環境とからだ・12
遺伝と環境
亀山 義郎
1
1名古屋大学環境医学研究所
pp.395-398
発行日 1975年4月1日
Published Date 1975/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917229
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生物の生命現象はすべて‘遺伝’と‘環境’の合作によって成り立ち,両者の調和のうえに生存と繁殖が営まれている.これを人類の歴史からみると,人類の祖先が地球上に生まれ,今日の人類に進化するまでの長い原始の時代では,自然環境の厳しい淘汰作用によって,一方的に集団の遺伝的構成が環境に調和するよう改善を強いられてきた.この時代では,成人に達し子供を持つことができた者は,生物学的にみてとび抜けて優れた資質の持ち主のみであったと想像される.このような厳しい選抜を切り抜けてきた人類の優れた遺伝形質が‘文化’を生み出し,生存と繁殖に有利なように自分たちの生活環境を改善することによって自然淘汰の圧力を弱化させ,万物の霊長として地球に君臨する地歩を固めた.
ところが人間の創り出した技術文明が,一方では人口の爆発的増加をもたらし,他方では人間の生存に不都合な影響を現し,将来の人類の遺伝的資質を弱化させる方向に進んでいることが危惧されるに至った.
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