総合リハビリテーション 47巻8号 (2019年8月)

特集 摂食嚥下リハビリテーションの未来—各専門職に何ができるか

今月のハイライト
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 摂食嚥下障害は多くの患者・高齢者にみられる症状であり,病院,施設,在宅,擁護教育の現場などあらゆる臨床場面で,摂食嚥下障害への対応が行われています.リハビリテーションに関連するどの専門職種の業務のなかでも,摂食嚥下障害に対応することが重要な部分を占めつつあります.そこで,日ごろは注目されることの少ない理学療法士,作業療法士も含めた,各専門職の方々に,その職種における摂食嚥下障害分野への取り組みについて,どのような特色を有し,力を発揮できるのか紹介いただきました.今までは,「摂食嚥下障害は自分とは関係ない」と考えていた方も,ぜひ自分の職域のなかで,摂食嚥下障害に対応していただけると幸いです.

理学療法士にできること 吉田 剛
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これまでの摂食嚥下リハビリテーションの臨床における理学療法士のかかわり

 摂食嚥下障害に対する理学療法士のかかわりは,30年前に古澤らが当時では貴重な口腔・顔面機能に対する理学療法介入効果について報告1)して以来,13年前に筆者らが嚥下運動阻害因子に対する介入研究を学会で発表2)するまで研究はほとんど行われてこなかった.

 それまでの臨床における理学療法士の摂食嚥下障害に対する役割は,誤嚥後の呼吸理学療法を中心とした副次的役割であった.古澤らの取り組みは,当時から全身と局所との関係を考慮して嚥下活動しやすい準備を行うといった高水準のアプローチであり,姿勢アライメントと姿勢筋緊張および運動連鎖との関係が治療理論のなかに組み込まれていたが,一般の臨床に取り入れるには知識と技術が必要であるため普及しなかった.また,嚥下の反射面の認識が強く,嚥下運動が姿勢や筋緊張,嚥下筋の筋機能などの影響を受けていて改善可能な運動であるという認識がなく,嚥下運動阻害因子についての評価指標がなかったことも普及しなかった一因であると考える.

作業療法士にできること 植田 友貴
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はじめに

 食事とは,生きるためのエネルギーであると同時に人生の大きな楽しみの1つであるともいえる.筆者の経験ではあるが,担当させていただいた長期入院中の方から,「入院生活では食事が一番の楽しみ」との声が聞かれることも多い.

 では,「食事」の具体的な定義とはなんだろうか.われわれセラピストが多用する機能的自立度評価表(Functional Independence Measure;FIM)では,食事とは「食事が適切に用意された状態で,適当な食器を使って食物を口に運ぶ動作から咀嚼し嚥下するまでが含まれる」と定義されている1).つまり食事とは食物の認知(先行期),食事動作,口腔内取り込み・咀嚼・食塊形成(準備期),食塊の送り込み(口腔期),嚥下反射(咽頭期),蠕動運動(食道期)までを含めた包括的な表現であるといえる.そして,口腔内に食物が入るまでが,認知期を含む食事動作期であり,それ以後が摂食・嚥下運動期である2).この一連の過程のどこかが傷害されるだけで容易に摂食嚥下障害に陥ってしまうことも多い.実際に摂食嚥下障害を呈する疾患としては,身体障害では脳血管疾患や神経筋疾患をはじめ,整形外科分野や精神障害分野でも摂食嚥下障害を生じる3〜6)

 つまり,作業療法士の臨床業務では摂食嚥下リハビリテーションの視点をもつことは必須であると考えられる.

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はじめに

 人口動態統計によると,肺炎は1947年以降低下傾向にあったが,高齢化の進展により1973年以降から上昇に転じ,2011年には脳血管障害を抜いて死因の第3位となった1)

 肺炎は高齢者に多く,65歳以上が約8割を占める.その多くが誤嚥性肺炎によるもので,諸家の報告にもよるが70歳台では約7割,90歳台では約9割とされる(図1)2).また,原因疾患としては脳血管障害が最も多く約6割を占める.そのほかには変性疾患,認知症,頭頸部腫瘍,脳性麻痺,廃用症候群など多岐にわたる.

 高齢者や摂食嚥下障害例では低栄養状態が認められることが少なくないが,低栄養はフレイルやサルコペニアにも関連し,認知機能への影響のほか,運動機能低下による転倒から寝たきり状態へと負の連鎖を引き起こしやすい.特に高齢者においては摂食嚥下にかかる諸機能低下から不利な状態が多く認められる.超高齢社会の進展とともに摂食嚥下機能の維持・向上やリハビリテーションへの取り組みは無視できない状況にあり,対象者の生活の質(quality of life;QOL)向上,社会参加の促進のためにもきわめて重要な課題となっている.資格法に嚥下訓練を業とすることが明記されている言語聴覚士が専門職として担う役割は大きい.

看護師にできること 浅田 美江
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はじめに

 少子高齢化が進み,2017年10月1日時点で高齢化率は27.7%に達した1).加齢により嚥下機能は低下し,摂食嚥下障害を呈する疾病への罹患者も増加する.要介護高齢者で経口摂取を行う者のうち,嚥下障害を有する割合は35.5%であったという調査報告があり2),高齢者の急増は摂食嚥下障害者の増加に直結すると推測される.

 こうしたなか,医療・福祉の現場では,地域包括ケアシステムの構築に向けた事業が展開され,急性期病院における在院日数短縮化と在宅への移行が進められている.短い入院期間の中で効率的に,かつ切れ目のない摂食嚥下リハビリテーションを提供するためには,多職種連携によるチーム医療の推進や施設間連携が不可欠である.

 また,2017年に提示された『新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会報告書』3)では,「看護師は多様かつ複雑な患者の医療・生活ニーズに寄り添い,多職種と連携しながら患者のケアを中心的に担うとともに,補助的な医行為を行うなどして医師の補完的役割を担い,今後の我が国の医療では極めて大きな役割を担い得る職種」とある.看護師には,タスクシフティング・タスクシェアリングの観点からも,役割拡大が期待されている.現状をふまえ,本稿では,看護師の特色と現状の教育,専門制度の状況等から,看護師が嚥下リハビリテーションにおいて今後どのように力を発揮しうるかについて考えてみたい.

管理栄養士にできること 小城 明子
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はじめに

 管理栄養士の業務は2000年以降,大きく変化してきた.この年,管理栄養士の身分を定義づけする栄養士法が改正され,これまで「栄養の指導」という表現にとどまっていた業務が,① 傷病者に対する療養のための栄養指導,② 個人の状態に応じた健康保持・増進のための栄養指導,③ 給食施設における給食管理および給食対象者の栄養指導と具体化された.その後,介護報酬や診療報酬において,栄養管理に関する報酬が認められるようになり,栄養サポートチーム(nutrition support team;NST)加算,経口維持加算,経口移行加算などチームアプローチへの参画も求められるようになっていった.このような変化に合わせるように卒前教育や卒後教育も見直しされてきた.現在はまだその変化の過程にあるといえるだろう.

 嚥下障害に対する管理栄養士のかかわりについては,2016年に転機があった.栄養指導業務において,診療報酬が得られる対象に,「摂食機能若しくは嚥下機能が低下した患者」が加わったのである.これには,「医師が,硬さ,付着性,凝集性などに配慮した嚥下調整食(日本摂食嚥下リハビリテーション学会の分類に基づく.)に相当する食事を要すると判断した患者であること.」と付記された.後述するが,同じ2016年度には,公益社団法人日本栄養士会(The Japan Dietetic Association;JDA)と日本摂食嚥下リハビリテーション学会(The Japanese Society of Dysphagia Rehabilitation;JSDR)が,「摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士」の育成・認定を行う共同認定制度の運営を開始した.JSDRは多職種が参加する学会であるが,管理栄養士・栄養士の会員の増加率もこのころから大きくなっており,現在もその傾向にある.管理栄養士の摂食嚥下リハビリテーションへの関心が高まっていることが伺える.

歯科の立場から 渡邊 裕
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はじめに

 これまでの摂食嚥下リハビリテーションは脳血管障害を中心に,摂食嚥下機能評価のゴールドスタンダードである,嚥下造影検査,嚥下内視鏡検査の結果をアウトカムとして臨床,研究,教育が発展してきた.しかし,人生100年時代を迎え,脳血管障害に罹患しなくても,摂食嚥下機能障害を生じる高齢者が増加してきている.これは摂食嚥下機能の加齢による低下であり,これを完全に除くことはできないが,低下を予防し摂食嚥下機能障害の発症を遅らせることはできると考える.これらは地域で行われている介護予防の口腔機能向上サービスにおいて行われてきたが,十分な効果を得るには至っていない.しかし2018年度の診療報酬改定で口腔機能低下症が病名に収載されたこと,ささいな口のトラブルとされるオーラルフレイルに関する研究成果が公開され,口腔機能の客観的評価とそれに基づく口腔機能管理が地域や歯科医療の中に徐々に浸透してきていることから,今後摂食嚥下リハビリテーション普及への効果も期待されている.

 オーラルフレイルや口腔機能低下症の判定,診断のために行われる口腔機能の客観評価はこれまでの摂食嚥下リハビリテーションでは,補助的な評価として経口摂取の可否や食形態の決定に際し行われてきた.しかし,これら客観的評価が歯科診療の中に位置づけられ,摂食嚥下障害患者において実施されていくことによって,経口摂取の可否や食形態の決定に積極的に用いられ,多くの知見を創出していく可能性がある.また,オーラルフレイルは2018年度から本格的に始まったフレイル対策のなかで注目されており,地域包括ケアシステムのなかに浸透しつつある.このように歯科を中心に摂食嚥下障害に対する予防的対応がこれまで以上に推進されていくことは,摂食嚥下機能の加齢による低下を予防するうえできわめて大きな力になると考える.

 さらに日本では2012年の時点で認知症患者が462万人と報告され,それ以降も急増し2025年には700万人に達すると推計されている.すべての認知症患者が摂食嚥下障害を発症するわけではないが,認知機能の低下が重度になるほど摂食嚥下機能障害の程度も重度化していくことは明らかであり,また認知症患者の摂食機能障害は先行期の問題も大きく,これらについて対応していくことも,今後の摂食嚥下リハビリテーションの普及,発展に欠くことはできない.

 そこで本稿では,歯科が中心でその普及,啓発を行っているオーラルフレイルと口腔機能低下症について解説し,摂食嚥下リハビリテーションとの関係について検討するとともに,認知症患者や終末期にある高齢者の摂食嚥下障害に対応するうえで不可欠な先行期の摂食嚥下機能障害の評価について,最近の知見をもとに考えてみたい.

巻頭言

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 「障がい者のための手術治療を外科的リハビリテーション(以下,リハ)と呼ぼう.」

 「外科的リハ」とは,元中伊豆リハセンター所長 三島博信先生が考案したものです.

入門講座 リハビリテーション医療のエビデンス—理学療法・5

筋力低下 山田 実
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はじめに

 筋力低下はさまざまなリハビリテーションの場面において遭遇することが多い主要な機能障害である.この筋力低下は,日常生活動作(activities of daily living;ADL)の低下に直結し要介護状態を招く要因となることから,介入対象としても重要視されることが多い.本稿では,リハビリテーションの主たる対象となる高齢者の筋力低下にフォーカスしながら,その要因および介入の考え方について最新のエビデンスをもとにまとめる.

実践講座 障害者家族への心理的サポート・4

発達障害 原 仁
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はじめに

 発達障害の診断と治療は多岐にわたり,さまざまな立場の臨床家の意見や手法がある.家族支援のあり方についても唯一かつ不変の正解はないと思う.本稿は個人的な臨床経験に基づく1つの見方として受け止めていただきたい.

 筆者は横浜市の地域療育に小児科医として長くかかわり,そのなかで家族支援を意識した臨床を実践してきた.養育者がわが子の発達に危惧を覚え,最初に相談する機関の1つが横浜市中部地域療育センター(以下,中部C)であった.子どもを診るのが筆者の専門であるが,子どもの傍らには必ず養育者がいた.その気づきが家族支援の原点である.筆者の現在の立場は,病院臨床と同じでなく,研究的でもなく,地域療育という障害福祉の領域内での日々の診療に基づいている.主として乳幼児期から学童期の子どもを対象とした医療での家族支援のありようである.

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要旨 【はじめに】本研究は,脳卒中による水平眼球運動障害の予後について,初期の脳画像所見を用いて検討することを目的とした.【方法】発症初期に水平眼球運動障害を認めた入院脳卒中患者13例(橋病変4例,小脳病変5例,中脳病変4例)を対象とした.発症初期および6か月後の水平眼球運動障害の有無,初期の脳画像を後方視的に調査した.【結果】13例中8例で,6か月後に水平眼球運動障害が残存した.橋病変では背側に隣接する傍正中網様体(paramedian pontine reticular formation;PPRF),内側縦束(medial longitudinal fasciculus;MLF),外転神経核の損傷,小脳病変では脳幹部へ血腫の進展があるもの,中脳病変では背側の動眼神経核,MLFへ所見が及んでいる場合は,水平眼球運動障害が残存する傾向にあった.【考察】発症初期の脳画像所見で橋背側,小脳腹側,中脳背側に所見がある場合は,水平眼球運動障害が6か月以降も残存する可能性が高いことが示された.

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はじめに

 脳卒中の上肢機能障害において,機能改善が実用手に至るのは15%以下といわれており1),麻痺手の機能改善および,実用性の向上を図る治療法の開発は急務である.

 本邦では上肢機能障害の治療法として,中等度の麻痺筋(手関節背屈筋,手指伸筋など)に対して電気刺激の使用が勧められている(グレードB)2).電気刺激を用いた治療のなかでも,hybrid assistive neuromuscular dynamic stimulation therapy(HANDS療法)は,その治療機序が明らかとされている治療法の1つである3)

 HANDS療法とは,随意運動介助型電気刺激装置4)(以下,電気刺激装置)と手関節装具を1日8時間装着し「reach,grip and release,pinch and release」の動作を補助し,日常生活で麻痺手の使用を促すことで,上肢機能の改善および実用性を向上させる治療法である(図1).HANDS療法の脳卒中後の上肢機能障害に対する効果は,慢性期3),亜急性期5)のランダム化比較試験において確認されている.

 HANDS療法の対象基準は,手指伸筋群の随意筋電が記録でき,Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)のfinger function scoreが1a(集団屈曲レベル)〜3(分離運動は可能だが拙劣),knee-mouth testが2以上(麻痺手を胸の高さまで挙げることができる)である.

 従来のHANDS療法は3週間の入院による訓練が必要であったが,今回,筆者らは4週間の外来におけるHANDS療法(HANDS therapy for outpatient;HANDS-out)を行い,麻痺手の機能改善ならびに,使用頻度の向上に至った症例を経験したため報告する.

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はじめに

 厚生労働省の種類別障害者数の推移では,現在,内部障害者は増加傾向であり,心臓疾患が約半数を占めている1).慢性心不全患者は同年齢の健常者と比べて,有酸素運動能力が有意に低く日常生活動作(activities of daily living;ADL)に多くの不便を感じており2),心臓疾患患者に対して,ADL訓練を行うことが望ましいとされている.作業療法士の役割は,ADL遂行能力の評価をもとにした効率的な動作・作業の指導や作業方法の工夫など3)とされているが,現在,心臓疾患に対する作業療法の効果に関する報告は少ない.

 無酸素性代謝閾値(anaerobic threshold;AT)は,心肺運動負荷試験(cardio-pulmonary exercise test;CPX)にて算出できる.負荷が増すにつれ,ある時点より運動筋において乳酸が産生し,乳酸の産生量に応じて二酸化炭素排出量(carbon dioxide output;VCO2)の産生が急増する.酸素摂取量(oxygen consumption;VO2)をX軸に,VCO2をY軸にしたときのスロープは乳酸の産生増加の時点から急峻となり,この時点のVO2がATとなる.AT以下の運動は,乳酸の蓄積が生じにくいため長時間,安全に施行できるとされている4)

 現在,心臓疾患においてADL・手段的日常生活動作(instrumental activities of daily living;IADL)へのアプローチに関する報告は少なく,心機能の低下により運動耐容能が低下している場合,より低い運動強度が要求され,安全で効率的な運動を行うためにCPXによる個々の運動耐容能の評価が必要とされている5).今回,ATを測定後,呼気ガス分析装置を用いてIADL動作時のVO2を算出し,心臓疾患患者に対して,過負荷を避けたIADL評価や動作指導を安全かつ効果的に実施できた症例を経験したので報告する.なお,発表に関して対象者に説明を実施し,同意を得ている.

連載 リハビリテーション医療に必要な薬物治療・第8回

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 2016年度の国民生活基礎調査によるとわが国の便秘の有訴者数は2〜5%程度といわれ,加齢により有病率は増加する.高齢化社会を背景として,便秘症の患者数は増加しており,便秘症に対する対策は避けて通れなくなっている.また,慢性便秘症は消化器科のみならずあらゆる診療科に患者がいる疾患であり,リハビリテーション対象患者にも多くの便秘症患者がいる.そうした現状を受けて,本邦で初めてとなる「慢性便秘症診療ガイドライン2017」1)が2017年10月に発行された.また,近年新規便秘薬が続々と登場してきており,治療の状況が大きく変わってきている.

 本稿ではリハビリテーションに携わる医療スタッフに必要な慢性便秘症の各種薬物治療について,慢性便秘症診療ガイドライン2017を基に新規薬剤も踏まえて解説する.

連載 生理検査レポートのみかた・第6回

平衡機能検査 田口 周 , 長谷 公隆
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 人間の起立姿勢は,狭い支持基底面で高い位置にある重心を管理する必要があることから外力の影響を受けやすく不安定である.その保持には視覚,前庭覚,体性感覚,そしてこれらを処理する中枢神経系が平衡機能として関与する.平衡機能の制御作用を反映する身体重心の動揺を重心動揺計および下肢加重計によって計測することで,平衡機能の詳細な評価が可能となる.本解説では,重心動揺検査および下肢加重検査に関して,アニマ社製の重心動揺計および下肢加重計に準じて解説する.

連載 ICF活用の実際と展望・第4回

臨床応用 向野 雅彦
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 国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health;ICF)は,2001年にWHO総会において採択された生活機能と障害の国際分類である1).ICFは1,600を超える項目からなり,項目ごとに評点と呼ばれる0〜4点の点数をつける仕組みが備えられており,人の生活機能における問題を包括的に表現することができる.

 これまで,導入に向けた取り組みが各国で進められ,日本においてもICFを用いた多くの臨床研究が行われ,教育にも取り入れられてきた.ただし,心身機能,活動,参加の生活機能の各要素と背景因子(環境因子と個人因子で構成される)からなるICFの概念モデルそのものは臨床家に広く浸透しているものの,項目分類の臨床への普及はまだ途上である.さらなる普及に向け,国内外でさまざまな取り組みが行われている.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 夏目漱石の妻・鏡子が昭和3年に発表した『漱石の思ひ出』(改造社)に漱石の幻覚や妄想などさまざまな精神症状が描かれていることは周知の事実であるが,そうした漱石の症状に関する記述で注目されるのは,漱石に躁病とは言わないまでも躁的な要素があったことをうかがわせる記述である.

 たとえば鏡子夫人は,明治36年暮ごろの記述の中で,漱石が病的になる時の前兆として顔面の紅潮を挙げて,次のような証言をしている.「あたまの悪くなる前には,まるで酒に酔払ったように顔が真赤に上気するのです」,「子供たち迄上の方の娘などはそれを知って,いくら前の晩ににこにこしていても,顔がゆだったように火照っている時には,それ明日は又と警戒しています。ときまって翌朝になると,がらりと雲行が変わるのだから不思議です」。

Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション

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 「かぞくへ」(監督/春本雄二郎)は,俳優もスタッフもほぼ無償で参加していると囁かれているインデペンデント映画.自主上映を企画する映画愛好家からの評価が高い.

 本作は,結婚を目前に控えた若者の躓きを描いているという点で,古いところでは「青春の蹉跌」(監督/神代辰巳:1974),直近では「轢き逃げ—最高の最悪な日」(監督/水谷豊:2019)の系譜に属する.ただし,両作と異なり,〈人の死〉という不可逆的な問題で躓くわけではない.

私の3冊

私の3冊 織田 靖史

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1.ランダム化比較試験による運動習慣のない高齢者に対するオーダーメード型運動処方の効果検討:6か月間の追跡調査

 鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション部

  和田  崇

 [目的]運動習慣のない高齢者に対するオーダーメード型運動処方プログラムの効果を調査すること.[方法]50名を対象とし,介入群(オーダーメード型運動処方)と対照群にランダム割付を行った.運動処方時,処方後3,6か月後の運動自己効力感,行動変容を比較検討した.[結果]介入群は3か月で行動変容が生じた.[結論]オーダーメード型運動処方プログラムは運動習慣のない高齢者の運動習慣を改善させる可能性がある.

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 住民主体の「通いの場」参加者では,5年間の追跡調査の結果,要介護になる人が半減した.社会参加をしていると,うつになるリスクが半減する.人との交流が週1回より少ない人では,要介護と死亡のリスクが約1.4倍高い.1人で運動している人より,グループで運動をしている人のほうが,要介護になりにくい…….

 これまで,日本老年学的評価研究(JAGES)は,数々の刺激的な結果を報告してきた.

お知らせ

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目次

文献抄録

次号予告

編集後記
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 まったく夏らしくない日が続いていますが,通勤途中にユニフォーム姿でランニングする野球部員を見て気が付きました.学校はもう夏休みに突入しているんですね.というわけで,高校野球の地区予選の真っただ中,またまたすごい選手が出てきました.大船渡高校の佐々木朗希選手.大谷翔平選手が高校時代にマークした160キロを上回る163キロで高校最速記録.メジャーのスカウトも大注目だそうです.

 最近,世界で活躍できる有望な若手日本人アスリートが続々と出てきています.エンゼルスで二刀流として活躍中の大谷選手をはじめ,NBAの八村塁選手,サッカーではレアル・マドリードに移籍した久保建英選手,そして陸上100m走で9.97秒の日本記録を出したサニブラウン・ハキーム選手.東京2020オリンピックはちょうど来年の今日,開幕予定です.若手アスリートたちの躍進に,ますます楽しみになってきたところで,突然ですが,整いました!「サニブラウン」とかけて「外科医」と説く.その心は,どちらもじゅうびょう(10秒,重病)を切るでしょう.

基本情報

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総合リハビリテーション
47巻8号 (2019年8月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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