総合リハビリテーション 47巻7号 (2019年7月)

特集 ICUリハビリテーションにおける多職種連携

今月のハイライト
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 集中治療においても早期離床の重要性が浸透してきており,2018年診療報酬改定では「特定集中治療室における多職種による早期離床・リハビリテーションの取組に係る評価」として「早期離床・リハビリテーション加算」が新設されました.ただし,集中治療室(intensive care unit;ICU)での早期リハビリテーションに積極的に取り組んでいる施設であっても,多職種連携の体制は施設間でばらつきがあり,多職種連携の進め方に関しても各施設によってさまざまな工夫が行われているのが現状です.そこで,本特集ではICUリハビリテーションにおける多職種連携を取り上げ,現状と課題に続いて,主な病態に対する取り組みについてご解説いただきました.

現状と課題 高橋 哲也 , 藤原 俊之
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早期離床・リハビリテーション加算のインパクト

 2018年度の診療報酬改定において,特定集中治療室管理料の加算点数として「早期離床・リハビリテーション加算(500点/患者・日,14日上限)」が新設された.これまで,「集中治療室で集中治療を受けている患者は,重症でリハビリテーションできるような状態ではない」と疾患別リハビリテーション料の診療報酬請求が認められない場合もあったが,本加算の施設基準を満たすことで,集中治療室での超急性期のリハビリテーションの保険請求ができるようになった.このことはわが国の早期リハビリテーションが大きく前進したことを意味している.

 その後,中央社会保険医療協議会総会(第409回)の,外傷性脊髄損傷患者に対する再生医療等製品「ステミラック注〔一般名:ヒト(自己)骨髄由来間葉系幹細胞〕」の保険適用についての議論のなかで,本剤(1495万7755円/回)の治療が認められる施設要件として,脊髄損傷患者の全身管理の可能な集中治療室などを有することや,患者への標準的なリハビリテーションが実施可能な体制として「早期離床・リハビリテーション加算(またはADL維持向上等体制加算)を算定していることが示された.患者への標準的なリハビリテーションが実施可能な体制として,「早期離床・リハビリテーション加算」請求施設が示されたことは,集中治療室での早期リハビリテーションは標準的な治療であるという認識がさらに広がってきていることを示しているものと思われる.

筋力低下 蜂須賀 明子 , 佐伯 覚
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はじめに

 近年,敗血症など重症疾患(critical illness)による治療で集中治療室(intensive care unit;ICU)へ入室後,急性に左右対称性の四肢筋力低下を呈する症候群がICU acquired weakness(ICU-AW)として知られるようになった1).また,ICU在室中あるいはICU退出後,さらには退院後に生じる身体機能・認知機能・精神機能の障害について,集中治療後症候群(post-intensive care syndrome;PICS)という概念が提唱されるようになった2)

 ICU患者の筋力低下が注目される背景に,近年の医療の進歩があり,例えばICUにおける重症敗血症性ショックの死亡率は,2001年49.2%3)から2015年24.5%4)へ大きく改善した.そのためICUにおける治療ゴールは,救命のみでなく,生存後の日常生活動作(activities of daily living;ADL)や生活の質(quality of life;QOL),長期予後の改善へ変化している.ICU-AWやPICSによる筋力低下は,ICU患者のADL,QOLを低下させることから,適切な診断や治療,予防が重要である.

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はじめに

 院内肺炎のなかで,手術侵襲や呼吸不全といった病態に対して人工呼吸器を装着した場合に発生する肺炎,すなわち人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia;VAP)は,気管挿管から48時間以上経過して発症した肺炎と定義される.VAPは,市中肺炎や医療・介護関連肺炎などと比較しても高い死亡率を示す.また,VAPなどの合併症は集中治療室(intensive care unit;ICU)での早期リハビリテーションの重要性が広く認識されるなか,その開始や進行に大きく影響するため,早期治療,特に予防が重要である.本稿では,多職種連携によるVAP予防の実際について,早期リハビリテーションの視点から解説する.

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はじめに

 救急医療や集中治療の現場では重症多発外傷,敗血症を伴う重症感染症や消化管疾患などのさまざまな病態が併存する.このような環境のなかで認められる摂食嚥下障害は,脳卒中や頭頸部腫瘍などの機能的・器質的な嚥下障害だけでなく,意識障害や,呼吸・循環障害などによる全身状態の低下,人工呼吸器管理,経鼻経管留置などの要因により起こる.悪条件が重なりやすい状況では,早期に嚥下障害の存在を疑い,医師,看護師,リハビリテーションスタッフ,栄養士をはじめとした多職種協働でのチームアプローチの必要がある.なぜなら多職種がおのおのの専門性を発揮したうえで,患者・家族のニーズを見据えて相互に補い合いながら包括的に取り組むのが理想であるからだ.本稿では,集中治療室(intensive care unit;ICU)での摂食嚥下障害に対する当院での摂食嚥下チームでの活動を紹介する.

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注目を集めるICUでのせん妄とリハビリテーション職種の認識

 集中治療領域において,臨床上よく出会う症候であるせん妄は,治療に難渋する脳の急性機能不全である.集中治療室(intensive care unit;ICU)でせん妄を発症した患者は,入院が長期化し医療費の増加や死亡率が高くなることが報告されている.また,ICU滞在中のせん妄はICU退室後の認知機能障害と密接に関係しており,せん妄期間が長くなるほど退院3か月後・12か月後に認知機能が有意に低下すると報告1)されている.それゆえに,集中治療領域におけるせん妄への関心は高まっており,解決すべき主要な問題点の1つと認識されている.

 このICUのせん妄への対策は,2013年の米国集中治療医学会より発表された「Clinical practice guideline for the management of pain, agitation, and delirium in adult patients in the intensive care unit」(PAD Guideline)2),日本では2014年に日本集中治療医学会より発表された「日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン」(J-PAD Guideline)3)を基に実施されている.また昨年,海外においてPAD Guideline2)にImmobility(不動)とSleep(睡眠)を加えたPADIS Guideline4)が発表され,集中治療領域で働く医療職が連携し多様な問題に対して専門性を発揮していくことが求められている.

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 徳島県は,最近の5年間で人口が約3,300人(4.3%)減少している高齢県である.2017年の高齢化率は全県では32.4%(第5位)で,24市町村のうち4町で50%を超え,ほかの4町村でも45%を超えている.さらに平成の市町村合併により,市町村内での格差も拡大している.合併前には地方公共団体として独立していたある山間地では,過疎化のいっそうの進行につれ,町内での発言力が大きく低下した.その結果,この地区への医療・福祉関連予算の投入に対して,議会の承認が得られ難くなり,保健師が一人もいなくなりそうな事態となっている.

 Telemedicineは1つの解決策となり得る.徳島県では,脳卒中に対する画像診断が南海トラフ大地震による津波の危険に曝されている地域で実用化されている.さらに,徳島県では医療機関や介護施設の間で,住民の病名・投薬内容・検査結果等の情報を共有し・活用するネットワークシステム(阿波あいネットhttps://alltks-ehr.localinfo.jp/)の構築が計画され,すでに2万6千人以上の住民の同意が得られ,まもなく実用化される.

入門講座 リハビリテーション医療のエビデンス—理学療法・4

心血管疾患 舟見 敬成
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はじめに

 本邦における心大血管疾患リハビリテーション料の診療報酬の歴史は,30年以上前に遡る.1982年に厚生省(当時)戸嶋班により「急性心筋梗塞リハビリテーション4週間プログラム」が発表されたのを契機に,その数年後の1988年に「急性心筋梗塞の心疾患理学療法料」が3か月間に限って設定された.1996年に厚生省(当時)齋藤班により「急性心筋梗塞リハビリテーション3週間プログラム」が発表され,同年狭心症,開心術後が「心疾患リハビリテーション料」の対象疾患として保険適用追加される.その後,慢性心不全,閉塞性動脈硬化症,大血管疾患が「心大血管疾患リハビリテーション料」の診療報酬の対象疾患として追加されてきた1)

 これらの心大血管疾患リハビリテーションプログラムには,必ずその根拠となるエビデンスが存在する.これらエビデンスは,諸先輩方の絶え間ない研究努力の上に成り立っており,その結果として,前述したような診療報酬の算定に大きく反映されている.しかしながら,エビデンスの多くは,欧米での報告が中心的であり,本邦の人種,環境,機構などの特性を踏まえたエビデンス構築が望まれている.

 表1に厚生労働省が示した「平成30年度診療報酬点数 医科/第2章 特掲診療料/第7部リハビリテーション/第1節 リハビリテーション料/H000 心大血管疾患リハビリテーション料」2)から一部抜粋したものを掲載した.その内容と現在ガイドラインに示されているエビデンスを照らし合わせて,心血管疾患リハビリテーションを改めて考えてみたい.

 ここで重要な点として,①に「心肺機能の評価による適切な運動処方に基づき」と示されていることが挙げられる.つまり,適切な運動処方により,心血管疾患リハビリテーションの効果が期待できることを意味する.また,②に示されている疾患に対しては,心血管疾患リハビリテーションのエビデンスがあり,効果が期待できることを示していることが挙げられている.そこで本稿においては,上記に示された診療報酬と現在のエビデンスについて,まとめてみることとする.なお,診療報酬点数上では「心大血管疾患リハビリテーション」と表記されているが,本稿は大血管疾患の説明が少ないことと,臨床上「心血管疾患」を使用することが多いため,本稿においては,「心血管疾患リハビリテーション」の表記に統一させていただいた.

実践講座 障害者家族への心理的サポート・3

認知症 鷲見 幸彦
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はじめに

 認知症は糖尿病や高血圧といった疾患とかわらぬ頻度で,われわれ医療者が日常的に遭遇する疾患となってきている.認知症では本人に対する支援は当然重要であるが,同時に家族に対する支援が必要であり,本人への支援と同等に重要である.入院時の多職種チームによる対応や認知症初期集中支援チームによる訪問においても,対応困難事例は本人の問題よりも,家族の無理解によることが少なくない.本稿では,認知症の人の家族に対する心理的サポートに関して,またこの20年間にさまざまに整備されてきた本人・家族を支える社会資源について概説する.

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要旨 【目的】本研究では,右脚および左脚の片脚立位時間と歩行自立度との関係について検討することとした.【対象】運動器疾患のない65歳以上の高齢入院患者346例とした.【方法】左右脚の片脚立位時間を測定した.歩行自立度は院内の移動を独歩にて可能な者を独歩自立群,院内の移動に見守りもしくは介助,補助具が必要な者を独歩非自立群に分類した.【結果】左右脚の片脚立位時間は独歩非自立群に比べ,独歩自立群が有意に高かった.独歩自立の可否を判別する片脚立位時間の至適カットオフ値は右脚で3.6秒,左脚で2.9秒であり,高精度で検出した(右脚曲線下面積:0.93,左脚曲線下面積:0.94).さらに,左右脚ともに片脚立位時間が15秒を上回る場合,全例で独歩が自立していた.【結語】本研究結果より,片脚立位時間は独歩自立と関連し,独歩自立の可否を判別できる指標として有用であると考えられた.

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要旨 【目的】言語聴覚士,摂食・嚥下障害看護認定看護師不在の介護老人保健施設において,福村式簡易嚥下分析(2×4システム)に基づいた誤嚥対策の効果を検討した.【対象および方法】2014年4月1日〜2016年3月31日に介護老人保健施設たかはら(以下,当施設)に入所したのべ199例を対象とした(2014年度104例,2015年度95例).「2×4システムに基づいた誤嚥対策」導入前の2014年度と導入後の2015年度の利用者背景,誤嚥性肺炎による入院数,その他の転帰を診療録より後方視的に検討した.【結果】2014年度と2015年度の利用者背景に有意差はなかった.誤嚥性肺炎による入院数は2014年度7名(7%)から,2015年度0名(0%)と有意に減少した.すべての原因による入院数も2014年度30名(29%)に対し,2015年度10名(11%)と減少した.【結論】当施設における「2×4システムに基づいた誤嚥対策」は入所者の肺炎予防に寄与する可能性が示唆された.

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要旨 【背景】本邦における心疾患患者の復職調査は散見される程度であり,いまだ本邦における心疾患患者の離職の因子が明らかでない.【対象】対象は,大阪労災病院で2013年に循環器内科および心臓血管外科に入院した19〜60歳の心疾患患者249名であった.【方法】郵送によるアンケートで入院前の就労状況および退院後の復職状況とカルテより年齢,性別,疾患名,左室駆出率などを調査し,離職と復職の2群間で比較し検討した.【結果】治療目的の入院の就労者は93名であり,離職者は18名(19.4%)であった.離職と復職の2群間で有意差を認めたのは女性・年齢・疾患・職業・緊急入院・抑うつであった.【結語】心疾患患者の離職抑制には,心不全患者に対しては運動耐容能の維持・改善を目的とした長期的な心臓リハビリテーションが必要である.

連載 リハビリテーション医療に必要な薬物治療・第7回

排尿障害 畔越 陽子 , 田中 克幸
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 下部尿路症状は,① 頻尿・尿失禁などの蓄尿症状,② 尿勢低下・排尿遅延・残尿過多などの排出症状に分類される.これらの症状改善にはさまざまな治療法(行動療法・手術療法・カテーテル留置法など)もあるが,今回は薬物治療について,病態を説明しつつ適応・注意点を述べる.

 また,高齢者への投薬に際しての留意点もまとめた.

連載 生理検査レポートのみかた・第5回

神経伝導検査 児玉 三彦
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 神経伝導検査(nerve conduction study;NCS)の目的は筋力低下や感覚障害の原因が末梢神経障害であるのか否かの鑑別,障害部位の限定,およびその病態の把握である.病態が脱髄か,あるいは軸索変性なのかを知ることは機能予後の予測に有用で,リハビリテーションの治療戦略の立案に役立つ.ゆえに,その報告書を理解する能力は医師のみならず各療法士にも求められる.

連載 ICF活用の実際と展望・第3回

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 2018年World Health Organization(WHO)より疾病及び関連保健問題の国際統計分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems;ICD)-11th revisionが発表され1),その補助セクションV-chapter(V Supplementary section for functioning assessment)に,国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health;ICF)の概念に基づいてWHOが開発したWHO-Disability Assessment Schedule2.0(WHO-DAS2.0)とModel Disability Survey(MDS),そしてICF Annex 9より派生した項目が補完的に用いられている2).ICFは個人の健康に関する障害や生活機能を把握するための分類であり,さまざまな活用の用途があるが,「機能レベルを把握し,定量化する」ということから,現在課題とされている統計としての活用が今後期待されている.

 一方で,障害者の権利に関する条約(Convention on the Rights of Persons with Disabilities;CRPD)は2006年国連で採択され,その後日本では2007年に署名後,2014年に批准書を国連事務総長に寄託し,2016年に条約の効力が発生した.国連障害者権利条約第31条には,「締約国は,この条約を実効的なものとするための政策の立案及び実施することを可能とするための適当な情報(統計資料及び研究資料を含む)を収集することを約束する」との記述がある3)

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 フィンランド在住の国際的なピアニスト・舘野泉が2004年に発表した『ひまわりの海』(求龍堂)には,2002年1月に彼が脳溢血を発症した時の友人たちの反応が描かれている.

 2か月ほどの入院治療を終えて自宅に帰った舘野のもとには,彼のことを心配する友人知人が訪れたが,右手が麻痺し,舌ももつれる様子を見た彼らは,「だれもがしばらくは慰めの言葉も失って,困った顔をする」.

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 2019年3月23日に札幌で「サーミの血」(監督・脚本/アマンダ・シェーネル)の上映会が催された.サーミとは,ノルウェー,スウェーデン,フィンランドの北部とロシアのコラ半島で暮らす先住民族である.本作の舞台は,1930年代のスウェーデン.サーミの少女エレ・マリャは,寄宿学校の教師から「あなたたちの脳は文明に適応できない」と告げられる.他の人種より劣った民族として差別されており,劇中エレらは,目的の説明もないまま,研究者によってコンパス状の器具による頭部全体の測定,全裸写真の撮影といった屈辱的な扱いを受ける.翻って日本はどうだろうか.このような話に無縁だと言い切れるか?

 本イベントでは,「サーミの血」に呼応する形で,25分の短編ドキュメンタリー「八十五年ぶりの帰還 アイヌ遺骨杵臼コタンへ」(監督/藤野知明)が上映された.惹句には,「1931年,北海道大学の研究者が形質人類学の研究目的で浦河町の墓地からアイヌの遺骨を持ち去った.先祖の遺骨は故郷のコタンに取り戻せたか?」とある.

私の3冊

私の3冊 猪川 まゆみ

お知らせ

第31回ADL評価法FIM講習会

CRASEEDセミナー

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目次

文献抄録

次号予告

編集後記
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 東京2020オリンピック観戦チケットの抽選結果が発表されました.申し込み枚数の上限は60枚(当選枚数は最大30枚).上限いっぱいの60枚申し込んで,「全部当たったら150万円! どうしよう!」などと無駄にドキドキした方も多いようですが,周りでは「1枚も当たらないなんて……」といった落胆の声が最も多い気がします.「オリンピックはどうせ真夏だし,クーラーの効いた涼しい部屋で寝転がって観戦するのが一番」と強がっているそこのあなた,まだチャンスはありますよ! 秋に先着方式で改めて各競技のチケット販売を行うそうです.さらに,来年の春には公式リセールサービスが開始されるようです.

 かくいう私はといいますと,手順が面倒そうで,「まあ,明日でいいか」とぐずぐずしているうちに申込期間が過ぎてしまいました.というわけでオリンピックはクーラーの効いた涼しい部屋でゆっくり観戦することにします.そして,夏以降に販売予定の「東京2020パラリンピック」観戦チケットにねらいを定めようと思います.

基本情報

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総合リハビリテーション
47巻7号 (2019年7月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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