ベッドサイドの看護
死に直面している老人の看護—深夜勤務8時間の考察
下井 京子
1
1住友病院看護部
pp.367-370
発行日 1975年4月1日
Published Date 1975/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917222
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はじめに
“人間対人間の看護”という本の,人間の能力という項に‘過去の体験を想起し再構成することを通じて,すなわち体験を正しく評価し,人のその体験への真の参画を認識するとき,その体験は人が洞察力を身につける上で,はかり知れない援助となりうるのである’1)と述べられている.私はここで,死に直面している老人への8時間の看護を取り上げ,考察を展開する.このような貴重な体験を,これからの看護の中に生かしていくために,8時間の場面のいくつかを再構成し,そこから自分の看護の不足や患者によってニードの違いのあること(その患者にとって援助を要するニードは何か)等を学んでいきたいと思う.
特に患者が亡くなった場合に,死後にその看護をふり返ることは少ないので取り上げてみた.この患者の看護に当たるに際して,死に直面している人を看護することの不安を整理することや,その人がどういう死の転帰をとるのかの予測があれば,患者を避けることや何も感じないまま見過ごしてしまうこともないのではないかと考えた.安らかな死への援助を考え,自己の看護を評価していくためには,8時間は貴重な,そして決して短くない時間である.
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