ベッドサイドの看護
老人性痴呆患者への援助
大野 由美子
1
1大阪市立弘済院付属病院看護部
pp.371-373
発行日 1975年4月1日
Published Date 1975/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917223
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近年医学の進歩は目覚ましく,生活様式の改善とあいまって人口の老齢化を来し,さらに老人の医療費無料化にともなって各病院とも老人患者が増加している.私達は老人の多い病院で看護にあたっているが,老人病の多くは慢性に経過するうち,多くの合併症を併発するという悪循環をたどり,完全治癒が望めなくなるのみか,死の問題を抜きにして看護は考えられない.老人の特性としては一般に保守的でがんこと言われるが,見当識障害,思考力の低下,人格水準の崩壊がみられる老人が多い.
私たちは老人の余生,平安な死への道がいかにあるべきか,検討を加えながら看護にあたっているが,老人性痴呆が進行し,周囲の患者の睡眠を妨げ,徘徊を繰り返し,処置に追われる最中にも‘お金がありません.さがしてください’というような訴えを繰り返されては,患者の人格を尊重したいと心得ながらも,十分に対応しきれなくなる毎日である.しかし可能なかぎり精神病院への転院は考えないようにしている.
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