの病院なので,生まれてから今日まで,完全なキリスト教的環境の中で育った.もちろん両親もクリスチャンである.

 中学から全寮制で一貫した教育を受けたが,中学・高校と1学年30名ほどの,ほんとに小さな学校で学んだため,いわゆる受験地獄などは別世界のこと.少人数教育で教師とのふれ合いも多く,正にマスプロ教育を受けた者にとっては,うらやましい限りの教育環境に育った.

ルポ・アメリカ合衆国のナース その生活と意見・8

勤務交代と日常業務 江元 セツ
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 椅子に腰かけて,コーヒーを飲みながらテープレコーダーで朝の申し継ぎを聞くナースたち

 朝7時からの日勤のために,病院に向かうバスに乗る。病院行きのバスの中は,ユニホームを着たナースたちが多い.

 ナース・ラウンジでは,7時からの申し継ぎのために,既に深夜勤のチームリーダーが患者の状態をテープレコーダーに吹き込んである.

ホームヘルパー跳びある記・4

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 毎月第3金曜日の午後には,私たちホームヘルパーの事務打ち合わせ会議がある.藤沢市のヘルパーは14人(障害福祉担当5人,老人担当9人)です.48年8月から寝たきり老人巡回移動入浴サービス事業が始まり,ヘルパー3人(うち1人は看護婦資格をもつ)がチームを組んで,1か月交代で担当していますが,交代時の引き継ぎのためにケースの診断も必要となります.

 ‘Aさんの入浴,検討してほしいんだけど,先月入浴の後熱が出ているの.細菌感染も心配だし,入浴後の管理がよくないと,寝たきりで体力が弱っているから風邪をひきやすいのよ.十分注意はしているのだけど,Aさんのようなケースは自信がもてないわね’

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ナーシング・ホームとは,老齢者や慢性疾患患者の増加に伴い,我が国において,近年とみに注目されてきている医療と福祉の接点としての収容施設である.

切り取りカード 新しい薬の知識

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〔商品名〕サルタノール錠2,4 Sultanol Tabs.2,4(グラクソ)

〔薬効〕気管支拡張剤

基本情報

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看護学雑誌
42巻8号 (1978年8月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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