看護学雑誌 39巻4号 (1975年4月)

特集 健康者としての看護婦

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 病む人間を目前にして、看護婦はそのままで通り過ぎることはできない.なんとか手をのべたいと思う.病む患者の苦しみを共有し、ともに悩んでいこうとも思う.しかし、病める心を知ろうとすればするほど、自らが病んでいないことにハッと気付かされたことはなかったろうか.自らの健康であることを痛みとして感じたことはなかったろうか.病む人を前にしての健康者であることを考えてみたい.

病む世界の壁に思う 外口 玉子
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はじめに

 ‘ある人にとっての体験的事実は他の人にとってはどうなのか’ということは,以前から私のなかで問い続けてきていることです,このことは,病を体験している人と向かい合い続けている看護婦にとってはもちろんのこと,私たち人間すべてにつきつけられ,問われている問題であり,いくら検討してもしつくせない重要な問題でありましょう.

 従って,本稿においては,私のある患者との看護体験を表現し,それに呼応して出されてきた他の看護婦の看護体験をめぐっての話し合いにおいて,私が考えさせられ深めさせられたことについて問題提起してみることにいたしました.それが今後,1人でも多くの皆さんとともに深め合っていくきっかけとなればと,願って記しました.御意見を聞かせてください.

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 それはとくべつに暑い夏であったように思う.何の用であったか,私は舎の玄関に立ち,胸をつかれて棒立ちになってしまった.それまではいつでも杖にすがって微笑をたたえている彼にしか接したことはなかったのだが,今見る彼は玄関のあがりぎわの廊下のところに肌着1枚でうつ伏せにぶったおれている.まるで瀕死の状態のようにあえいでいる.

 “どうなさったのですか”

 声をかけると彼はゆっくりと顔をあげた.ひどく苦しげな,そして間の悪そうな表情で何も言わない.何も言えないのだ.むしろ帰ってくれと言われているようであった.

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植山(司会) 毎日の看護の中で,悩みをもった患者さん,死に直面して死というものを感じとっている患者さん,本当に病気が治るだろうかと不安を感じている患者さんとかに,いろいろ接するわけですが,そういう患者さんに接している私たちというのは,今の時点では病気をしていない,病んでない健康者であるわけです.しかし,その健康者である看護婦がいろいろな悩みをもつ患者さんを理解することが本当にできるのだろうかということを主題にしていきたいと思います.最初に私の体験した事例を紹介し,これを中心に話し合っていきたいと思います.

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 働くミセスのナースのために マタニティをおすすめします.

 月数がすすむにつれて おなかが大きくなるだけでなく 全体的に肉づきが違ってきて 今までの白衣が着れなくなります.ガウンでカバーしている人もありますが 予防衣をつける目的からすればおかしなものです.

アイディア

検体運搬車 箱田 久江
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 当院の内科病棟では 永年 検体の運搬に木製の手下げ箱を使用してきたが 様々な問題点があり各地公立病院12施設の意見を参考にし 考案・作成したので発表する.

 利点は下記の通りである.

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 176名の園児に対してたった1人の看護婦.ここ弘済学園(鉄道弘済会による総合福祉センター 園長・中村健二 神奈川県秦野市南矢名)は 重度のてんかんなどの合併症を持つ児 施設・病院をめぐりめぐって来た自閉症児 自傷のある児など 様々のハンディを持った精神薄弱の児が入園している.こんな園児に囲まれて たった1人の看護婦としてがん張っているのが庄司かずえさん.

 近所の開業医と嘱託関係をもち 週に数日来園する医者がいるといっても 多数の園児全員の健康管理に気を配るのは容易なことではない.

マイ・オピニオン

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 最近,看護界で‘看護観’という言葉がよく使われ,私も好んで使わせていただいている.ところで,この言葉の概念はどのように規定されるべきなのであろうか.私は,この言葉の意味が,看護界だけでなく,一般の人たちにも分かりやすいものであってほしいと思う.

 日本看護協会の看護教育問題研究班によると,看護観とは,ある角度からの看護への歓心,言い換えれば看護に対する一定の見方,と説明されている.

ベッドサイドの看護

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はじめに

 “人間対人間の看護”という本の,人間の能力という項に‘過去の体験を想起し再構成することを通じて,すなわち体験を正しく評価し,人のその体験への真の参画を認識するとき,その体験は人が洞察力を身につける上で,はかり知れない援助となりうるのである’1)と述べられている.私はここで,死に直面している老人への8時間の看護を取り上げ,考察を展開する.このような貴重な体験を,これからの看護の中に生かしていくために,8時間の場面のいくつかを再構成し,そこから自分の看護の不足や患者によってニードの違いのあること(その患者にとって援助を要するニードは何か)等を学んでいきたいと思う.

 特に患者が亡くなった場合に,死後にその看護をふり返ることは少ないので取り上げてみた.この患者の看護に当たるに際して,死に直面している人を看護することの不安を整理することや,その人がどういう死の転帰をとるのかの予測があれば,患者を避けることや何も感じないまま見過ごしてしまうこともないのではないかと考えた.安らかな死への援助を考え,自己の看護を評価していくためには,8時間は貴重な,そして決して短くない時間である.

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 近年医学の進歩は目覚ましく,生活様式の改善とあいまって人口の老齢化を来し,さらに老人の医療費無料化にともなって各病院とも老人患者が増加している.私達は老人の多い病院で看護にあたっているが,老人病の多くは慢性に経過するうち,多くの合併症を併発するという悪循環をたどり,完全治癒が望めなくなるのみか,死の問題を抜きにして看護は考えられない.老人の特性としては一般に保守的でがんこと言われるが,見当識障害,思考力の低下,人格水準の崩壊がみられる老人が多い.

 私たちは老人の余生,平安な死への道がいかにあるべきか,検討を加えながら看護にあたっているが,老人性痴呆が進行し,周囲の患者の睡眠を妨げ,徘徊を繰り返し,処置に追われる最中にも‘お金がありません.さがしてください’というような訴えを繰り返されては,患者の人格を尊重したいと心得ながらも,十分に対応しきれなくなる毎日である.しかし可能なかぎり精神病院への転院は考えないようにしている.

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はじめに

 イレウスの原因には機械的なものと機能的なものとがあり,その病態もさまざまである.とくに腸管の癒着により生ずる癒着性イレウスや,先天的腸管の通過障害によるイレウスでは,強度の便秘など慢性イレウス症状が長期に及ぶ.そのために起こる精神的苦痛は,患者の性格や社会的能力にも影響を及ぼす.

 私たちは今回極めてまれな,36歳の成人にみられた巨大結腸症の事例を経験し,術後予測される問題点をチェックし,手術に対する理解を深めると同時に,合併症の予防に努め,短期間で正常の排便機能を有するに至った.また乳児期からの疾患のためか,徐々に内向的になっていった患者が,入院中に比較的積極的に話し合えるようになり,しかも将来に希望をもつことができ,予想以上の好結果を得たので,報告する.

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 私どもは統一した患者中心の継続看護を行うことと,看護計画立案の継続性を求め,種々のカンファレンス方法を取り入れてみましたが,発言が少なかったり,記録に時間がかかるなどの困難があり再三検討し2年前より定着実施していますカンファレンスを紹介します.

 方法は,深夜勤よりの申し送り終了後,10-15分医局の協力を得て9時までとし,深夜看護婦(2人)が問題ある患者をチェックし,看護目標,上位目標への手段,具体的行動をあらかじめ計画し,1人が司会を務め日勤者で具体的行動の検討を行い,それぞれ追加修正したものを,1人の深夜看護婦がカーデックスに記載し実践後は機会をみて評価している.立案した計画は,病棟日誌に患者名を記録し準夜勤へ申し送る.毎日1-2例ずつの計画ではあるが,一応定着し継続実行している現状です.

学生の研究

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はじめに

 現在(昭和48年6月15日)福井県立病院脳外科における入院患者20名中,脳腫瘍患者は4名おり,全体の20%を占めている.そのうち3名までが20歳以下の青少年患者である.かつて悪性新生物といえば40歳以上の壮年期後半の人がかかる病気とみられていたが,最近では若年者に増加傾向がある.

 昭和48年の‘国民衛生の動向’に記載されている昭和46年と昭和45年の死因別死亡数を比較して増加しているものを上げると,悪性新生物・肝硬変・自殺などがある.そのうち,悪性新生物は原因も明確につかめておらず,ただ早期発見・早期治療に頼っている現状で,少しの発見の遅れが死につながるような病気であるために,自分の病気が癌だと知らされた時はもちろんのこと,そうでなくても病状経過からそれとなく患者自身が癌ではないかと思い始めた時,その不安は,図り知れないことと思われる.

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 この学生のこれまでの実習経過を述べると,看護過程のプロセスを実際の患者との出会いによって展開していくという看護総論レベルの実習として1年生の3月に2週問実習を経た後,2年生としての各論実習における初めて成人看護実習の体験レポートである.看護過程の展開は,薄井担子氏の‘看護教育への提言’を当学院においても取り組み,教育実践して第2回目のクラス生である.そのことからしだいに意図的看護ということが少しずつ,学生・教師ともども実感として理解できるようになった段階である。

 この際,この学生の実習体験についての具体的評価は読者におまかせすることにしたいと思う。ただ,このレポートの中心となるものは何かということをつけ加えれば,対象(T君)の様々な反応(生物体であると同時に生活体であるという統一体としての)を看護婦(学生)として,どのように認識し判断していくことができれば,T君の個別的ニードにそくした看護につながっていくことになるのかを考えていくプロセスにおいて,学生自身の悪戦苦闘の姿をぜひとらえていただきたいと思う。

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 地球より重いといわれる人間の生命を保護していく看護が,今のままであってよいのであろうか.総合看護が提唱され,長い間,看護制度はどうあればよいか,また看護の本質をめぐって語られてきている.

 しかし,実践の場である看護はどうであろうか.まだまだ真に求められる役割を果たしていない,今日,看護者に一番欠けているのは‘人間の看護’であり,その危機に直面している.

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はじめに

 近年,福祉という言葉がいろいろな場合に使われているが,児童福祉法に基づく,いわゆる‘重症心身障害児’の療育は福祉行為のなかでも極めて大切なものである.

 いまの社会は,人間疎外とか生命軽視といった風潮が萌芽しつつあるが,生命の価値観を人間の存在意義に求めたりすると,しばしば誤まった見解が引き出されかねない.

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〔商品名〕アモトリール Amotril(住友),コレナール Cholenal(山之内),デリバ Deliva(日本化薬)

〔作用〕コレステロール生合成の抑制および脂質転送(代謝活性)作用によって,血中脂質(コレステロール,トリグリセライド,リン脂質)を低下させる.尿中尿酸排泄促進作用があり,血中尿酸値上昇の是正が期待される.また血小板粘着能・凝集能を低下させるため,血液凝固を防止し,抗凝血薬,スルホニール尿素製剤の作用を増強する.糖尿病患者の脂質代謝異常を正常化する.

患声患語

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 今ここに私は,患者の立場から,精神科医療に携わる方々へ向けて呼び掛けることのできる貴重な機会を与えていただいたことを,大変幸運に思います.なぜなら,患者と治療者という立場の中では,患者の意思の主張は束縛され許されないという情況があるからです.

 もう少しはっぎり言えば,患者の自己主張すなわち病状悪化とされ,退院は延ばされ,薬を増やされるという現実もあるのです.鉄格子の中で生活し,退院した後も‘精神病者’のレッテルを貼られて差別され,身動きとれずに生きている人々は,今もなお,口を閉ざされています.そういう彼らの想いを,少しでも代弁できれば,私の胸の内にある怒りに似た気持ちも少しは救われるかも知れません.

老人相談コーナーの目

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 老人相談に,なんらかの形でかかわっている医師は,決して少なくない.コーナーとは呼ばずとも,病院の医師が土曜・日曜を利用して(勤務逸脱というそしりを防ぐために)奉仕またはそれに近い状態で地域老人の健康相談,指導を行っている例を知っている.

 それらの医師に話を聞いたり,便りに接してみると,共通した問題がある.もっとも辛いことは‘先生お願いですから継続して指導してください.治るまで,訓練してください,訓練(リハビリテーション)してくださる病院を先生のお力で紹介してください.お金は幾らでも出します’と言われることだという.

褥瘡の病理・予防・治療・3

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褥瘡の原因,褥瘡は圧迫のみによって出来るものではない.主な原因となる圧迫に関しては,既に先月号で突出部分と体圧分布の関係を基本にして述べた.その他のいわゆる副的な因子についても,常に注意を怠ってはならないものばかりである.そもそも,褥瘡の出来やすい身体的な状態があるとすれば,それ自体で十分褥瘡発生原因の副的な因子である.

 身体的な状態に加えて,局所における細菌の感染は組織の壊死を促進させるものであり,最初は褥瘡の状態でなくても,2次的には全く1次性の褥瘡と同じ状態にしてしまうものである.物理的な外傷も,化学的な損傷なども直接的には褥瘡とは無関係のように見受けられるが,これらもやはり2次的に潰瘍をつくる原因となり,更に組織内の外傷は血腫や嚢腫様変化を起こさせるもので2次的に褥瘡に変化する.

環境とからだ・12

遺伝と環境 亀山 義郎
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生物の生命現象はすべて‘遺伝’と‘環境’の合作によって成り立ち,両者の調和のうえに生存と繁殖が営まれている.これを人類の歴史からみると,人類の祖先が地球上に生まれ,今日の人類に進化するまでの長い原始の時代では,自然環境の厳しい淘汰作用によって,一方的に集団の遺伝的構成が環境に調和するよう改善を強いられてきた.この時代では,成人に達し子供を持つことができた者は,生物学的にみてとび抜けて優れた資質の持ち主のみであったと想像される.このような厳しい選抜を切り抜けてきた人類の優れた遺伝形質が‘文化’を生み出し,生存と繁殖に有利なように自分たちの生活環境を改善することによって自然淘汰の圧力を弱化させ,万物の霊長として地球に君臨する地歩を固めた.

 ところが人間の創り出した技術文明が,一方では人口の爆発的増加をもたらし,他方では人間の生存に不都合な影響を現し,将来の人類の遺伝的資質を弱化させる方向に進んでいることが危惧されるに至った.

性格の異常・12

異常とは何か 浜田 晋
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量的な異常

 前号では量的な異常として平均値からのズレについて述べましたが,次に知能について正常と異常の成り立ち,在り方を考えてみましょう.もっとも知能には色々な意味があって,本能と対比されたり,また感情や意志と区別されたりします.物事を認識し理解し判断する能力そのもの,すなわち心的機能のある‘形態’を意味したり,またその能力の程度──すなわち,あの人は賢いとかばかだとかいう賢さの‘度合い’を指したりします.後者の場合には物差しが必要となります.

 人間のような複雑な心の働きの程度を量的に計測することはとても難しいことで,しばしばかえって誤った判断をしてしまうのですが,古くからこの知能を測定する知能検査なるものがあります.I.Q.として数量化されています.ある1つの知能テストを,多数の人について年齢別に測定し,まとめて知能指数をだし,その頻度を示しますと,図のようになります.ほぼ正規分布をなし,I.Q.100ぐらいのものが世の中には最も多くて,その両端によった少数部分か異常ということになります.

東洋医学のはなし・3

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 漢方薬は慢性病に使う薬,それも西洋医学ではどうにもならない難病に使う薬,と考えている人が案外に多いのではあるまいか.その証拠に,週刊誌などに名前が載ると,その直後に,申し合わせたように難病患者が押し寄せてくる.

 しかしながら,西洋医学の難病は多くの場合漢方的にも難病であり,西洋医学的に治しやすい病気は,漢方でも簡単に治る場合が多い.軽いカゼや胃腸病などはその例である.

基本情報

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看護学雑誌
39巻4号 (1975年4月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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