特集 健康者としての看護婦
対談 病める人と病まぬ人
神谷 美恵子
,
外口 玉子
pp.348-355
発行日 1975年4月1日
Published Date 1975/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917220
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それはとくべつに暑い夏であったように思う.何の用であったか,私は舎の玄関に立ち,胸をつかれて棒立ちになってしまった.それまではいつでも杖にすがって微笑をたたえている彼にしか接したことはなかったのだが,今見る彼は玄関のあがりぎわの廊下のところに肌着1枚でうつ伏せにぶったおれている.まるで瀕死の状態のようにあえいでいる.
“どうなさったのですか”
声をかけると彼はゆっくりと顔をあげた.ひどく苦しげな,そして間の悪そうな表情で何も言わない.何も言えないのだ.むしろ帰ってくれと言われているようであった.
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